事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置した公的な相談窓口です。後継者不在に悩む中小企業経営者のために、親族内承継からM&A(第三者承継)まで幅広く無料でアドバイスを行っています。本記事では、センターの具体的な支援内容や活用するメリット、相談の流れ、民間M&A会社との違いを専門家が分かりやすく解説します。
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事業承継・引継ぎ支援センターの概要と役割
中小企業の経営者にとって、リタイア後の「会社の行く末」は最大の悩み事の一つです。その悩みを解消するために国が設置したのが、事業承継・引継ぎ支援センターです。
この機関は、経済産業省(中小企業庁)の委託事業として全国47都道府県に設置されており、商工会議所などが運営を担っています。公的な窓口であるため、営利を目的とせず、中立・公平な立場で相談に乗ってもらえるのが最大の特徴です。
2021年の統合により支援体制が強化
かつては「事業引継ぎ支援センター(主にM&A担当)」と「事業承継ネットワーク(主に親族内承継担当)」に分かれていましたが、2021年4月にこれらが統合されました。
これにより、後継者が決まっている場合も、決まっていない場合も、一つの窓口でワンストップのサポートが受けられるようになりました。経営者の高齢化が進む日本において、国の「本気度」がうかがえる体制変更といえます。
深刻な「2025年問題」への対策
中小企業庁の試算によると、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるとされています。
この経済的損失を防ぐため、センターは「廃業」という選択肢を「承継」へと変えるための防波堤としての役割を期待されています。相談実績は全国で12万件を超え、成約件数も着実に積み上がっています。
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センターが提供する主な支援メニュー
事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者不在の課題に対して3つの支援策を提供しています。下表の通り、M&A支援、親族内承継支援、後継者人材バンクの観点から包括的なサポートを実施します。
| 支援内容 | 詳細 |
|---|---|
| 1. 第三者承継支援(M&A) | 後継者が不在の場合に、他の企業(譲受企業)へ事業をバトンタッチするための支援です。センターでは、単に相手を探すだけでなく、M&Aの進め方のアドバイスや、企業の価値評価、さらには民間のM&A仲介会社などの紹介も行っています。 |
| 2. 親族内・従業員承継支援 | 子どもや親族、あるいは信頼できる役員・社員に会社を引き継ぐ場合の支援です。「事業承継計画」の策定を無料でお手伝いし、税理士や中小企業診断士などの専門家と連携して、円滑な代替わりをサポートします。特に従業員承継は、近年非常に増えているケースであり、センターでも注力されています。 |
| 3. 後継者人材バンク | 「会社を引き継ぎたい親族も従業員もいないが、外部の意欲ある起業家に託したい」というニーズに応える仕組みです。創業を目指す個人(起業家)と、後継者不在の小規模事業者を引き合わせる、いわば「経営者のマッチング」です。これにより、ゼロからの起業に伴うリスクを抑えつつ、伝統や技術を守ることが可能になります。 |
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センターを活用する大きなメリット
公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターを利用することには、民間の仲介会社とは異なる独自のメリットがあります。
完全無料で相談できる安心感
センターへの相談はすべて無料です。
民間のアドバイザーに相談すると、タイムチャージ(時間報酬)や着手金が発生することもありますが、センターは国費で運営されているため、費用を気にせず納得いくまで話し合えるのが魅力です。
中立的な立場でのセカンドオピニオン
すでに民間のM&A仲介会社と契約している場合でも、センターを「セカンドオピニオン」として活用できます。
「提示された金額は妥当か?」「契約内容に不利な点はないか?」といった疑問に対し、利害関係のない立場から客観的なアドバイスをもらうことができます。これはトラブルを未然に防ぐためにも非常に有効な手段です。
