減資とは
減資とは、資本金の額を減少させることを指します。株主からの出資を受けた資金のことを資本金といい、企業はこの資金を元手に事業を運営します。減資は、株主から集めた資本金を減少させる手法です。実際に発行済株式数が減少することはなく、帳簿上の処理のみが行われます。なお、減資の種類には、有償減資、無償減資があります。
減資は、適切な手続きを行えば事業承継においても有効な手段となる場合があります。
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無償減資とは
無償減資とは、株主への資本の払戻しを伴わず、減資によって生じた剰余金を利益剰余金のマイナスに充当することで、累積赤字の補填や節税などを目的に実施されます。
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有償減資とは
一方で、有償減資は、株主への資本の払戻しを伴うものをいい、利益がでていない状況において、株主還元策としての配当を実施したい場合に用いられます。減資によってその他資本剰余金を作り、そこから配当することになります。会社法では、「金銭等を交付して資本金を減少させる(有償減資)」という概念がなくなり、「減資」と「資本の払戻し」が個別の取引として扱われるようになりました。
ただ、現在でも、「減資」と「資本の払戻し」を一連の取引として行えば、有償減資と同様の効果を得ることができます。したがって、本記事では「資本の払戻しを伴う減資」のことを有償減資と呼んで解説します。
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事業承継で減資が利用されるケース
事業承継では、いくつかの場面で減資が行われる場合があります。以下、どのようなケースで減資が検討されるかを説明します。
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事業承継税制の要件を満たしたいケース
事業承継における減資の用途としては、事業承継税制の活用があります。事業承継税制とは、現経営者から後継者への事業承継時に贈与税・相続税の猶予・免除を受けられる制度です。
この事業承継税制の適用を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、その要件の1つに「中小企業であること」があり、その基準となるのが「資本金」と「従業員数」であり、どちらかの要件を満たしている必要があります。その要件は、業種ごとに異なりますので、以下の表を参考にしてください。
例えば、サービス業のうちソフトウェア業又は情報処理サービス業の場合、資本金が3億円以下(または従業員数が300人以下)の要件を満たす必要があります。
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自社株を購入したいケース
株の保有者が分散しているとことは、経営権の分散にも繋がるため、事業運営においてだけでなく、事業承継の際にも不都合が生じやすくなります。安定した経営のためにも、円滑な事業承継のためにも、自社株式の分散を可能な限り避けることも重要です。有償減資を活用し、自社株を購入することでこれらの対策が可能になります。
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節税をしたいケース
大きな節税には繋がらないかもしれませんが、以下のようなニーズから減資が行われることがあります。
外形標準課税
資本金が1億円超の法人には事業税について外形標準課税適用されます。赤字でも税負担が発生するため、経営不振により赤字が続く場合には、減資により資本金を1億円以下にし、外形標準課税の適用を避けることも選択肢になります。ただし、取引要件となるケースなど信用力を図るひとつの基準でもありますので、資本金の多いことによるメリットも考慮し、必要性を十分に考慮したうえで判断することが重要です。
地方税の均等割り
地方税の均等割額は、「資本金等の額」および「従業員数」によって判定されます。減資を活用することで、結果として資本金等の額を減らすことができますので、地方税の均等割りを減少できる可能性があります。
中小企業の優遇税制
資本金を1億円以下にすることで、中小企業の優遇税制の特例を受けることが可能になります。中小企業の優遇税制の特例には次のようなものがあります。例えば、貸倒引当金の特例、交際費の損金不算入制度の特例、欠損金の繰り戻し、欠損金の控除制限、賃上税制、少額減価償却資産の特例などがあります。これら以外にも特例はありますので、自分の会社がどの特例を活用できるかを確認しておくことは重要です。
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減資手続の流れ
減資を行う際の主な手続きは下記のとおりです。
株主総会の特別決議
減資は、株主への影響が大きいことから、原則として株主総会の特別決議が必要です。株主総会においては、下記の事項について決議が必要となります。
- 減少する資本金の額
- 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とする時は、その旨と準備金とする額
- 効力発生日
債権者保護手続
減資は債権者にとって不利益となる場合もあるので、原則として債権者保護手続が必要となります。債権者保護手続では、官報公告と債権者への個別の催告を行います。なお、電子公告や日刊紙など官報公告以外の掲載方法を定めている場合には、官報公告のほか、電子公告や日刊紙への掲載をすることで、債権者への個別催告を省略できます。
債権者保護手続では、債権者が異議を申し述べられる期間を1か月以上設ける必要があります。したがって、減資の手続きが完了するまでには少なくとも1か月以上は掛かりますので、スケジュールに余裕をもって実施することが重要です。
効力発生
債権者保護手続の期間中に異議を述べる債権者がいなかった場合、株主総会の決議で定めた効力発生日に減資の効力が生じます。債権者から異議がでるなど債権者保護手続きが終了していない場合には、終了したときに効力が発生します。
登記
減資の登記申請を行う際の一般的な必要書類は、以下のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 公告を実施したことを証するもの
- 債権者への個別催告をしたことを証するもの
- 定款で定めた公告方法で公告をしたことを証するもの
取締役会で決議した場合や債権者から異議がでた場合などケースによって、必要な書類が異なりますので、実際に登記申請をする際には、書類等に不備がないよう司法書士に相談することが重要です。
事業承継における減資のまとめ
減資とは、会社の資本金の額を減少させる手続きです。資本金は事業承継税制における要件や法人税などの税率の適用に関する基準となっており、減資を行うことでメリットを受けられる場合があります。また、事業承継において自社株購入を行う際にも有用です。一方で、事業承継税制の取消事由に該当するケースがあるなど様々な状況を勘案して判断する必要がります。もちろん債権者への対応にも配慮しなければなりません。そのため、減資を行う際は減資が本当に必要か、またどのような点に注意しなければならないのか、関係者と協議しながら慎重に進めることが大切です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。
著者
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。
監修:みつき税理士法人
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