通信工事業界は5Gや無電柱化による需要増の一方で、深刻な技術者不足に直面しています。本記事では、経営者の高齢化や採用難を解決する手段としてのM&Aについて、最新の業界動向、売却相場の算出法、有資格者を評価するポイントを解説。廃業ではなく、従業員の雇用と技術を守る「第三者承継」のメリットと具体的な事例を紐解きます。
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通信工事(通建)のM&Aが活発な背景と現状
通信工事業界におけるM&Aは、時代ごとの波はありながらも、相応に活発です。 その背景にあるのは、業界特有の構造的な課題と、底堅いインフラ需要のミスマッチです。多くの経営者が「仕事はあるのに人がいない」というジレンマを抱えており、単独での存続に限界を感じ始めています。
現場の感覚として、M&Aはもはや「身売り」や「敗北」ではなく、会社と従業員を守るための「戦略的提携」へと認識が変化してきました。ここでは、M&Aを後押しする市場環境と課題について解説します。

2018年の増加は、楽天モバイルの第4キャリア参入表明(2017年末)を受けた自前ネットワーク構築需要が主因です。その後2021年にかけては5G商用化(2020年)に伴う基地局工事とDX対応M&Aがピークを形成しました。2022〜2023年は、主要キャリアの5G面整備一巡と楽天モバイルの設備投資削減により業界全体の受注見通しが悪化し、10件まで落ち込みました。2024〜2025年の持ち直しは、深刻な技術者不足を背景にした人材確保・事業承継型のIN-IN再編が中心と考えられます。
約3.4兆円規模の市場と変化する需要構造
国土交通省の統計によると、通信工事の完成工事高は約3.4兆円規模で推移しており、市場自体は底堅い動きを見せています。 特に追い風となっているのが、以下のトレンドです。
- 5G・高度無線環境の整備:一巡した感はありますが、依然として基地局関連の投資は続いています。
- 無電柱化の推進:防災や景観対策として「無電柱化推進法」に基づき、地中化工事(埋設管路など)の需要が拡大しています。
- GIGAスクール構想・DX投資:教育現場や企業のネットワーク環境整備により、LAN配線などの屋内通信工事が恒常的に発生しています。
しかし、これらの恩恵を受けられるのは、十分な施工体制を持つ企業に限られます。元請けとなる大手キャリア(NTTグループ等)の設備投資抑制やコストダウン要求もあり、下請け構造の末端にいる中小企業は、利益率の確保に苦心しているのが実情です。
深刻化する技術者不足と「2024年問題」
通信工事業界でM&Aが行われている最大の要因は、「人」の問題です。 電気通信工事施工管理技士や電気工事士といった有資格者の高齢化が進む一方で、若手の入職者は減少の一途をたどっています。
さらに、建設業にも適用された時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)が追い打ちをかけています。これまでのような長時間労働に依存した施工体制は維持できなくなり、コンプライアンスを遵守しながら利益を出すには、一定の事業規模とバックオフィスの効率化が不可欠となりました。 「採用費をかけても人が来ない」「資格者が退職したら現場が回らない」という切実な悩みが、M&Aによる大手傘下入りや同業統合を決断させています。
業界再編を主導する大手3グループの動き
業界構造の変化も見逃せません。 通信建設業界は、コムシスホールディングス、エクシオグループ、ミライト・ワンの大手3グループへの集約が進んでいます。これらの大手は、通信キャリアからの受注減少リスクを分散させるため、非通信領域(土木、電気、環境インフラ)や、地方の有力な工事会社の買収を積極的に進めています。 この再編の波は、地域の中小工事会社にも波及しており、安定した元請け基盤を求めてグループ入りを選択する事例が増えています。
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通信建設がM&Aを行うメリット
中小の通信工事会社にとって、M&Aは単なる「事業のバトンタッチ」以上の意味を持ちます。 特にオーナー経営者にとっては、長年の重圧からの解放と、従業員の未来を切り拓く手段となります。
譲渡オーナー(売り手)が得られる3つの果実
通信工事会社の譲渡オーナーにとって、下表の3つがM&Aを選択する主なメリットです。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 後継者問題の抜本的解決 | 親族に後継者がいない場合や、子供に業界を継がせたくないと考えるオーナーでも、M&Aによって意欲ある第三者企業に経営を託し、会社を存続させることができます。 |
