仕掛型M&Aは、戦略に基づき潜在層へ能動的にアプローチする買収手法です。競合不在の交渉や理想的なシナジー追求など、多くのメリットがあります。本記事では、その特徴から具体的な進め方、失敗しないための注意点まで、M&A仲介歴10年以上の買収実務のプロが詳しく解説します。
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仕掛型M&Aとは
多くの買い手経営者様が抱える「良い売り案件が回ってこない」という悩みに対する強力な回答が、仕掛型M&Aです。 従来の待ちの姿勢ではなく、自社の成長戦略に基づいてターゲットを選定し、こちらからアプローチをかけるこの手法は、近年急速に注目を集めています。 ここでは、その定義と仕組みについて、基本的な部分を解説します。
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潜在層へ能動的にアプローチする手法
仕掛型M&Aとは、買収側が明確な成長戦略に基づき、まだ売り手としてのニーズが顕在化していない企業(M&A潜在層)に対して、能動的にアプローチを行う手法のことです。 一般的に「プロアクティブ・サーチ」とも呼ばれます。
通常、M&A市場に出回っている案件は、すでに「売りたい」という意思が(ある程度は)固まっている企業です。 しかし、仕掛型M&Aでは、そうした市場には出ていないものの、自社とのシナジー(相乗効果)が確実に見込める相手に対し、「一緒に成長しませんか」と提案を持ちかけます。 潜在的な可能性を掘り起こす、まさに「攻めのM&A」といえるでしょう。
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「紹介型M&A」との決定的な違い
一般的なM&A仲介会社から案件情報の持ち込みを待つ「紹介型M&A」と、自ら動く「仕掛型M&A」には、プロセスや目的に大きな違いがあります。 それぞれの特徴を下表にまとめました。
| 特徴 | 紹介型M&A | 仕掛型M&A |
|---|---|---|
| スタンス | 受動的 | 能動的 |
| 対象企業 | 売却意思が顕在化している企業 | 売却意思が潜在的な企業(市場に出ていない) |
| アプローチ | 仲介会社からの紹介を待つ | 自社でリストアップし、仲介会社が代行で打診 |
| 競争環境 | 高い(入札などで競合他社と比較される) | 低い(競合が不在の状態で交渉しやすい) |
| 検討期間 | 比較的短い(売却期限がある場合も) | 長くなる傾向(関係構築から始めるため) |
| シナジー | 案件ありきで検討するため限定的になりがち | 戦略ありきで探すため最大化しやすい |
紹介型は手続がスムーズですが、人気案件は競争が激化しやすく、価格が高騰する傾向にあります。 一方、仕掛型は手間と時間はかかりますが、他社との競合を避け、じっくりと信頼関係を構築できる点が大きな強みです。
さまざまな呼称について
この手法は、支援する専門機関によって呼び方が違いますが、指している内容はほぼ同じです。情報収集の際は、いずれも「待つのではなく、候補先にこちらから働きかけて相手を探すやり方」だと理解しておくと混乱しません。
プロアクティブ・サーチ
みつきコンサルティングなどで使われる呼称です。「先回りして」「計画的に」候補先を洗い出し、売主候補に積極的に打診していく意味合いが強い表現です。
プロアクティブサーチ
日本M&Aセンターで使われる呼称です。表記は違いますが意味は同じで、「能動的に探索し、こちらから接触して機会をつくる」ことを指します。
アクティブ・サーチ
一般に「アクティブ」は行動量やスピード感に焦点が当たる言い方です。待ちの姿勢ではなく、譲受企業候補を広く探して打診し、面談や条件調整につなげていく進め方を意味します。
仕掛型M&A
上記の呼び方をまとめた一般的な表現です。受け身で相手からの問い合わせを待つのではなく、こちらから働きかけて売主候補を見つけにいく考え方を指します。
仕掛型M&Aに取り組む3つの大きなメリット
なぜ今、多くの企業が手間のかかる仕掛型M&Aに注目しているのでしょうか。 それは、従来の紹介型では得られない、経営戦略上の大きなリターンが期待できるからです。 ここでは、特に重要な3つのメリットについて、買収支援現場での実感を交えて解説します。
競合を回避し有利な条件で交渉しやすい
M&A市場に出回った優良案件は、数十社からの買い手が殺到する「オークション状態」になることが珍しくありません。 その結果、買収価格がつり上がり、本来の企業価値以上の高値掴みをしてしまうリスクがあります。
一方、仕掛型M&Aのアプローチ先は、まだ売却を公にしていない企業です。 ライバルとなる他の買い手が存在しない「独占交渉」に近い状態で話し合いを進めることができます。 価格競争に巻き込まれないため、適正な価格での合意がしやすく、また価格以外の条件(従業員の処遇や経営方針など)についても、落ち着いてすり合わせを行うことが可能です。
「潜在層」への提案で新たな可能性を拓く
