会社売却を検討する際、経営者が最も気になるのは「最終的にいくら手元に残るのか」という点ではないでしょうか。譲渡価格がそのまま手取りになるわけではなく、そこからM&A仲介手数料などの諸費用や税金を差し引いた金額が、オーナーとしての「真の利益」となります。本記事では、2026年時点の最新税制や、手取りを最大化するための役員退職金の活用、スキーム別の税金の違いについて、15年以上の業歴を持つ専門家の視点で詳しく解説します。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」
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会社売却における手取り額の基本構造
会社売却で得られる手取り額は、一見複雑に見えますが、その構造は非常にシンプルです。まずは全体像を把握しましょう。
会社売却における手取り額の計算式は以下の通りです。
手取り額 = 譲渡価格 - 諸費用(仲介手数料など) - 税金
この計算式から分かる通り、手取りを増やすためのアプローチは「譲渡価格を上げる」「諸費用を抑える」「税金を最適化する」の3点に集約されます。
譲渡価格(M&A対価)の決まり方
譲渡価格は、企業の財務状況や将来性に基づく企業価値評価(バリュエーション)を土台として、譲受企業との交渉によって決定されます。単なる純資産の額だけでなく、目に見えない「のれん(営業権)」がどれだけ評価されるかが、価格を左右する大きなポイントとなります。
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諸費用に含まれる項目の内訳
諸費用の大部分を占めるのは、M&A仲介会社へ支払う成功報酬です。そのほか、弁護士や税理士などの専門家への報酬が含まれます。これらの費用は、取引の安全性を担保し、有利な条件を引き出すための投資とも言えます。
手取りを左右する最大の要因は税金
会社売却の手法(株式譲渡や事業譲渡など)や、売り手の属性(個人か法人か)によって、適用される税率や課税のタイミングは劇的に変化します。選択する手法一つで、手元に残る金額が数千万円、時には数億円単位で変わることもあるため、事前の設計が極めて重要です。
売却時に発生する諸費用の目安とレーマン方式
会社売却を成功させるためには専門家のサポートが不可欠ですが、その対価として発生する費用を正しく理解しておく必要があります。
M&A仲介手数料の計算ルール
多くのM&A仲介会社やフィナンシャルアドバイザー(FA)は、取引金額に応じて料率が段階的に下がる「レーマン方式」を採用しています。これは、取引の規模が大きくなるほど、一定額を超えた部分の料率が低くなる仕組みです。
一般的なレーマン方式の料率は以下の通りです。
| 取引金額の区分 | 手数料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
最低報酬設定への注意
仲介会社によって1000万円〜2,500万円程度の「最低報酬」を設定しています。譲渡価格が小規模な案件では、料率計算よりも最低報酬の方が高くなるため、あらかじめ契約内容を確認しておくことが大切です。
専門家費用の考え方
仲介手数料以外にも、法的な契約書のチェックを依頼する弁護士費用や、税務申告を依頼する税理士費用が発生します。これらは「譲渡費用」として、後述する譲渡所得の計算において経費として差し引くことが可能です。
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会社売却の手取り算定上の税金
会社を売却した際の税金について、個人オーナーと法人オーナーに分けて説明します。
個人株主による株式譲渡の税金と計算例
中小企業のM&Aで最も多く採用されているのが、譲渡オーナー個人が保有する株式を譲受企業へ売却する「株式譲渡」です。この手法は、手続がシンプルであるだけでなく、税制面でも大きなメリットがあります。
申告分離課税による一律の税率
譲渡オーナー個人が株式を売却して得た利益(譲渡所得)に対しては、他の所得と合算しない「申告分離課税」が適用されます。給与所得などの累進課税とは異なり、原則として所得の大きさに関わらず税率が一定(20.315%)である点が特徴です。
税率20.315%の内訳
2026年時点において、個人の株式譲渡にかかる税率は合計で20.315%です。
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%(2037年まで課税)
