- まず、M&Aを検討されるきっかけについてお聞かせください。
当社は創業以来、主に学校関連の広告制作を手がけてきました。私と妻で立ち上げた会社で、長年にわたり経営してきましたが、年齢的なこともあり、事業承継を考える時期に来ていました。子供が2人おりますが、会社経営には興味がなく、親族内での後継者候補がいない状況でした。
- 社内での承継は検討されなかったのでしょうか?
実は、番頭への引継ぎも考えましたが番頭も60歳過ぎ、事業を引き継いでもすぐに次の後継者を検討しなければならないということで断られてしまいました。その他にも社内に後継者候補はおりましたが、経営と実務では全く違った能力が必要なため、社内承継よりも第三者への承継(M&A)を検討するようになりました。
- 御社の事業環境について、どのような課題を感じていらっしゃいましたか?
大きく2つの課題がありました。1つは、主戦場である学校関連の広告業界が縮小傾向にあり、今後は他業界の仕事も取っていく必要があると考えていました。もう1つは、WEB制作力の不足です。これまで紙媒体の制作がメインでしたが、お客様のニーズが変化し、WEB制作のご相談が増えてきておりました。しかし、社内で対応できるリソースが少なく外注を活用し対応しておりましたが、スピード感の問題やイメージの共有が難しいと言ったことが課題となっていました。
- 従業員の方々の状況はいかがでしたか?
20年以上勤務している従業員が半数ほどおります。長年、紙媒体の制作に携わってきた彼らに、今からWEB制作の勉強してもらっていては、クライントにサービスとして提供するには時間がかかり過ぎます。人材採用も検討しましたが、昨今の人手不足は当社の業界でも深刻で即戦力の採用は極めて難しい状況でした。
- みつきコンサルティングとの出会いについて教えてください。
みつきコンサルティングからお手紙とお電話を頂いたことがきっかけでした。最初は半信半疑でしたが、送られてきたお手紙を見て、WEB制作会社が買い手候補であれば弊社の弱みを補完してもらいシナジーが見込めるのではと思い、面談のアポイントを取りました。年末の最終週の忙しい時期にもかかわらず、すぐにご来社頂き迅速な対応をして頂けたことで誠意を感じましたね。
- 最初の面談の印象はいかがでしたか?
担当者の方が非常に熱心に話を聞いてくださり、私たちの状況をよく理解してくださったと感じました。M&A後の会社がどのように変化していくのかなど、詳しくご説明していただき、不安も少し和らぎました。
- M&Aを進めるにあたり、どのような不安がありましたか?
やはり、従業員の処遇が一番の心配でした。長年一緒に働いてきた仲間たちが安心して働き続けることができる要因として一番重要なことだと考えていたからです。また、会社の文化や理念がM&A後も継続されるかということも不安の一つでした。これらの不安についても、先方との交渉の中でみつきコンサルティングの方が一つずつ確認してくださり、M&Aの交渉を進めて頂けので、少しずつ不安が解消していきました。
- みつきコンサルティングのサポートで、特に印象に残っていることはありますか?
企業価値算定の際、私たちの業界の現状や会社の状況を踏まえて、非常に丁寧に説明してくださいました。また、買い手候補との面談前には、対応の仕方やお話の内容など事前にレクチャーをしていただき、面談準備を入念にできましたので心強かったです。常に私たちの立場に立って考えてくださる姿勢に、大変感謝しています。さらに、M&Aの交渉の中も次に何が起こるのか、どのような準備が必要なのかを事前にご説明して頂けましたのでとても助かりました。
- 買い手候補との面談はどのような印象でしたか?
最初は緊張しましたが、買い手候補の社長さんは、弊社の強みをよく理解してくださり、将来のビジョンも明確に示してくださいました。特に、従業員の処遇について前向きな姿勢を示してくださったことが、大きな決め手になりました。また、弊社の課題の一つであったWEB制作の分野での協力体制についても具体的な提案をいただき、会社の将来性を感じることができました。
- M&Aを進める中で、予想外だったことはありますか?
デューデリジェンスが予想以上に細かい調査で驚きましたが、買い手候補の立場になれば当然のことだなと思い、誠心誠意対応させて頂きました。デューデリジェンスは自社の経営状況を細かく見直す機会となり、改めて気づくことが多かったですが、M&Aを機に改善できる良い機会だと前向きに捉えるようにしました。
- 従業員の方々への説明はどのように行われましたか?
