情報通信業のM&Aは、エンジニア不足や後継者問題の解決策として急速に拡大しています。本記事では、業界特有のM&A動向から、実際の会社売却事例、企業価値を高めるポイントまでを詳しく解説します。自社の技術力や顧客基盤を正当に評価し、最適な譲受企業を見つけることで、従業員の雇用を守りながら企業の更なる成長を実現できます。
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情報通信業におけるM&Aの現状
情報通信業におけるM&Aは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速を背景に極めて活発な動きを見せています。深刻な人材不足や技術革新のスピード向上に対処するため、多くの企業が合従連衡を模索している状況です。中小規模のSES(システムエンジニアリングサービス)企業から大手MSP(マネージド・サービス・プロバイダー)まで、多様な形態での統合が進んでいます。現場の肌感覚としても、単独での成長に限界を感じてご相談に来られる経営者が少なくありません。
最新のM&Aトレンドと動向
長らく、IT業界全体はM&Aが最も活発な領域の一つとなっています。この背景にある最大の目的は人材の確保です。ITエンジニアの慢性的な不足を補うため、優れた技術力や強固な顧客基盤を持つ企業をM&Aで獲得するケースが増加しています。 さらに、異業種からの参入やクラウド関連の連携も活発です。クラウドシフトの加速により、従来のオンプレミス運用からクラウドマネージドサービスへ転換するため、特定のクラウド技術に特化した企業を買収する動きが目立ちます。 また、経営者の高齢化に伴う事業承継型のM&Aも急増しています。2025年の後継者不在率は約62%に達しており、会社を存続させるための有効な選択肢として定着しました。
通信・ネットワーク業でM&Aを選択するメリット・デメリット
M&Aを実行するにあたり、譲渡オーナーと譲受企業の双方に特有の利点と懸念点が存在します。一般論ではなく、この業界ならではの要点を整理しました。以下の表で詳しく確認していきましょう。
売り手のメリット・デメリット
譲渡オーナーにとって、大手企業の傘下に入ることは大きな転換点です。下表にその詳細をまとめました。
| 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|
| エンジニアの雇用と待遇の維持 譲受企業の充実した福利厚生や資本力により、従業員の労働環境が大きく改善します。 | キーマンの離職リスク 経営陣の交代や企業文化の変化に対する不安から、優秀な技術者が退職してしまう恐れがあります。 |
| 採用力とブランド力の強化 大手ITグループのネームバリューを活用できるため、新規採用が格段に有利に進みます。 | 経営の自由度の低下 これまでのオーナー経営とは異なり、親会社の決裁ルートやグループ方針に従う必要があります。 |
買い手のメリット・デメリット
譲受企業側も、単なる規模拡大以上の効果を期待して投資を行います。下表のとおり、技術力やストック収益の獲得が主眼です。
| 譲受企業のメリット | 譲受企業のデメリット |
|---|---|
| 即戦力エンジニアの一括確保 採用市場で獲得が困難なインフラエンジニアやクラウド技術者を、チームごと確保できます。 | 技術レベルのミスマッチ 譲受後に、対象会社の技術スタックや実務スキルが自社の求める水準に達していないことが判明するリスクです。 |
| ストックビジネス基盤の拡大 対象会社が持つ保守・運用案件を引き継ぐことで、安定した継続収益(ストック収益)が拡大します。 | システム統合の負担 社内システムやセキュリティ基準の統合に多大な時間とコストがかかり、現場が疲弊する可能性があります。 |
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M&Aが活発化する主な理由・背景
なぜこれほどまでに本業界でM&Aが求められているのでしょうか。支援現場でよく耳にするリアルな経営課題から紐解いていきます。
深刻なエンジニア人材不足と技術変化への対応
多くの経営者が「技術者の採用と定着」に最も深い悩みを抱えています。採用コストが高騰する中、M&Aは手っ取り早く即戦力の人材を獲得する手段として重宝されている状況です。特にインフラ構築の現場では、夜間監視や保守対応による疲弊で技術者が離脱しやすく、チームを維持するためのリソース確保が急務となっています。
加えて、技術変化のスピード対応も不可欠です。クラウド、AI、ゼロトラストセキュリティなど、急速に進化する最新技術へ迅速に対応するためには、社内で一から育成するより、既にノウハウを持つ他社を買収する方が合理的だと判断されるケースが多いです。
ストックビジネスの構築と顧客基盤の拡大
システム運用・保守は、一度契約を結べば毎月安定した収益を生むストックビジネスの側面を持ちます。大手企業は、自社のMSP事業の基盤をさらに広げるため、優良な顧客を持つ中堅MSPを積極的に譲受しています。
