成功する「ホテル業界のM&A」とは?買収する魅力・対象の選び方

ホテルのM&A成功の秘訣を大公開。業界事例紹介やサービス向上のポイント、選ぶべきホテル条件、注意点、運営方法、成功例と展望を紹介します。

ホテル業界のM&Aの魅力とは?

ホテル業界における事業拡大は、不動産や設備への投資が必要なことや投資回収に時間がかかることなどが理由で非常に難しい側面があります。ホテル業界の譲受側にとってスピーディーな事業拡大を進める為には、M&A戦略は欠かせません。

譲渡側にとっても直近の新型コロナウィルスの影響で、業績が落ちている企業も多いことや慢性的な人材不足が課題となっている業界ですので、業績回復・人材確保の策として検討する企業が増えています。また、後継者不在の企業については、事業承継問題の課題解決策としてM&Aが活用されており、業界での競争力を高めるためにも、ノウハウ獲得やスピーディーな事業拡大を実現することができるM&Aは、旅館業界にとって魅力と言えるでしょう。

ホテルの国内市場規模推移(2015~2019年度)
ホテルの国内市場規模推移(2015~2019年度)

出典:https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2003/06/news016.html

ホテル業界のM&A動向

2020年以前はインバウンド需要への対応で盛況であったホテル業界ですが、2020年以降新型コロナウイルスの影響を真正面に受け厳しい事業環境が続いていたこともあり、業界再編が進みM&A市場も拡大傾向にあります。さまざまなM&Aの事例がありますので、一部を紹介します。

旅館グループAが都心の高級ホテルを買収した事例があります。グループの事業規模拡大に繋がったことは言うまでもありませんが、同業界における異業態施設のM&Aにより、新たな顧客層へのアプローチが可能となったことや相互のノウハウ共有によるサービスの向上が図られるなどシナジー効果が実現しています。

その他、海外の有名ホテルチェーンが日本進出を果たすため、日本国内ホテルとのM&Aを実施し、世界基準のサービスを提供することで日本のホテル業界に新たなムーブメントをもたらす例もあります。

M&Aによりサービス向上が実現

ホテル業界でM&Aを実行したことにより、サービス向上に繋がった例が多くあります。M&A実施後のサービス向上のポイントについて解説します。

予約や管理等のシステム改善

中・小規模のホテルでは、予算やリソースの関係で予約システムの開発・効率化は難しく対応が遅れがちです。M&Aによる大手ホテルグループとの提携でシステムの統合や開発支援を受けることが可能な為、多様な顧客ニーズへの対応が可能となります。

事業運営ノウハウの共有

ホテルは、それぞれの施設で運営方針が違って当然ですが、同じルーティン業務が存在します。それらのルーティン業務を如何に効率的に且つスピーディーに実施できるかは事業運営における重要なポイントです。M&Aによりお互いのノウハウやリソースを融合することで業務の効率化を図ることができれば、お客様対応へ人員を割くことが可能となり顧客満足度の向上が期待できます。

最新のトレンドへの対応

顧客ニーズやトレンドの変化スピードが上がっており、自社単独での対応も難しくなってきています。M&Aによるグループ形成でそれぞれの強み・弱みを補完し合うことで、最新トレンドへの対応能力も強化され、お客様のニーズに対して適切なサービスが展開できるでしょう。

買収すべきホテルの条件

ホテルのM&Aを成功させるためには、選ぶべき譲渡対象企業の条件の選定が重要となります。業界内・口コミサイトでの評価や評判が高いホテルが望ましいことは言うまでもありませんが、そのホテル・旅館が持つサービスや設備に独自性があり、他のホテルとの差別化している部分も大切です。

また、将来性のある地域やエリアに立地していることや保有客室数などを考慮し、自社のM&A戦略に沿った譲渡対象企業を選ぶことが重要です。

客室の設備・料金が魅力的なホテル

譲渡対象ホテルを選ぶ上では、客室の設備や料金設定も重要なポイントです。例えば、最新の設備が整った客室や豊富な料金プランを提供しているホテル・旅館は、多くのお客様から支持されることが期待できます。

また、特典やクーポンが利用しやすいホテルも、多くのお客様から支持を受ける要素の一つです。このように、お客様からの支持が期待できるホテル・旅館を有する企業をM&Aの対象とすることで、成功への道筋が描きやすくなります。

アクセスが便利・駐車場完備のホテル

都心のホテルであれば、駅や空港からのアクセスが良い、観光やビジネスエリアへのアクセスが良いなど立地を考慮しM&A対象企業を選別することが重要です。駐車場が完備されているか否かも一つの検討材料と考えます。

地方のホテルであれば、都心から近い、高速ICから近いなどのアクセスの利便性は考慮が必要です。地方ですと車移動の顧客も多くなることが予想される為、駐車場の完備は必須でしょう。

このように同じホテルであっても都心か地方かによって、顧客のニーズが異なることから、M&A対象会社選定の際はその地域にあった利便性や設備の保有状況を考慮することが重要です。

