-本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。まず、M&Aを検討されるきっかけについてお聞かせください。
ありがとうございます。M&Aを検討するきっかけとなったのは、後継者問題でした。私も70歳を超え、会社の将来を本気で考えなければならない時期に来ていました。息子が社内で働いていましたが、経営を任せられるほどの準備ができておらず、親族内での事業承継は難しい状況でした。
また、建設コンサルタント業界を取り巻く環境も大きな要因でした。資格者が必須となる業種なので、社内の世代交代も進める必要があり若い人材の確保や育成が重要なのですが、昨今の人材不足問題は私ども業界でも深刻な問題となっています。当社単独では、これらの課題に対応していくのが難しくなってきたと感じております。
さらに、人口減少や都市開発の鈍化なども手伝って地方の中小企業では、当社単独での今成長には限界があると感じていました。より大きなグループの一員となることで、会社にとっても従業員にとっても、新たな成長の機会が得られると考えたのです。
-なるほど、後継者問題と業界の変化、そして成長への期待が大きな要因だったのですね。M&Aのプロセスを始められた時、どのような不安や期待がありましたか?
最初は不安の方が大きかったですね。M&Aの経験がなかったので、どのように進めていけばいいのか、本当に希望にあった買い手が見つかるのか、従業員の雇用は守られるのかなど、様々な不安がありました。
特に従業員のことは大きな心配でした。当社は地域に根ざした企業で、長年働いてくれている従業員も多くいます。彼らの雇用と将来を守ることが、経営者の大きな責任だと感じていました。
一方で、期待もありました。新しいオーナーのもとで会社がさらに発展すること、従業員にとってより良いキャリアを積む機会が生まれること、個人的には長年経営者として抱えてきた重荷から解放されるという期待もありました。愛着のある会社を手放すことへの寂しさはありましたが、新しいステージに進むことへのワクワク感も持てていたと思います。
-従業員の方々への配慮が大きかったのですね。M&Aを進める上で、従業員の方々への対応はどのようにされましたか?
従業員への対応は非常に慎重に行いました。まず、買い手候補先との面談を済ませM&Aの検討が具体化してきた段階で、幹部社員にはM&Aを検討している旨を説明しました。彼らの理解と協力を得ることが重要だと考えたからです。
全従業員への説明は、M&A先が決まり、最終契約書の合意に至った段階で行いました。私から従業員へ直接、会社運営の将来のこと、従業員一人一人のキャリアや雇用を守ることなど、M&Aという決断が最良であると思っていることを丁寧に説明しました。
幸い多くの従業員が理解を示してくれました。中には不安を感じる者もいましたが、個別に話をする機会を設け、一人ずつ丁寧に対応しました結果、ほとんどの従業員が新体制での継続勤務を選択してくれました。
-従業員の方々への丁寧な対応が、円滑なM&Aにつながったのですね。では、買手企業を選ぶ際に、特に重視されたポイントは何だったのでしょうか?
買手企業を選ぶ際に最も重視したのは、当社の企業文化や価値観を理解し、尊重してくれる企業であることでした。弊社は、地域に根ざした企業として、長年にわたり官公庁や民間企業と信頼関係を築いてきました。その信頼関係を継続し、さらに発展させて頂ける企業を探していました。
また、技術力の向上や新しい分野への挑戦の機会を提供してくれそうかという点も重要なポイントでした。官公庁の仕事では、資格者の人数や受注実績が新規受注できる案件規模や難易度に大きく影響されます。今回の買手企業のような大手グループ会社であれば、人材リソースや受注実績なども豊富で、よりレベルの高い案件を受注できる可能性が高くなります。そのような案件が受注できれば、当社の人材も成長の機会が増え、新しい分野にチャレンジできる環境が得られると考えました。
今回の買手企業は、これらの重視していたポイントに期待が持てたこと、そして買手企業の理念でもある地域の未来を創るという考えに共感が持てたことからが、M&Aのお相手としてお願いした理由です。
-なるほど、企業文化の共通点や従業員の将来性を重視されたのですね。M&Aのプロセスを進める中で、みつきコンサルティングの支援はどのような点で役立ちましたか?