小規模な案件でも丁寧に対応
民間の仲介会社は、手数料の都合上、売上高が数億円以上の案件を優先する傾向があります。
一方、センターが支援した成約案件の約7割は小規模事業者です。売上高が1億円以下の企業であっても、地域に必要な事業であれば親身になって相談に乗ってくれます。
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M&A(第三者承継)の手法と基礎知識
センターで相談する際、最低限知っておきたいのがM&Aの手法です。中小企業のM&Aでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つが用いられます。
| 特徴 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 内容 | 譲渡オーナーが持つ株式を譲受企業に売却する | 会社が持つ事業、資産、権利を売却する |
| 手続 | 非常にシンプル。経営権が変わるだけ | 資産ごとに個別契約が必要。手間がかかる |
| 契約の継承 | 取引先や従業員との契約はそのまま引き継がれる | 原則として個別に結び直す必要がある |
| 税金 | 譲渡オーナーに所得税等が約20%かかる | 譲渡会社に法人税がかかる |
中小企業の事業承継では、手続が簡単で事業の連続性を保ちやすい「株式譲渡」が王道とされています。ただし、特定の不採算部門だけを切り離したい場合などは、事業譲渡が選ばれることもあります。
後継者不在の経営者が抱える「個人保証」の不安
M&Aを活用することで、長年経営者の頭を悩ませてきた「個人保証」や「担保」の問題も解決できる可能性があります。
譲受企業が十分な信用力や資金力を持っていれば、金融機関の承諾を得て、会社借入金の経営者保証を買い手に肩代わりしてもらうことができます。これにより、経営者は「肩の荷」を下ろして安心して引退後の生活に入ることができます。
これは、実務上も譲渡オーナーにとって非常に大きな「心理的なメリット」となります。
知っておきたいM&A用語
相談前に以下の言葉を覚えておくと、話がスムーズに進みます。
- ノンネーム: 社名を伏せた匿名ベースの概要書のこと。
- 秘密保持契約(NDA): 情報を第三者に漏らさないという約束。
- デューデリジェンス(DD): 譲受企業が行う、対象会社の詳細な調査(買収監査)。
- のれん(営業権): 会社のブランド力やノウハウなど、目に見えない価値の上乗せ分。
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相談から成約までの具体的な流れ
センターを利用する場合の一般的なステップは以下の通りです。
- 相談予約:電話やメールフォームから面談の予約をします。
- 初回面談:専門のアドバイザーが現状をヒアリングし、課題を整理します。
- 方針決定:親族内か、従業員か、あるいは第三者(M&A)かを選択します。
- マッチング開始:M&Aを希望する場合、センターのデータベースや民間機関を通じて相手を探します。
- 交渉・デューデリジェンス:関心を持った企業と条件を交渉し、詳細な調査を受けます。
- 最終契約・クロージング:契約を締結し、代金の支払いと経営権の引き渡しを行います。
成約までには、一般的に「半年から1年程度」の期間が必要となります。
初回の相談時に必要な書類
具体的な相談を進めるためには、以下の資料を準備しておくと非常にスムーズです。
- 直近3期分の決算書(勘定科目明細付き)
- 会社案内やパンフレット
- (あれば)事業計画書や組織図
まずは何も持たずに「全般的な話を聞きたい」というスタンスでも相談可能です。
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民間M&A仲介会社との比較と賢い使い分け
センターと民間の仲介会社、どちらが良いというわけではなく、それぞれの強みを理解して使い分けることが重要です。
比較表:センター vs 民間仲介会社
| 項目 | 事業承継・引継ぎ支援センター | 民間M&A仲介会社 |
|---|---|---|
| 相談料 | 無料 | 会社により無料〜有料 |
| 成功報酬 | 無料(※実務を外部専門家に依頼する場合は有料) | 譲渡対価の5%程度(最低手数料500〜2000万円) |
| 主な対象 | 小規模事業者が中心 | 中小~中堅企業中心 |
| マッチング範囲 | 公的ネットワーク、後継者人材バンク | 独自の顧客網、積極的なアプローチ |