「うちは黒字だし、後継者もまだ考えていないから売る気はないよ」 そう考えている経営者(潜在層)に対し、M&Aを「経営課題の解決策」として提案できるのも大きな魅力です。
多くのオーナー経営者は、日々の業務に追われ、自社の将来的な課題(業界縮小、人材不足、システム投資の負担など)を漠然としか捉えていないことがあります。 そこに、「大手グループ入りによる採用力の強化」や「資本提携による事業拡大」といった具体的なメリットを提示することで、相手の意識が変わることがあります。 事業承継だけでなく、成長戦略型M&Aの掘り起こしができる点は、仕掛型ならではの強みです。
自社ニーズに直結した高精度のマッチングが可能
最大のメリットは、自社のM&A戦略に完全に合致した相手と交渉できる点です。 紹介型の場合、「地域は良いが技術が違う」「規模は良いが商圏が被る」といった、帯に短し襷に長しという状況が頻発します。
仕掛型では、以下のような条件でピンポイントにターゲットを選定します。
- 特定の技術特許を持っている企業
- 進出したいエリアでシェアNo.1の企業
- 自社製品の販路拡大に直結する顧客リストを持つ企業
「何となく良さそうな会社」ではなく、「この会社でなければならない」という明確な理由を持って交渉に臨めるため、成約後の統合効果(シナジー)も極めて高くなります。
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成功へのロードマップ|仕掛型M&Aの具体的な進め方
では、実際にどのようにして未知の企業へアプローチしていくのでしょうか。相手は非上場企業とはいえ、オーナー経営者です。闇雲に電話をかけても、門前払いされるのがオチです。 ここでは、戦略策定から交渉開始までの標準的なプロセスを4つのステップで解説します。
ステップ1:M&A戦略の策定とターゲット像の明確化
すべては「なぜM&Aをするのか」という目的の明確化から始まります。 「売上を増やしたい」といった曖昧な目的ではなく、以下のように具体化します。
- 目的の定義:新規エリアへの進出か、商材のラインナップ拡充か、技術者の確保か。
- ターゲット要件:業種、地域、売上規模、従業員数、保有資格、取引先の特徴など。
支援現場では、この段階で自社の強み(買収によって相手に提供できるメリット)も棚卸しします。 相手にとってメリットのない提案は、単なる「乗っ取り」と捉えられかねないからです。
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ステップ2:ロングリスト・ショートリストの作成
定めた要件に基づき、候補となる企業のリストを作成します。
- ロングリスト作成: データベースや業界名鑑などを使い、要件に当てはまる企業を数十社〜数百社程度リストアップします。
- ショートリスト化: ロングリストの中から、さらに詳細な調査(Webサイト確認、信用調査データの確認など)を行い、優先順位をつけて数社〜十数社に絞り込みます。
この際、単に業績が良いだけでなく、「経営者の年齢」や「後継者の有無」なども推測できる範囲で考慮に入れると、確度が上がります。
ステップ3:アプローチと初期的な打診
絞り込んだターゲットに対し、実際にコンタクトを取ります。 この段階では、買い手企業の社名を伏せて(匿名で)仲介会社やアドバイザーが接触するのが一般的です。
- 手紙(DM)によるアプローチ:経営者宛に親展で、提携の意図や相手企業の魅力を記した手紙を送ります。
- 電話による打診:受付ではなく、経営者層に繋がるルートを慎重に探ります。
ここで重要なのは、「会社を売りませんか」ではなく、「御社の事業に魅力を感じており、資本提携を含めた協業の可能性をお話しできませんか」という、敬意を持った姿勢です。 いきなり「買収」という言葉を使うと、強い警戒心を持たれるため注意が必要です。
ステップ4:トップ面談と条件交渉
アプローチの結果、相手先経営者が「話だけでも聞いてみようか」となれば、秘密保持契約(NDA)を締結し、トップ面談へと進みます。 ここで初めて、買い手企業の社名や詳細なビジョンを明かします。
トップ面談では、条件交渉よりも「ビジョンの共有」と「信頼関係の構築」が最優先です。 「なぜあなたの会社なのか」「一緒になることでどんな未来が描けるか」を熱意を持って伝え、相手の売却意思(あるいは提携意思)を徐々に醸成していきます。 意思が固まれば、具体的な条件交渉、基本合意へと進んでいきます。
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事前に知っておくべき注意点とデメリット
理想的な相手と出会える可能性がある仕掛型M&Aですが、万能ではありません。 実施にあたっては、特有のハードルやリスクが存在します。 安易に始めると、時間とコストだけを浪費することになりかねないため、以下の点に十分注意してください。
難易度が高く高度な専門性が求められる
売る気がない相手をその気にさせる交渉は、通常のM&Aよりも遥かに難易度が高いです。 相手の警戒心を解き、経営課題を聞き出し、M&Aという解決策を腹落ちさせるには、高度なコミュニケーション能力とビジネスへの深い理解が必要です。
