成約年月:2026年3月
取材先:代表取締役 N様
-本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。まずは、I社のこれまでの歩みと、主な事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
N様:当社はもともと建築工事や不動産売買、そしてそれらの管理を主軸としてスタートした会社です。地域の皆様の生活基盤を総合的に支えたいという理念のもと、時代とともにお客様のニーズに応える形で、飲食事業や今回譲渡の対象となった介護施設の運営など、多角的に事業を展開してまいりました。おかげさまで設立から長きにわたり、地域に根差した企業として一定の評価をいただけるまでに成長しました。私自身は主に建築や不動産の領域を担当して会社の屋台骨として拡大に注力し、新規事業として立ち上げた介護事業については、専務を中心に現場を任せて運営しておりました。
-多角的に事業を展開される中で、介護事業を始められたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
N様:きっかけは、建築や不動産業を手掛けていたなかで、長らくご愛顧いただいていた地主様へ土地の有効活用を踏まえた介護施設の提案をおこなったことから始まりました。建築から運営まで担ってもらえるならお任せいただけるとのお話しでしたので、当時は半ば勢いで受託するものの、実際に始めてみると、施設を作ることはできても、その中でのサービス提供や専門的な介護ノウハウの構築は全くの別物でした。建築や不動産とは異なるベクトルでのマネジメントが求められ、特に人材の確保や育成には非常に苦労しました。
-介護事業の運営においては、具体的にどのような点で苦労を感じておられたのでしょうか。
N様:やはり一番の課題は、人材の定着と収益性の確保でした。介護業界全体が抱える慢性的な人手不足の波は弊社にも押し寄せ、スタッフの採用や定着には常に頭を悩ませていました。利益面に関しても、介護報酬という制度の中で利益を出すためには、効率的な人員配置や稼働率の維持が不可欠ですが、我々は本業が異なるためノウハウが乏しかったのです。専務が身を粉にして現場にいてくれていましたが、負担が大きいなかでこのまま我々が運営を続けることが利用者様や従業員にとって本当に良いことなのか、徐々に疑問を感じるようになっていきました。
-そのようなご苦労がある中で、M&Aによる事業譲渡を検討し始めた時期や理由について教えてください。
N様:具体的に考え始めたのは、みつきコンサルティングさんからお電話をいただいた頃です。実はそれより少し前から、事業の「選択と集中」の必要性を痛感していました。弊社には私の子どもたちがおり、会社としての後継者問題はクリアしていたのですが、子どもたちは介護事業にはあまりがなく、引き継がせるのは難しいと感じていました。運営面の苦労も絶えなかったため、ちょうど専務とも「そろそろどうしようか」と話し合っていた矢先でした。そんな折に、担当者の方から「本業ではない介護事業の譲渡を検討しませんか」とご提案いただき、あまりにもタイムリーだったため、これも何かの縁だと感じてお話を伺うことにしました。
-親族内承継ではなく、第三者への譲渡(M&A)という道を選ばれたのはなぜでしょうか。
N様:最大の理由は、介護事業の専門性と、子どもたちの意向です。私の子どもたちは、会社の主軸である建築や不動産の分野には明るく、そちらを引き継いでいく意思を持っています。しかし、介護事業は全くの異業種であり、専門的な知識や独自のマネジメントスキルが求められます。これまで専務が苦労して切り盛りしてきた現状を知っているだけに、子どもたちにその重荷を背負わせたくありませんでした。また、利用者様への責任という観点からも、介護事業に精通し、より良いサービスを提供できる専門の事業者様に引き継いでいただく方が、利用者様にとっても従業員にとっても幸せな結果につながると判断し、第三者への事業譲渡を選択しました。
-みつきコンサルティングを知ったきっかけや、第一印象はいかがでしたか。
N様:きっかけは、みつきコンサルティングさんからのダイレクトメールと、その後の継続的なお電話でした。熱心に何度もお電話をかけてくれたなかで、多忙を理由になかなか電話に出られなかったのですが、いざお話ししてみると、担当者の方は非常に丁寧で、こちらの状況をよく理解した上で的確な提案をしてくださいました。無理に押し売りするような態度ではなく、弊社の課題に寄り添い、解決策の一つとしてM&Aを提示してくれた点に好感を持ちました。
-担当者との初回面談では、どのようなお話をされたのでしょうか。
N様:最初の面談では我々の意向をお伝えするとともに、後継者問題の現状や、介護事業の運営における苦労について率直にお話ししました。ちょうどその時期は決算作業が重なっており、専務が多忙を極めていたため、依頼資料などの提供が遅れてしまう旨もお伝えしました。それに対して担当者の方は嫌な顔一つせず、「無理のない程度で構いませんので、次回のご案内をさせていただきます」と非常に柔軟かつ温かく対応してくださいました。この初回の対応を見て、この会社なら我々のペースに合わせて信頼して任せられそうだと強く感じたのを覚えています。
-企業価値評価(バリュエーション)の結果をご覧になった際の率直なご感想はいかがでしたか。
N様:2回目の面談で、担当者の方から介護事業の移動資産や負債の状況及び収益性を踏まえ、評価額をご提示いただきました。正直なところ、我々としてはこれまでの苦労もあったため、少し物足りなさを感じたのは事実です。しかし、担当者の方が、現実的な業界内の目線や経済合理性を論理的に説明してくださったため、納得せざるを得ませんでした。同時に、進行期の業績によって評価額に変動が生じる可能性があることもご指摘いただき、「一旦は努力目標として頑張りましょう」と前向きな言葉をかけていただいたことで、我々も最後まで事業価値を高める努力を続けようと決意できました。
