個人事業主でもM&Aによる事業売却は可能です。廃業コストを抑え、創業利益を獲得する賢い選択肢として注目されています。本記事では、法人との違い、売却価格の相場(のれん代)、複雑な税金の仕組み、失敗しないための事前準備をM&Aの専門家が徹底解説します。後継者不在の悩みを解消し、手残り資金を最大化するための重要ポイントを押さえましょう。
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個人事業主でもM&Aによる売却は十分に可能です
「うちは個人商店だから、M&Aなんて関係ない」と思っていませんか。実は、近年、個人事業主の売却は増加しています。
後継者不在に悩むオーナーにとって、廃業ではなく第三者への承継を選択することは、従業員の雇用を守り、地域社会へ貢献する最良の手段となり得ます。売上規模が小さくても、将来性や独自の強みがあれば、譲受企業(買い手)は必ず現れます。
法人M&Aと個人事業M&Aの決定的な違い
もっとも大きな違いは、その手法です。法人の場合は「株式譲渡」が一般的ですが、自社株式を持たない個人事業主は「事業譲渡」という形をとります。
これは、会社そのものを丸ごと引き渡すのではなく、事業用の資産(設備、在庫、権利など)や契約関係を個別に特定して譲渡する手法です。
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専門家の視点|なぜ事業譲渡は手間がかかるのか?
実務の現場でよく直面するのが、「契約の巻き直し」の大変さです。法人の株式譲渡なら、株主が変わるだけで会社という箱は変わらないため、従業員や取引先との契約はそのまま継続されます。
しかし、個人事業の事業譲渡では、従業員一人ひとりと再雇用契約を結び直し、取引先とも契約書を締結し直す必要があります。この「同意を取り付けるプロセス」が非常に繊細であり、専門家のサポートが不可欠な理由の一つです。
いくらで売れる?個人事業の売却価格(相場)の決まり方
自分の事業がいくらになるのか、最も気になるところでしょう。個人事業のM&Aでは、主に「時価純資産+のれん(営業権)」という計算式が使われます。
基本となる計算式「年買法」
中小規模の案件では、以下の年倍法(年買法)による計算式が一般的です。
• 事業価値 = 時価純資産 + 実質利益の2年~5年分
「時価純資産」とは、現在保有している資産(在庫や設備)の時価から負債を引いたものです。そこに、事業が持つ収益力やブランド力などの目に見えない価値(のれん)を上乗せします。
Web・IT事業は高値が狙えることも
一般的な店舗型ビジネスは「営業利益の数年分」が目安になりやすい一方、WebメディアやSaaS、ECなどのWeb・IT事業は評価軸が異なります。 買い手の既存事業と組み合わせて集客・顧客基盤・データ活用などのシナジーが見込める場合、目安を大きく上回り、相場の2〜3倍といった条件で成約するケースもあります。
専門家の視点|オーナー給与は利益に足し戻す
ここが重要なポイントです。計算式の「実質利益」には、節税のために経費計上している私的な費用や、オーナー自身の給与(事業主報酬)を足し戻すことができます。
決算書上は赤字やトントンであっても、オーナーが生活できているのであれば、その「稼ぐ力」は評価されます。ご自身の事業の本当の実力を過小評価しないでください。
手元にいくら残る?複雑な「税金」の仕組み
法人の株式譲渡であれば、キャピタルゲインに対して一律20.315%の税金で済みますが、個人事業の事業譲渡は複雑です。譲渡する資産の種類によって、税金の種類も計算方法も異なります。
主な資産ごとの課税区分(所得税)
譲渡益は、資産の性質によって下表のように異なります。
| 譲渡する資産 | 所得区分 | 課税方式 |
|---|---|---|
| 棚卸資産(在庫など) | 事業所得 | 総合課税(累進課税) |
| 減価償却資産(機械・備品) | 譲渡所得※ | 総合課税(累進課税) |
| 土地・建物 | 譲渡所得 | 分離課税 |
| のれん(営業権) | 譲渡所得 | 総合課税(累進課税) |
※ 少額減価償却資産など
特に注意が必要なのは「総合課税」です。給与所得など他の所得と合算されるため、売却益が大きいと最大で約56%(住民税を含む)もの税率がかかる可能性があります。
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消費税も見落とせません
事業譲渡は「資産の売買」とみなされるため、原則として消費税がかかります。ただし、土地や債権などは非課税です。
- 課税対象: 建物、機械、備品、在庫、のれん
- 非課税: 土地、売掛金、有価証券
譲受企業から預かった消費税を後で納税する必要があるため、資金繰りには十分注意してください。
専門家の視点|買い手にとっての節税メリット
実は、事業譲渡は譲受企業(買い手)にとって税務上のメリットがあります。支払った「のれん代」を5年間で償却(経費化)できるため、法人税の節税効果が期待できるのです。
