-本日は、みつきコンサルティングの仲介によりM&Aを成功させた株式会社S社の売主様にお話を伺います。まずは、御社の創業からこれまでの経緯について教えていただけますか?
当社は1995年に創業しました。私を含む3名の創業メンバーは、大手システム開発会社の医療システム部門で働いていましたが、より柔軟で革新的なソリューションを提供したいという思いから独立しました。最初は苦労の連続でしたが、徐々に顧客基盤を拡大し、特に健康診断システムで評価をいただくようになりました。
-創業時のエピソードで印象に残っているものはありますか?
創業当初、資金繰りに苦労し、私たち3人は給与を最低限に抑えて事業を運営していました。ある日、地元の大手病院から新規案件を受注できたのですが、その時の喜びは今でも忘れられません。その受注をきっかけに会社の評判が広がり、徐々に地元病院やクリニックでの認知度が上がってきたと思います。
-御社の主力製品である健康診断システムについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
我々の健康診断システムは、データ入力から結果分析、レポート作成まで一貫して管理できる点が特徴です。電子カルテや臨床検査システム、画像システム等との連携が可能です。また特定保健指導機能を標準装備しています。
-医療システム業界の動向について、どのように見ていらっしゃいますか?
医療システム業界は、医療保険制度も複雑になってきており病院やクリニックの保険請求担当者の手間が年々増えております。人手不足の昨今、事務作業の効率化のための便利なシステムが求められております。また、高齢化社会を背景に、予防医療の重要性も増しており、健康診断システムへのニーズも高まっていると感じています。
-そのような中で、M&Aを検討されたきっかけについて詳しくお聞かせください。
主な理由は二つあります。一つは事業承継の問題です。私が65歳の定年を2年後に控え、後継者が見つからない状況でした。もう一つは、新規受注先の拡大には、現在の商圏と異なる病院や大手病院との接点を持つため、より大きな組織の力が必要だと感じていたことです。
-社内での検討プロセスはどのようなものでしたか?
最初は、株主である経営陣3名で議論を重ねました。M&Aを検討してもお相手が見つかるかもわかりませんでした。買手企業からの意向表明書が出て来るまでは、社内の混乱を避けるため経営陣3名に限定して検討をしておりました。その後、買手企業であるM社から意向表明書を受領した際に社員持株会のメンバーを含めた株主全員で協議しました。検討する人数が多いと話がまとまりませんので、少数で検討を始めたことは良かったと思っています。
-みつきコンサルティングとの出会いについて教えてください。
みつきコンサルティングからの最初のアプローチは、お電話を頂いたことがきっかけでした。正直なところお電話を頂戴した際は、M&A仲介会社のほとんどが同じような内容の説明をされるので、あまり乗り気ではありませんでした。しかし、担当者の熱心さと専門知識に徐々に信頼感が生まれ、我々の業界特性を理解した適切なアドバイスをくれたことでM&Aを真剣に検討しようと思えました。
-買手企業とのマッチングプロセスはいかがでしたか?
簡単ではありませんでした。弊社のプロダクトが健康診断に特化したシステムで売上規模も大きくなかったため、なかなか良いお相手に巡り会いませんでした。そのような状況でしたが、みつきコンサルティングが粘り強く買手企業探しを続けてくれたおかげで買手企業のM社に出会えました。
-買手企業のM社との出会いはどのようなものでしたか?
最初の印象は、非常に前向きで積極的で我々の健康診断システムに強い関心を示してくれたことに嬉しく思いました。M社は大手病院を顧客基盤に持ち、既存顧客である病院に対して新しいソリューションサービスを探されていらっしゃいました。また、クリニック向けのサービスを強化したいというご意向もお持ちでいらっしゃったので、私どもの顧客基盤とプロダクトの可能性にご興味お持ち頂けたようです。
-トップ面談の様子はいかがでしたか?
緊張しましたが、和やかな雰囲気で進みました。会社運営に纏わる財務・税務・労務分野のご質問もありましたが、弊社のプロダクトのデモ説明などもさせて頂きました。半日ほどかかりましたが、弊社を理解するため、多くのご質問を頂けたことはM社の前向きな姿勢と捉えることができ好感が持てました。また、M社グループの理念や従業員との関係性などお聞きする中で、弊社と合いそうだなと安心しました。
-デューデリジェンス(DD)の過程で苦労されたことはありますか?
