選択と集中のM&A戦略|非中核事業の売却・コア事業の買収を解説

M&Aにおける「選択と集中」は、経営資源を特定の事業に集約し、企業価値を最大化する戦略です。多角化で行き詰まった事業を整理し、強みのある分野へ投資することで、持続的な成長が可能になります。本記事では、その手法とリスク、成功事例を説明します。自社の事業構成をどこまで見直すべきでしょうか。

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選択と集中の定義と本質

選択と集中(Selection and Concentration)とは、多角化した企業が自社の強みである主力事業(コア事業)を見極め、そこに経営資源(人材・資金・時間)を集中投下する経営戦略です。 一方で、相乗効果の薄いノンコア事業や不採算部門については、M&Aを活用して売却・整理を行います。これにより、経営の効率化と業績向上、さらには企業価値の最大化を図ることが目的です。

この概念は、経営学者ピーター・ドラッカーが提唱し、GE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチが「市場で1位か2位になれない事業からは撤退する」という基準で実践したことで世界的に広まりました。 日本の中小企業においても、後継者不足や競争激化を背景に、総花的な経営から脱却し、強みを磨くための戦略として重要性が高まっています。

多角化戦略との違いと使い分け

「選択と集中」と対になる概念が「多角化」です。多角化はリスク分散や新規収益源の獲得を目指しますが、中小企業にとっては経営資源の分散による非効率を招くリスクもあります。 現場では、企業の成長フェーズや市場環境に応じて、この2つを使い分ける視点が求められます。

下表は、両者の特徴を比較したものです。

比較項目選択と集中多角化
戦略の方向性コア事業への集中新規事業への拡大
経営資源の配分特定分野に集中投下複数分野に分散投資
主な目的収益性向上と効率化売上拡大とリスク分散
ノンコア事業縮小または売却維持または拡大
競争優位性特定分野で強化複数分野で構築
主なリスク主力事業への依存度増加経営資源の分散による非効率

選択と集中におけるM&Aの役割と手法

選択と集中を実行する上で、M&Aは単なる「身売り」ではなく、戦略的なツールとして機能します。 不採算事業をただ廃業にするのではなく、その事業を必要とする他社へ譲渡(カーブアウト)することで、売却益を得つつ雇用を守ることが可能です。また、得られた資金でコア事業の周辺領域を買収し、成長を加速させる際にもM&Aが活用されます。

カーブアウト(事業売却)による切り離し

カーブアウトとは、企業の一部(不採算事業やノンコア事業)を切り離して独立させ、外部へ売却する手法です。 親会社から見れば「ノンコア」であっても、買い手にとっては「コア事業」であるケースは多々あります。 例えば、本業が建設業である会社が、かつて多角化で始めた飲食部門を売却する場合などがこれに当たります。事業譲渡や会社分割といったスキームを用い、不採算部門を整理することで、筋肉質な経営体質へと転換します。

集中投資(買収)によるコア事業の強化

「選択」で事業を整理した後は、「集中」のための投資が必要です。 M&Aを活用し、自社のコア事業と関連性の高い企業や技術を買収することで、成長スピードを飛躍的に高めることができます。 自前でゼロから事業を育てる時間を短縮し(時間を買う)、市場シェアの拡大や技術の獲得を一気に行う攻めのM&Aです。

戦略実行の具体的なステップ

M&Aを活用して選択と集中を進める場合、以下の手順で検討を進めるのが一般的です。

  1. 事業ポートフォリオの作成:全事業の収益性・成長性を可視化し、コア・ノンコアを分類する。
  2. M&A計画の策定:切り離す事業の範囲、売却価格の目安、従業員の処遇方針を決める。
  3. 相手先の選定:ノンコア事業を高く評価してくれる買い手を探す。
  4. デューデリジェンスと交渉:買収監査を経て、条件を確定させる。
  5. クロージングと再投資:売却資金をコア事業へ投資する。

選択と集中を実践する3つのメリット

経営資源が限られている中小企業こそ、選択と集中による恩恵は大きくなります。 漠然と事業を続けるのではなく、意図的に資源を再配分することで、以下のメリットが得られます。

経営効率の向上と業績改善

不採算事業や低収益部門が整理されることで、会社全体の赤字要因が解消されます。 経営資源が分散している状態では、どの事業も中途半端になりがちですが、コア事業に一点集中することでサービスの質や技術力が向上します。結果として、収益性が高まり、高収益体質への転換が期待できます。

資金の確保と再投資

ノンコア事業をM&Aで売却することで、まとまったキャッシュ(売却益)を確保できます。 この資金を、主力事業の設備投資、人材採用、研究開発、あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)化などに回すことで、本業の競争力をさらに高める好循環が生まれます。廃業コストをかけるのではなく、プラスのキャッシュを生む点がM&Aの大きな利点です。

株主・金融機関からの評価向上

不採算部門を抱えたままでは、会社全体の財務評価が下がってしまいます。 選択と集中により財務内容がスリム化・健全化されると、金融機関からの融資条件が良くなったり、株主(オーナー一族含む)からの評価が向上したりします。 これにより、新たな資金調達もしやすくなり、次の成長戦略を描きやすくなるでしょう。

