医療情報システム会社の売却について、業界の最新動向や相場からM&Aの成功事例まで網羅的に解説します。政府の医療DX推進やクラウド化の波を受け、セキュリティ対策費用の増大に悩む譲渡オーナーが増加中です。本記事では専門家の視点から譲渡価格を最大化するポイントをお伝えし、事業の将来に関する不安を解消します。
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医療情報システム会社を取り巻くM&Aの背景
電子カルテや医事会計システム、画像システムなどを開発する医療情報システム業界は、現在大きな転換期を迎えています。支援現場では、急速な環境変化に伴い単独での生き残りに限界を感じる声が少なくありません。
政府が推進する医療DXとクラウド化の波
2030年に向けた厚生労働省主導の「医療DX推進」が業界構造を大きく変容させています。標準型電子カルテの普及や医療情報の共有化への対応は、各社にとって喫緊の経営課題と言えるでしょう。
レセコン一体型電子カルテのクラウド移行が中小ベンダーを直撃
これまで主流であったオンプレミス型のシステムからクラウド型への移行は膨大な開発投資を伴うため、レセコン一体型電子カルテを主力製品とする中小規模のベンダーには重い負担がのしかかります。その結果、資金力と開発リソースを持つIT大手や医療機器メーカーの傘下に入る選択をする譲渡オーナーが増加する傾向にあります。
セキュリティ対策と制度改正への対応コスト増大
医療機関のデータを狙ったサイバー攻撃の激化により、これまで以上に強固なセキュリティ対策が求められています。定期的な診療報酬改定に対するシステムのアップデート費用も、年々増大を続けている状況です。
診療予約システム等の維持コストが中小事業者の収益を圧迫
特定の独自機能のみを持つ事業者や、小規模な開発体制で運営している会社にとっては、診療予約システムをはじめとする機能維持のための固定費負担が収益を圧迫する大きな要因となります。これらの経営課題を抜本的に解決し、事業の継続性を確保するためにM&Aを活用する事例が後を絶ちません。
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医療情報システム会社の売却相場と株価算定のポイント
M&Aにおいて、対象会社が市場でどれだけの価値を見出されるのかを客観的に把握することは交渉の第一歩です。業種特有の評価軸を理解し、適切な株価算定を行う必要があります。
一般的な譲渡価格の計算式と企業価値評価
中小企業のM&Aでは「時価純資産+営業利益の2〜5年分(営業権)」で算出する年買法がよく用いられます。保有する資産価値と将来の収益力を組み合わせた直感的な指標です。将来のキャッシュフローをベースにするDCF法もありますが、実務では年買法が基準になることが多い傾向にあります。
医療情報システム会社が高額譲渡を実現するポイント
対象会社の評価額は、直近の財務上の利益だけでなく、事業基盤の強固さや将来性によって大きく変動します。特に以下の指標が譲受企業から高く評価される傾向にあります。
ストック収益の割合
月額のシステム利用料や保守費用など、継続的に発生するストック収益の割合は企業価値を大きく左右します。レセプトソフトなどの導入施設数が多く、解約率が低い強固な顧客基盤は、譲受企業にとって極めて確実な収益源となるためです。
AI活用能力と独自技術の優位性
画像診断を補助するAI技術や、使い勝手の良い独自のインターフェース技術を持つ会社は、相場以上のプレミアムが付くケースが存在します。他社システムとの柔軟な連携実績も、譲受企業のプラットフォーム戦略に合致すれば高い評価額に結びつくでしょう。
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医療情報システム分野の主な譲渡スキーム
対象会社を次世代へ引き継ぐ際の手法は、主に株式の譲渡と事業のみの切り出しに大別されます。自社の財務状況や目的に合わせて適切なスキームを選択することが重要です。
株式譲渡と事業譲渡の比較
会社全体を引き継ぐ株式譲渡か、一部の事業のみを切り出す事業譲渡かによって、税務や法務の手続は大きく異なります。支援現場では、手続の簡便さや税務面でのアドバンテージから株式の譲渡を選ぶケースが大半を占めます。以下の表に両者の特徴を整理しました。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 会社全体(資産や負債のすべて) | 特定の事業(電子カルテ事業など) |
| 手続の負担 | 比較的簡便に完了する | 契約や許認可の引き直しが必要になる |
| 従業員の処遇 | 原則としてそのまま雇用を引き継ぐ | 個別の再雇用契約を結び直す必要がある |
| 負債の引継ぎ | 譲受企業へそのまま承継される | 原則として譲受企業へは承継されない |
会社売却を進める基本的な手続
医療情報システム業の会社売却は、下表の手順に沿って情報漏洩を厳格に防ぎながら、慎重に交渉を進めていきます。
| ステップ | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 専門家への初期相談と秘密保持契約の締結 | M&Aアドバイザーなどの専門家に初期相談を行い、秘密保持契約を締結します。医療情報システム業では、レセコン一体型電子カルテや診療予約システムの保守契約件数・継続率を事前に整理しておくことが重要です。 |
