後継者不在に悩む中小企業経営者にとって、サーチファンドは「次期経営者を自ら選べる」画期的な選択肢です。経営志望の個人(サーチャー)が投資家の支援を受け、自ら選んだ企業を譲り受けて経営を担うこの仕組みは、従来のM&Aとは一線を画します。本記事では、10年以上の実績を持つ専門家が、サーチファンドの仕組みやメリット、具体的な流れを徹底解説。大切な会社を「人」に託すための新たな道を探ります。
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サーチファンドとは
近年、日本の中小企業において「後継者不在」は深刻な社会問題となっています。その解決策として急速に注目を集めているのが「サーチファンド」です。
サーチファンドの定義、「人」が主役の新しい事業承継
サーチファンド(Search Fund)とは、経営者を志す個人(サーチャー)が主体となり、自ら経営したい中小企業を発掘(サーチ)し、投資家から資金援助を受けながらM&Aを通じて経営権を取得する投資スキームを指します。
この手法は1984年に米国のビジネススクールで誕生しました。従来のファンドが「企業」を投資対象とするのに対し、サーチファンドは「経営者候補という個人」を投資対象とする点が最大の特徴であり、いわば「個人版プライベート・エクイティ(PE)」とも呼ばれています。
なぜ今、日本で注目されているのか
日本では2019年頃から徐々に活用事例が増え始めています。背景にあるのは、2025年までに約22兆円のGDPが失われる可能性があるとされる「事業承継問題」です。
親族や従業員に後継者がいない場合でも、高い意欲と能力を持つ「外部の個人」に経営を託せるサーチファンドは、地域経済の活性化や雇用維持の観点からも大きな期待を寄せられています。特に地方銀行などが資金供給源として関与するケースが増えており、中小企業の新たな存続形態、会社売却先の選択肢として浸透しつつあります。
サーチファンドを構成する「三者」の役割
サーチファンドは、主に3つのプレイヤーが連携することで成立します。下表は、それぞれの立場と役割をまとめたものです。
| プレイヤー | 役割・特徴 |
|---|---|
| サーチャー(経営者候補) | 経営者を目指す個人であり、スキームの主役です。「ネクストプレナー」とも呼ばれ、MBA取得者などの優秀な若手・中堅層が中心となります。彼らは自ら譲渡企業を探し出し、買収後は社長として現場の指揮を執り、企業価値の向上に心血を注ぎます。 |
| 投資家(スポンサー) | サーチャーの能力を見極め、活動資金や買収資金を提供する役割を担います。単に資金を出すだけでなく、M&Aの手続支援や経営ノウハウの提供、アドバイスを通じてサーチャーをバックアップするケースも多く見られます。 |
| 譲渡オーナー(経営者) | 自らが築き上げた事業を次世代に引き継ぎたいと考えている中小企業のオーナーです。サーチファンドを通じて、自社の理念や文化を理解し、情熱を持って経営を引き継いでくれる「顔の見える後継者」に出会うことができます。 |
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サーチファンドとPEファンドの違い
サーチファンドはPEファンドの一種に分類されますが、実務上の仕組みには明確な違いがあります。
| 項目 | サーチファンド | PEファンド |
|---|---|---|
| 主な投資対象 | 経営者を目指す「個人」 | 成長が見込まれる「企業」 |
| 主導権 | サーチャー(個人)が主体 | ファンドマネージャーが主体 |
| 資金提供の回数 | 2回(サーチ資金と買収資金) | 1回(原則として買収資金のみ) |
| 後継者の確定 | 交渉段階で次期経営者が明確 | 交渉後に選定・派遣されることが多い |
実務的な視点での補足
実務において最も大きな違いは、「後継者の顔が最初から見えているか」という点です。PEファンドの場合、組織としての買収が先行するため、現場の従業員やオーナーは「誰がトップになるのか」という不安を抱きがちです。
一方、サーチファンドはサーチャー本人が自ら門を叩くため、譲渡オーナーは相手の人格や経営ビジョンをじっくり見極めた上で、納得してバトンを渡すことができます。これは、情緒的な繋がりを重視する日本の中小企業経営において、相性の良いポイントと言えます。
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サーチファンドのメリット・デメリット
ここではサーチファンドに特有のメリットとデメリットを紹介します。
サーチファンドのメリット
サーチファンドには、譲渡オーナーと経営者候補であるサーチャーの双方にとって、それぞれ異なるメリットがあります。下表は、両者の立場から見たメリットを対比したものです。
| 譲渡オーナーにとってのメリット | サーチャー(経営者候補)にとってのメリット |
|---|---|
| 後継者の人柄や価値観を事前に確認できる 最大のメリットは、次期経営者となる人物と直接、深い対話を重ねられる点です。その人物の能力だけでなく、苦労して育てた自社の理念を大切にしてくれるか、従業員を愛してくれるかといった「価値観の合致」を判断した上で承継を決められます。 社名や社歴、企業文化を維持しやすい サーチファンドは特定の事業会社による買収とは異なり、個人が主体となるため、買収後に他社と統合されて社名が消滅するリスクが低いです。実質的には「親族内承継」に近い感覚で、これまでの伝統を守りつつ、新しい風を取り入れることができます。 専門的なサポート体制がある サーチャー個人だけでなく、背後にいる投資家が経営を監視・支援していることも安心材料です。経営経験が浅いサーチャーであっても、経験豊富な投資家のアドバイスを受けることで、組織としての安定性が担保されます。 | 経営経験がなくても挑戦の門戸が開かれている どれだけ優秀な個人でも、数億円単位の買収資金を独力で用意するのは困難です。サーチファンドを活用すれば、資金援助を受けながら、ゼロからの起業よりも成功確率が高い「既存の事業基盤」を引き継ぐ形で経営者への一歩を踏み出せます。 高額な成功報酬による経済的インセンティブ サーチャーは社長としての給与に加え、将来的な利益の一部を報酬として受け取ることができます。自身の努力による企業価値の向上が、ダイレクトに自身の経済的リターンに繋がるため、極めて高いモチベーションを維持できます。 |
