- 本日は、みつきコンサルティングを通じてM&Aを成功させた売主様にお話を伺います。まずは、経営者としてのこれまでの経験についてお聞かせください。
私は約15年間、保険代理店を経営してきました。創業者ではありませんが、前経営者から事業を引き継ぎ、法人向けの生命保険商品を中心に取り扱ってきました。経営者として最も大切にしてきたのは、顧客との信頼関係です。保険は形のない商品ですから、お客様の人生や事業を守る重要な役割を担っています。その責任を常に意識しながら、誠実な経営を心がけてきました。
-ありがとうございます。では、M&Aを検討されたきっかけについてお聞かせください。
私は北海道在住で、東京にある会社の経営のために単身赴任をしていました。家族に事情があり、一家で東京に出てくることができなかったため、離れて暮らさざるを得なかったんです。当然、寂しさや、東京と北海道を行き来する負担がありました。また、創業者ではなかったこともあり、会社への思い入れが特別強いわけではありませんでした。そのため、会社を売却することで、この状況から抜け出せるのではないかと考えたのが最初のきっかけです。
- お住まいの問題が大きな要因だったのですね。業界の動向や会社の将来展望についてはどのようにお考えでしたか?
保険業界は変化が激しいです。特に近年は、法改正や新商品の登場、デジタル化の進展など、環境が目まぐるしく変わっています。例えば、私たちの主力商品だった法人向けの節税保険の一部商品が販売できなくなるということがありました。この商品は当社の売上の半分近くを占めており、当社の経営に大きな影響を与えかねませんでした。
一方で、新たな節税対策商品も登場し始めていましたが、これがどれほど今までの商品の穴を埋めてくれるかは不明瞭でした。そのような市場の変化に追いつくのは容易ではありませんし、保険のオンライン販売の台頭など、従来の対面による代理店モデルの将来性にも不安を感じていました。このような業界の変化も、M&Aを検討するきっかけの一つとなりました。
- 業界の変化がM&Aに取り組むきっかけになったのですね。では、みつきコンサルティングを選んだ理由は何でしょうか?
実は、複数のM&A仲介会社に相談していました。その中で、みつきコンサルティングの担当者が、買い手企業のことをよく理解していて、譲渡後の会社の姿を具体的に説明してくれたんです。これが決め手になりました。
例えば、他の仲介会社は「良い買い手が見つかりました」程度の説明でしたが、みつきコンサルティングの担当者は、買い手企業の事業戦略や、なんで当社を欲しいと思うのか、また、買収後、我が社をどのように活用したいのかということまで、買い手企業に代わって詳しく説明してくれました。この違いは大きかったですね。
- 買い手企業の理解が深かったことが決め手になったのですね。M&Aの過程において特に印象に残っていることはありますか?
やはり会計事務所系ということもあり、株式価値評価は非常に精緻であり、かつ私のプライドも考慮した支払方法を提案してくれました。具体的な提案内容はお話しできませんが、複数の要素を組み合わせて、十分満足できる内容でした。
ここまで精緻に行えるということは、株式価値評価以外の仕事もしっかりやってくれると思え安心しましたし、今では、その時の感覚が間違っていなかったと思っています。
- 精緻な枠組みを示してくれたことが安心感につながったのでしょうね。買い手企業の買収目的についてはどのように説明を受けましたか?
買い手企業には3つの目的があると聞きました。1つ目は、従業員が個々人でかけている保険を内製化することで、手数料をグループ会社の収益にするということ。2つ目は、買い手企業が持つ数万社の法人顧客に対して、保険を活用した福利厚生や節税対策を提案すること。3つ目は、退職金代わりに買い手企業が活用することで、自社の従業員の福利厚生を充実させることでした。
特に2つ目の目的は興味深かったですね。買い手企業は人材サービス業を展開していて、多くの法人顧客を持っています。その顧客に対して、保険を活用した福利厚生プランを提案することで、求人や従業員定着に貢献できるという発想です。これは我が社のノウハウを活かせる部分だと感じました。
みつきコンサルティングの担当者から、事前にある程度聞いていたものの、直接、買い手企業の社長さんからお伺いすることで、M&A後の青写真がより明確になったのを覚えています。
- 非常に明確な目的があったのですね。一方で、M&Aの過程において不安に感じたことはありましたか?
