飲食事業のM&A事例 【関東】

MBOのスキーム設計、実行支援を助言|T社さま

譲渡企業 T社さま
業種 飲食事業
事業内容 ワインバー経営 ワインの卸
売上 約6億円
地域 関東
設立 1990年代
経営者の年齢 50代
譲渡理由 アーリーリタイア
譲受企業
業種
事業内容
売上
地域
設立
上場の有無
譲受目的 のれん分け(独立)

成約年月:2017年4月
取材先:T社 専務取締役 K様

-本日はお忙しいなかありがとうございます。まずは、これまで営まれてきた事業の内容と特徴について、あらためて教えていただけますか。

K様:当社は都内でワインバーを複数店舗運営するとともに、飲食店向けのワイン卸も手がけてきました。 店舗ごとにコンセプトを変えつつも、ワインと料理のペアリングや接客の質を大切にし、お客様が気軽に立ち寄れる「街のワインバー」であることを意識してきました。

-ワインバーという業態を選ばれた背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

K様:もともとホテルのレストランで働いていたのですが、ワインが好きで、飲食業界で経験を積むなかで、ワインを中心にしながら食事も楽しめる店を自分でつくりたいという思いが強くなり、当社に入社しました。店舗での接客から始めて、ペアリングや料理を少しずつ学んでいきました。

-今回のMBOに至る以前から、将来的に独立して経営の舵取りをしたいというお気持ちはあったのでしょうか。

K様:入社した当初から、ゆくゆくは「のれん分け」的な形で独立できる可能性があると聞いており、その前提でキャリアを積んできました。 ですから、店舗運営だけでなく、数値管理や人材育成、仕入れ交渉など、経営に直結する部分にも意識的に関わるようにしてきたつもりです。

-オーナーである前社長から、株式の譲渡について打診されたときの率直なお気持ちを教えてください。

K様:驚きはありましたが、「いよいよその時が来たか」という感覚もありました。 一方で、株式の買取価格や支払方法、資金調達の現実性など、具体的なイメージがまったく持てていなかったので、不安が一気に押し寄せてきたのも事実です。

-売主である前社長は、どのような経緯やお気持ちで譲渡を検討されていたのでしょうか。把握されている範囲で教えてください。

K様:前社長は、もともと一定のタイミングで第一線を退き、奥様と郊外で小さなお店をやりたいという夢をお持ちでした。 事業が軌道に乗り、後継候補として自分を評価してくださるなかで、「第三者に譲るくらいなら、社内の人間に任せたい」というお気持ちが強くなっていったのだと聞いています。

-実際にMBOというスキームを取ることになったのは、どのようなプロセスを経ての結論だったのでしょうか。

K様:第三者への売却も選択肢としてはあったようですが、前社長としては、従業員や常連のお客様のことを考えると、できるだけ今の雰囲気や方針を維持してほしいという思いが強かったようです。 その点、自分への承継であれば、これまで共有してきた価値観を引き継ぎやすく、それを実現できるスキームとしてMBOがもっとも適しているという整理になりました。

-とはいえ、MBOの具体的な進め方や条件面の整理は簡単ではなかったと思います。当初、どのような点でお困りでしたか。

K様:まず株式の適正な価格がどのくらいなのか、前社長も自分もまったく分かりませんでした。 さらに、その価格をどう支払うのか、どの程度まで銀行借入に頼れるのかなど、検討すべき論点が多岐にわたり、自分たちだけでは整理しきれない状況でした。

-そこで、みつきコンサルティングに相談されることになったわけですが、最初にコンタクトを取ったきっかけを教えてください。

K様:前社長が、事業承継に詳しい専門家に一度話を聞いてみたいということで情報収集を始め、その中でみつきコンサルティングの担当者と知り合ったと聞いてきます。 飲食業の案件も多く、MBOの支援経験もあると聞き、まずは相談してみようという流れになりました。

-初めて担当者とお会いした際、どのような印象を持たれましたか。

K様:とても落ち着いた雰囲気で、こちらの話を遮らずに丁寧に聞いてくださる方だと感じました。 「何から手をつけるべきか分からない」という自分たちの状況を汲み取りながら、一つひとつの論点をわかりやすく整理してくださったのが印象的でした。

-価格決定にあたっては、どのようなプロセスで株価評価が行われたのでしょうか。

K様:まずは過去の財務状況や店舗別の収益力、今後の成長性などを一緒に整理し、そのうえでいくつかの評価手法を組み合わせてレンジを出していただきました。 単に数字上の価値だけではなく、ブランドや立地、従業員のスキルといった要素も踏まえ、一方的にならない落としどころを探る形で前社長との交渉を進めることができました。

-支払方法の設計についても、かなり工夫をされたとうかがっています。具体的には、どのような構成になったのでしょうか。

K様:株式譲渡対価を一括で支払うのではなく、退職金や顧問料といった別の項目も組み合わせて、前社長へのトータルの対価を設計していただきました。 これにより、自分の初期の資金負担を抑えつつ、前社長にも納得いただける金額と私自身の無理のない資金繰りを実現できたのは大きかったです。

-ご自身の金融機関からの資金調達については、どのようなサポートがありましたか。

K様:譲渡後の事業計画の策定を一緒に行っていただき、その計画をベースに金融機関へ説明するための資料づくりまでサポートしてもらいました。 さらに、飲食業のビジネスモデルやMBOの趣旨に理解のある金融機関も紹介していただき、結果としてスムーズに借入の目処を立てることができました。