選択と集中に伴う注意点とデメリット

光があれば影があるように、選択と集中にもリスクは存在します。 特に中小企業のM&A現場では、理論通りにいかない「感情」や「想定外の事態」への配慮が不可欠です。

コア事業への依存リスクと成長機会の逸失

事業を一本化することは、その市場が縮小した際に逃げ場がなくなることを意味します。 特定の事業への依存度が高まると、外部環境の変化(法改正や技術革新など)に対して脆弱になります。また、将来的に化ける可能性があった事業を、短期的な数字だけで判断して売却してしまい、将来の収益源(飯のタネ)を失う「成長機会の逸失」も起こり得ます。 短期的な利益だけでなく、10年後の市場環境を見据えた判断が必要です。

人材流出と従業員の士気低下

最も懸念すべきは「人」の問題です。 ノンコア事業とされた部門の従業員は、「自分たちは切り捨てられるのか」という不安や不信感を抱きます。 また、残るコア事業の社員であっても、同僚が他社へ移籍する様子を見て会社への忠誠心が揺らぐことがあります。これにより、優秀な人材が連鎖的に退職してしまうリスクがあります。 現場では、M&Aの発表前から丁寧な説明を行い、移籍後の条件やキャリアパスについて誠実に伝えるプロセスが欠かせません。

選択を誤った場合のダメージ

「何を選択し、何に集中するか」の判断自体を誤るリスクです。 将来性があると思って集中したコア事業が予想外に失速した場合、多角化していれば他でカバーできましたが、選択と集中を行った後ではそのクッションがありません。 経営者の「思い込み」だけで判断せず、客観的な数値や専門家の意見を取り入れて慎重に決定する必要があります。

主な成功事例と失敗から学ぶ教訓

大企業の事例は規模が異なりますが、その戦略的思考は中小企業にも応用できます。下表は代表的な成功事例と示唆に富む事例をまとめたものです。

企業名取り組み示唆・教訓
日立製作所ハードディスク事業やテレビ事業などのノンコア事業を売却し、社会インフラやIT事業に経営資源を集中させました。痛みを伴う事業売却を断行し、得た資金を成長分野へ投資することで、製造業から「IT×インフラ」の高収益企業へと変貌を遂げた好例です。
シダックス業績低迷を受けてカラオケ事業を売却し、強みのある給食事業や車両運行管理事業へ資源を集中させました。広げすぎた事業を整理し、原点である「勝てる事業」に戻る選択と集中の戦略として、中小企業にも参考になる事例です。
シャープ液晶事業への過度な集中が裏目に出て、市場環境の激変や海外勢の台頭に対応できず経営危機に陥りました。集中することは強みになりますが、市場の変化に合わせて柔軟に軌道修正する備えがなければ、一気に経営が傾くリスクがあることを示しています。

選択と集中とM&Aに関するFAQ

支援現場でよくいただく、譲渡オーナーからの質問にお答えします。

Q:赤字の事業部門だけでも売却することは可能ですか?

はい、可能です。買い手企業にとってシナジー(相乗効果)が見込める場合や、技術・人材・顧客基盤に価値がある場合は、赤字であっても譲渡が成立するケースは多々あります。ただし、債務の状況や契約関係の整理が必要です。

Q:従業員にはどのタイミングで伝えるべきでしょうか?

基本的には最終契約の締結後、またはクロージング(決済)の直後に行います。あまりに早い段階で伝えると動揺が広がり、風評被害や退職のリスクが高まるためです。ただし、幹部社員には早期に協力を仰ぐケースもあります。

Q:長年育てた事業を売るのは「身売り」のようで抵抗があります。

お気持ちは痛いほど分かります。しかし、自社で投資を続けられずに衰退させるより、資金力のある他社の下で事業を再成長させる方が、従業員や取引先のためになることが多いです。「戦略的譲渡」と捉えてみてください。を見極めることが重要です。

Q:買い手が見つからない場合はどうすればよいですか?

マッチングには時間がかかることもあります。その間、事業の磨き上げ(収益改善やマニュアル化)を行い、魅力を高める努力を続けます。また、M&A仲介会社を変えたり、譲渡条件(価格など)を見直したりすることも検討します。まえた上で価格や条件を調整する方が、結果としてスムーズに成約し、売却後のトラブルも防げます。

選択と集中は「捨てる」ことではなく「活かす」こと

選択と集中は、単なるリストラではありません。自社の強みを最大化し、従業員や事業をより輝ける場所へ導くための前向きな成長戦略です。M&Aを活用して不採算事業を切り離すことは、経営者にとっても企業にとっても、次なる飛躍への第一歩となります。

当社は、税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業のM&Aに特化した支援を行っています。M&Aアドバイザーに加え、公認会計士・税理士が在籍しており、財務や税務の観点からも最適な「選択と集中」をご提案します。事業再編や譲渡をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。

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著者

伊丹 宏久
伊丹 宏久事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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