M&Aは、第三者に事業承継するための手段として、一般化しつつあります。後継者に悩んでおり、M&Aを検討している経営者も多いでしょう。本記事では、中小企業の経営者がM&Aに向けてすべきこと、譲渡後の選択肢について解説します。
事業承継型のM&Aが増えている
帝国データバンクが2024年11月に発表した「後継者不在率」は52.1%と、半数以上の企業で後継者がいません。

また、M&Aなど(買収や出向、分社化など)による事業承継は20.5%と2割を超えています。

このことから、事業承継の手段としてM&Aを選択する経営者が増加していることがわかるでしょう。後継者がいない経営者にって、M&Aは身近な選択肢となっています。
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M&Aで経営者が行うべきこと
事業承継M&Aにおいて、経営者が自ら行うべきことがあります。
M&Aの時期を見極める
M&Aによる事業承継は、タイミングが重要です。たとえば、会社の業績が好調で大きなトラブルがないときなどがベストタイミングです。会社が好調であれば、好条件で譲渡できる可能性が高いため、できるだけよい条件で譲渡できるタイミングを見極めて準備しましょう。時期を逃してしまうと、譲受先が見つからず廃業のリスクが高まります。
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事業承継の適切な方法を検討する
事業承継の方法はM&Aだけではありません。親族に譲る、従業員などに譲るといった方法もあります。そのため、自社にとって適切な事業承継についてしっかりと検討しましょう。M&Aと他の方法を比較し、どちらが最適かを検討するのも重要です。この際、早めに専門家に相談するとスムーズに進みます。
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M&Aの条件を検討する
M&Aで事業承継することを決めた場合は、条件を検討しましょう。たとえば、会社や事業の売却価格や従業員の待遇など、譲受側に求めることについて検討します。M&Aの目的や優先する項目などを明確にしたうえで希望する条件を洗い出し、専門家に相談するなどして詳しい条件を詰めていくとよいでしょう。
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従業員の雇用・待遇を守る
M&Aで事業承継をすることで、企業規模が大きくなり従業員の待遇が向上する可能性があります。通常、譲渡側の経営者が従業員の継続雇用をM&Aの条件として、リストラを防ぐケースが多いでしょう。
ただし、退職金の扱いには注意が必要です。株式譲渡でのM&Aの場合は勤続年数が維持されますが、事業譲渡によるM&Aでは勤続年数がリセットされてしまいます。退職金に影響するため、事業譲渡でも勤続年数を引き継いでもらえるように交渉することが重要です。
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M&Aの契約を締結する
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)を行い、財務内容が正しいか、法的リスクなどの確認を行います。デューデリジェンスの結果を確認した後は、価格を含めた条件の調整を行いましょう。問題がなければ最終契約に進みます。契約時は専門的な知識が必要になるため、専門家に依頼してサポートを受けることがおすすめです。
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PMI(統合プロセス)がスムーズに進むよう尽力する
PMIとは、「Post Merger Integration」を略した言葉で日本語では統合プロセスとなります。M&Aが終了した後、経営統合する際のプロセスがPMIです。
譲受側の企業にスムーズに引継ぎできるようにしましょう。M&Aで事業承継したから終わりではなく、大切な従業員が働きやすい環境となるように力を尽くします。一般的には引継ぎが終わるまで会社に残って尽力するケースが多いでしょう。しっかり引継ぐことで、従業員の安心につながります。
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M&Aの手続費用を負担する
M&Aには費用がかかります。ここでは、M&Aを検討するうえで把握しておきたいM&Aの費用について解説します。
M&A仲介会社などへの相談料
M&Aをする場合、M&A仲介会社など専門家への依頼は必須です。M&A仲介会社などを利用する際には、依頼料がかかります。依頼料に含まれる項目は以下のとおりです。
- 相談料・着手金:M&A仲介会社と契約した際に発生する費用。着手金無料の会社も多い
- 月額報酬:M&Aの成立までに毎月支払う費用。月額報酬のかからない会社もある
- 中間報酬:譲受先が見つかり、M&Aの基本合意を結んだ際に支払う費用