-専門家への相談にあたり、税務面の整理も重要になったと思います。その点についてはいかがでしたか。

K様:株式譲渡と退職金・顧問料といった要素を組み合わせる以上、税務上の取り扱いを慎重に検討する必要がありました。 自分たちだけでは判断が難しい部分でしたが、みつきコンサルティングから飲食店に強い顧問税理士を紹介していただき、税負担を踏まえたうえで最適なスキームを組むことができました。

また、この先生は、現在、経営課題を相談できる一番身近な専門家になっていただいています。そこまで見越してご紹介下さったのかなと思います。

-書類作成や最終条件の交渉の場面でも、全てみつきコンサルティングの担当者のサポートがあったと伺っています。実際のサポートは、どのようなものでしたか。

K様:契約書のドラフト作成から、互いの意向に配慮した修正はもちろんですが、代表者変更登記の準備など全ての論点において抜け漏れがないようしっかり対応いただきました。また、経営を引き継ぐ自分の立場として、将来どのようなリスクがあり得るかを一緒に洗い出してもらい、そこを上手くフォローできるような契約内容にしていただきました。 条件交渉の場面では、双方の意見がぶつかりそうなところをうまく言語化し、落としどころを提案してくださったので、感情的にならずに話し合いを進められたと思います。

-プロセス全体を通じて、みつきコンサルティングの存在はどのように感じられましたか。

K様:やっぱりお金のことは中々身内の人間には言えないものです。自分と前社長の間に立っていただいたおかげで、遠慮して言えないことや、逆に言い過ぎてしまいそうなことを冷静に整理してもらえました。 単に条件をまとめるだけでなく、「その後も気持ちよく一緒に食事に行ける関係でいられるように」という視点で動いてくださったのが、とてもありがたかったです。

-MBOを実行してから、会社や店舗の現場にはどのような変化がありましたか。

K様:名実ともに自分が最終的な意思決定者になったことで、出店やメニュー開発、人材配置などの判断スピードは確実に上がりました。 一方で、従業員やお客様にとっては、店の雰囲気やサービスの質が変わらないことが安心感につながるので、そのバランスを意識しながら舵取りをしてきました。

-従業員の皆さんには、MBOについてどのように説明されましたか。また、反応はいかがでしたか。

K様:できるだけ早い段階で全員を集めて、会社の代表者が変わること、その目的や背景、自分がどのような思いで経営を引き継ぐのかを率直に伝えました。 不安の声も多少はありましたが、「顔なじみの人間が引き継ぐなら安心した」という言葉も多く、前社長も同席してくれたことで、全体としては前向きに受け止めてもらえたと思います。

-常連のお客様に対しては、どのような形でオーナー交代を伝えたのでしょうか。

K様:大々的にアピールするというより、会話のなかで自然にお伝えし、「これからも変わらずにやっていきます」とお話しするようにしました。 むしろ「若い世代が引き継いでくれるのは心強い」「これからも通うよ」といった励ましの言葉をいただき、背中を押された感覚でした。

-実際にオーナーとして数年経営されてみて、あのタイミングでMBOを実行してよかったと感じる場面はありますか。

K様:コロナ禍をはじめ、飲食業界を取り巻く環境が大きく変化するなかで、自分の判断でスピーディーに対応できたことは大きかったと感じています。 もしオーナーシップが曖昧なままだったら、思い切った決断ができず、店舗やスタッフを守れなかったかもしれません。

-逆に、オーナーになったからこそのプレッシャーや難しさを感じるのは、どのような点でしょうか。

K様:最終的な責任を負う立場として、数字の重みは以前とは比べものにならないほど大きく感じます。 ただ、それを一人で抱え込むのではなく、店長クラスや幹部と情報を共有しながら、「一緒に店をつくっている」という感覚を持ってもらうよう意識しています。

-MBOを検討されている方の中には、「資金調達が不安で一歩を踏み出せない」という方も多いと思います。その点について、経験者として感じることがあれば教えてください。

K様:自分も最初は、規模の大きさだけを見て「とても無理だ」と感じていましたが、事業計画をしっかりつくり、返済可能性を数字で示すプロセスを踏めば、金融機関も真剣に向き合ってくれるのだと実感しました。 一人で悩むのではなく、専門家と一緒に現実的なシナリオを組み立てていくことが、心理的なハードルを下げるうえでも大切だと思います。

-みつきコンサルティングのサポートを振り返って、「特に助かった」と感じるポイントをあえて一つ挙げるとすれば、どの部分でしょうか。

K様:価格や条件の交渉ももちろん重要でしたが、一番は「前社長との関係を大切にしながら進める」というスタンスを終始崩さなかったことだと思います。 おかげで、いまも前社長とは良好な関係が続いており、ときどき食事をしながら近況報告をするような間柄でいられているのは、本当にありがたいことです。

-最後に、今後の事業展開や、ワインバーという業態で実現していきたいことについてお聞かせください。

K様:これまで培ってきたブランドや接客スタイルを大切にしながら、時代の変化に合わせた新しい取り組みにも挑戦していきたいと考えています。 ワインを通じて、人が集まり、つながりが生まれる場をさらに増やしていけるよう、スタッフとともに一歩ずつ前に進んでいきたいですね。

           

この案件・類似案件の担当者

西尾 崇 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター


宅食事業を共同経営者として立ち上げ、バックオフィスの責任者として従事。当社参画後は、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る

あなたにおすすめの記事

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】会社売却のご相談 
簡単30秒!即日対応も可能です

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程に同意のうえ送信ください。営業目的はご遠慮ください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >