M&Aを実行後に最大の効果を得るためには、統合プロセス(PMIとも呼ばれます)が重要です。M&A後に実施した統合プロセスの成功が、M&Aの成功と失敗を左右するといっても過言ではありません。
本記事では、統合プロセスとその必要性に併せて、統合プロセスの手順や成功のポイントについて解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
M&A後の経営統合とは
統合プロセスとは、M&A後に行う経営と事業を統合する作業を指します。統合プロセスの成功はM&Aの成功ともいわれており、M&A前に想定していた経営効果や目的を実現できるかどうかは、統合プロセスの成功度によって左右されます。M&A後により大きな効果を得るためには、戦略や販売体制を機能させるための統合プロセスが重要です。
統合プロセスの必要性
M&Aは異なる会社同士の機能的統合であり、内部統制や従業員同士の軋轢の防止などの経営統合をうまく進める必要があります。M&A後に業務に支障をきたさないためには、明確なM&A後のビジョン(理想像)・計画・方針を定めることが重要です。
また、M&Aの効果として、シナジー(相乗効果)を想定しているケースが多いといわれています。統合プロセスは、シナジー(相乗効果)を最大限発揮させるためにも必要です。
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経営統合の手順
ここでは、具体的な統合プロセスの手順について解説します。
1. デューデリジェンス(買収監査・企業調査)から統合方針を決定する
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)とは、価格や取引の判断をするために事前に買収先へ行う調査を指します。デューデリジェンス(買収監査・企業調査)によって得た情報を元に、統合を進める順番や手法、速度などの統合方針を両社で決定していきます。
2. ランディング・プラン(統合計画)を策定する
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)で発見された課題を元に経営、制度、業務、事業、意識面について見直す段階です。クロージング(成約)から数か月(3~6ヶ月)以内に行うべき、譲渡側・譲受側の双方における計画をたてます。
3. 100日プラン(具体的なプラン)を策定する
現場レベルを巻き込みながら、100日間(3ヶ月)以内で実施する計画で、課題に対しての解決策を策定するプランです。具体的な短期計画を打ち出すことで、譲渡側の従業員の不安を解消するとともに、譲受側からの期待が高まり、全体の離職リスクの低減効果があります。
4. 各プランを実行し、効果を検証する
ランディング・プランと100日プランを策定後は、統合プロセスに移行して実施します。具体的な問題点や課題、計画とのズレなどを洗い出し、計画の修正や改善が必要です。各分科会を週次で細かく実施することで、新たな課題や計画のズレなどを早急に解決しやすくなります。
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M&A後に経営統合を行うメリット
ここからは、M&Aを実行後に経営統合を行うメリットについて解説します。
効率化やコスト(費用)削減、生産性の向上
シナジー(相乗効果)によって売上や収益増に加えて、多大な付加価値を創出できます。統合プロセスにより統合された事業の統一を計画的に進めることで、効率化やコスト(費用)削減、生産性の向上が見込めます。
統合による人材の流失リスクの軽減
従業員向けに企業理念、経営戦略などを落とし込むプロセスを実施することで、従業員の離職リスクを軽減できます。企業理念や経営戦略をスムーズに浸透させることで、従業員に受け入れる時間を与え、反発などの事態を回避することが必要です。また、ノウハウや人材の流失を防ぐことで、新体制への迅速な移行が図れます。
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M&A後に行うべき経営統合の手法
M&A後に、より大きな効果を得るための統合プロセスの手法について解説します。
【経営統合】経営体制を構築し、配置転換する
経営理念や経営戦略などの両社の理念を把握してもらい、受け入れられる体制作りが重要です。人事制度や会計制度、予算管理などのマネジメントフレームを整備し、定款や就業規則、給与規則といった労務関連の規程などを見直します。
【業務統合】部門の統廃合やインフラ・システムの導入
間接部門を統廃合し、両社の重複する部門をまとめることで業務の効率化を図ります。また、業務システムや決算システムなど、基幹システムをグループで統一することも必要です。部門の統廃合やインフラ・システムの導入に合わせて、人員の再配置を行い、統合後の経営に見合った人事制度を整備します。
【意識統合】企業風土を統一化や社内の垣根の排除