DDは非常に厳しい経験でした。特に財務・税務・法務のDDでは、250以上もの質問を頂戴し対応に苦労しました。みつきコンサルティングの担当者にサポートしてもらいながら最後まで何とか対応することができました。我々のような中小企業とM社のような上場会社では、会計基準や社内ルール、ガバナンスコードが大きく違うことから、M&A後の統合プロセスを考えると致し方ないことだと思いますが、慣れない作業でもあったので大変だったというのが正直な印象です。
-従業員への説明はどのように行われましたか?
従業員への説明は、最終契約書を締結してからクロージングまで少し時間がありましたので、その期間を使って説明を行いました。主要メンバーであった従業員株主には、意向表明書を受理した後、情報共有を密にしておりましたので、大きな混乱はありませんでした。従業員説明会には、M社から派遣される次期社長もご参加頂き、今後の運営方針などを丁寧且つ明確にご説明頂けたことで従業員の安心に繋がったと思います。
-M&A後の協業について、具体的にどのようなシナジーを期待されていましたか?
主に3つのシナジーを期待していました。1つ目は、弊社の健康診断システムをM社の大手病院ネットワークを活用し営業活動をすること。2つ目は、M社のデータ分析技術と我々の健診データを組み合わせた新サービスの開発。3つ目は、M社のブランド力を活かした全国展開です。実際に、M社のネットワークを活用した営業活動から数社の商談を進めており、大きな可能性を感じています。
-M&A後の統合プロセスはスムーズに進みましたか?
最終契約書締結後からクロージングまでの間、統合プロセスの準備のため、M社の営業部門や管理部門の担当の方とクロージングより先行してミーティングを重ねておりました。営業部門は顧客紹介やメンテナンス体制の構築など徐々に対応していくことで問題ありませんが、管理部門についてはスピーディーに対応する必要があり、弊社の限られた人員リソースと経験不足もあり、統合完了には非常に多くの時間と労力がかかったと思います。大変ではありましたが管理部門の体制が盤石になったことで、従業員の職場環境や労働環境などが向上したため、結果的には従業員にとっても良かったと思います。
-御自身の譲渡後の生活について教えていただけますか?
譲渡後は顧問として1年間残り、業務の引継ぎに努めました。M社から私の後任社長を派遣して頂けたので、引継ぎはスムーズに進みました。今後は、息子が地元で事業を行っているので少し手伝いながら、趣味の農業に時間を使いたいと思います。
-M&Aのプロセスで特に印象に残っている出来事はありますか?
弊社は、従業員の一部に自社株を保有してもらうことで、事業承継を進めてきました。しかし、この方法も代を重ねるごとに株式取得費用問題や株式取得者の減少などもあり、社内のみでの事業承継が難しい状況になりました。こう言った背景からM&Aを検討したのですが、いざ、M&Aの話になると抵抗のあるメンバーや条件に納得のいかないメンバーなども出てきました。M社から意向表明書を頂戴しましたので、速やかに回答する必要がありましたが、何度も株主全員で話し合い最終的に全株主の同意を得ることができました。この時は、やはり弊社ではM&Aは難しいかなと思いましたが、みつきコンサルティングからもご助言頂きながら、株主と議論を重ね最終的に全株主で同意できたことが印象深く残っております。
-M&Aを検討している他の中小企業経営者へのアドバイスをお願いします。
事業承継の選択肢にM&Aを入れるなら、まずは、買手企業探しをしてみるのが良いのではないでしょうか。自社で探すのは時間と労力がかかりますので、M&A仲介会社などに依頼することお勧めします。弊社もそうでしたが、社内には色々な考えを持った役員や従業員がいますのでM&Aに消極的な方もいらっしゃると思います。しかし、真剣にM&Aを検討するのであれば、より多くの情報を得て議論するしかありません。その情報の一つとして、買手企業がどんな会社なのかは決断に大きな影響を与えると思います。やはり動いてみないと、より良い判断はできないのではないでしょうか。
-最後に、みつきコンサルティングの支援についてどのように評価されていますか?
みつきコンサルティングの支援は本当に素晴らしかったです。特に印象的だったのは単なる仲介者としてではなく、我々の事業と将来性を深く理解しようとする姿勢を見せてくれたことです。弊社も30年の歴史があり、事業承継によるM&Aは非常に大きな決断でした。プロセス全体を通じて常に我々の立場を考え、アドバイスを頂き弊社の将来を一緒に考えて頂けたことに大変感謝しております。中小企業にとって、M&Aは人生で一度あるかないかの経決断です。その重要な局面で、みつきコンサルティングのような信頼できるパートナーに出会えたことは、非常に幸運だったと感じています。