不動産仲介会社の売却を検討中の譲渡オーナーへ向け、売却相場や成功ポイントを徹底解説します。後継者不在や競争激化による将来への不安を抱えていませんか。自社の管理物件や専任媒介契約の数など、独自の強みを正しく評価してもらうことで、事業承継や大手の傘下入りによる事業拡大が実現します。事業譲渡と株式譲渡の違いや、企業価値を高める秘訣をまとめました。
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不動産売買仲介・賃貸仲介会社の市場動向
不動産仲介の現場では、市場の急激な変化に対応する経営判断が求められています。ここでは、業界の現状と売却市場の動向について解説します。
手数料を主とするビジネスモデルと規模
不動産代理・仲介業の売上規模は年間約4.1兆円で推移しています。主な収益源は、売買や賃貸のマッチングによる手数料です。市場全体を見渡すと、おおむね安定した規模を維持している現状が伺えます。このような背景から、譲渡オーナーによる会社売却の動きが活発化している傾向があります。
免許制と小規模事業者の割合
宅地建物取引業の免許制でありながら参入障壁が低いため、従業者5人未満の小規模事業者が全体の8割以上を占めています。投資余力が限られることから、仲介業務に特化する事業者が大半です。経営者の高齢化に伴う後継者問題も浮上しており、第三者への承継を模索するケースが増加の一途を辿っています。
REINS普及による情報格差の縮小
物件検索システムであるREINSの利用が定着し、事業者間の情報格差は縮小しました。全国の不動産売買や賃貸情報が即座に共有される仕組みが確立されています。独自の物件情報を抱え込むことの優位性が薄れ、顧客サービスの質や集客力がより重視される時代に変化しています。
成約件数の推移と大手企業の動向
売り物件の新規登録が減少傾向にある一方で、成約報告件数は増加基調にあります。大手デベロッパー系や信託銀行系の仲介会社は、高単価な法人案件に注力し取扱高を伸ばしています。東急リバブルや野村不動産グループなどが好調な業績を叩き出し、業界再編の波が押し寄せる状況です。
法人営業や高単価案件へのシフト
大手を中心に、リテール(個人向け)からミドル・ホールセール(法人や富裕層向け)へのシフトが進んでいます。案件単価の上昇が営業利益率の向上に直結するためです。中小の会社は、特定のニッチ領域やエリア特化型の強みを活かして大手や中堅企業への譲渡を模索する事例が増えています。
新規登録物件数の減少と成約件数の回復が映す、中小仲介会社の課題
不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について」によると、2020〜2024年の新規登録物件数は年平均2%のペースで減少している一方、2024年の売り物件成約報告件数は19.2万件まで回復しています。首都圏を中心とした新築住宅価格の高騰と、2024年3月のマイナス金利政策解除に伴う短期的な需要喚起が背景にあり、需要は戻る一方で売主の物件供給は細るという「需給の歪み」が顕著になっています。
地方や郊外を地盤とする中小仲介会社にとって、物件仕入れ力(売主開拓力)の維持が、今後の事業継続を左右する構造的課題として重みを増しています。
野村不動産ソリューションズの法人案件シフトの裏で広がる、中小仲介会社の単価格差
業界の取扱高上位である野村不動産ソリューションズは、リテール(個人向け)比率が2019年度の61%から2024年度には50%まで低下し、代わって10〜30億円規模の法人営業や富裕層向け販売の構成比が拡大しています(同社IR資料)。
東京圏や六大都市の市街地価格指数も、低金利・都心再開発・円安に伴う海外資金流入を背景に上昇が続いており(日本不動産研究所)、大手の高単価シフトと地方物件の単価停滞が同時進行する構造下では、地域密着の中小仲介会社が単独でスケールメリットを確保することは年々難しくなっています。
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不動産仲介業の会社売却の現状と課題
会社を譲渡する際、業界特有のメリットと抱えるリスクを正確に把握しておくことが不可欠です。具体的な課題と魅力を整理します。
小規模事業者の乱立による競争激化