- 住民税:5%
3億円で譲渡した場合のシミュレーション
例えば、以下の条件で株式を譲渡した場合の手取りを計算してみましょう。
- 売却価格:3億円
- 株式の取得費(設立時の出資額):1,000万円
- 仲介手数料(譲渡費用):2000万円
- 譲渡所得 = 3億円 - (1,000万円 + 2000万円) = 2億7,000万円
- 税額 = 2億7,000万円 × 20.315% ≒ 5,485万円
- 手取り額 = 3億円 - 2,000万円 - 5,485万円 = 2億2,515万円
実務上、設立から長い年月が経過しており、当時の出資額(取得費)を証明する書類を紛失しているケースも少なくありません。その場合は、売却価格の5%を取得費として概算計上することが認められています。
具体的な手取り額については、みつきコンサルティングの手取額算定サイトでも確認できます。
超高額譲渡に対する増税(2025年1月〜)の留意点
これまで「一律20.315%」とされてきた株式譲渡の税率ですが、2025年1月より、極めて高い所得を持つ個人に対しては事実上の追加増税(ミニマムタックス)が導入されています。
増税の対象となるボーダーライン
各種所得の合計金額から3.3億円を控除した金額に対して、特定の計算式に基づき所得税率が最大22.5%まで引き上げられます。住民税を含めた実効税率は、最大で約27.5%程度に達する場合があります。
大規模案件での影響
株式譲渡収入が数十億円に及ぶような超高額な会社売却の場合、従来よりも数パーセント税負担が増えることになります。これは手取り額に数千万円以上の差を生む変更であるため、大規模なEXITを目指す経営者は、この改正を織り込んだ資金計画を立てる必要があります。
法人株主による株式譲渡と事業譲渡の仕組み
譲渡対象会社の株式をオーナー個人ではなく、別の会社(親会社や持株会社)が保有している場合や、会社の一部の事業のみを売却する「事業譲渡」の場合は、課税の仕組みが大きく異なります。
法人の実効税率と総合課税
法人が株式を売却したり、事業を譲渡したりして得た利益は、その法人の他の利益や損失と合算して計算されます。適用される実効税率は、会社の規模や所在地によりますが、一般的に約30%〜34%程度です。
事業譲渡における消費税の発生
事業譲渡特有の負担として「消費税」があります。土地などを除く、有形固定資産や営業権(のれん)の譲渡価格に対して10%の消費税が課されます。この消費税は譲受企業が支払いますが、譲渡側の企業はこれを預かり、後に国に納付する手続が必要です。
二段階課税のリスク
法人に売却代金が入った後、その資金をオーナー個人に還流するには追加で課税が発生します。役員報酬や配当として受け取る場合、個人の所得税・住民税として最大約55%の累進課税が適用される可能性があります。このように、法人が売り手となる手法は、個人が直接売却する手法に比べて最終的な手取りが少なくなる傾向があります。
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手取りを最大化するための節税対策
会社売却後に手元に残る金額を増やすためには、事前の準備によって税金の負担を合法的に抑えることが可能です。実務で多用される代表的な3つの手法を紹介します。
役員退職金の活用
最も効果的で一般的な手法が、譲渡対価の一部を「役員退職慰労金」として受け取ることです。譲受企業から支払われる対価のうち、一部を会社からオーナーへの退職金として支給する形を取ります。
退職所得は以下の2つの優遇措置があるため、非常に有利です。
- 退職所得控除:勤続年数に応じた控除額が差し引ける(勤続30年なら1,500万円)。
- 2分の1課税:控除後の金額をさらに半分にしてから税率を計算する。
これにより、株式譲渡所得として20.315%を支払うよりも、全体の税負担を軽減できるケースが多くあります。
専門家の視点:なぜ「役員退職金」は慎重な設計が必要なのか
多くの経営者が「退職金を増やせば増やすほど得をする」と考えがちですが、実務ではそう単純ではありません。税務上「不相当に高額」と判断されると損金算入が否認されるリスクがあります。役員退職金の額は、功績倍率や同業種・同規模の相場を考慮しつつ、株式譲渡代金とのバランスを綿密に計算しなければなりません。「手取りを増やすつもりが、価格交渉で不利になった」という事態を避けるためにも、財務と税務の両面から最適解を導き出す必要があります。
▷関連:M&Aでの役員退職金の活用方法|会社売却の節税スキームとは?