はい、いくつかありました。まず、先ほど話した通り、我が社の収益の50%が、ある法人向けの節税保険商品だったのですが、その商品が販売できなくなるという問題がありました。今後、この保険をカバーできるような新商品が出るかは分からなかったため、破談になってしまうのではないかと思い、とても不安でした。
また、買い手企業がこの業界に新規参入だったので、本当に任せて大丈夫なのかという不安もありました。特にTOP面談の際、保険業界特有の用語や仕組みについて、買い手企業の方々の理解が不十分だと感じる場面があり、正直なところ、心が揺らいでしまいました。
さらに、譲渡後の私の処遇についてもひと悶着がありました。当初は、顧問として経営に参画する予定でしたが、業法上の問題で難しいことが判明し、北海道在住の私が、どのように引き継ぎをサポートできるのかという点も調整が必要でした。
- 多くの不安要素があったのですね。そうした不安に対して、みつきコンサルティングはどのように対応してくれましたか?
みつきコンサルティングの対応は、今考えても本当に素晴らしいものだと思っています。まず、節税保険の問題については、新商品の登場など市場の動向を詳細に調査し、買い手企業へ詳しく説明してくれました。確かに売上は減少するものの、そもそも節税保険のニーズはなくなりませんし、保険以外の商品との競争力もそこまで落ちないことが分かったんです。この説明により、当社の収益が減少するだけではなく、新たな商品で補完できる可能性を具体的に提示してくれました。
買い手企業としては、100%のリスク回避ができるわけではないものの、許容できるレベルのリスクと判断してくれました。
次の、買い手企業に対する私の不安については、担当者から「新規事業なのでそういうものです」とお話をいただき、妙に納得してしまいました。新規事業であれば誰もが初めての経験です。実際、私自身もこの業界に入ったばかりのころは、保険のことを全く理解していませんでした。そんな当たり前のことを当たり前にお話しいただくことで、なぜか不安感が解消されたのを覚えています。これは担当者の人柄によるところも大きいと思いますね。常に前向きで、問題解決に向けて積極的に動いてくれましたし、そんな方のいうことが間違っているはずがないという根拠のない自信がありました(笑)。
彼は、買い手企業との面談での質疑応答にも立ち会ってくれて、互いの疑問点をうまく解消してくれました。例えば、保険業界特有の用語や仕組みについて、買い手企業にわかりやすく説明してくれましたし、人材業界特有の考え方も私にかみ砕いて説明してくれました。本当に素晴らしい翻訳者だったと思います。これにより、双方の理解が深まり、信頼関係の構築にもつながりました。
- 担当者の対応が信頼関係の構築に重要だったようですね。譲渡後の処遇についての交渉はどのように進みましたか?
譲渡後の処遇について、様々な問題がありましたが、みつきコンサルティングのサポートで一つずつ解決していきました。
当初は顧問として経営に参画する予定でしたが、監督官庁に確認したところ、想定していた働き方は、業法上の問題で難しいことが分かりました。正直なところ、これには大きな落胆を覚えました。M&A後すぐに、長年携わってきた会社の経営から完全に手を引くことになるわけですからね。
結果として、関与方法を変更し、業法上問題ないような方法で引き継ぎ作業を行うこととなりました。また、その際の報酬についても交渉がありました。当初は固定額で検討しましたが、最終的に、募集手数料の案分で調整することになりました。これは私にとっても、買い手企業にとってもWin-Winの解決策だったと思います。
このような細かい交渉事をみつきコンサルティングの担当者が落としどころを想定しながらうまくコントロールしてくれました。
また、私が北海道在住のため引き継ぎが難しいのではないかという懸念もありましたが、実務は主に取締役が行っていたため、リモートを併用しながら行えば問題ない旨を買い手企業と調整していただきました。この点は、みつきコンサルティングの担当者が当社の実態をよく理解していたからこそ、適切に説明し、理解いただけたのだと思います。
- 様々な課題を一つずつ解決していったのですね。今回、契約締結からクロージングまで期間が空いたと伺っています。どのくらい空いて、その間のご心境はいかがでしたか?
約2ヶ月空いてしまいました。その間に、買い手企業が当社を迎え入れるための準備を先方の社内で行っていたのですが、正直なところ、この期間が相当長く感じられました。その間に先方との方針の違いなどが表面化することがありました。
例えば、既存の顧客対応や新規開拓の方法について、方針の相違がありました。私たちは長年培ってきた対面営業を重視していましたが、買い手企業はデジタルマーケティングを推進したいと考えていました。
また、従業員の処遇についても細かい調整が必要でした。特に、長年勤めてくれている社員の待遇維持については強くこだわりがあっため、譲渡契約にて規定していない細かなことまで話し合いを行いました。
そういった相克をみつきコンサルティングの担当者が間に入って調整してくれたおかげで、最終的には全てうまくまとまりました。担当者は両社の立場を理解し、妥協点を見出すのが上手でしたね。
- 長い期間を経て、無事にクロージングに至ったわけですね。M&Aを成功させた要因は何だとお考えですか?