M&Aのプロセス全体を通じて常に頼れる存在でいてくださり、非常に丁寧に支援して頂いたという印象です。特に印象に残っているのは、以下の点です。
まず、M&Aの初期段階での適切なアドバイスです。私たちはM&Aの経験がなく、何から始めればいいのか分からない状態でした。みつきコンサルティングの担当の方が、M&Aプロセスの全体像を最初に示し、各段階で何をすべきかを明確に説明してくれたことで、自分たちが今、何をやっているのか、これからどのくらいの時間がかかりそうかなど状況を把握しながら進めることができたと思います。
次に、買手企業の選定と交渉のサポートです。弊社側からの希望条件を確認頂き、希望に合った買手候補企業を複数社紹介してくれました。ご紹介頂いた候補先はそれぞれ、どのような理由で候補先としてご提案頂いたかについてもご説明頂けましたので、M&A後のイメージもし易かったです。
最後に、他社でのケーススタディの紹介や交渉に関するアドバイス、クロージングに向けての各種手続きなど、細かい部分までサポートしてくれたことも大きな助けになりました。全体を通して、みつきコンサルティングの担当者の専門知識と経験、そして私たちの立場に立った親身な対応に、大変感謝しています。
-みつきコンサルティングの支援が、M&Aの成功に大きく貢献したということですね。M&A後の統合プロセスについてはいかがでしたか?予想外の課題などはありましたか?
M&A後の統合プロセスは、予想以上にスムーズに進みました。これは、事前の準備と、買い手企業側の丁寧な対応が大きかったと思います。
あえて言うなら、バックオフィスシステムの統合には、予想以上に時間がかかりました。当社と買手企業では使用しているシステムが異なっており、データの移行や新システムの導入でかなりの時間を要しました。バックオフィス機能はグループで集約することで効率的になることは間違いありませんので、M&A後の大切なプロセスとだとの認識のもと一生懸命対応しました。弊社の事務方は大変だったと思いますが、今では事務方も業務効率が上がり良かったと感じているようです。
-統合後の社内の変化について、具体的な例をいくつか挙げていただけますか?
まず、第一に感じるのは営業面での変化が大きいですね。買手企業のグループとなったことで、採用活動の強化ができ人材確保も進みました。十分とは言えませんが資格者の増員もできましたので、これまで手が届かなかった大型プロジェクトへのアプローチにもチャレンジできるようになりました。
また、働き方改革の面でも進展がありました。買手企業の先進的な取り組みを参考に、フレックスタイム制の導入や業務システムの導入で業務の効率化を図り、残業時間の圧縮など従業員の働きやすさが向上したと思います。働き方改革は生産性の向上にもつながっていると思います。
-素晴らしい変化ですね。最後に、M&Aを検討している他の中小企業の経営者に向けて、アドバイスがあればお聞かせください。
はい、最も重要なのは、「なぜM&Aを行うのか」という目的を明確にすることだと感じています。単に事業を売却するだけでなく、会社や従業員の将来を鑑み目的を明確にした上でM&Aを進めることをお勧めします。M&A完了までのプロセスは正直、短い時間とは言えません。時間が経過するにつれてM&Aという決断が良かったのかと迷いが出ることもあります。そういった迷いや不安に追い込まれないためにも、M&A実施の目的を明確にすることが大切だと感じます。
また、みつきコンサルティングのように譲渡側と譲受側両方のアドバイザーに就くM&Aコンサルティング会社も良いなと思いました。M&Aの条件交渉が進んで行くと、細かい内容やハードな内容など、お互いの主張がぶつかるような時もありました。両者の状況や価値観を理解した方にアドバイスを頂くことで、スムーズに交渉が進んだのではと感じております。M&Aは、成約後も統合プロセスなど譲渡側と譲受側が協力して進めることが多々あります。交渉で大きな衝突が無かったことで、お互い前向きに協力できている要因の一つではないかと感じております。少なくとも私どものM&Aでは、みつきコンサルティングのような支援体制が合っていたと感じております。