繰越欠損金の活用
過去の赤字(繰越欠損金)が残っている場合、事業譲渡などで発生した売却益と相殺することで、法人税等の負担を大幅に減らすことができます。売却する事業年度に大きな経費(設備投資や広告費など)を計上して利益を圧縮することも一つの戦略です。
会社分割による資産の切り出し
本業に関係のない不動産や余剰資金が会社に残っている場合、そのまま売却すると企業価値(売却価格)が上がりすぎてしまい、結果として税負担も重くなります。あらかじめ「会社分割」を用いて不要な資産を別会社に分けてから、スリム化した本業部分の株式を譲渡することで、譲渡所得税を最適化できます。
▷関連:M&Aの価格ギャップとは?売り手・買い手の評価の乖離の原因と対策
譲渡価格そのものを高めるための戦略
税金対策と同様に重要なのが、分母となる譲渡価格の最大化です。1,000万円の節税を考えるよりも、売却価格を5,000万円上げる方が手取りへのインパクトは大きくなります。
業績の「磨き上げ」とタイミング
売上や利益が成長カーブを描いている時期に売却するのが鉄則です。また、業界全体が再編期にあり、大手企業が積極的に買収を行っている時期(いわゆる「売り手市場」)を逃さないことも重要です。
シナジー効果の提示
自社を「単独の会社」として評価させるのではなく、「譲受企業の事業と組み合わせた時にどれだけの相乗効果(シナジー)が生まれるか」を具体的に提示します。譲受企業の課題を解決できる強み(特殊な技術、ニッチな市場シェア、優秀な人材など)があれば、相場以上の価格で売却できる可能性が高まります。
マイナス査定要素の事前解消
デューデリジェンス(買収監査)で指摘されやすいリスク、例えば未払残業代等の簿外債務、法務上の不備などは早めに解消しておきます。リスクが見つかると、提示価格から大幅な減額を要求されるだけでなく、破談の原因にもなりかねません。
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会社売却の手取りに関するFAQ
会社売却を検討中の経営者からよく寄せられる手取り計算に関する質問にお答えします。
個人株主による株式譲渡の場合、取得費や手数料にもよりますが、おおよそ6,000万円〜7,000万円程度が手元に残る目安となります。役員退職金を組み合わせることで、これよりさらに数百万〜1千万円程度手取りを増やせる可能性があります。
個人が株式譲渡を行った場合、譲渡した年の翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に申告を行い、所得税と復興特別所得税を納付します。住民税は、さらにその後の6月以降に納付することになります。法人の場合は、その会社の決算後2ヶ月以内に申告・納税が必要です。
手数料の料率だけで決めるのではなく、提供されるサービスの範囲(買い手候補の数、交渉の質、税務・法務のサポート体制など)を比較してください。高く売ってくれる優秀なアドバイザーであれば、手数料の差額以上の手取りをもたらしてくれるでしょう。
まとめ|会社売却の手取り額
会社売却における最終的な手取り額は、売却価格から諸費用と税金を差し引いた結果です。20.315%の税率が適用される「個人の株式譲渡」をベースとしつつ、役員退職金の活用や会社分割などの高度なスキームを検討することで、手元に残る資金を最大化することが可能です。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。会社売却の手取りを最大化するための戦略的なアドバイスや、複雑な税務シミュレーションについても、専門的な知見からサポートいたします。会社売却 手取りをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
-
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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