サーチファンドが抱える課題と注意点
メリットが多い一方で、実務上で直面する特有のデメリットも存在します。
成否がサーチャー個人の資質に依存する
サーチファンドの最大のリスクは、文字通り「サーチャー頼み」である点です。もしその個人の経営能力が期待を下回った場合、企業の成長が止まるだけでなく、現場に混乱を招く恐れがあります。投資家や譲渡オーナーは、その人物の「目利き」を慎重に行う必要があります。
日本における認知度の低さ
欧米に比べ、日本ではまだ新しい仕組みです。そのため、銀行や取引先から「個人が経営を引き継ぐこと」への理解を得るのに時間がかかることがあります。手続を円滑に進めるためには、実績のあるM&A専門家を介して、ステークホルダーへの丁寧な説明を行うことが不可欠です。
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サーチファンドによる事業承継の5つのステップ
サーチファンドの活動は、一般的に下表の手順で進められます。
| ステップ | 期間 | 実施内容 |
|---|---|---|
| 1. 対象企業発掘の支援依頼 | 1〜2ヶ月 | サーチャーが投資家に対し、自身の経歴や熱意をアピールし、サーチ活動のための資金調達を行います。 |
| 2. サーチ活動 | 6ヶ月〜2年 | 提供された資金を用い、サーチャーが自ら譲渡企業を探します。数多くの企業を精査し、現経営者との対話を通じて相性を見極めます。 |
| 3. 出資依頼と企業譲受 | 3〜6ヶ月 | 具体的な対象会社が決まったら、詳細な事業計画を策定し、投資家から買収資金の提供を受けます。ここで正式なM&Aの手続が実行されます。 |
| 4. 対象会社の経営 | 3〜5年 | サーチャーが社長に就任し、現場で指揮を執ります。新市場への参入やコスト削減などを行い、企業価値の向上に努めます。 |
| 5. イグジットと還元 | タイミングによる | 企業価値が高まった段階で、上場や第三者への譲渡、MBOなどにより資金を回収し、投資家やサーチャーがリターンを得ます。 |
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専門家が教える「失敗しないサーチファンド活用」の知恵
10年以上のキャリアを持つM&Aコンサルタントとして、現場で感じる「成功の鍵」をお伝えします。
数字に表れない「文化のフィット感」を最優先する
サーチ活動中、サーチャーは決算書や市場データに目を奪われがちですが、中小企業において最も重要なのは「現場の信頼」です。古参の従業員が納得しないリーダーは、どれだけ優れた戦略を立てても機能しません。譲渡オーナーは、サーチャーが現場に溶け込もうとする姿勢があるか、最初の面談から厳しくチェックすべきです。
投資家の「サポート範囲」を明確にする
サーチャーが経営に専念できるよう、M&Aの実務や法務的なサポートをどこまで投資家が引き受けてくれるのかを確認しておくことが重要です。日本では投資家が積極的に実務を支える「アクセラレーター型」が主流ですが、契約内容によってその厚みは異なります。
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サーチファンドに関するFAQ
サーチファンドを検討される経営者や志望者からよく寄せられる質問にお答えします。
一般的には、安定したキャッシュフローがあり、独自の技術や強みを持つ中小企業が選ばれやすい傾向にあります。特に「後継者がいればまだまだ伸びる」という成長余地のある会社が、サーチャーや投資家にとって最も魅力的な対象となります。
可能です。実際に、MBA取得直後やコンサルティング会社出身の若手が、投資家のバックアップを受けて成功している例が多くあります。大切なのは、過去の経験よりも「この会社を良くしたい」という執念と、周囲を巻き込む人間力です。
ケースバイケースですが、数ヶ月から1年程度、会長や顧問として残り、引き継ぎをサポートするのが一般的です。サーチャーとの信頼関係が深ければ、その後も良き相談役として関係が続くこともあります。
サーチファンドによる事業承継・M&Aのまとめ
サーチファンドは、経営を志す個人(サーチャー)が、投資家の支援を受けて自ら中小企業を見つけ、経営を引き継ぐ仕組みです。譲渡オーナーにとっては「後継者の顔が見える安心感」があり、サーチャーにとっては「未経験から経営に挑戦できる」という、双方に大きなメリットがあります。成功の秘訣は、スキルの高さだけでなく、互いの価値観を深く理解し、信頼関係を築ける人物に出会えるかどうかにかかっています。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。サーチファンドを活用した事業承継をご検討の際は、ぜひみつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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