| 従業員の雇用と技術の維持 | 廃業を選択すれば熟練の職人は職を失い、長年培った技術も失われます。大手や地域の有力企業のグループに入ることで、安定した給与体系や福利厚生、教育制度を従業員に提供できる可能性が高まります。 |
| 個人保証の解除と創業者利益 | 株式譲渡によるM&Aが成立すれば、社長個人が負っていた金融機関への連帯保証から解放されます。同時に、退職金や株式売却益という形で引退後の生活資金(創業者利益)を手元に残すことができます。 |
譲受企業(買い手)にとっての買収メリット
譲受企業にとって、通信工事会社の譲受は「時間を買う」行為そのものです。下表に主なメリットをまとめました。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 即戦力人材の確保 | 採用難の時代において、有資格者や現場経験者をまとめて確保できることは最大の魅力です。育成コストをかけずに事業成長のスピードを高めることができます。 |
| 許認可と実績の獲得 | 「建設業許可(電気通信工事業)」や、特定キャリア・官公庁との取引口座(入札参加資格)を即座に承継することができます。 |
| エリア・商圏の拡大 | 未進出の地域に拠点を持つ会社を譲受することで、ゼロから支店を立ち上げるコストと時間を削減できます。 |
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通建の売却相場と株価算定のポイント
「ウチの会社はいくらで売れるのか?」 これは、相談の現場で最も多く寄せられる質問の一つです。通信工事業界には独自の評価軸があり、一般的な計算式だけでは測れない「現場の価値」が存在します。
M&Aにおける一般的な価格算出の目安
中小企業のM&Aでは、以下の簡易計算式(年買法)が目安としてよく使われます。
株式価値 = 時価純資産 + (実質営業利益 × 2年〜5年)
- 時価純資産:会社の資産(現金、売掛金、土地建物、車両など)から負債を引いた正味の価値。
- 実質営業利益:決算書の営業利益に、節税のための役員報酬や私的な経費を足し戻した「本来の稼ぐ力」。
- 年数(のれん代):その会社の将来性やブランド力。通常は2〜3年ですが、通信工事のような有資格者が多い業種では評価が高くなる傾向があります。
通建が譲渡価格を最大化するポイント
通信工事業界において、上記の計算式以上に評価額を左右する具体的な指標があります。以下の4点を整理しておくことで、より高い評価を得られる可能性があります。
1. 有資格者の「質」と「年齢構成」
単に人数だけでなく、年齢構成が重要です。「1級電気通信工事施工管理技士」や「第1種電気工事士」などの資格保有者が、定年間際の方ばかりではなく、30代・40代の若手・中堅層に含まれているかどうかが、企業の将来価値(のれん代)を大きく左右します。
2. 元請け比率と商流の深さ
二次下請け、三次下請けよりも、キャリアや官公庁、大手サブコンからの一次下請け(直請け)比率が高い会社ほど高評価です。商流が浅いほど利益率が高く、経営が安定していると判断されます。
3. 特殊技術と機材の保有状況
光ファイバーの接続技術、基地局建設の特殊ノウハウ、あるいは高所作業車や穴掘建柱車などの特殊車両を自社保有しているかどうかも評価ポイントです。これらを適切にメンテナンスし、稼働率が高い状態であれば、資産価値としてプラス査定されます。
4. ストック収益の有無
単発の工事だけでなく、通信設備の保守・メンテナンス契約など、継続的な売上が見込める「ストック収益」を持っている会社は、経営の安定性が高く評価され、譲渡価格が上がりやすくなります。
通信工事会社の売却手法と流れ
M&Aにはいくつかの手法がありますが、通信工事会社の中小M&Aにおいて主流なのは「株式譲渡」です。
株式譲渡が選ばれる理由
株式譲渡とは、オーナーが保有する会社の株式を買い手企業に譲渡し、経営権(オーナー権)を移転させる手法です。 この手法が選ばれる最大の理由は、「許認可や契約関係の承継がスムーズだから」です。
通信工事業では、建設業許可や経営事項審査(経審)の評点、キャリアとの取引基本契約などが事業の生命線です。事業譲渡(会社の一部だけを売る手法)の場合、これらの許認可や契約を一度リセットし、取り直さなければならないリスクがあります。一方、株式譲渡であれば、会社という「箱」ごと引き継ぐため、許認可や従業員の雇用契約をそのまま継続しやすく、取引先への影響も最小限に抑えられます。
成約までの一般的なプロセス
- アドバイザーとの契約・準備:自社の財務状況や強みを整理し、匿名の企業概要書(ノンネームシート)を作成します。