- 成功報酬:M&Aが成約し、最終契約まで進んだ際に発生する費用。譲渡金額が高額になるほど、報酬料率も上がる
基本的には、M&Aが成約した場合にのみ費用がかかる、完全成功報酬の形式をとっているM&A仲介会社が多いようです。
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税金
M&Aの手法として株式譲渡が一般的です。株式を売却した際に発生する譲渡所得には、「譲渡所得税」がかかります。株式譲渡所得にかかる税率は、20.315%となっており他の税金と比較しても低税率です。
事業譲渡の場合には、消費税と法人税が課税されます。譲渡益が法人の利益として認識されるため、譲渡する事業資産と負債を差し引いた売却金額に法人税が課され、課税資産に消費税が課されます。
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M&A後の社長はどうなる?
M&Aで会社を譲渡した後、社長には主に2つの選択肢があります。ここでは、それぞれの選択肢について分かりやすく説明します。
会社に残って働く場合
社長がまだ比較的若かったり、意欲的に働き続けたいと希望する場合は、譲受企業のもとで会社に残り、「子会社の社長」として経営を継続することができます。また、社長が技術面での専門家である場合には、技術顧問などの専門的な立場で活躍を続けることも可能です。
ただし、譲渡前の社長だった頃に比べると、一般的に収入が下がる傾向がありますので、その点についてはあらかじめ理解しておくことが必要です。
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会社を離れる場合
会社を譲渡した後、経営の第一線から退いてゆっくりとした生活を送ることも、多くの社長が選ぶ選択肢の一つです。特に年齢的に仕事を続けるのが難しくなった場合には、引退を決意し、家族と過ごす時間を増やしたり、夫婦で旅行に出かけたりするなど、それぞれが理想とする穏やかな生活を送っています。
長年会社経営を支えてくれた家族への感謝を込めて、家族との時間を大切に過ごす方も多いです。また、新しい趣味を見つけたり、これまで挑戦できなかったことに取り組んだりするなど、新たな人生の楽しみ方を見つけることもよいでしょう。
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M&Aの相談先
M&Aを成功させるためには、専門家によるサポートが不可欠です。ここでは、M&Aを進める際に社長を支援する専門家の役割について詳しく解説します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、譲渡企業と譲受企業の間に立って両者を支援する専門家です。社長が円滑にM&Aを進められるよう、相手探し(マッチング)から契約成立(クロージング)まで幅広い支援を行います。通常、M&A仲介会社は中立的で客観的な立場から、双方の利害を調整しながら取引をまとめます。M&Aの手続き全般を任せることができるため、多くの社長が利用しています。
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公認会計士・税理士
M&Aでは財務・税務に関する専門知識が必要になる場面が非常に多いため、会計士や税理士など専門家のサポートが重要です。具体的には、会社の財務諸表の確認や分析を通じて、企業価値の計算を行う場面があります。また、譲渡した際の税金計算や税務処理など、複雑な手続きを正しく行うためにも、会計士や税理士のサポートが欠かせません。これらの専門家に適切なサポートを受けることで、社長は安心してM&Aの手続きを進めることができます。
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M&Aで社長がすべきこと(まとめ)
後継者がいない場合には、M&Aによる事業承継をするのも選択肢の1つです。M&Aで事業承継する際には、早めに準備を始めましょう。タイミングを見極めることで、好条件で譲渡できる可能性が高まり、従業員の雇用の維持や待遇向上などを実現しやすくなります。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループです。M&Aありきの提案ではなく、複数の選択肢のメリット・デメリットを比較して、適切な事業承継方法をご提案できます。また、経営コンサルティング経験者が緻密な計画を策定できるため、候補先から事業計画書の提出を求められた際も安心です。M&Aによる事業承継をお考えなら、お気軽にご相談ください。
著者

- 事業法人第三部長
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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