- まず、F社様の会社概要と、M&A検討の経緯についてお聞かせください。
当社は千葉県に本社を置くビルメンテナンス会社です。創業以来、オフィスビルや商業施設の清掃業務を中心に事業を展開してきました。年商は約3億円、従業員は50名ほどで、地域に密着した経営を心がけてきました。
M&Aを検討したきっかけは、私自身が70歳を過ぎ、後継者問題に直面したことです。息子はいるのですが、大手に勤めており、当社を継ぐ意思はありませんでした。このまま事業を続けていくことに不安を感じ始めたのが、M&Aを考え始めたきっかけです。
- 長年経営者として会社を率いてこられた中で、印象に残っているエピソードはありますか?
そうですね、創業当初の苦労は今でも鮮明に覚えています。当時はビルメンテナンス業界も今ほど認知されておらず、顧客開拓に苦心しました。特に印象に残っているのは、大手デパートの清掃業務を受注したときのことです。徹夜で提案書を作成し、何度も足を運んで信頼関係を築き上げました。その努力が実を結び、契約にこぎつけたときの喜びは今でも忘れられません。
また、リーマンショック後の経営危機も大きな試練でした。顧客企業の経費削減の波を受け、契約の打ち切りや値下げ要請が相次ぎました。しかし、従業員と一丸となってコスト削減と品質向上に取り組み、なんとか乗り越えることができました。この経験から、危機に強い企業体質の重要性を学びました。
- ビルメンテナンス業界の現状と将来展望について、どのようにお考えですか?
ビルメンテナンス業界は、近年大きな変革期を迎えていると感じています。一つは、技術革新の波です。IoTやAIの導入により、清掃ロボットや効率的な管理システムが登場しています。これらの新技術を如何に取り入れていくかが、今後の競争力を左右すると考えています。
また、環境への配慮も重要なトレンドです。エコ清掃や省エネ管理など、環境負荷を低減するサービスへの需要が高まっています。当社でも、環境に配慮した洗剤の使用や節水型の清掃方法を積極的に取り入れてきました。
さらに、人手不足も業界全体の課題です。高齢化や若者の建設業離れにより、人材確保が難しくなっています。この点は、M&Aを考える上でも大きな要因となりました。
将来的には、総合的なファシリティマネジメントへのニーズが高まると予想しています。単なる清掃だけでなく、建物の維持管理から省エネ提案まで、幅広いサービスを提供できる企業が生き残っていくでしょう。
- M&Aを決断されるまでに、どのような思いがあったのでしょうか。
正直なところ、最初はM&Aに対して消極的でした。「うちのような小さな会社を買ってくれるところがあるのだろうか」という疑問もありましたし、長年築き上げてきた会社を手放すことへの抵抗感も大きかったです。
特に、従業員の処遇や会社の文化が変わってしまうのではないかという不安が強かったですね。当社は家族的な雰囲気を大切にしてきましたから、それが失われてしまうのではないかと心配でした。
また、お客様との関係も気がかりでした。長年信頼関係を築いてきたお客様に、どのように説明すればいいのか、サービスの質が落ちてしまわないかなど、様々な懸念がありました。
ただ、従業員の将来や、お客様への責任を考えると、このまま漫然と経営を続けるわけにもいかないと思いました。私一人の思いだけでなく、会社に関わる全ての人々の未来を考えなければいけないと気づいたんです。それでも、M&Aという選択肢を真剣に考えるまでには時間がかかりました。
- みつきコンサルティングとの出会いについて教えてください。
みつきコンサルティングとの出会いは、地元の金融機関からの紹介でした。最初は半信半疑でしたが、担当の方が熱心に話を聞いてくださり、徐々に信頼関係が築けていきました。
特に印象に残っているのは、私の会社への思い入れや不安な気持ちを丁寧に聞いてくださったことです。M&Aの仕組みや進め方についても、素人の私にも分かりやすく説明していただき、少しずつ前向きに考えられるようになりました。
担当の方は、私の経営者としての苦労や喜びを理解しようと努めてくださいました。例えば、創業当時の苦労話を聞いて、「そういった経験が会社の強みになっているんですね」と共感してくれたことが印象的でした。また、業界の将来性についても一緒に考えてくれ、M&Aが会社の新たな成長につながる可能性を示してくれました。
- M&Aのプロセスを進める中で、どのような点に苦労されましたか?
