塗料卸売業のM&A事例 【関東】

食料品小売業者と塗料卸売業者によるJV組成を助言|R社さま

譲渡企業 R社さま
業種 塗料卸売業
事業内容 コーティング施工・材料輸入販売事業
売上 約2億円
地域 関東
設立 2010年代
経営者の年齢 50代
譲渡理由 販路拡大
譲受企業 P社さま
業種 食品卸売業
事業内容 食品卸売・飲食店経営
売上 約500億円
地域 関東
設立 1960年代
上場の有無 未上場
譲受目的 自社の施工材料の確保

成約年月:2018年4月
取材先:代表取締役 O様

-まずは、これまでの事業内容について教えていただけますか。
O様:当社は、海外メーカーが開発した高性能な特殊塗料を中心に輸入し、日本国内でコーティング施工と材料販売を行ってきました。 これまで、建設関連やインフラ、自然エネルギー分野など、防水性や長期耐久性、省メンテナンスが求められる分野を中心に提案し、徐々に実績を積み重ねてきた形です。

-特殊塗料の国内独占販売権をお持ちとのことですが、その強みについてもう少し詳しく教えてください。
O様:扱っている塗料は、耐久性や防汚性、防水性などの面で非常に優れており、従来品では対応が難しかった環境下でも性能を発揮できることが最大の特徴です。 また、海外メーカーとの信頼関係を構築し、国内では当社のみが販売できる独占権を得ているため、競合他社との差別化が図れている点も大きな強みだと考えています。

-そのような強みをお持ちの中で、今回M&A(JV組成)を検討されるに至った背景を教えてください。
O様:独占販売権を持っているとはいえ、当社単独の資本力では十分な在庫確保や広告宣伝、営業人員の拡大に投資することが難しく、思うように拡販が進まない状況が続いていました。 製品のポテンシャルに対して自社のリソースが追いついていないというジレンマがあり、外部パートナーとの連携を模索し始めたのがきっかけです。

-当初はどのような選択肢を検討されていたのでしょうか。
O様:最初は銀行融資や出資の受け入れなど、いわゆる資金調達策を中心に考えていました。 しかし、単にお金を入れていただくだけでは、販路や営業ノウハウなど「事業を押し上げるための力」が十分に得られない可能性も感じており、より戦略的なパートナーシップの必要性を意識するようになりました。

-そんな中で、買収会社であるP社とのご縁はどのように生まれたのでしょうか。
O様:P社は食品卸売業を中心に飲食店運営なども手掛けており、自然エネルギー、特に太陽光発電設備の設置に関連して、パネルの保護やメンテナンスに使えるコーティング剤を探していたそうです。 その過程で当社の塗料に関心を持たれ、みつきコンサルティングに「当社との取引・提携の可能性を探りたい」と相談されたと聞いています。

-みつきコンサルティングとは、どのような経緯でお付き合いが始まったのですか。
O様:みつきコンサルティングの担当者から「貴社の塗料に関心を持っている会社がある」とご連絡をいただき、最初は情報交換のような形で面談を設定していただきました。 そこで、P社の自然エネルギー事業における課題や、当社の資金・販路面での課題がかなり相性よくかみ合うことが分かり、本格的にスキームの検討が始まりました。

-当初、P社側は「買収」をイメージしていたとうかがっていますが、その点についてはいかがでしたか。
O様:最初はP社からのニーズとして「買収」という言葉も出ていたと聞いていますが、担当者からは早い段階で「必ずしも株式譲渡にこだわる必要はないのではないか」と提案を受けました。 自社のブランドや独自のビジネスモデルを残したいという思いも強かったため、買収一択ではなく、いくつかのスキームを比較検討するプロセスを丁寧に進めていただけたのは安心材料でした。

-最終的にJV(共同出資会社の設立)という形になりましたが、その決め手は何だったのでしょうか。
O様:最大のポイントは、当社とP社が同額を出資し、仕入れと販売の役割を明確に分担することで、それぞれの強みを最大限に生かせると感じたことです。 当社は仕入れや技術的な知見を提供し、P社は既存の営業ネットワークと販売ノウハウを生かして市場開拓を担うという構図が、双方にとってバランスの良い形だと判断しました。

-JVスキームに決めるまでの検討プロセスで、印象に残っていることはありますか。
O様:担当者からは、株式譲渡や業務提携、ライセンス契約など、複数の選択肢を例示してもらい、それぞれのメリット・デメリットをかなり丁寧に整理していただきました。 そのうえで、当社の資金課題とP社の材料確保ニーズを同時に満たすには、JVが最も合理的だという説明があり、自分としても自然に腹落ちした感覚があります。

-JVの具体的な枠組みについて教えてください。
O様:当社とP社が同額を出資して新会社を設立し、当社は特殊塗料の仕入れと技術サポート、新しい用途開発などを担い、P社は既存の取引先や新規顧客への販売を主な役割とする形になっています。 P社にとっては一定のボリュームで安定的に仕入れができるメリットがあり、当社としては、利益率をやや抑えられるものの、安定した販売先と売上ボリュームが見込める点が大きな利点です。