みつきコンサルティングから他の会社の事例などお聞きし、弊社では幹部社員に対して個別に説明し、その後、全従業員に対して説明会を開くという2段階に分けて説明することにしました。私が引退した後も従業員の雇用を守ることを理由にM&Aに踏み切りましたので、私の想いや今後の期待を込めて丁寧に説明することで従業員も前向きに理解してくれたと思います。全社員と買い手企業の顔合わせでは、買い手企業の社長にも参加していただき、直接ビジョンを語っていただいたことで、従業員はより安心できたと思います。特に印象的だったのは、従業員一人一人に質問の機会を設け誠実に対応頂けたことで従業員たちも自分たちの将来について具体的にイメージできたように思います。
- M&Aの交渉過程で、特に難しかった点はありましたか?
譲渡価格やその他条件を詰める作業は、正直なところ難しかったです。譲渡側と譲受側でお互い立場が違うため、内容次第ではどちらかが譲歩しなければならないことが多々あります。中立的な立場で双方の意見を聞き調整してくださった、みつきコンサルティングの方は大変だったと思います。真摯に対応頂いたことにより最終的に両者が納得のいく結果に至ったことに感謝しております。
- クロージングまでの過程で、印象に残っているエピソードはありますか?
買い手企業の社長との最後の面談が、会食形式で行われたことが印象に残っています。ビジネスの話だけでなく、お互いの経歴や人生観について語り合う中で、信頼関係が深まったように感じました。この面談後、より前向きな気持ちでクロージングに向け自分の心も整理できたと思います。
- M&Aが完了した今、どのような気持ちでしょうか?
正直なところ、寂しさと安堵感が入り混じっています。長年経営してきた会社を手放すことは簡単ではありませんでしたが、従業員の未来が保証され、会社がさらに発展する可能性を得たことに喜びを感じています。また、私たち夫婦にとっても、新たな人生のステージに進む良い機会になりました。特に、会社の将来を心配することなく、自分たちの時間を持てるようになったことは、大きな変化です。
- 今回のM&Aを通じて、学んだことや気づいたことはありますか?
経営者として、常に先を見据えて準備することの重要性を改めて感じました。準備なくして会社の将来を決めることはできません。一方で、この準備を自分たちだけでやることの難しく、みつきコンサルティングのような専門家のサポートを受けることの大切さも実感しました。みつきコンサルティングの存在がなければ、ここまでスムーズにM&A(事業承継)を進めることはできなかったと思います。
- 同じような状況にある経営者の方々へ、アドバイスがあればお聞かせください。
まず、M&Aを「会社を売る」というネガティブな視点ではなく、「会社と従業員の未来を託す」というポジティブな視点で捉えると少し検討のハードルが下がるのではないでしょうか。事業承継を検討する際に、託す相手が「人」なのか「会社」なのかの違いだけで、会社が安定し従業員が安心してお仕事に従事できる環境を整えることは変わりません。託す相手を探すというポジティブな視点でM&Aも検討することをお勧めします。また、M&Aのプロセスは時に長く感じることもありますが、会社オーナーの最後の経営判断となりますので、焦らず丁寧に進めることが、良い結果につながると思います。
- みつきコンサルティングのサポートについて、改めてご感想をお聞かせください。
本当に感謝しています。単なる仲介業者ではなく、私たちの立場に立って親身になってサポートしてくださいました。特に、複雑な手続きや交渉の場面で、専門的な知識と経験に基づいたアドバイスは非常に心強かったです。また、常に迅速かつ丁寧な対応をしていただき、安心してM&Aを進めることができました。さらに、私たちの感情面にも配慮してくださり、時には励ましの言葉をかけていただいたことも、大きな支えになりました。みつきコンサルティングの存在があったからこそ、このM&Aを納得と期待で終えることができたと確信しています。
- 最後に、M&A後の会社の様子や、ご自身の今後の展望についてお聞かせください。
会社は新しい経営陣のもと、着実に変化を遂げています。WEB制作の分野で新しい技術を導入し、従業員も意欲的に学んでいると聞いています。私たち夫婦も、業務の引継ぎのため時々会社を訪問していますが、従業員たちが生き生きと働いている姿を見ると、本当に良かったと思います。また、新しい経営陣が、私たちが大切にしてきた会社の文化や価値観を尊重しながら、新しい風を吹き込んでいることにも安心しています。
私たち自身は、長年の経営で培ったノウハウを活かし、地域の中小企業の支援や若手起業家のメンターとして活動していく予定です。M&Aを経験したことで、事業承継の重要性をより深く理解できました。これからは、その経験を社会に還元していきたいと考えています。また、個人的には、これまで忙しくて取り組めなかった趣味にも時間を割けるようになり、新たな人生の楽しみを見出しています。