私自身の売却意思が固かったことが大きいと思います。紆余曲折はありましたが、そこはぶれなかったです。やはり、家族との時間を大切にしたいという思いが一番でしたから。
また、みつきコンサルティングの担当者が買い手企業のことをよく理解していて、譲渡後の具体的なビジョンを示してくれたことも大きかったです。これにより、このお相手ならばと、即決で意思表示ができました。
当然ですが、買い手企業の成長戦略と我が社の強みがうまくマッチしたことは大前提ではあります。彼らの持つ顧客基盤と、我々の保険商品や知識を組み合わせることで、当社がより発展するビジョンが見えたことは重要なポイントでした。
- 売主様の決断力と、仲介会社の適切なサポート、そして買い手企業とのシナジーが成功の鍵だったのですね。このM&A経験を通じて、何か新しい気づきはありましたか?
いくつかありました。まず、M&Aの世界はいろんな会社さんがいるんだなということを知りました。その中で、今回お世話になったみつきコンサルティングが他社と違ったのが印象的でした。具体的には、買い手企業のことをよく理解し、なぜ買収したいのかをしっかり説明してくれて、単に会社を売った買ったではなくきちんとコンサルティングしたうえで紹介してくれたことは、ちゃんと差別化できているなと思います。というのも、私たちも無形商材を扱っており、中々差別化は難しいものです。どちらかというと個人での戦いになってしまう面も否めません。ある意味似た者同士の業界なので、今後、保険業界でどうやって差別化すればいいのかのヒントをいただいた気がします。
また、M&Aは単に株式を売却するという行為のみならず、人生の大きな転換点になり得る行為なんだということも実感しました。従業員の将来や、自分自身のセカンドキャリアについて、深く考える機会になりました
-譲渡後の心境や新たな生活について、お聞かせください。
正直なところ、最初は寂しさがありました。長年携わってきた会社を手放すわけですから、一種の喪失感は避けられません。しかし、それ以上に、新たなステージに踏み出せた感覚の方が大きかったです。
北海道に戻り、家族と過ごす時間が増えたことは、何物にも代えがたいです。妻や子供たちとの会話が増え、家族の絆が深まったと感じています。また、今まで時間の関係で取り組めていなかった地域社会との関わりも持てるようになり、新たな人間関係を築くことができました。
長年培ってきた保険業界の知識やネットワークを活かして、地域の中小企業向けにコンサルティング業務を行うことも始めました。経営者の方々の悩みに寄り添い、自身の経験を交えながら、リスクマネジメントや事業承継の観点からアドバイスを提供しています。
譲渡後も買い手企業から時折アドバイスを求められることもあり、良好な関係を維持しています。先方のサポートもあり、当社がより成長していく姿を見守ることができるのは、とても嬉しいことです。
振り返ってみると、M&Aは私にとって人生の大きな転換点となりました。確かに不安や苦労もありましたが、第二の人生をスタートさせるきっかけにもなりました。これからは、これまでの経験を活かしながら、新たな挑戦を続けていきたいと考えています。
- 貴重なお話をありがとうございました。最後に、これからM&Aを検討している経営者の方々へアドバイスがあればお願いします。
まず、自分の会社の売却理由を明確にすることが大切だと思います。私の場合は地理的な問題でしたが、それぞれに理由があると思います。その理由が明確であればあるほど、M&Aの過程において発生するトラブルに負けずに進むことができると思います。
次に、信頼できる仲介会社を選ぶことです。特に、自社の業界に詳しく、買い手企業のことをよく理解している方にお願いするといいと思います。みつきコンサルティングのように、単なる仲介だけでなく、M&A後も含めたプロセス全体をサポートしてくれる会社を選ぶことをお勧めします。
また、不安なことや絶対叶えたいことがあれば率直に相談するようにしてください。私たち素人では想像もつかないトラブルが起こることがありますが、プロフェッショナルであれば、それらを一つずつ解決してくれ、良い結果につなげてくれます。特に、従業員の処遇や自身の譲渡後の役割については、早い段階から具体的に話し合うことは重要だと思います。