また、リスト作成における情報収集力や、相手企業の株主構成の把握など、調査能力も問われます。 自社の担当者だけで進めるのは限界があるため、仕掛け型買収に実績のある仲介会社のサポートが不可欠と言えます。
時間的コストがかかり長期戦になりやすい
紹介型M&Aであれば、早ければ3ヶ月〜半年で成約することもあります。 しかし、仕掛型の場合、相手に関心を持ってもらう「種まき」の期間が必要です。 アプローチから面談まで数ヶ月、そこから検討に数ヶ月かかることも珍しくありません。
「今期中に売上を上げたい」といった短期的な成果を求める場合には不向きです。 数年スパンの中長期的な経営戦略の一環として取り組む姿勢が求められます。
相手の心情に配慮した慎重なアプローチが必須
最も注意すべきは、アプローチの方法です。 突然「会社を売ってくれ」と言われれば、多くの経営者は「失礼だ」「馬鹿にするな」と憤慨します。 一度心証を害すれば、その企業との提携の道は永遠に閉ざされ、業界や地域の評判すら落としかねません。
- 上から目線の提案書(「買収してやる」というニュアンス)
- どこにでも送っているような定型的な文面
- 相手の事業内容を理解していない的外れなシナジー提案
これらは厳禁です。 「譲り受ける」「提携をお願いする」という謙虚な姿勢と、個別の企業に対する深いリスペクトを示すことが、成功への唯一の鍵です。実績・経験が豊富なM&A仲介会社なら、適切な提携提案書(買収提案書)を用意してくれるでしょう。
みつきコンサルティングがM&A仲介した事例
みつきコンサルティングは、これまで500件を超えるM&Aを支援してまいりました。公認会計士・税理士ら専門家チームが、完全成功報酬制で支援した成約事例から、本記事テーマ「仕掛型M&A」に関連するものをご紹介します。
仕掛型M&Aで後継者不在の葬儀会館が大手グループ入りを実現

譲渡企業:北海道札幌市の葬儀会館(3拠点運営)
譲受企業:東証上場の葬儀大手(売上約215億円)
スキーム:事業譲渡
北海道で葬儀会館3拠点を運営する後継者不在の中小企業と、全国展開を目指す東証上場葬儀大手の北海道進出戦略が合致。当社が担った仕掛型M&Aで大手自ら候補6社を選定して当社がアプローチし、1社との成約に成功。「社員を幸せにできる」という言葉が象徴する理念の一致と雇用継続への姿勢が、後継者不在の売主オーナーを動かした決め手。約8ヶ月の長期交渉でも当社担当者が月2回東京から札幌へ赴く伴走訪問を継続。売主・買主双方が納得した事業承継の成功例。
上記は当社のM&A仲介実績のほんの一部です。様々な業界・規模の成約事例を下記のページでご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
仕掛型M&Aに関するFAQ
仕掛型M&Aを検討されている経営者様からよくいただく質問にお答えします。 現場の実情を踏まえた回答ですので、ぜひ参考にしてください。
現場では、最初のアプローチで面談に進める確率は1%〜10%程度と言われています。 大半は「興味がない」「今は考えていない」と断られますが、これは想定内です。 重要なのは、断られたとしても失礼のない対応をしておき、「将来、状況が変わった時の選択肢」として記憶してもらうことです。数年後に先方から連絡が来て進展するケースもあります。
お勧めしません。 見ず知らずの同業者から直接「提携の話」が来ると、相手は「情報収集か?」「乗っ取りか?」と警戒します。 また、もし断られた場合、その後の業界内での付き合いに気まずさが残るリスクもあります。 第三者である専門家を介すことで、ワンクッション置き、ビジネスライクかつスムーズに関係構築を図るのが一般的です。仲介会社は、最初は貴社名を伏せて先方に打診します。
契約形態によりますが、通常の成功報酬に加え、初期費用(リスト作成費やアプローチ着手金)がかかるケースがあります。 これは、成約に至らなくても調査やアプローチに相応の工数がかかるためです。 事前にアドバイザーと「着手金の有無」や「月額報酬」について確認し、費用対効果を見積もっておくことが重要です。
まとめ|仕掛型M&Aとは
仕掛型M&Aは、戦略的にターゲットを選定し、潜在層へ能動的にアプローチする手法です。競争回避や理想的なシナジー実現という大きなメリットがある一方、相手の警戒心を解き、関係を構築するための高度な専門性と時間が必要です。成功の鍵は、謙虚な姿勢と入念な事前準備にあります。
当社、みつきコンサルティングは、税理士法人グループのため、仕掛型M&Aの打診先から無用に警戒されない特性があります。中小企業M&Aの豊富な支援実績に基づき、貴社の戦略に合致したターゲット選定から慎重なアプローチまで、ワンストップでサポートいたします。攻めのM&Aをご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
-
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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