一番苦労したのは、自社の価値を客観的に見つめ直すことでした。長年経営してきた会社ですから、どうしても主観的な思い入れが強くなります。でも、買い手側の視点に立って会社の強みや課題を整理する必要がありました。
例えば、当社の強みである地域密着型のサービスや、長年のノウハウをどのように数字で表現するか悩みました。また、人材育成システムや顧客管理の方法など、当たり前だと思っていたことが実は大きな価値を持っていることに気づかされました。
また、従業員に対してどのタイミングで、どのように説明するかという点も悩みました。会社の将来に不安を感じさせたくなかったので、慎重に対応しました。結果的に、主要な従業員には早めに相談し、意見を聞くことにしました。彼らの反応は予想以上に前向きで、「会社の発展のためなら」と理解を示してくれたことは大きな支えになりました。
財務面では、過去の経理処理の中で、曖昧な部分があることが判明し、修正作業に追われたこともありました。これは、M&Aを機に会社の体制をより強固にする良い機会になったと前向きに捉えています。
みつきコンサルティングの方々には、こうした悩みに対しても適切なアドバイスをいただき、大変助かりました。特に、従業員への説明方法や、財務データの整理について、具体的なサポートをいただいたことが心強かったです。
- 買い手企業とのマッチングはスムーズに進みましたか?
最初は不安でしたが、予想以上にスムーズでした。みつきコンサルティングが複数の候補企業を紹介してくださり、その中から当社の理念や事業内容に合う企業を選ぶことができました。
特に印象的だったのは、候補企業とのトップ面談です。みつきコンサルティングの方が事前に双方の意向を丁寧にヒアリングし、スムーズなコミュニケーションをサポートしてくださいました。おかげで、緊張せずに自分の思いを伝えることができました。
例えば、ある警備会社との面談では、事前に「このように説明したら売主に刺さると思います」「こういったワードを言っていただくと喜ぶと思います」といったアドバイスを買い手側にしていただいたそうです。結果として、その会社の若い社長さんは少し口下手でしたが、一生懸命に説明してくれて、好感が持てました。
また、別の会社との面談では、事業内容についてのディスカッションが盛り上がり、業界の将来性について深い議論ができたことが印象に残っています。
- 最終的にA社様を買い手として選んだ理由を教えてください。
A社様を選んだ理由は主に3つあります。
まず、同じビルメンテナンス業界で、しかも地元の企業だということです。当社の事業や地域特性をよく理解していただけると感じました。例えば、横浜特有の顧客ニーズや、地域の商習慣についても共通認識がありました。
次に、従業員の処遇について前向きな姿勢を示してくださったことです。長年一緒に頑張ってきた従業員たちの将来を考えると、これは非常に重要なポイントでした。具体的には、現在の雇用条件を維持するだけでなく、キャリアアップの機会も提供したいという提案をいただき、従業員の将来性を感じました。
最後に、当社の企業文化や経営理念を尊重する姿勢を感じたことです。単に規模拡大のためではなく、互いの強みを活かしながら成長していきたいという考えに共感しました。例えば、当社が大切にしてきた「お客様第一」の精神や、地域貢献活動についても高く評価していただき、継続・発展させていく意向を示してくださいました。
また、A社様の親会社が地元の大手上場企業であることも、安定性や信頼性の面で魅力的でした。将来的な事業展開の可能性も広がると感じました。
- デューデリジェンス(DD)の過程で何か課題はありましたか?
DDの過程では、予想以上に多くの資料の提出を求められ、準備に苦労しました。特に、過去の取引記録や契約書類の整理には時間がかかりました。長年の経営の中で、どうしても書類の管理が疎かになっていた部分があり、それを洗い出す作業は大変でしたね。
また、社会保険未加入の従業員がいたことが判明し、買収価格の再交渉が必要になったのは大きな課題でした。これは私の経営者としての反省点でもあります。従業員の福利厚生面で不十分な点があったことを深く反省しています。
この問題が発覚したときは、本当に胃が痛くなる思いでした。買い手企業に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、取引が白紙になるのではないかと不安でした。結果的に譲渡価格が減額されることになり、正直なところ落胆しました。
しかし、みつきコンサルティングの方々が丁寧にサポートしてくださったおかげで、最終的には適切に対応することができました。彼らは買い手企業との交渉を粘り強く行ってくれ、最終的に双方が納得できる形で合意に至ることができました。
この経験を通じて、日頃からの適切な経営管理の重要性を痛感しました。同時に、M&Aのプロセスが自社の問題点を洗い出し、改善する良い機会にもなることを実感しました。
- 譲渡価格や条件面での交渉はいかがでしたか?
