機械器具卸売のM&A事例 【九州】

建機レンタル会社株式の譲渡を助言|K社さま

譲渡企業 K社さま
業種 機械器具卸売
事業内容 建設機械レンタル
売上 約10億円
地域 九州
設立 1970年代
経営者の年齢 70代
譲渡理由 事業承継
譲受企業 A社さま
業種 機械器具卸売
事業内容 建設機械の販売、リース
売上 約80億円
地域 関東
設立 1990年代
上場の有無 未上場
譲受目的 事業エリアの拡大

成約年月:2017年2月
取材先:A社 代表取締役 O 様

-本日はお時間をいただきありがとうございます。 まず、本件M&Aを振り返っての率直なお気持ちからお聞かせいただけますか。

O様:成約から時間を経ちましたが、今から考えると「よくまとまったな」という安堵の気持ちが一番大きいです。 M&Aの検討自体は早い段階から始まっていたもの、実際の成約までに2年以上を要したので、途中で迷いや不安もありましたが、最終的には自社にとっても、K社さまにとっても、良い着地点を見つけることが出来たと感じています。

-今回は、M&Aを検討されることになった背景について教えてください。

O様:弊社は建機リース業として、建設機械の販売やリースを全国的に展開してきました。一方で、九州・西日本は、弊社の拠点がなく、以前から強化したいと考えていた重点エリアでした。自社単独での拡大も選択肢にありましたが、中々資金的にも、人材的にも難しいと感じていました。そんな時にK社さまも事業承継にお困りになっているというお話を伺ったのが直接のきっかけです。

-K社さまとのご関係や、どんな印象をお持ちだったのかもお聞かせください。

O様:K社さまとは、当社の九州・西日本エリアにおける主要な下請先という関係でした。現場への対応力が非常に高く、地域に根差した細やかなサービスをされてらっしゃっていて、お客さんからの信頼も厚いという印象を持っていました。

-K社さま側では、社長を金融機関から迎え入れていたもの、株式の承継は進んでいませんでした。その点についてはどのように受け止められていましたか。

O様:最初は取引先として見ていたのですが、経営の現場を任せるという意味で雇われ社長を迎えるケースはよくあると思います。一方で、株式の承継は非常に難しく、そんな状態でオーナーの高齢化が進んでいくと、どうしても将来に不透明感が残ってしまいます。その状況はK社さまにとっても、当社のような取引先や金融機関にとっても不安要素になると思っていましたので、「次の世代にどうバトンを渡していくか」を一緒に考えられるパートナーが必要なのではないのかなと感じていました。

そこで、K社さまのオーナーに、「一緒にならないか?」とお誘いしたことがあり、それが本件の直接のきっかけになりました。

-今回のM&Aで、買手としての最大の目的はどのような点ですか。

O様:最大の目的は、拠点の拡大です。特に九州への本格的な展開です。 当社は関東を中心に全国展開してきましたが、九州・西日本エリアは、建機の調達やサービス体制の面でどうしても独自ではカバーしきれない部分がありました。

K社さまには、M&A以前からその部分をフォローいただいていたのですが、先ほど述べたような不安要素があったので、当社グループに入ってもらうことで、その不安を打ち消したいとも思っていました。

-M&Aのスキームとして株式譲渡が選択されていますが、その理由やメリットについて教えてください。

O様:K社さまは長年、地域に密着した形で事業を展開されてきた会社ですので、従業員の方々や取引先さまとの関係性、地域で培われてきたブランド・信用など、目に見えない資産が非常に大きいと考えていました。株式譲渡であれば、法人を丸ごと譲り受けることができるので、そういった関係性や信用も含めて、スムーズに引き継ぐことができると考えました。

-みつきコンサルティングが本件に関与したきっかけとして、金融機関からデューデリジェンス(DD)を行うために紹介されたというお話に興味を持ちました。

O様:当社とK社さまのオーナーとの間で、譲渡価額や株式を譲り受けることなどのM&Aの方向性は大体決まっていましたが、譲渡対価の融資をお願いした金融機関から「専門会社によるDDと適正株価評価を行い、その価格を基に融資審査を行う」とのお話がありました。