市場の8割が小規模事業者で構成されているため、エリア内での競争は激しさを増しています。仲介フランチャイズに加盟してブランド力を補う事業者も存在します。単独での生き残りが厳しさを増す中で、会社売却を通じた大手の傘下入りを成長戦略として位置づける経営者が目立ち始めています。
不動産テックやDX導入の遅れという課題
ITを活用したマンション査定や仲介手数料の定額サービスなど、情報透明性を高めるDX技術が普及しつつあります。業務支援型AIクラウドサービスを導入する企業も現れました。技術革新への対応が遅れると競争力を失うという懸念が、資本力のある企業への譲渡を後押しする要因となっています。
空き家対策の特例と市場への影響
2024年7月には、中古住宅流通を活性化させるため、800万円以下の低廉な空き家の売買に関して報酬額の特例が設けられました。通常の法定上限を超える報酬の受け取りが部分的に許容されます。こうした法規制の変化は、地方に根差した会社にとって新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけとなります。
宅地建物取引士など特定資格者の確保
不動産事業を行うには、事務所の従業者5人に対し1人以上の専任の宅地建物取引士の設置が義務付けられています。有資格者の採用難が続く中、買収を通じて経験豊富なスタッフをまとめて確保できる点は非常に魅力的です。人材不足に悩む買い手企業にとって、極めて大きなメリットとして評価されるはずです。
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媒介契約制度の違いが売却価値に与える影響
日々の営業活動で獲得する媒介契約の種類が、企業価値を大きく左右します。契約の性質がもたらす影響を深く掘り下げます。
一般媒介契約と売却価値の関係
一般媒介契約は、顧客が複数の会社に売却を依頼できる方式です。他社で成約するリスクがあるため、不動産会社のモチベーションが上がりにくいとされます。確実な収益が見込めないため、企業価値の算定においてはプラスアルファの評価を得にくいのが実情です。
専任媒介契約による収益の安定化
専任媒介契約は依頼を1社に限定する方式であり、他社に案件を奪われる心配がありません。REINSへの登録義務が7日以内と定められていますが、確実な手数料収入を見込める基盤となります。このような契約を多数保有していることは、譲渡価格を引き上げる強力な要因として働きます。
専属専任媒介契約がもたらす優位性
専属専任媒介契約はさらに縛りが厳しく、自己発見取引も禁じられています。5日以内のREINS登録と週1回以上の業務報告義務が生じます。会社にとっては最も自社の利益を確保しやすい契約形態であり、この実績が豊富であれば、譲受企業からの評価は飛躍的に高まります。
専任媒介・専属専任媒介の保有数と継続更新率が価値評価を押し上げる
当社の支援実績では、専任媒介・専属専任媒介の保有数とその継続更新率の高さが、価値評価を押し上げています。とりわけ売り物件側で安定的に専任系契約を獲得できている会社は、買い手候補から将来キャッシュフローの予見性を高く評価されやすく、当社が関与した案件でも評価倍率が一段引き上がるケースが目立ちます。
不動産仲介における株式譲渡と事業譲渡
会社を譲渡するスキームには複数の選択肢があり、それぞれの特徴を理解することが重要です。現場でよく検討される2つの手法について説明します。
株式譲渡|会社そのものを承継する
株式譲渡は、譲渡オーナーが保有する株式を譲受企業へ売却する手法です。対象会社が持つ宅建業の免許や各種契約、スタッフの雇用がそのまま包括的に引き継がれます。手続が比較的簡便である一方、不採算事業や簿外債務まで全て引き継ぐリスクを伴うため、譲受企業は慎重に調査を行います。
事業譲渡|店舗や顧客基盤を引き継ぐ
現場では、店舗、スタッフ、顧客リストといった事業部分のみを切り出して売却する事業譲渡も主流です。譲受企業は不要なリスクを遮断し、必要な資産だけを選別して引き継ぐことが可能です。ただし、許認可の取り直しや従業員との再雇用契約が必要となり、手続に手間がかかります。
売却スキームのメリットとデメリット比較
各スキームの違いを明確にするため、下表にメリットとデメリットをまとめました。自社の実情に合わせて最適な手法を選択することが成功の秘訣です。
| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 取引の対象 | 会社そのもの(発行済株式) | 特定の事業資産(有形・無形) |
| 契約の引き継ぎ | 原則としてそのまま包括承継される | 取引先や従業員との再契約が必要 |
| 売り手のメリット・デメリット | 包括的な承継による安心感 会社全体を譲渡でき従業員の雇用も維持されやすい。 不採算部門の影響 不要な資産があると価格交渉で不利になる恐れがある。 | 必要な事業のみの売却 法人格を残しつつ特定の事業だけを現金化できる。 競業避止義務の負担 譲渡後20年間は同一市町村での同種事業が制限される。 |
| 買い手のメリット・デメリット | スムーズな経営統合 許認可や契約がそのまま維持されるため事業展開が早い。 簿外債務のリスク 見えない負債や未払残業代を抱え込む危険性が残る。 | リスクの完全遮断 不要な資産や負債を引き継がず必要なものだけ選べる。 手続の煩雑さ 許認可の取り直しや従業員との再雇用契約が必要となる。 |
不動産仲介会社の売却相場と株式評価
会社を高く評価してもらうためには、査定の仕組みを知る必要があります。業績を左右する具体的な指標を見ていきましょう。
企業価値評価の基本的な考え方
会社売却の価格判断に使う企業価値の評価方法には、主に以下の3つのアプローチがあります。
- コストアプローチ(純資産から算出)
- インカムアプローチ(将来の収益やキャッシュフローに注目)
- マーケットアプローチ(同業他社や類似取引事例を参考にする)
EBITDAによるキャッシュ創出力の測定
例えば10億円規模の譲渡を目指す場合、営業利益に減価償却費を加えたEBITDAが重要視されます。企業がキャッシュを生み出す力を測る指標であり、これに類似企業の倍率を掛けて企業価値が算出されるためです。財務指標を高めることが、高値での売却を成功させるための王道と言えます。
管理物件数とストック収益の有無
評価額を大きく左右するのが、賃貸管理などのストック収益です。単発の売買仲介による手数料収入だけでなく、毎月安定して入る管理手数料は、財務基盤の安定性を示す強力な指標となります。管理物件数が多いほど、譲受企業からの評価は跳ね上がる傾向にあります。
専任媒介物件の数による収益安定性
他社を通さず自社のみが売却活動を行える専任媒介物件の数は、確実な収益源として高く評価されます。両手仲介を狙いやすく、事業の安定性を裏付ける重要なKPIとして機能するためです。見込み客の多さを示すバロメーターであり、のれん代を押し上げる決定的な要素です。
スタッフの定着率と専門知識の価値
この業界は人と人との信頼関係が基盤となるビジネスです。そのため、営業スタッフの定着率や、地域に密着した専門知識の深さは非常に高く評価されます。優秀な人材がそのまま残ってくれるかどうかが、譲渡価格の算定に大きく影響を及ぼすポイントとなります。
エリア需要と店舗立地の影響
店舗の立地条件や、そのエリアにおける需要も重要な評価基準です。競合が少なく、特定の地域に特化して強力なシェアを持つ会社は、商圏拡大を狙う中堅や大手企業から熱視線を浴びます。立地の優位性だけで、オファーの数と提示価格が飛躍的に上がる事例が存在します。
不動産仲介会社を高く売却するためのポイント
現場の小さな失敗を防ぎ、納得のいく条件で会社を譲渡するためのノウハウをお伝えします。事前の入念な準備が成否を分けます。
決算書の透明化と財務の見直し
まずは、財務内容をクリアにすることが不可欠です。役員への個人的な貸付金や不要な不良在庫、簿外債務の有無を洗い出し、決算書をクリアな状態に整えましょう。不明瞭な財務状況は、譲受企業に不信感を与え、評価額を大きく下げる致命的な原因になりかねません。
簿外債務や未払残業代の徹底調査
未払残業代などの潜在的な債務は、譲渡のプロセスにおいて大きな障害となります。株式譲渡の場合はこれら全てを引き継ぐ形になるため、デューデリジェンスの段階で厳しいチェックを受けます。リスクとなる要素を事前に洗い出し、適正に処理しておくことが企業価値を守る防波堤です。
営業スタッフの引継ぎ体制の構築
売却後も事業が円滑に回るよう、営業スタッフの引き継ぎ体制を整えることが求められます。特定のオーナー社長の個人的な人脈に依存した属人的な営業スタイルから、組織的な体制へと移行させておくことが理想です。安定した組織力があることで、持続的な価値が証明されます。