譲渡価格については、最初は自分の思い描いていた金額との差に戸惑いがありました。長年経営してきた会社ですから、どうしても感情的な価値がプラスされてしまいます。しかし、みつきコンサルティングの方が市場の相場観や算定根拠を丁寧に説明してくださり、徐々に納得できるようになりました。
例えば、業界の平均的なEBITDAマルチプルや、類似取引の事例など、具体的なデータを示していただいたことで、客観的に自社の価値を理解することができました。また、将来の成長可能性や、買収後のシナジー効果なども考慮して価格が設定されていることを学びました。
条件面では、先ほど申し上げた社会保険の件で価格の再交渉が必要になり、一時は契約が白紙になるのではないかと心配しました。しかし、みつきコンサルティングの方々が粘り強く交渉してくださり、最終的には双方が納得できる形で合意に至ることができました。
この経験を通じて、日頃からの適切な経営管理の重要性を痛感しました。同時に、M&Aのプロセスが自社の問題点を洗い出し、改善する良い機会にもなることを実感しました。
- M&A成立後、どのような変化がありましたか?
まず、従業員の反応が予想以上に前向きだったことに安心しました。買い手企業が丁寧に説明会を開いてくれたこともあり、多くの従業員が新しい環境に期待を持ってくれています。
特に印象的だったのは、長年勤めてくれている従業員から「会社の将来が見えて安心しました」という言葉をもらったことです。私自身、従業員の将来を不安にさせていたのではないかと心配していましたので、この言葉には本当に救われました。
事業面では、買い手企業のノウハウや経営資源を活用することで、サービスの質が向上し、新規顧客の獲得にもつながっています。例えば、買い手企業が持つ最新の清掃機器を導入することで、作業効率が大幅に向上しました。また、大規模な商業施設の案件も共同で受注できるようになり、事業の幅が広がっています。
従業員の教育研修の機会が増えたことで、モチベーションアップにもつながっているようです。特に若手従業員が、キャリアアップの可能性を感じて積極的に学んでいる姿を見ると、本当に良かったと思います。
個人的には、長年の重荷から解放された気分です。もちろん、愛着のある会社を手放す寂しさはありますが、それ以上に会社と従業員の将来に希望が持てるようになったことが大きな喜びです。
健康面でも、入院をきっかけに生活習慣を見直すことができました。今では定期的に運動を行い、健康管理にも気を付けています。M&Aを機に、仕事だけでなく、自分の人生も見つめ直すことができたと感じています。
- M&Aを検討している経営者へのアドバイスをお願いします。
まず、早めに検討を始めることをお勧めします。私の場合、もう少し早く行動を起こしていれば、もっとスムーズに進められたかもしれません。特に、自分の健康や体力に不安を感じ始めたら、それが一つのサインだと思います。
次に、信頼できるアドバイザーを見つけることが重要です。みつきコンサルティングのような専門家のサポートがあるかどうかで、プロセス全体の進み方が大きく変わると思います。M&Aの知識がない私たちにとって、専門家の存在は本当に心強かったです。
そして、自社の強みと弱みを客観的に分析することも大切です。買い手企業の目線に立って自社を見つめ直すことで、より良いマッチングにつながると思います。私の場合、長年の地域密着経営が強みとなり、買い手企業に評価していただきました。
また、会社の資料や財務状況を日頃から整理しておくことをお勧めします。私の反省点として、社会保険の未加入者の問題がありました。こういった点をきちんと整理しておくことで、スムーズなプロセスにつながると思います。
最後に、従業員のことを第一に考えることです。M&Aは経営者だけの問題ではありません。従業員の将来を見据えた判断をすることが、結果的に良い結果につながると信じています。私の場合、従業員の雇用継続と待遇維持を最優先事項として交渉しました。
- みつきコンサルティングのサポートについて、評価をお聞かせください。