| 2 | 企業概要書などの詳細資料の作成と譲受企業の選定 | 自社の事業内容や財務状況をまとめた企業概要書などの詳細資料を作成し、条件に合う譲受候補企業を選定します。医療情報システム業では、導入クリニック・病院のリスト、システムの開発・保守体制、個人情報保護法・医療情報ガイドラインへの対応状況も資料に盛り込みます。 |
| 3 | トップ面談を通じた経営理念や将来ビジョンのすり合わせ | 経営者同士が直接顔を合わせ、経営理念や将来のビジョンを共有し、お互いの相性を確認します。医療情報システム業では、既存顧客である医療機関への継続サポート方針や、エンジニア・サポートスタッフの処遇についてもこの段階で確認しておくことが重要です。 |
| 4 | 基本合意書の締結とデューデリジェンスの実施 | 大枠の条件で合意に達した段階で基本合意書を締結し、譲受企業に独占交渉権を付与します。その後、財務・法務・ビジネスなどあらゆる角度からリスクを精査する買収監査が実施されます。医療情報システム業では、患者データの取り扱い体制や情報セキュリティ対策の実態が重点的に調査されます。 |
| 5 | 最終譲渡契約の締結および決済・引渡し(クロージング) | 買収監査の結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、株式譲渡契約書または事業譲渡契約書を締結します。決済と同時に経営権を移転し、クロージングを完了させます。医療情報システム業では、保守契約の承継通知を取引先医療機関へ適切なタイミングで行うことが、顧客離れ防止の観点から重要です。 |
最近の医療情報システム関連の売却事例
業界内では、電子カルテや画像システムなどを対象とした活発な業界再編が進んでいます。実際の事例から、譲受企業がどのような目的で対象会社を評価しているのかを読み解くことが可能です。
大手による電子カルテ・医事会計事業の譲受事例
近年、業界を牽引する大手企業が特定のシステム事業を戦略的に引き受けるケースが目立ちます。2022年4月にキヤノンメディカルシステムズが診療所向け電子カルテおよび医事会計システム事業をエムスリーソリューションズに譲渡した事例は、業界内で大きな注目を集めました。コア事業への選択と集中を進める意図がうかがえます。
2023年3月には、PHCホールディングスが電子カルテ・レセプト関連事業を富士フイルムヘルスケアシステムズへ譲渡しています。大手企業同士の事業再編も活発化している証左と言えます。
IT・医療機器メーカーによる子会社化の事例
優れた技術力を持つ中小のシステムベンダーを自社のグループに迎え入れる動きも加速しています。2026年1月、日本光電工業は医療情報システムの開発・販売を手掛けるドゥウェルを連結子会社化しました。高度なセキュリティ要件を満たし、最新のAI活用能力を持つ企業による小規模企業の譲受は、今後さらに増加する見込みです。
2024年4月には、メディカル・データ・ビジョンが健診システムなどのソフトウエア開発企業を子会社化し、2025年2月にはJMDCがノアメディカルシステムをカケハシに売却するなど、ヘルスケアデータ事業の強化に向けた戦略的な動きが連続して起きています。過去を遡れば、2014年にシーメンスが電子カルテ事業を米企業に約1300億円で売却した大型事例もあり、システム分野における合従連衡は世界的な潮流です。
完全成功報酬制
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
医療情報システムの会社売却に関するFAQ
医療システムという特殊な領域でのM&Aにおいて、経営者が抱きやすい疑問をまとめました。
保有する独自技術やエンジニアの質によっては十分に可能です。現場ではまず医療機関への導入実績とストック収益の定着率を確認します。安定した保守収益の基盤があれば、譲受企業から高く評価される傾向があります。
最終契約の締結後や、クロージング直後に行うのが一般的です。早期に伝えると不安からエンジニアが流出するリスクがあるため、情報管理は徹底してください。譲渡オーナーの極めて慎重な言動が求められます。
譲受後の引継ぎ期間を長めに設定することで解決できる場合があります。開発業務の標準化や属人化の解消を事前に進めておくと、譲受企業との交渉がスムーズに進みやすいでしょう。
医療情報システムに精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング
医療情報システム会社の売却は、専門的な技術評価や複雑な業界動向への深い理解が不可欠です。当社は譲渡オーナーが抱える後継者不足や資金繰りの不安に寄り添い、最適な承継戦略をご提案します。
当社は税理士法人グループのM&A仲介会社として、財務の専門知識を有しています。医療情報システムのM&Aの実績経験が豊富であり、業界事情に即した支援が可能です。医療情報システムの会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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