株式譲渡益が出たら確定申告が必要!申告書の書き方を平易に解説

株式譲渡で利益を得た場合は、確定申告が必要です。この記事では、株式譲渡で利益が出た際の確定申告の流れや方法、書き方などについて解説します。また、インターネット(e-Tax)による手続き方法も解説するため、参考にしてください。

株式譲渡で利益を得たときは確定申告が必要

株式譲渡により利益を得た場合は、確定申告が必要です。ここでは、株式譲渡益に課される税金について解説します。

株式譲渡益に課される税金とは?

個人株主がM&Aで株式譲渡した場合は、株式譲渡所得に対して分離課税が課されます。課税されるのは、所得税・復興特別所得税・住民税です。事業譲渡では、譲渡対象会社の譲渡益に対して、約30%が法人税として課されるため、節税効果が高いのは株式譲渡であるといえます。

分離課税とは?

分離課税とは、給与所得などの総合課税とは異なり、特定の所得に対して所得税の計算をする方法です。株式譲渡の場合の税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、個人住民税5%を合わせた20.315%ですが、実際の納税額は、株式譲渡所得と税率で計算されます。株式譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。

株式譲渡所得=収入金額(譲渡価格)-必要経費(取得費、譲渡費用など)

税金の計算例

株式譲渡では、取引で得た利益に対して税金が課せられます。株式譲渡益に対する税金の計算方法と具体例は、以下のとおりです。

前提:譲渡所得5,000万円、必要経費1,000万円

税金=(5,000万円-1,000万円)×20.315%=812万6,000円

株式譲渡の確定申告書の提出期限

株式譲渡の確定申告は、譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に、行わなければなりません。無申告の場合は「無申告加算税」が発生し、本来の納税額に加えて、税額に応じた罰金を支払う必要があります。期日を過ぎて申告する期限後申告の場合は、期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて、延滞税が発生します。

株式譲渡益の確定申告をするときの流れ

株式譲渡益について、確定申告をする際の流れは、以下のとおりです。

  1. 年間の利益・損失を計算する
  2. 確定申告に必要な書類を用意する
  3. 確定申告書を作成し提出する

株式譲渡で利益を得たときの確定申告の方法

確定申告は、申請書などを手書きで申請する方法のほかに、国税庁のホームページからインターネットで申請する方法があります。

確定申告を手書きで申請する方法

確定申告用紙を入手後、手書きで必要項目を記載し、税務署に提出します。確定申告用紙は、税務署もしくは申告相談会場で入手可能です。また、税務署から取り寄せも可能です。国税庁ホームページの「確定申告書等の様式・手引き等」からも印刷ができます。

2023年提出分(2022年分)から確定申告用紙が「令和〇年分の所得税及び復興特別所得税の申告書」に変更されているため、注意しましょう。確定申告書を作成したあとは、在住地域の税務署に提出します。提出方法は、窓口への持参もしくは郵送ですが、時間外収受箱も用意されています。

確定申告をインターネットで申請する方法

インターネット環境がある人は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用することで、税務署や会場に行かずに書類の作成と申請ができます。インターネットにより電子的に手続きができる「e-Tax」を活用して、作成した申告・申請のデータを送信することで、確定申告が可能です。

【手書き】株式譲渡益に係る確定申告書の書き方

ここでは、株式譲渡で得た利益の確定申告書を手書きする方法について解説します。作成する必要のある書類は、以下のとおりです。

  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
  • 申告書第一表
  • 申告書第二表
  • 申告書第三表

「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の書き方

「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」には、1面と2面があります。2面で計算された数値を1面に記載するため、2面から先に記載し、数値を1面に書き写す流れとなります。記載する項目は、以下のとおりです。

  • 住所
  • 氏名
  • 譲渡日
  • 譲渡した株式数
  • 株式名
  • 株式譲渡により得た収入金額
  • 株式の取得費
  • 委託手数料
  • 所得金額(収入金額-取得価額-手数料)など

「申告書第一表」の書き方

申告年度と「確定」と記述したあと、住所・マイナンバー・氏名を記載します。申告の種類の項目では「分離」を選択します。その他の項目は、以下のとおりです。

  • 収入金額等
  • 所得金額等
  • 所得から差し引かれる金額
  • 税金の計算
  • その他(配偶者所得、青色申告特別控除額など)
  • 延納の届出