みつきコンサルティングのサポートには本当に感謝しています。特に印象に残っているのは、常に私の立場に立って考えてくださったことです。M&Aの知識がない私に対して、専門用語をかみ砕いて説明してくださったり、私の不安や懸念に丁寧に対応してくださいました。
例えば、最初のM&Aの説明の際、「うちのような小さな会社を買ってくれるところがあるのだろうか」という私の疑問に対して、具体的な事例を挙げながら丁寧に説明してくださいました。この説明が、私がM&Aを前向きに検討するきっかけとなりました。
また、買い手企業とのコミュニケーションを円滑にするためのアドバイスも的確でした。トップ面談の際には、事前に相手企業の情報を詳しく教えてくださり、スムーズな会話につながりました。特に印象的だったのは、ある警備会社との面談前に、「このように説明したら売主に刺さると思います」「こういったワードを言っていただくと喜ぶと思います」と買い手側にアドバイスしてくださったことです。こういった細やかな配慮が、スムーズな交渉につながったと感じています。
特に印象的だったのは、社会保険未加入の問題が発覚した際の対応です。この問題で譲渡価格の再交渉が必要になり、一時は取引が白紙になるのではないかと不安でしたが、みつきコンサルティングの方々が粘り強く交渉してくださり、最終的には双方が納得できる形で合意に至ることができました。
M&Aのプロセス全体を通じて、みつきコンサルティングの専門性の高さと、クライアントに寄り添う姿勢を強く感じました。単なるビジネス上の取引ではなく、私の人生の大きな転換点に寄り添ってくださったと感じています。今後M&Aを検討される方々にも、ぜひおすすめしたいと思います。
- 最後に、M&Aを振り返っての感想をお聞かせください。
正直なところ、M&Aを決断するまでには多くの不安と迷いがありました。長年以上かけて築き上げてきた会社を手放すことへの抵抗感は大きく、果たして正しい決断なのかと何度も悩みました。しかし、今振り返ってみると、この決断は正しかったと確信しています。
会社の存続と発展、従業員の雇用の安定、そしてお客様への継続的なサービス提供。これらすべてを実現できたことは、経営者として大きな安堵感と満足感につながっています。特に、従業員たちが新しい環境で生き生きと働いている姿を見ると、本当に良かったと思います。
M&Aのプロセスを通じて、自社の強みや課題を客観的に見つめ直す機会にもなりました。例えば、地域密着型のサービスや長年培ってきた顧客との信頼関係が、思っていた以上に大きな価値を持っていることに気づかされました。一方で、社会保険の問題など、経営面での課題も明らかになり、これらの経験は今後の人生においても貴重な学びとなりました。
もちろん、長年経営してきた会社を手放す寂しさはあります。毎日出社していた日々が懐かしく感じることもあります。しかし、その寂しさ以上に、会社が新たなステージに進むことへの期待と喜びの方が大きいです。
個人的には、この経験を通じて、変化を恐れずに前を向いて進むことの大切さを学びました。年齢を重ねるにつれて、変化を避けたくなる気持ちは理解できます。しかし、勇気を持って新しい選択をすることで、思いもよらない可能性が開けることを身をもって感じました。
健康面での気づきも大きかったです。入院をきっかけに、自分の健康管理の重要性を再認識しました。今では定期的な運動や健康診断を欠かさず、より充実した第二の人生を送れるよう心がけています。
最後に、M&Aを通じて多くの方々との出会いがあったことも大きな財産です。みつきコンサルティングの方々、買い手企業の皆様、そして長年支えてくれた従業員たち。この過程で関わったすべての人々に感謝の気持ちでいっぱいです。
同じような悩みを抱えている経営者の方々にも、ぜひM&Aという選択肢を前向きに検討していただきたいと思います。そして、その際には信頼できるアドバイザーのサポートを受けることをお勧めします。みつきコンサルティングのような専門家の存在が、このような大きな決断と変化の過程を乗り越える力になると確信しています。
M&Aは単なる会社の売却ではなく、新たな未来への扉を開く機会だと私は考えています。私の経験が、少しでも多くの経営者の方々の参考になれば幸いです。