また、異なる顧客層を持つ企業をグループに迎え入れることで、自社のインフラ・運用サービスを新たに導入するクロスセル効果も強力な動機です。既存のオンプレミス環境の顧客に対して、グループが持つクラウド移行サービスを一挙に提案するといったシナジーが期待できます。
ITインフラ・通信サービス業のM&A事例
ここでは、実際に公開されている本業界のM&A事例を紹介します。各社がどのような意図で統合を決断したのか、具体的な動きを見ていきましょう。
アクモスによるプライムシステムデザインの譲受
2024年1月に実施された、アクモスによるプライムシステムデザインの株式取得事例です。この案件は、SES事業の拡大とグループ全体でのシナジー創出を目的として行われました。結果として、ITインフラからネットワーク構築、日々のシステム運用まで幅広く対応できる強固な体制が強化されています。
NECネッツエスアイの完全子会社化
2025年6月時点における、NECによるNECネッツエスアイの完全子会社化の動きです。親会社であるNECが、グループ全体のインフラ構築・システム運用・デジタルシフト領域における競争力を圧倒的なものにするための戦略的統合です。大手が経営資源を集中させる典型的な事例と言えます。
コムチュアによるソフトウエアクリエイションの譲受
2022年3月に行われたコムチュアによるソフトウエアクリエイションの株式取得事例です。特定の顧客基盤を持つシステム開発およびインフラ構築会社を譲り受けることで、コムチュアは自社の強みであるインフラ運用の事業領域を大きく拡大しました。現場ではこのような顧客補完を狙うケースが頻出します。
情報通信業での企業価値の目安
会社を譲渡する際、自社がどれくらいの価値で評価されるかは最も気になる点でしょう。本セクションでは、一般的な算定基準と高く評価されるポイントを解説します。
情報通信業の売却相場と一般的な企業価値評価
時価純資産+実質営業利益の数年分(営業権)
一般的な中堅・中小企業の株価算定では、上記のような計算式が用いられます。システム運用・ITインフラ業界の場合、ストック収益が安定しているため、EBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)の5〜8倍程度が目安となる傾向があります。優れた技術力や強固な顧客基盤を持つ企業であれば、これ以上のプレミアムが上乗せされることも珍しくありません。
情報通信業で高く売れるポイント
譲受企業は単なる売上高だけでなく、事業の質を厳しく精査します。具体的にどのような要素が評価を引き上げるのかを見ていきましょう。
ストック収益の割合の高さ
単発のシステム構築(フロービジネス)よりも、毎月の保守運用契約(ストックビジネス)の割合が高い企業ほど、将来の収益が読みやすいため高く評価されます。月額契約の売上比率が全体の5割を超えていると、非常に魅力的な案件として扱われます。
安定した顧客基盤と元請け比率
特定の業界に深く入り込んでいる、あるいは大手優良企業との直接取引(元請け案件)が多い会社は高評価です。多重下請け構造の三次請け・四次請け案件が中心の場合、利益率の低さや契約の不安定さが懸念され、評価が下がりやすくなります。
特定のクラウド技術や認定資格の保有
AWSやAzureといった主要クラウドの高度な認定パートナー資格を持っていることは、強力な無形資産です。また、情報処理安全確保支援士などの難関資格を持つエンジニアが多数在籍していることも、企業価値の大きな押し上げ要因となります。
情報通信業のM&Aの進め方(流れ)
いざM&Aを検討するとなれば、どのような手順で進むのか不安に感じる方も多いはずです。ここでは、本業界特有の実務プロセスを交えた具体的な流れを解説します。
まずは自社の財務状況や契約内容を整理します。SES事業を行っている場合、労働者派遣法や下請法に準拠した適法な契約(偽装請負になっていないか等)が結ばれているかの事前確認が極めて重要です。
※当社では、コンプライアンス面のリスクを初期段階で洗い出すサポートを無料で行っています。
匿名で譲受候補企業に打診し、関心を示した企業と秘密保持契約を結んだ上でトップ面談を実施します。エンジニアの労働環境や開発カルチャーが自社と適合するか、経営者同士で率直にすり合わせることが成功の鍵です。
※当社では、文化的なフィット感まで考慮した最適なマッチングをご提案しています。
譲渡価格や従業員の処遇に関する大枠の条件に合意し、基本合意書を締結します。この段階で、対象会社が保有する重要な顧客との継続取引見込みや、主要エンジニアの残留意向について大まかな確認が行われます。
※当社では、譲渡オーナーの希望条件が確実に反映されるよう、粘り強い交渉を代行します。
譲受企業が弁護士や公認会計士などの専門家を通じて、財務・法務・ビジネスの詳細な調査を行います。通信・ネットワーク業特有の論点として、ソースコードの権利関係、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用状況、システム障害履歴やセキュリティ体制の厳格なチェックが実施されます。