このメリットを交渉材料にすることで、株式譲渡よりも高い金額での評価を引き出せる可能性があります。「税金が高いから損」と決めつけず、トータルでの手取り額をシミュレーションすることが重要です。
M&A成約までの具体的な流れと期間
個人事業のM&Aは、概ね半年から1年程度の期間を要します。下表は、個人事業のM&Aにおける主なステップと実施内容をまとめたものです。
| ステップ | 実施内容 | 詳細・ポイント |
|---|---|---|
| 1. 事前準備・専門家の選定 | まずは「なぜ売るのか」「いくらで売りたいのか」を整理し、M&A仲介会社や専門家に相談します。 | M&Aには法務・税務の専門知識が不可欠であり、自分たちだけで進めるのはリスクが高すぎます。 |
| 2. マッチング・トップ面談 | ノンネームシート(匿名資料)を用いて相手を探し、興味を持った企業と秘密保持契約を結びます。 | その後、経営者同士のトップ面談を行います。 |
| 3. 基本合意・デューデリジェンス | 条件が大筋で合意できたら基本合意書を締結します。 | その後、譲受企業による詳細な調査(買収監査)が行われます。財務状況や設備の不備などをチェックする工程です。 |
| 4. 最終契約・譲渡実行 | 最終的な条件交渉を経て事業譲渡契約書を締結します。 | その後、資産の引き渡しや決済(クロージング)を行い、完了となります。 |
| 5. 行政手続(廃業・開業) | 個人事業の場合、M&A完了後に譲渡オーナーは廃業届、譲受側が個人の場合は開業届などを税務署に提出する必要があります。 | 税務署への届出は、M&A完了後に速やかに行う必要があります。 |
専門家の視点|トップ面談での「相性」が大事
数字の条件も大切ですが、最終的な成約の決め手は「人」です。特に個人事業の場合、譲受企業はオーナーの人柄や、従業員との関係性を重視します。面談では、飾らずに誠実な姿勢を見せることが、信頼獲得への近道です。
どこで相手を探す?3つの主なルート
譲渡先を探す方法は大きく分けて3つあります。下表は、個人事業のM&Aにおける譲渡先探しの主な方法をまとめたものです。
| 方法 | 特徴 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 国が設置する公的な相談窓口です。無料で相談でき、信頼性は抜群です。 | 無料で利用できる点が最大のメリットですが、自ら積極的に動く必要があります。 |
| M&Aマッチングサイト | Web上で売り手と買い手をつなぐプラットフォームです。 | コストを抑えて多くの候補者にアプローチできますが、交渉は自己責任となるケースが多く、労力がかかります。 |
| M&A仲介会社・専門家 | 手数料はかかりますが、相手探しから交渉、契約まで一貫してサポートしてくれます。 | ネットには出ない優良企業を紹介してもらえる可能性もあります。専門的なサポートが受けられる一方で、手数料が発生します。 |
親族や従業員への承継も選択肢の一つですが、資金力や個人保証の引き継ぎがネックになりがちです。第三者へのM&Aであれば、資本力のある企業が買い手となることで、事業の拡大や従業員の待遇改善につながるケースも多々あります。
失敗しない事業売却のポイントと注意点
最後に、個人事業のM&Aを成功させるための心構えをお伝えします。
早めの検討開始が鍵
体調を崩してからや、資金繰りに行き詰まってからでは、足元を見られて買い叩かれてしまいます。事業が好調なときこそ、売却のベストタイミングです。
情報開示のタイミング
従業員や取引先にM&Aの事実を伝えるタイミングは非常に重要です。早すぎると動揺を招き、離職につながるリスクがあります。専門家と相談し、基本的には最終契約の直前や直後など、適切な時期を見計らいましょう。
「磨き上げ」をしておく
家を売るときに掃除をするように、会社も「磨き上げ」が必要です。不要な在庫を処分する、契約書を整理する、機械のメンテナンス履歴をまとめるなど、ちょっとした準備がお相手からの印象を良くし、価格交渉を有利に進める材料になります。
まとめ:個人事業の売却は専門家との二人三脚で
個人事業のM&Aについて解説しました。
- 可能性: 個人事業でもM&Aは十分に可能。
- 手法: 株式譲渡ではなく「事業譲渡」を用いる。
- 相場: 時価純資産+実質利益の2~5年分が目安。
- 税金: 譲渡資産によっては総合課税となるため、税額シミュレーションが必須。
- 成功の鍵: 早期の準備と、信頼できる専門家の活用。
個人事業のM&Aは、法人のそれに比べて手続きが煩雑であり、税務判断も難解です。しかし、適切なパートナーを選べば、創業者利益を得てハッピーリタイアを実現することは十分に可能です。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。個人事業の売却をご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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