| 立場 | 中立・公正 | 案件成立を優先する傾向 |
実務的な使い分けのアドバイス
小規模な会社や、まずはじっくり相談したいという方は、まず事業承継・引継ぎ支援センターを訪ねるのが定石です。
一方で、高い技術力や成長性があり、より多くの買い手候補から最高条件を引き出したい場合や、スピード感を重視する場合は、実績豊富な民間仲介会社が有力な選択肢になります。センターでは、信頼できる「優良なM&A支援会社」の紹介も行っているため、まずはセンターに相談し、自分に合った会社を推薦してもらうのが最もリスクの低い進め方といえます。
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全国の事業承継・引継ぎ支援センターの一覧
センターは全国47都道府県に設置されています。主な拠点の連絡先は以下の通りです。
- 北海道: 011-222-3111
- 宮城県: 022-722-3884
- 東京都: 03-3283-7555
- 愛知県: 052-228-7117
- 大阪府: 06-6944-6257
- 広島県: 082-555-9993
- 福岡県: 092-441-6922
その他の県についても、各地域の商工会議所内などに設置されています。自社の所在地にあるセンターへ問い合わせるのが基本ですが、遠隔地への譲渡を希望する場合なども柔軟に対応してくれます。
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専門家が明かす!センター活用を成功させる3つのポイント
10年以上のキャリアを持つM&Aコンサルタントの視点から、センターを120%活用するためのアドバイスをお伝えします。
1. 「まだ先の話」のうちに一度顔を出しておく
事業承継は、病気の治療と同じで「早期発見・早期対策」が肝心です。
「体調が悪くなってから」「赤字に転落してから」では、選べる選択肢が極端に少なくなります。まだ気力・体力があるうちに相談しておくことで、より有利な条件で会社を託す準備が整います。
2. 従業員や取引先への「想い」を言語化する
センターのアドバイザーは、数字だけでなく経営者の「想い」を大切にします。
「従業員の雇用を絶対に守ってほしい」「このブランド名は残したい」といった譲れない条件を明確に伝えておくことで、マッチングの精度が劇的に上がります。
3. 民間のセカンドオピニオンとして徹底活用する
前述した通り、民間のアドバイザーから強引な契約を迫られたり、不信感を感じたりした際は、すぐにセンターへ駆け込んでください。
公的な立場から現状を整理してもらうだけで、冷静な判断ができるようになります。この「駆け込み寺」としての機能を活用しない手はありません。
FAQ|事業承継・引継ぎ支援センターに関するよくある質問
事業承継・引継ぎ支援センターに関するQ&Aをまとめました。
はい、相談可能です。センターは国の委託事業であり、特定の組織への加入状況に関わらず、すべての中小企業・小規模事業者が利用できます。
はい。後継者不在の個人事業主の方も、後継者人材バンクなどを通じて事業を引き継ぐための支援を受けることができます。
センターによりますが、東京都などの一部のセンターでは親族内承継の一次相談を商工会議所の別部署(ビジネスサポートデスク等)で対応している場合があります。ただし、最終的な「事業承継計画」の策定支援などはセンターのスキームで行われるのが一般的です。
徹底されています。M&Aにおいて情報は命です。センターには守秘義務を負った専門家が在籍しており、相談内容が外部に漏れることはありませんのでご安心ください。
事業承継・引継ぎ支援センターを賢く利用して明るいリタイアを
事業承継は、経営者にとって人生最後で最大の仕事です。一人で悩み、廃業という道を選んでしまう前に、まずは事業承継・引継ぎ支援センターという公的なリソースを頼ってみてください。無料でありながら、そこには長年蓄積された成約のノウハウと、全国に広がるネットワークがあります。一歩踏み出す勇気が、あなたの会社と従業員、そして地域社会の未来を守ることにつながります。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。事業承継・引継ぎ支援センターの活用や、より専門的なM&Aスキーム、セカンドオピニオンをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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