※当社では、膨大な資料要求に対する現場の負担を最小限に抑えるため、資料準備を全面的にバックアップします。
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡条件を確定して契約を結びます。ここでは「表明保証」として、システムに重大な瑕疵がないことや、未払残業代などの隠れ債務がないことを譲渡オーナーが約束する条項が盛り込まれます。
※当社では、法務リスクを極小化するため、弁護士と連携して契約書の細部まで精査します。
株式の引渡しと決済を完了させ、その後は両社のシステムや人事制度を統合するPMI(統合作業)に入ります。ネットワーク環境の統合や、異なる評価制度を持つ技術者同士の融合には細心の注意が必要です。
※当社では、案件成立後も円滑なシステム統合や組織融合に向けたアドバイスを継続して行うことも可能です。
今後の展望
本業界におけるM&Aは、今後どのように変化していくのでしょうか。業界全体の動向を見据えた展望を解説します。
- まず、いわゆる「2025年の崖」と呼ばれた課題やDX推進に伴う需要は、2026年以降も継続すると見られています。そのため、IT投資を拡大する大企業による積極的な企業買収は活発なままで推移するでしょう。
- また、MSP市場の急激な拡大も注目すべきポイントです。日本のクラウドマネージドサービス市場は、2033年までに369億米ドル規模に達するとの予測があり、MSP分野におけるM&Aはさらに加速する見通しです。
- さらに、中小企業における事業承継需要も無視できません。経営者の高齢化を背景に、ITインフラ分野でも事業承継を主目的とした案件は増加の一途をたどっています。 この業界では今後、単なる規模の拡大だけでなく、技術力(特にクラウド技術)と優秀な人材の確保が、M&Aを成功させる最大の鍵となっていくはずです。
みつきコンサルティングが情報通信業のM&Aで選ばれる理由
数ある仲介会社の中で、なぜ当社が多くのオーナー経営者から支持されているのか。その理由を分かりやすくまとめました。
公認会計士・税理士グループならではの高い専門性と信頼性
M&Aの手続には、複雑な税務リスクや財務の課題が必ず付きまといます。当社は税理士法人グループの強みを活かし、手取額を最大化するスキームの構築から、デューデリジェンスでの論点整理まで、専門家視点で徹底的にサポートします。
ITインフラへの深い知見と実績
SESの契約形態やMSPビジネスの特性、クラウド技術のトレンドなど、業界特有のビジネスモデルを熟知しています。専門用語を並べるだけでなく、貴社の真の価値を的確に言語化し、譲受企業へアピールすることが可能です。
初期費用ゼロの完全成功報酬制
着手金や中間金を一切いただかない「完全成功報酬制」を採用しています。M&Aが成立しない限り費用は発生しないため、資金的なリスクを気にすることなく、本当に納得のいく相手が見つかるまでじっくりとご検討いただけます。
完全成功報酬制
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
情報通信業のM&Aに関するFAQ
ご相談の現場でオーナー経営者からよく寄せられる、素朴な疑問と回答をまとめました。
十分に可能です。現場では自社プロダクトの有無よりも、エンジニアの稼働率や定着率、そして顧客との継続的な取引実績が重視されます。優秀な人材と安定した契約基盤があれば、多くの企業が買収に関心を示します。
契約条項と譲受企業の意向次第ですが、多くの場合、社名やブランドはそのまま残し、従業員の雇用や給与水準も維持・向上されるケースが一般的です。交渉の初期段階で、これらの条件を強く要望することが重要です。
株式譲渡を用いたM&Aの場合、会社の借入金に対する経営者の個人保証は、譲受企業に引き継がれるか、クロージング時に一括返済されることで解除されるのが基本です。これにより、経営の重圧から解放されます。
情報通信業に精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング
システム運用・ITインフラ業界のM&Aは、エンジニア人材の確保やクラウド技術の獲得を目的として非常に活発です。自社の強みを正しく評価し、最適な相手を見つけることで事業の更なる飛躍が期待できます。長年育て上げた会社と社員の未来を託す決断だからこそ、不安に寄り添う専門家の存在が不可欠です。
税理士法人グループである当社は、専門的な財務・税務の知見と、本業界に特化した豊富な実績を有しています。情報通信業のM&Aなら、みつきコンサルティングへぜひ一度ご相談ください。経営者様の思いを最優先に、完全成功報酬で誠心誠意サポートいたします。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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