正直、めんどくさいなと少し身構えた部分もありましたが、同時に、客観的な評価をしてもらうことで、買手・売手・金融機関の三者が納得しやすくなるという期待もありました。その役割を担ってくれたのが、みつきコンサルティングでした。

-DDと株価評価のプロセスを通じて、みつきコンサルティングにはどんな印象をお持ちになりましたか。

O様:非常に丁寧で、かつ公平なスタンスを貫いてくれたという印象です。 K社さまの事業の状況を精査し、数字だけでは見えない強みやリスクも整理した上で、納得できる評価を提案していただきました。 こちら側の希望だけでなく、K社さまの立場も踏まえて説明していただいたので、「双方にとって無理のない条件」を一緒に見せてくれていると感じられたのは、大きな安心材料になりました。

ちょっとした裏話なのですが、みつきさんの担当者が、K社さまが所有している建機や備品を全て現物チェックされたようなんです。大きな重機だけでも何十台もあり、帳簿との齟齬がないか、実際の稼働に耐えられるのかを確認されたのですが、その過程で、K社さまの社長さんと非常に懇意になられ、これが後ほど本件がまとまるために非常に役に立ちました。

数字だけではない人間力もお持ちなんだな、と感心したことを覚えています。

-その後、買手である御社側から、みつきコンサルティングにFAとしての業務を正式に依頼しています。FAとしての関与には、どのような期待がありましたか。

O様:DDと株価評価の過程で、みつきコンサルティングの姿勢や専門性、人間力をよく理解できましたので、「このまま彼らが入ってくれれば安心して進められる」という感覚がありました。調整役としての条件交渉の場面や、最終的な条件調整の場面でも、総合的にサポートしてもらうことを期待して、FAをお願いしました。

-実際にFAとして活動する中で、どのような点が特に助けになったと感じられましたか。

O様:一つは、金融機関とのコミュニケーションをきめ細かく行ってくれた点です。特に、融資を決めるために諸々の書類を金融機関から依頼されたのですが、事業計画の作成も含め、非常に迅速・正確に行ってくれました。また、売手側との交渉においても、こちらの要望を一方的に伝えるのではなく、K社さまの考えや事情を汲み取りながら、双方が納得できる落とし所を粘り強く考えてくれた点は、非常に心強かったです。

また、K社さまに納得いただく段階で、DDの際に構築された社長さんとの人間関係が生きたと聞いています。正直、社長さんには少しきつい要求をしたのですが、「みつきさんが言うなら」ということでご理解いただきました。

-本件は、DD実施から成約までに2年以上を要したとのことですが、その期間をどのような思いで過ごされておりましたでしょうか。

O様:あまり詳しくは申し上げられないのですが、K社さまの都合で1年以上待たなければいけませんでした。その間、外部環境の変化もありましたし、当社内の事情やK社さま側の都合も変化します。そういった諸々を踏まえながらお話自体が壊れないように進めなければならなかったので、ストレスにならなかったといえばウソになりますね。その中で感じていたのは、「急いで進むよりも、双方が納得できる形を追求することが重要だ」ということです。時間はかかってしまいましたが、その分、条件面や今後の体制についてじっくり話し合うことができたと感じています。

特に、K社さまの社長さんとはM&A後の認識を共有することができたので、スムーズにいかずにもどかしい思いはありましたけど、有意義な時間だったと今では思っています。

- 交渉が長期化する中で、不安や迷いが起こる場面もあったのではないかと思います。

O様:時間はかかりましたが、その間、当社は一貫してK社さまをグループに迎え入れることに対しぶれることはありませんでした。また、何か問題が発生したとしても、K社様のオーナーや社長に対し、率直に不安点や懸念点を相談し、その都度、解決していきました。また、みつきの担当者からは、タイミングごとに今後のステップやスケジュールを整理して共有いただけたので、「今はどこにいて次は何をすべきか」が明確でしたから、長期戦の中でも前向きな気持ちを切らさずにいられました。

