清算価値とは、事業を停止し全資産を売却した後に残る手取り額のことです。M&Aや個人再生の現場では、この金額が「守るべき最低ライン」として重要な意味を持ちます。計算方法や資産の範囲を知らないと、思わぬ損をするかもしれません。自社の価値を正しく把握できていますか。
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清算価値とは
清算価値とは、企業や個人が事業・活動を停止し、保有する資産をすべて売却(換価)して負債を返済した後に残る、実質的な価値のことです。 事業を継続することを前提とした「継続価値(事業価値)」とは対照的な概念であり、万が一会社をたたんだり破産したりした場合に、手元にいくら残るかを示す「最悪のシナリオ」に基づく指標といえます。
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帳簿上の数字とは異なる実勢価格
「貸借対照表の純資産と同じではないか」とよく聞かれますが、厳密には異なります。 帳簿価額(簿価)ではなく、その時点ですぐに売却した場合の「時価(実勢価格)」で資産を評価し直し、そこから負債総額や清算にかかるコストを差し引いて算出します。 現場の実務では、含み益のある不動産などがある場合、清算価値は帳簿上の純資産よりも高くなることがあります。
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清算価値が重要となる2つの局面と主な特徴
清算価値という言葉は、主に「企業の買収(M&A)」と「個人の債務整理(個人再生)」という2つの異なる場面で使われます。 それぞれの場面で、この数字が持つ意味合いは大きく異なります。
企業価値評価(M&A)における意味合い
M&Aの現場において、清算価値は「譲渡価格の最低ライン(底値)」としての意味を持ちます。 もしM&Aによる譲渡価格が清算価値を下回るなら、無理に他社へ売却するよりも、自ら会社を解散して資産を切り売りしたほうが、株主の手元に残る現金は多くなるからです。 買い手企業側も、対象企業の事業が失敗した場合の「担保価値」として清算価値を参考にすることがあります。
個人再生(債務整理)における「清算価値保障の原則」
経営者が個人保証に入っている場合など、個人再生(債務整理)の手続を行う際に、清算価値は極めて重要なルールとなります。 これを「清算価値保障の原則」と呼びます。 これは、再生計画において債権者に返済する総額は、仮に破産して資産を処分した場合に債権者が受け取れる配当額(清算価値)以上でなければならない、というルールです。 つまり、資産を持っている人ほど、個人再生で減額できる借金の幅が小さくなり、返済額が増える仕組みになっています。
具体的な計算対象
清算価値を算出する際は、換金可能なほぼすべての財産が対象となります。
清算価値に含まれる主な資産
当社でご支援する際も、表面的な預金だけでなく、見落としがちな保険や退職金まで詳細にリストアップします。 主な対象資産は下表の通りです。
| 資産の項目 | 評価のポイント(目安) |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 手持ちの現金および銀行預金の残高。 |
| 不動産 | 自宅や土地などの時価からローン残高を引いた額。 |
| 自動車 | 業者による査定額(時価)。 |
| 保険解約返戻金 | 現時点で解約した場合に戻ってくる金額。 |
| 退職金 | 将来受け取る見込額の8分の1相当額など(退職予定がない場合)。 |
| 有価証券 | 株式や投資信託などの時価。 |
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個人再生の場合|生活に最低限必要な「自由財産」の除外ルール
すべての財産が没収されるわけではありません。 個人の生活再建を目的とするため、生活に最低限必要な財産や少額な財産は「自由財産」として、通常は清算価値から除外(控除)されます。 具体的には、99万円以下の現金や、生活に必要な家財道具などがこれに該当します。 ただし、この「自由財産」の範囲や計算方法は、管轄する地方裁判所によって運用ルールが異なるため注意が必要です。
清算価値が高すぎる場合のリスクと注意点
「資産が多いのは良いことだ」と単純には喜べないのが、再生実務の難しいところです。 清算価値が高くなると、個人再生において返済しなければならない総額も高くなるため、不動産などを所有している場合は特に注意が必要です。
再生計画の破綻リスク
例えば、借金が1億円あっても、清算価値(資産の総額)が8000万円あれば、最低でも8000万円を返済しなければなりません。 これでは借金を大幅に減額できる個人再生のメリットが薄れ、分割払いでも返済が追いつかず、手続自体を選択できない可能性があります。 私たち専門家は、M&Aによる事業譲渡で借入金を完済するか、あえて破産による廃業を選択するか、数字を見極めながら慎重に判断をサポートします。
不動産の評価方法|個人再生の場合
資産の中で最も金額が大きく、清算価値を左右するのが不動産(自宅や本社ビル等)です。 不動産の評価額から住宅ローンなどの残債を差し引いた金額が、資産価値として計上されます。
簡易的な評価と実勢価格
M&Aや再生の実務では、不動産業者による査定書(2社程度の平均値)を用いることが一般的です。 また、裁判所の一部の運用(例:名古屋地裁など)では、簡易的に以下の基準を用いるケースもあるようです。
- 土地:固定資産税評価額の2倍
- 建物:固定資産税評価額の1.5倍
ローン残高との関係(オーバーローン)
不動産の査定額よりも住宅ローンの残高の方が多い状態を「オーバーローン」と呼びます。 この場合、資産価値は「ゼロ」として扱われ、清算価値には計上されません。 逆に、ローンを完済している場合や、査定額がローン残高を上回る(アンダーローン)場合は、その差額がそのまま清算価値に上乗せされるため、資産総額が跳ね上がる要因となります。
清算価値に関するFAQ
清算価値に関して、よくいただく質問をまとめました。
いいえ、異なります。 清算価値は「資産の切り売り価格」であるのに対し、M&Aの株式価値は将来の収益力(のれん代)を加味した「継続価値」をベースにするのが一般的です。通常はM&A価格の方が高くなります。
売り手様にとっては「売却価格の最低ライン」として機能します。 もし買い手からの提示額が清算価値より低いなら、無理に売らずに会社を解散して資産を分配した方が、手元資金が多くなる可能性があるからです。現場では、時価純資産法を用いてこのラインを確認します。
多くの場合、M&Aの方が手取り額は増えます。 自分で廃業(清算)する場合、在庫の処分損や従業員への解雇予告手当など多額のコストがかかり、実際の受取額は試算値(清算価値)より少なくなりがちです。M&Aであれば、それらのコストを回避しつつ、事業の将来性に対する対価(のれん代)を得られる可能性があります。
まとめ|清算価値とは
清算価値とは、事業を清算し、全資産を換金した場合に残る手取り額のことです。M&Aでは売却価格の「底値」として、個人再生では債権者へ返済すべき「最低額」として機能します。特に不動産や退職金を持つ場合、この額が高くなると再生計画の返済負担が増すため、正確な試算が不可欠です。
清算価値の算定は、不動産の評価方法や裁判所の運用によって結果が大きく変動します。当社はみつき税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業M&Aや事業再生の豊富な実績がございます。M&Aアドバイザーや公認会計士・税理士が連携し、最適な出口戦略をご提案しますので、まずは一度ご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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