施設の特典・クーポン情報が充実しているホテル

施設の特典やクーポン情報が充実しているか否かもM&A対象企業選定基準とすることをお勧めします。特典やクーポン情報が豊富なホテルは顧客ニーズへの細やかな対応に取り組んでおり、顧客側も支持する傾向にあります。

例としては会員限定のプランや、レストランやスパなどの割引クーポンの提供など、これらの施策はリピート顧客の獲得の策としても有効な為、特典・クーポンの種類の把握と同時に施策の効果についても確認することをお勧めします。

M&Aの注意点

M&Aを成功させるためには、自社のM&A戦略の選定が必要となります。M&Aの目的は何か、M&Aによって獲得したい効果は何かなどを明確にすることが重要です。選定した自社のM&A戦略を実現する為に、必要なリソースを持った企業をM&A対象とすることをお勧めします。

2つ目に、譲渡対象企業との交渉が始まると、譲渡対象企業の企業価値評価の実施が必要となります。企業価値評価は、専門家の助言を得ながら適切な方法で実施することが重要です。適切な企業価値評価を実施した上で、その他の条件交渉を行うことが必要です。

3つ目にM&A後、グループ会社との連携や経営リソースの融合の為、PMI(統合プロセス)の準備も必要です。M&Aの検討段階から獲得したいシナジー効果を見据え準備するようにしてください。

公式サイト・予約サイトでの評判

ホテルのM&Aでは、お客様からの評判や評価もM&A検討における重要なポイントとなります。公式サイトや予約サイト等の口コミや評価内容を確認することで譲渡対象企業の状況を把握することができます。また、お客様の口コミや評価への対応方法なども確認することをお勧めします。

グループ会社との連携強化

M&Aは、クロージング(成約)がゴールではなく、クロージング後のPMI(統合プロセス)で譲渡側と譲受側を融合することで期待できるシナジー効果を享受することがゴールとなります。M&A後、譲渡側と譲受側のシナジーを最大限に享受する為には、グループ会社との連携を強化することが必要です。

事業運営方針、システムの統合、人事評価制度等の統合により業務効率の向上を図ることや、人材交流・ノウハウ共有等お互いのコミュニケーションを取る為の機会創出などグループ会社との連携強化が重要になります。スムーズなPMI実施の為、M&A検討段階から準備を進めることをお勧めします。

M&A後のホテル運営のポイント

M&A後のホテル運営において、重要なポイントは数多く存在しておりますが、この記事では特に注目すべきポイントを2つご紹介いたします。第一に、スタッフ教育の充実とサービス改善に励むこと。第二に、料金プランの最適化やチェックイン・チェックアウト時間の見直しです。それぞれのについて詳しく解説します。

スタッフ教育・サービス改善

ホテル運営において、スタッフ教育は最重要事項と言っても過言ではありません。スタッフの質を向上させることは、お客様の満足度を向上させることに直結しているからです。例えば、接客力の強化を図ることで、お客様からの評価やクチコミが良好となり、リピーターや新規顧客が増えることが期待できます。その他、スタッフの言語能力を向上させることで、海外からのお客様にも対応が可能となり、ビジネスチャンスを広げることができます。

また、サービス改善の一環として、客室内や共用スペースの設備投資を進めることも重要です。例えば、無料で安定的なWi-Fi環境・モダンなインテリア・最新のテレビ設備などを導入することでなど、お客様の居心地を向上させることでリピーター獲得に繋がります。

料金プラン・チェックイン・チェックアウトの見直し

料金プランの再設定や、チェックイン・チェックアウトの時間の見直しが、ホテルの収益性向上に繋がります。例えば、シーズンや曜日に応じた柔軟な料金プランの設定を行うことで、需要に応じて適切な価格を提示することができます。また、会員制度を導入するなど、会員特典やポイント制度を提供することで、お客様のリピート率が高めることも重要です。M&Aを機会に譲渡側・譲受側のノウハウ共有で収益性向上が期待できます。

ホテル業界のM&Aのまとめ

ホテル業界のM&A成功例としては、有名ホテルチェーンが、M&Aを活用しグループの規模を拡大させた事例が挙げられます。規模が拡大することで、ブランド力が高まり集客力を強化することに成功しています。また、同業界内の異業態のM&Aを行うことで、自社で取り込めない顧客層へのアプローチが可能となったり、季節要因により上下する売上高の補完など経営基盤強化に成功したりする例もあります。今後の展望としては、ホテル業界の競争が激化する中でM&Aによる規模の拡大や事業領域の多様化が一層進むことが予想されます。業界内での競争力強化の為にも、M&Aの活用を検討することをお勧めします。

ホテル業界の特色に合わせたM&Aの実現は、みつきコンサルティングにお任せください。弊社は税理士法人を母体とした会計系M&A仲介会社で経営コンサルティング経験者が数多く在籍します。譲渡対象企業の詳細な事業分析を実施したうえで、貴社の課題解決を見込める候補先を紹介しております。M&A実行後に発生が予想される相続対策についてもワンストップで対応可能です。

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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