-お相手探し(マッチング)の過程では、どのような不安やご要望がありましたか。
N様:担当者の方からはじめに約50社ほどのロングリストをご提示いただき、本格的に相手探しがスタートしました。我々としては、本業ではないということもあり、業界内の企業にはあまり詳しくはなかったのですが、地域に情報拡散するのも不安でしたので、極力近隣だけは控えてほしいとお願いしました。担当者の方はこの要望をしっかりと汲み取ってくださり、数ヶ月間、幅広くお相手を探してくださいました。道中、希望条件で本当に相手先が現れるのかという不安はありましたが、担当者の方から定期的な状況報告もあり、安心して任せておりました。
-最初のトップ面談のお相手であったM社様について、どのような印象をお持ちになりましたか。
N様:M社様は、近年急速に事業を拡大されている勢いのある企業様でした。面談では、物腰の柔らかい取締役の方を中心にご対応いただき、非常に好感を持つことができました。ただ、我々とは運営方針が大きく異なる点が懸念材料でした。事前に担当者の方からその旨を伺っており少し戸惑いはありましたが、我々としては、収益性が改善し現場に活気が出るのであれば、従業員にとっても良いことだと前向きに捉え、交渉を進めることにしました。
-M社様とは最終的にブレイク(見送り)となってしまいましたが、その際の心境はいかがでしたか。
N様:意向表明書の段階で、譲渡価額に大きな乖離がありました。進行期に施設の空室が生じたことを考慮して譲歩する姿勢を見せ、お互いに折り合いをつけようと検討しましたが、最終的にM社様が並行して進めていた別案件を優先されることになりブレイクとなってしまいました。残念な気持ちはありましたが、M&Aはご縁の要素も大きいため仕方のないことだと受け止めました。
-その後、相手探しが再開され、S社様(K社長)とのトップ面談が実現しましたが、どのような経緯だったのでしょうか。
N様:S社様は、実はマッチングの初期段階で一度、希望価額に目線が合わずにお見送りとなっていた企業様でした。しかし、担当者の方がもう一度アプローチしてくださり、トップ面談が実現しました。K社長にお会いしてまず感じたのは、同じ県内で介護事業を展開されている同業他社様としての安心感です。既存の体制をそのまま引き継いでいただけるという点で、非常に心強く感じました。一度ご縁がなかった企業様と再びこうして面談の機会を持てたのも、担当者の方が過去の経緯やお相手の趣向をしっかりと把握し、適切なタイミングで動いてくださったおかげです。
-S社様(K社長)の理念や方針で、特に共感されたポイントを教えてください。
N様:最も共感したのは、介護を単なるサービスとして捉えるのではなく、「地域づくり」をテーマに掲げておられる点です。K社長のそのポリシーは、弊社が長年大切にしてきた不動産開発や街づくりという理念と完全に一致するものでした。実際に施設をご見学いただいた際にも、施設もさることながら、我々の街づくりに対する取り組みを高く評価していただき、非常に嬉しく思いました。お互いの想いが通じ合ったことで、当初は希望価額の目線が合わずお見送りとされましたが、S社様からも、「今後の関係性も踏まえて、ある程度の譲歩はしたい」という大変ありがたいお言葉をいただくことができました。
-最終的に、S社様への譲渡を決断できた理由は何だったのでしょうか。
N様:理由は、S社様の歩み寄るお気持ちと担当者の方の誠意です。当初、譲渡に向けて動き始めた時の希望条件とは異なり、様々な検討事項もありましたが、その都度真摯に向き合ってS社様と協議し続けられたことや、みつきコンサルティングの方にも誠意ある行動をとっていただいたことでS社様への譲渡を決断することができました。
-エグゼキューション(契約からクロージング)の過程で、特に苦労された点や印象に残っているエピソードはありますか。
N様:本件は事業譲渡スキームにつき、個別に契約を巻きなおす必要がありました。特に懸念されたのが、従業員や入居者様との契約で、認識の相違が生じることもありましたが、みつきコンサルティングの担当の方にも伺いつつ、当社の専務とS社様の現場責任者の方で綿密なコミュニケーションをとらせていただき、なんとか移行することができました。
-無事にクロージングを迎えた日の心境についてお聞かせください。
N様:予定通りS社様による運営が開始され、無事にクロージングを迎えた日は、肩の荷が下りたような深い安堵感に包まれました。長年、専務と共に悩み、苦労してきた事業を、我々以上に立派に育てていただける素晴らしい企業様にお渡しできたことは、経営者としてこれ以上ない喜びです。振り返ってみれば、紆余曲折はありましたが、最終的にすべての関係者にとってハッピーな結末を迎えることができ、感無量です。
-最後に、I社の今後の展望についてお聞かせください。
N様:今回の事業譲渡により、我々は最大の経営課題であった「選択と集中」を見事に実現することができました。これからは、我々の原点であり最大の強みである建築と不動産に経営資源を全集中させることができます。私が長年取り組んできた地域に根差した街づくりを、さらにスケールアップして展開していくつもりです。また、今回素晴らしいご縁をいただいたS社様とも、同じ県内で地域社会に貢献する企業同士として、何らかの形で協力し合える関係を築いていけたらと願っています。みつきコンサルティングの担当者の方には、最初から最後まで親身に寄り添い、多大なるご尽力をいただいたことに心から感謝申し上げます。



