クロージング条件(前提条件:CP)とは、M&Aの最終契約後に決済を実行するための必須要件です。表明保証の真実性や許認可の維持などがあり、未達なら契約解除のリスクもあります。本記事では条件の種類や確認事項、実務上の注意点を専門家が解説します
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クロージング条件(前提条件:CP)とは?
最終契約書にハンコを押したからといって、すぐにM&Aが完了するわけではありません。M&Aにおけるクロージング条件(前提条件:CP=Conditions Precedent)とは、最終契約締結後に取引(株式譲渡や事業譲渡)を完了させるために必要な必須要件のことです。
この条件は、買い手が安心して代金を支払うための「安全装置」のような役割を果たします。これらが全て満たされない限り、法的な権利移転や決済は実行されません。
最終契約から決済までの「最後の関門」
最終契約の締結日(調印する日)と、クロージング日(代金決済・株券等の引き渡し日)は同日とすることもありますが、それらの間に1ヶ月から数ヶ月程度の期間を空けることがあります。この期間は、契約時点での約束事が本当に守られているか、または実行に必要な手続が完了したかを確認するために設けられます。
具体的には、買い手は売り手に対して「この条件をクリアしたら代金を払います」という約束をします。逆に言えば、条件が一つでもクリアできなければ、買い手は支払いを拒否する権利を持ちます。逆も然りです。当社の支援現場でも、この期間に予期せぬトラブルが起きないよう、細心の注意を払って進捗管理を行います。
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条件未達時のリスク(延期・契約解除)
もしクロージング日までに条件が満たされない場合、どうなるのでしょうか。最も軽いケースではクロージング日の「延期」で済みますが、問題が深刻な場合は「契約解除」(破談)に至ります。
例えば、絶対に必要だと言われていた許認可が下りなかったり、銀行からの融資承諾が得られなかったりした場合です。また、契約解除まではいかなくとも、買収価格の減額交渉(価格調整)に持ち込まれるケースも少なくありません。売り手であるオーナー社長にとっては、最後まで気が抜けない重要なフェーズなのです。
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クロージング条件の具体的な規定例
最終契約書(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書など)における、クロージング条件(前提条件)の記載イメージを見ていきましょう。ここでは、中小企業M&Aガイドラインで示されている「株式譲渡契約サンプル」うちクロージング条件部分を抜粋し、汎用的かつ簡略化したものを紹介します。
第〇条(買主のクロージング前提条件)
買主は、クロージング日において売主に関する以下の各号が充足されていることを前提条件として、第〇条(クロージング)に定める買主の義務を履行する。なお、クロージング日において以下の条件が一部でも未充足の場合、買主は当該義務の履行を拒絶できるが、任意の裁量により条件の一部又は全部を放棄することができる。ただし、かかる放棄によっても、各条件が充足したとみなされるものではなく、また、売主の表明保証違反その他本契約に定める売主の責任は減免されない。
① 売主の表明及び保証(第〇条)が、クロージング日において真実かつ正確であること。ただし、軽微な誤りは除く。
② 売主の義務(第〇条)が全て履行されていること。
この条項の意味するところは、売主の条件充足を前提に、買主は代金を支払う義務を負う、というものです。反対に、買主の条件充足を前提に、売主は株券等を引き渡す義務を負う、という条項も規定されます。
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具体的なクロージング条件の項目一覧
実務上どのような前提条件が設定されるのでしょうか。案件ごとに異なりますが、多くのM&A契約で共通して定められる主要な項目があります。下表は、代表的なクロージング条件の項目を整理したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表明保証の真実性 | 契約時からクロージング時まで、財務・法務等の内容に虚偽がないこと。 |
| 機関決定の承認 | 株主総会や取締役会で、本件M&Aが正式に承認されていること。 |
| 許認可の取得 | 事業継続に必要な許認可の維持や、独禁法の届出が完了していること。 |
| 第三者の同意 | 金融機関や重要取引先から、契約継続の同意(COC)を得ていること。 |
| キーマンの確保 | 重要な役職員が退職せず、継続雇用されること(キーマン条項)。 |
| MAC条項 | 災害や不祥事など、事業価値を毀損する重大な悪影響がないこと。 |
譲渡オーナーにおけるチェックポイント
各前提条件(CP)項目のチェックポイントを説明します。
表明保証の真実性が保たれていること
最も基本的かつ重要なのが「表明保証」です。これは、主には売り手が買い手に対し、自社の財務内容や法務状況に嘘偽りがないことを保証するものです。
ポイントは、契約締結時だけでなく「クロージング日時点」でも真実であることが求められる点です。契約後に新たな偶発債務が発覚したり、未払残業代の問題が表面化したりすれば、条件未達とみなされます。当社では、契約後も油断せず、顧問税理士等と連携して財務状態の変動を監視するよう助言しています。
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取締役会・株主総会の承認(法的手続)
M&Aは会社としての重大な決定事項であるため、法律に則った機関決定が必要です。特に中小企業の多くは「譲渡制限株式」を発行しているため、株式を譲渡するには必ず株主総会(または取締役会)の承認決議を経なければなりません。