- マッチング・トップ面談:買い手候補を選定し、興味を持った企業と秘密保持契約を結んだ上で、経営者同士が面談を行います。ここでの相性確認が非常に重要です。
- 基本合意・デューデリジェンス(買収監査):大枠の条件で合意した後、買い手側が会計・法務・税務などの詳細な調査を行います。未払い残業代や簿外債務がないか厳しくチェックされます。
- 最終契約・クロージング:最終的な譲渡価格や条件を確定し、契約締結と決済(株式の引き渡し)を行います。
通信工事会社の売却事例
実際にどのようなM&Aが行われているのでしょうか。ここでは、業界再編を象徴する事例と、中小企業支援の現場でよく見られるケースを紹介します。
大手グループによるエリア・技術の補完事例
大手資本に譲渡した事例です。
事例1:ミライト・ワン × 光陽ホールディングス
大手通信建設会社であるミライト・ワンは、2024年に光陽ホールディングスを買収しました。これにより、通信だけでなく電力や土木などエンジニアリング分野を強化し、「スマートゼネコン」への転換を加速させています。
事例2:エクシオグループ × 北日本通信
エクシオグループは、東北地方に基盤を持つ北日本通信を子会社化しました。これにより、都市インフラ事業の東北エリアでの基盤強化を図っています。
事例3:NDS × CaN-TEC
コムシス傘下のNDSは、エクシオグループの孫会社であったCaN-TECを買収しました。同業グループ間での再編事例であり、エリアや事業領域の最適化が進んでいることを示しています。
地方の中小企業における事業承継の典型例
現場の支援事例を基にしたモデルケースです(社名は伏せます)。
地方都市で30年以上続く通信工事会社(年商3億円、社長65歳)。 後継者不在の中、従業員20名の雇用を守るためM&Aを決断。買い手は、隣県で事業拡大を目指す中堅の電気工事会社でした。 「電気」と「通信」のクロスセルによるシナジー効果が評価され、相場よりも高い評価額で成約。社長は顧問として2年間残り、取引先への引き継ぎを丁寧に実施した後、円満に引退しました。
完全成功報酬制
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
通信建設の会社売却に関するFAQ
初めてM&Aを検討するオーナー様からよくいただく質問をまとめました。
技術者や取引基盤があれば可能です。通信工事業界は人手不足が深刻なため、財務状況が悪くても、有資格者が在籍しているだけで価値がつきます。まずはご相談ください。高く評価される可能性があります。
株式譲渡であれば、原則として会社が保有する許認可はそのまま引き継がれます。ただし、専任技術者や経営業務管理責任者が退職すると要件を満たさなくなる可能性があるため、キーマンの継続雇用が重要な交渉条件になります。
全国対応で可能です。大手や中堅企業は、未進出エリアへの拠点展開(エリア拡大)を狙って地方企業の買収を積極的に行っています。特に地元で長く続く信頼ある会社は人気があります。
一般的に、買い手企業は従業員の離職を最も恐れます。そのため、現状の給与水準を維持、あるいは買い手企業(大手)の賃金規定に合わせて待遇が良くなるケースが大半です。契約時に「雇用の維持」を条件に盛り込むことも可能です。
通建に精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング
通信工事業界は、5GやDXによる需要拡大と、技術者不足による供給制約という複雑な環境にあります。この業界でのM&Aを成功させるには、単なる財務の知識だけでなく、「建設業許可の要件」や「現場の有資格者の価値」を正しく評価できる専門性が不可欠です。オーナー様が長年守り抜いてきた暖簾と従業員を、最適な相手に引き継ぐために、私たちは全力を尽くします。
当社は税理士法人グループのM&A仲介会社として、財務・税務の裏付けのある確かな提案を行います。通建業界での豊富な成約実績を持ち、建設業特有の論点(資格者要件など)にも精通しています。「完全成功報酬型」で、着手金は一切いただきません。まずは無料相談で、貴社の可能性をお確かめください。
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著者

- 事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
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みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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