記載する際は、記載漏れや誤記入がないよう、源泉徴収票から書き写すのがおすすめです。

「申告書第二表」の書き方

申告年度と「確定」と記述したあと、住所・氏名を記載します。その他の項目は、以下のとおりです。

  • 所得の内訳
  • 社会保険料控除等に関する欄
  • 配偶者や親族に関する事項

「申告書第三表(分離課税用)」の書き方

申告書第三表は、分離課税の対象となる所得がある場合に使用します。株式譲渡益は分離課税の対象となり、申告書第三表が必要です。記載する項目は、以下のとおりです。

  • 収入金額
  • 所得金額
  • 税金の計算

先に準備した「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の情報を、転記しましょう。

【インターネット】株式譲渡益に係る確定申告書作成(6つのステップ)

確定申告書をインターネット上で作成する際の流れを、6つのステップに分けて解説します。

1.「作成する申告書等の選択」画面へ進む

国税庁ホームページにアクセスします。トップページからの流れは、以下のとおりです。

  1. 「確定申告書等作成コーナー」へ進む
  2. 「作成開始」を選択
  3. 「作成する申告書等の選択」へ進む

2.「収入金額・所得金額の入力」画面へ進む

「作成する申告書等の選択」画面で、「所得税」を選択し、以下の項目を入力します。

  • 生年月日
  • 申告書の提出方法
  • 質問への回答

すべての項目を入力したら、次のステップに進みます。

3.「金融・証券税制(入力項目の選択)」の入力をする

「金融・証券税制(入力項目の選択)」画面では、配当所得の課税方法(申告分離課税)を選択します。同じページに表示される「株式等の売却・配当・利子等の入力」では「特定口座年間取引報告書の内容を入力する」をクリックします。

4.「特定口座年間取引報告書」の内容を入力する

「金融・証券税制(特定口座)」の画面が表示されたら、「特定口座年間取引報告書」に記載されている内容(収入金額など)を入力します。すべて入力が完了したら「入力終了(次へ)」をクリックし、次のステップに進みます。

5.「収入金額・所得金額の入力」画面へ進む

次に表示される「収入金額・所得金額の入力」画面で、源泉徴収票の内容を入力します。入力する項目は、以下のとおりです。

  • 給与所得
  • 公的年金等
  • 所得控除

6.入力完了

計算結果確認の画面で、入力漏れがないかを確認して「次へ」をクリックします。表示された納税額を確認して「OK」をクリックすると、すべての入力が完了します。e-Taxを利用する場合は、データを送信することで申請が完了します。書面で提出する際は、印刷して郵送などにより提出しましょう。

株式譲渡で確定申告をする必要がある人

株式譲渡で確定申告をする必要がある人は、以下のとおりです。

上場株式

  • 一般口座で株の譲渡をした人
  • 「源泉徴収なし」の特定口座で株の譲渡をした人
  • 「源泉徴収あり」の特定口座で株の譲渡をした人で、他の口座での譲渡損益と相殺する人
  • 「源泉徴収あり」の特定口座で株の譲渡をした人で、譲渡損失を繰越控除する人

未上場株式

  • 株式譲渡所得が20万円以上の場合

株式譲渡で確定申告をする必要がない人

株式譲渡で確定申告をする必要がない人は、以下のとおりです。

  • 株式譲渡で損失が出た人
  • 給与所得、退職所得以外で株式の譲渡による所得しかなく、株式などの譲渡所得が20万円以下の人
  • 証券会社を通じ、特定口座(源泉徴収あり)で株取引し、利益を得た人など

株式譲渡の確定申告で節税するためのポイント

株式譲渡では、しっかりと確定申告を行うことで、節税できる場合があります。ここでは、株式譲渡の確定申告で節税するためのポイントについて、解説します。

譲渡損は譲渡益との相殺により節税できる

譲渡損が出た場合に、他の譲渡所得と合わせて確定申告し、損益通算すると節税につながります。また、源泉徴収ありの特定口座で利益があると課税されますが、申告することで損益通算されて、還付される仕組みもあります。

譲渡損は繰越控除により節税できる

譲渡損が出た場合、上場株式であれば、節税につながるケースがあります。上場株式での譲渡損を確定申告することで、翌年から3年間、繰越控除が可能です。100万円の譲渡損が生じた場合は3年間繰り越されて、譲渡益と相殺して残った利益に対して課税されます。

株式譲渡益に係る確定申告書の書き方のまとめ

株式譲渡で利益を得たら確定申告が必要です。確定申告を行わない、期限を過ぎてしまうといった場合、条件によってはペナルティが課せられるため、注意しましょう。ただし、確定申告の必要があるか否かは、取引に使用した口座や利益を得たかどうかなどによって異なるため、事前に確認しなければなりません。

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著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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