-条件調整の場面では、どのような点に苦労されましたか。
O様:出資比率は同額で合意していたものの、利益配分や在庫リスクの持ち方、販売エリアの考え方など、細かな条件のすり合わせには時間を要しました。 特に、どこまでを当社がリスクとして引き受け、どこからをP社側の責任とするかという線引きについては、担当者が双方の意向を丁寧に整理しながら、落としどころを探ってくれたと感じています。また、販売エリアについても、当社の既存の販売店との関係性を整理する必要がありました。

-交渉やエグゼキューションの過程で、みつきコンサルティングのサポートはいかがでしたか。
O様:条件交渉の場では、担当者が中立的な立場で双方の意見を翻訳し、感情的なすれ違いが起きないように配慮してくれたのが印象的でした。 また、契約書の内容についても専門家と連携しながらポイントをかみ砕いて説明してくださり、中小企業側として不安を抱きやすい部分を一つひとつ解消してもらえたと感じています。

-JV締結後、事業面ではどのような変化がありましたか。
O様:P社の営業網を活用できるようになったことで、従来はアプローチできなかった規模の法人や新たな業界にも提案が届くようになりました。 また、仕入れ量が安定したことで物流や在庫管理の面でも効率化が進み、当社単独では難しかった投資や新しい使用方法の検証にも取り組みやすくなっています。

-ご自身の働き方や心理面での変化はありましたか。
O様:資金繰りや販路開拓に関するプレッシャーが以前より軽くなり、短期的な資金不安から解放されたことで、より中長期的な事業戦略を考えられるようになりました。 また、P社側の担当者とディスカッションする機会が増え、異なる業界の視点から刺激を受けることが、自分自身の成長にもつながっていると感じています。

-M&Aや業務提携に対して、不安や抵抗感はありませんでしたか。
O様:正直なところ、最初は「事業の主導権を失ってしまうのではないか」「自社の文化が壊れてしまうのではないか」といった漠然とした不安がありました。 ただ、担当者からスキームごとの違いやガバナンス設計について繰り返し説明を受けるうちに、「自分たちで意思決定できる領域を明確に確保しつつ、外部の力を取り込む」形をつくれることが分かり、前向きに考えられるようになりました。

-みつきコンサルティングの担当者とのコミュニケーションで、印象に残っているエピソードはありますか。
O様:当社の状況をヒアリングする際も、単に数字だけを見るのではなく、「この事業を通じて何を実現したいのか」「どこまでリスクを取れるのか」といった価値観の部分まで丁寧に聞いてくれました。 そのうえで、P社側の思いや方針も事前に理解されておられ、わかりやすく共有してもらえたので、「双方の考え方がどれくらい近いのか」、また「どこに違いがあるのか」を把握しやすく、安心して話を進められたと思います。

-今回の取り組みを通じて、「M&Aとはこういうものだ」と感じられたポイントを教えてください。
O様:当初イメージしていた「会社を売る・買う」という単純な図式ではなく、両社の課題を解決し、将来の事業機会を広げるための手段として、非常に柔軟な設計ができるものだと実感しました。 特に、JVという形で互いにリスクもリターンも分かち合うスキームを組めたことで、「パートナーシップを強化するためのM&A」という捉え方に変わったのが大きかったです。

-JV締結から時間が経過した現在、当初の想定と比べていかがでしょうか。
O様:もちろんすべてが計画どおりというわけではありませんが、売上面でも事業の広がりという点でも、単独で続けていた場合よりはるかにスピード感を持って成長できていると感じています。 また、P社との協働の中で新たなニーズが見えてきており、今後の新用途開発やサービス拡充にもつながる手応えを得ています。

-他方で、JVならではの難しさを感じる場面もあるのでしょうか。
O様:経営判断を行う際に、両社の優先順位やリスクの取り方が異なると、意思決定に時間がかかることがあります。 ただ、その過程で議論を重ねること自体が「より納得感のある結論」に近づくプロセスでもあり、そうした調整役としてみつきコンサルティングが相談に乗ってくれることも心強いです。

-今回の経験を通じて、今後のご自身や会社のビジョンにどのような変化がありましたか。
O様:これまでは「特殊塗料の専門会社」という枠組みで物事を考えがちでしたが、今はエネルギー分野やインフラ保全など、より広い社会課題の解決に貢献できる存在になりたいと考えるようになりました。 JVという形でパートナー企業と連携することで、自社だけでは届かなかった領域にも価値を提供できる可能性を実感しており、その延長線上で新たな事業展開も視野に入れています。

-最後に、今回のM&A・JV組成を振り返って、みつきコンサルティングへの率直なご感想をお聞かせください。
O様:当社側の事情だけでなく、P社の立場や考え方も踏まえたうえで、「双方にとって長く続けられる形」を一緒に考えてくれたことに、とても感謝しています。 また、単に案件をクロージングさせるのではなく、その後の運営や将来的な展開まで見据えたアドバイスをいただけたことで、中小企業としても安心して一歩を踏み出すことができました。

           

この案件・類似案件の担当者

西尾 崇 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター


宅食事業を共同経営者として立ち上げ、バックオフィスの責任者として従事。当社参画後は、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る

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