シナジー効果を期待できる相手先探し
自社の強みを活かせる譲受企業を見つけることが、相場以上での売却を実現するコツです。同業者であれば、エリア特化型のネットワークや独自の集客手法を正しく評価してくれます。事業拡大を目指す大手にとって、時間を買えるというメリットは非常に魅力的です。
のれん代の算定と減損リスクへの対策
事業を買い取る際、純資産を上回る対価はのれん代として計上されます。地域での信頼や顧客基盤といった見えない価値が評価されるためです。しかし、買い手が上場企業の場合、会計ルールにより買収後に業績が低迷すれば減損損失を計上するリスクもあるため、譲受企業は将来性を極めて厳格に見極めようとします。
不動産テックの導入実績がDX志向の買い手から評価
SRE CLOUDのようなAI査定ツールやPropoCloudのような営業支援システムを既に導入し、業務データを蓄積している不動産仲介会社は、GA technologies系やSRE不動産系を含むDX志向の買主候補から特に強い関心を集める可能性があります。導入の有無そのものよりも、蓄積データを定量的に提示できる体制が整っているかどうかが、評価倍率の差として表れるということです。
経営統合を見据えた準備
異なる企業風土が混ざり合うことで、従業員同士の軋轢が生じやすくなります。これを防ぐためには、PMIと呼ばれる経営統合の作業を綿密に計画しておく必要があります。労働条件のすり合わせなどを丁寧に行うことで、優秀な人材の流出を防ぎ、事業を軌道に乗せることが可能になります。
専門家の活用と情報漏洩の防止
売却を検討している事実がスタッフや取引先に漏れると、人材流出や顧客離れを引き起こす危険があります。秘密保持を徹底するためには、みつきコンサルティングのような専門の仲介業者を介して手続を進めるのが確実です。客観的な企業価値の算定や相手探しも、信頼できるプロに任せるべきです。
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成約時のみ
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不動産売買仲介・賃貸仲介会社の売却に関するFAQ
支援現場で譲渡オーナーからよく寄せられる素朴な疑問にお答えします。実務的な視点でポイントを絞って解説します。
やや小規模でも全く問題なく売却可能です。現場では、約10名のスタッフと地域密着のネットワークを持つ会社が、大手から高く評価された事例があります。特定のエリアに強い地盤があれば、十分な需要が見込めます。
事業譲渡の場合、引き継ぐ資産と負債を契約で個別に指定するため、原則として不要な簿外債務を遮断できます。ただし、従業員の未払い残業代などはトラブルの種になりやすいため、契約条項と実態の確認次第で扱いが変わります。
株式譲渡であれば、そのまま雇用が継続されます。事業譲渡の場合は一旦退職し、譲受企業と再雇用契約を結ぶ形になります。従業員にとって不利益な条件変更が生じないよう、交渉を行います。
不動産仲介に精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング
不動産仲介会社の売却は、管理物件のストック収益や専任媒介の保有数が評価を分ける鍵となります。エリア特化の強みを活かし、財務を整えて臨むことで、希望条件での譲渡が実現します。オーナーが長年築き上げた地域との信頼関係が正当に評価され、安心して引退できるよう、全力で伴走いたします。
みつきコンサルティングは、中小企業M&Aの実績経験が豊富にある税理士法人グループのM&A仲介会社です。事業に特化した専門的な知見を活かし、不動産仲介会社の売却を検討するオーナー様をサポートします。不動産仲介業界の会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。
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著者

- 事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
-
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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