実務では、クロージング当日に「株主総会議事録」や「株式譲渡承認通知書」の原本を買い手に交付することで、この条件を満たしたことを証明します。親族内株主が分散している場合は、事前にハンコを集めておく段取りが不可欠です。
許認可の取得・届出と独禁法対応
事業によっては、経営者が変わることで許認可の取り直しや届出が必要になる場合があります。例えば、建設業や人材派遣業、旅館業などは注意が必要です。
また、一定規模以上の企業同士のM&Aでは、独占禁止法に基づき公正取引委員会への事前届出が義務付けられています。この場合、届出から30日間の待機期間(禁止期間)が明けるまではクロージングを実行できません。これらの行政手続が完了していることも、必須の前提条件となります。
重要取引先・金融機関との合意(COC条項)
取引先との基本契約書に「株主が変わる場合は事前の通知や承諾が必要」という条項(COC条項:Change of Control)が含まれていることがあります。これを無視してM&Aを進めると、最悪の場合、取引停止になりかねません。
そのため、重要取引先や借入のある金融機関から「M&A後も取引を継続します」という同意書面を取得することが条件になります。現場では、情報漏洩を防ぐため、どのタイミングで誰が取引先に挨拶に行くか、非常に神経を使う場面です。
主要な従業員の継続雇用(キーマン条項)
「社長は辞めても、工場長と営業部長には残ってほしい」。これが買い手の本音であることは多いものです。そのため、特定の重要人物(キーマン)が退職せず、M&A後も在籍することを条件とする「キーマン条項」が設定されることがあります。
本人の意思に関わるため、強制はできません。しかし、これが条件になっている以上、売り手オーナーはキーマンに対して誠実に事情を説明し、納得してもらう必要があります。
MAC条項(重大な悪影響)の不在
MAC条項(Material Adverse Change)とは、契約からクロージングまでの間に、天災、大規模な不祥事、主要顧客の倒産など、企業価値を根底から揺るがすような「重大な悪影響」が発生していないことを条件とするものです。
「何をもって重大とするか」は解釈が分かれやすく、トラブルの火種になりがちです。実務上は、「売上の〇%以上の減少」など、可能な限り数値基準を設けておくことが、無用な紛争を避ける知恵と言えます。
クロージング条件を満たすまでの実務フロー
最終契約書に調印してから、実際に代金が振り込まれる日まで、経営者は何をすべきなのでしょうか。この期間は「待機期間」ではなく、クロージングに向けて汗をかく「準備期間」です。
一般的には以下の流れで進みます。
- 最終契約締結直後:取引先への説明、行政への届出開始
- 中間期間:必要書類の収集(印鑑証明、議事録作成など)
- プレクロージング:条件充足状況の最終確認
- クロージング当日:決済と株券等引き渡し
プレクロージングでの最終確認
クロージング当日の数日前から前日にかけて、「プレクロージング」と呼ばれる最終確認の場を設けることが一般的です。ここでは、クロージング当日に持ち込む書類に不備がないか、前提条件はすべてクリアできているかを、チェックリストを使って詳細に確認します。
当日は銀行手続などで時間が限られるため、このプレクロージングで実質的な確認作業を終えておくのです。「当日に書類が足りない」といった初歩的なミスで延期になる事態だけは、絶対に避けなければなりません。
クロージング当日の実行手順
全ての条件の充足が確認された後、いよいよ「クロージング」が実行されます。買い手は指定口座へ買収代金を振り込み、売り手は着金を確認します。
それと同時に、株券(発行している場合)、株主名簿、会社の実印や通帳、重要書類の鍵などを買い手に引き渡します。これをもって経営権の移転が完了し、M&Aは成立となります。晴れてオーナー社長が「元社長」となり、肩の荷を下ろす瞬間です。
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クロージング条件に関するFAQ
クロージング条件について、譲渡オーナー様からよくいただく質問にお答えします。
必ずしも即破談とは限りません。まずは買い手と協議を行います。問題が軽微であれば、条件の一部放棄(ウェイバー)や、買収価格の減額調整などで合意し、実行されるケースも現場ではよくあります。
基本的には最終契約締結後、クロージングまでの間に行います。契約前に動くと情報漏洩のリスクがあり、万が一契約が流れた際に信用問題になるためです。ただし、関係性によっては事前に内諾を得ることもあります。
一般的にはクロージング当日、または直後に行います。不安による動揺や退職を防ぐためです。ただし、幹部社員には実務上の協力が必要なため、秘密保持を条件に早めに伝えることがあります。
まとめ|クロージング条件
M&Aのクロージング条件(前提条件:CP)とは、最終契約後に決済と経営権移転を実行するための必須要件です。主な条件には、表明保証の真実性、株主総会の承認、許認可の維持、重要取引先の同意などがあります。これらが未充足の場合、決済の延期や破談のリスクがあるため、最終契約後も気を抜かずに準備を進める必要があります。
M&Aは契約書の調印がゴールではありません。無事にクロージングを迎え、対価を手にするまでが勝負です。みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として、財務・税務に強い公認会計士や税理士が多数在籍しています。クロージング条件の整理から実行支援まで、中小企業M&Aの豊富な実績でサポートいたします。M&Aをご検討のオーナー様は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者

- 事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
-
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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