M&Aで期待される効果を最大限発揮するには、経営陣だけでなく全従業員の意識統合が必要です。買収側の企業風土に合わせて方向性を統一させるのが一般的です。意識を合わせられるように企業文化などを共有し、従業員の不安を排除しましょう。
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経営統合を成功させるポイント
M&A後の統合プロセスを成功させるには、統合後の目標やスケジュールの明確化、計画の早期完成が重要なポイントです。統合直後は会社全体が混乱しているため、統合初日までには統合プロセスの計画を完成し、目標やスケジュールについて発信できるように準備しておく必要があります。
従業員の混乱や反発を抑制するためにも、リーダーシップのある人材を確保し、配置することも大切です。配置した人材を通して従業員とのコミュニケーションを徹底し、統合プロセスへの理解を深めておきましょう。
経営統合の成功例
ここでは、M&A後の統合プロセスの成功例について紹介します。
社内の体制を早期に整備
株式会社イノベックスが、株式会社エイゼンコーポレーションをM&Aした事例です。株式会社エイゼンコーポレーションには経営担当者がおらず、譲受側である株式会社イノベックスが体制を整えました。成約から1年超にわたる統合プロセスの実施により、社内の体制が早々に整い、目的としていたビジネスへの本格的な取り組みを実現しています。
業務の合理化とスリム化を実施
株式会社ダートフリークと株式会社デイトナ間でのM&Aの事例です。JASDAQ上場企業と非上場企業との連結決算になるため、M&A仲介会社のサポートを活用して統合プロセスを推進しました。
コンサルタントの提案の元、上場企業レベルへの経理水準の向上や適切な決算対応などを実施し、両社における従来の業務体制や業務品質を見直すことで、業務の合理化とスリム化の実現を目指したのが特徴です。さらに、中長期的な目標として「次世代リーダーの育成」という目標を掲げて、内部統制の中心メンバーを次世代リーダーに設定し、マネジメントレベル向上の推進に取り組んでいます。
経営統合の失敗例
次に、M&A後の統合プロセスの失敗例について紹介します。
経営の方向性が確立せずに失敗
経営の方向性が不明瞭だったため、M&Aの成立後に従業員の不安が募り、離職が増加する結果に至ったケースがあります。また、譲渡側を否定するような経営方針の提示によって、経営者と従業員からの信頼を失うケースもあり、綿密な経営方針の策定や従業員に対する経営の方向性の明確化が重要です。
退職者による業務の引き継ぎ失敗
譲渡側の経営者が退任したことで、業務が滞ってしまうケースも少なくありません。必要な許認可の要件を満たせずに事業の継続が困難になります。従業員や関係者との信頼関係を構築できていなかったことが、主な要因として考えられます。
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M&A後の相談も外部機関の利用がおすすめ
中小企業の場合、人的リソースで統合プロセス専属の担当者を置くことが、難しい場合も多いでしょう。統合前からの戦略を策定し、各部門に必要な統合を計画するために、第三者である支援サービス・外部機関の利用もおすすめです。専門家の豊富な経験によるサポートによって、統合プロセスの円滑な進行が可能になります。
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中小企業のM&Aは、みつきコンサルティングにご相談ください
M&A後の経営統合を円滑に進めるためには、専門の担当者や部門の設立が必要になります。既存の人的リソースで対応が難しいなどの場合は、みつきコンサルティングにご相談ください。
経営全般を見据えた上で、事業そのものを長期的に「守る・伸ばす」ための支援を実行し、事業価値を高めるサポートを行います。後継者育成や人的承継にも対応し、経営コンサルティング経験者による精緻な計画の策定が可能です。また、会計、法務、経営の視点を融合させた総合的なアドバイスにより、税務面でも企業価値の最大化を実現できます。
M&A後の経営統合まとめ
M&Aの成功には、統合プロセスの効果的な遂行が不可欠です。経営統合の明確なビジョン(理想像)・計画・方針を定めていくことが必要になります。
統合プロセスの円滑な進行によって、業務効率化やコスト(費用)削減、生産性の向上が見込めます。また、従業員向けに企業理念などを浸透させるプロセスを実施することで、人材の流失防止にも繋がります。M&A後の経営統合についてのご相談は、みつきコンサルティングにお任せください。両社にとってより良い関係が構築できるようお手伝い致します。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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