映像・広告会社のM&A|業界の特性・課題・外部環境と成約事例

本コラムでは、映像・広告業界の業界情報や外部環境、M&A動向などを解説します。また、実際に行われた映像・広告業界のM&A事例も併せて解説します。 

映像・広告の業界情報 

はじめて業界環境を見ていきましょう。

業界定義 

映像・広告業界を細分化すると、以下のような業態に分けられます。 

  • 広告代理店 
  • 制作会社 
  • メディア 

広告代理店は、広告の企画、制作などを行います。制作会社は、直接的に手を動かして映像や広告を制作する会社です。メディアは制作会社が制作して広告代理店が持ってきたものをメディアで放送して消費者に届けます。このように、映像・広告製作業界は複数の企業が役割分担して成り立っています。 

次に、映像・広告業界の職種としては以下が挙げられます。 

  • 制作、技術職 
  • 企画職 
  • 営業職 
  • 媒体職 

制作、技術職は、デザイン、セールス、コピーライティング、撮影、編集などを行います。具体的な職種としては、デザイナー、ライター、カメラマン、証明スタッフ、音響スタッフ、編集スタッフなどが挙げられます。 

企画職は、いわゆるマーケティングを行う職種です。クライアントのニーズ、競合の分析などを行い、企画を出します。営業職は顧客に対して営業を行います。交渉力やプレゼン能力が必要です。 

媒体職はプランナーと呼ばれる職種です。クライアントや各担当者とコミュニケーションを取りながら企画全体がうまく進むように調整を行います。 

以上のような業種、職種が映像・広告製作業界に該当します。 

業界特性   

映像・広告製作業界は、広告代理店が業界を牛耳っているという特徴があります。具体的な企業としては、電通、博報堂、ADKなどが挙げられます。これらの企業が広告主と制作業者などの間に入り、取り仕切っています。 

上記は総合広告代理店ですが、特定の分野に特化した専門広告代理店もあります。具体的にはサイバーエージェントが挙げられます。サイバーエージェントはインターネット広告に特化しています。 

業界課題 

映像・広告製作業界の課題は、少子高齢化によって需要が減少していることや、媒体が変化していることが挙げられます。少子高齢化によって広告を見る人が減っていて、また見ても商品やサービスが売れにくいという状況です。 

またテレビからネットに消費者ニーズが移行しています。2019年の時点で、テレビ広告の費用をネット広告の費用が上回りました。広告の需要はテレビからネットに移行しているということです。(「媒体別広告費の推移」参照) 

YouTubeなどの動画配信サービスや、SNSなどに表示される広告は見られることが多く商品やサービスが売れますが、業界内での競争も激しい分野です。

映像・広告会社の外部環境

市場規模

映像・広告製作業界は業界自体が多様化していて、また別業種や個人が参入してきています。そのためどこまでが映像・広告製作業界化の線引きが難しく、結果的に市場規模の明確な統計データがありません。しかし、動画広告市場規模の動向は参考になるでしょう。以下にご紹介します。 

動画広告市場規模・予測推移<広告商品別>(2020年~2025年)

動画広告市場規模は右肩上がりです。次に、他の媒体も含めた広告市場の変化です。 

媒体別広告費の推移

インターネット広告が右肩上がりに伸びていて、他の媒体の広告が緩やかな右肩下がりということがわかります。概ねご想像通りかと思いますが、おそらくイメージよりは他の媒体もなんとか持ちこたえているという印象ではないでしょうか。 

テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどは明確な右肩下がりに広告費が下がっていそうですが、少なくともコロナ前までは持ちこたえています。コロナ禍の影響は受けていますが、それでも地に落ちたというわけではありません。 とはいえ、今後インターネット以外の媒体は緩やかに広告費が削られていくでしょう。媒体としても緩やかに需要が減少してくと考えられます。 

競合業態 

映像・広告製作業界の競合は、Webマーケティング企業やコンサル企業です。映像や広告を製作するハードルが下がったため、これらの業界が参入してくるケースがあります。自社で製作する場合もあれば、外注して製作する場合もあります。 

他には、企業ではなく個人が参入してくるケースも増えています。従来なら広告主や映像主は企業に依頼していましたが、今はオンラインで個人に依頼ができる状況です。その結果、映像製作や広告製作を個人で仕事にしている人がより増えました。 

映像・広告業界の中小企業M&A事例

映像・広告業界でのM&Aは、非公表のものを含め、それなりに行われている印象です。以下は、公表されている成約事例です。 

ニューラルポケットがフォーカスチャネルを子会社化 

ニューラルポケットは、AI解析技術を活かしたカメラソフトウェア、デジタルサイネージなどを開発している企業です。フォーカスチャネルは、富裕層向けデジタルサイネージを作っている広告会社です。 

ニューラルポケットは、フォーカスチャネルの営業力や機器設置ノウハウを獲得し、事業拡大を図りました。M&Aが実施されたのは2021年11月1日です。 

ローカルフォリオがリードプラスを吸収合併 

ローカルフォリオはAIを活用したWeb広告運用サービスやコンサルティングを行う企業です。リードプラスはデジタルマーケティングを行う企業です。マーケティングの企画、効果測定、改善まで幅広くサービス提供しています。 

ローカルフォリオはリードプラスを吸収合併することで、事業拡大と同時にシナジー効果も発揮できます。運用サービスやコンサルティングの幅が広がりました。M&Aが実施されたのは2021年9月1日です。 

キョウエイアドインターナショナルが国際ピーアールを子会社化 

キョウエイアドインターナショナルは、電車やバス広告の広告代理店事業を手掛ける企業です。制作自体は外注化しています。国際ピーアールも同様に、電車やバスの広告代理店事業を行っています。 

キョウエイアンドインターナショナルと国際ピーアールの違いは、キョウエイアンドインターナショナルが事業を全国展開しているのに対し、国際ピーアールは中部、東海、北陸エリアを中心に事業を展開しています。 

キョウエイアンドインターナショナルは国際ピーアールを子会社化することで、事業拡大、シナジー効果を狙いました。ノウハウとしては類似していますが、違いもあるので事業の多角化にも役立ちます。M&Aが実施されたのは2021年6月28日です。 

フォースリーとクリエイターニンジャが資本業務提携 

フォースリーはアフィリエイト広告を中心に扱っている広告代理店です。Webメディア事業やWebサイト制作も行っています。クリエイターニンジャは、YouTuberやインフルエンサーに向けてマーケティングプラットフォームを提供しています。 

フォースリーとクリエイターニンジャは業務提携することでシナジー効果を狙っています。類似する業界で異なる武器を持つ企業間での資本業務提携なので、事業戦略がより強力になります。M&Aが実施されたのは2021年1月5日です。 

映像・広告業界のM&Aのまとめ 

映像・広告製作業界は市場の変化に対応しやすい業界です。媒体が移り変わっても生き残ることが可能だからです。オンライン化の加速によってテレビメディア業界などが苦しんでいるのに対し、映像・広告製作業界はオンライン化の波に乗っています。 

2019年の段階で、インターネット上の広告費用がテレビの広告費用を上回ったことからも映像・広告製作業界の将来性がわかります。M&Aは今後も増えると予測されますが、ネガティブな理由というよりはシナジー効果や事業拡大を狙った、売り手側買い手側ともにポジティブな理由によるM&Aが増加するでしょう。 

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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