-実際、K社さまをグループに迎えたことにより、どのようなシナジーが発揮されていますか。

O様:まずは、九州・西日本エリアでのサービス提供スピードの向上です。今までは、受注を受けたとしても、どこにどれだけの重機があるか分からず、引き渡しまでお時間がかかることがよくありました。M&A後は、同じグループの一員として在庫の共有化を行えていますので、お客様に対し、迅速な対応が可能になりました。また、 K社さまは当地で建機レンタル事業において長年の実績を持ち、地域密着で多くの顧客基盤を持ってらっしゃいます。K社単独では対応できなかった注文も 弊社の販売・リースのリソースを活用することで対応が可能となりました。お客様のためより利用しやすく、ワンストップで頼れる準備を整えることができました。

人材面においても、相互に交流することで、それぞれの社員のスキルアップやキャリアの広がりが期待できると考えています。

-買手としてM&Aを実施するにあたり不安に感じていた点や、注意しなければならないポイントがあれば教えてください。

O様:やはり一番のポイントは、従業員のみなさんが、当社グループに入ることに対しどのような受けとめをされるのか、また、前向きにとらえてもらえるのか、という点でした。不安を感じられて当然だと思いますので意識的に現在の体制は維持するようにしましたし、雇用や処遇条件は維持・改善しました。当然、無理な統合は行わず、少しずつお互いを見極めながら一緒に仕事をする中で理解を深めていこうと考え、ゆっくり進めていくことをしました。

実は、従業員対応はみつきさんから丁寧なアドバイスをいただいていました。彼らが今まで経験した事例を基に、良い対応・悪い対応をそれぞれ教えてもらい、その通りに実践することで大過なく統合作業に取り組むことができました。

-成約に至るまでのプロセスの中で、「ここがターニングポイントだった」と感じた場面があれば教えてください。

O様:一つ挙げるとしたら、金融機関との調整です。 融資条件とM&A条件のすり合わせは非常に繊細で、バランスを取ることが難しかったです。融資の限度内でM&Aをまとめる必要がありましたが、当社・K社さま・金融機関の三者が納得できる形に着地でき、「これで前に進む」という認識を共有できたことが、成約に向けて大きな一歩だったと思います。

-みつきコンサルティングの担当者の仕事に対するスタイルや、人柄についての印象もお聞かせください。

O様:とても話しやすく、こちらの事情や思いをきちんと理解しようとしてくれる方でした。

また、物事を先回りして考えることが得意な人なんだなという印象も持っています。何度か突発的なトラブルが発生したのですが、大抵のことは既に対応がなされていて大事にならずに済んでいます。FAとしては当たり前なのかもしれませんが、傍から見ているとどこまで見えているんだろう、と思った記憶があります。

-今回のM&Aの中で、特に印象に残っている出来事やエピソードはありますか。

O:考えればきりがありませんが、やはり初めてK社さまの本社や現場を訪問した際の印象は強く残っています。当時は取引先としてでしたが、従業員の皆さんが気持ちよく挨拶をしてくれたのが印象的でした。その時に、漠然とこんな人たちを一緒に働けたらいいな、と思ったのは覚えています。その気持ちが今回のM&Aにつながったのかな、とは今だから思えることですかね。

-最後に、今回のM&A全体の率直なお気持ちと、今後に向けた展望をお聞かせください。

O様:2年以上の時間をかけてやっとスタートラインに立ったという感覚です。 K社さまにとっても、当社にとっても、新しいステージの始まりであり、ここから互いの力を掛け合わせて本番だという認識です。

今現在は順調にいっていますが、今後はどうなるか分かりません。その際は、初心を思い出して頑張りたいと思います。

また、 DDから成約に続くまで、一貫して前向きにサポートしてもらったみつきの担当者に対しては、その支援があったからこそ、全てのステークホルダーが納得できるM&Aが実現できたと思っていますので、改めてお礼を言いたいと思います。

           

この案件・類似案件の担当者

西尾 崇 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター


宅食事業を共同経営者として立ち上げ、バックオフィスの責任者として従事。当社参画後は、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る

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