- 本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。まずは、X社の沿革や事業内容について教えていただけますでしょうか。
ありがとうございます。X社は70年以上の歴史を持つクリーニング業を営む会社です。私で3代目になりますが、都内を中心に事業を展開してきました。最盛期には直営40店舗以上を運営し、地域に密着したサービスを提供してきました。
- 長年にわたり地域に根差した事業を展開されてきたのですね。そんな中で、事業譲渡を決断されたきっかけは何だったのでしょうか。
はい、大きく2つの理由がありました。1つは私自身の健康問題です。数年前に大病を患い、一時は経営から離れざるを得ませんでした。復帰はしたものの、以前のように全力で経営に打ち込むことが難しくなっていました。
もう1つは、業界全体の厳しい状況です。クリーニング需要の減少や競争の激化により、経営環境が年々厳しくなっていました。
- 経営者ご自身の健康問題と業界の構造的な課題が重なったのですね。事業譲渡を検討し始めた時期はいつ頃だったのでしょうか。
本格的に検討し始めたのは、私が病気から復帰して約1年後です。経営状況を冷静に分析した結果、このままでは会社の存続が危ぶまれると判断しました。従業員や取引先、そして長年ご愛顧いただいたお客様のためにも、会社を存続させる最善の道を探る必要がありました。
- 事業譲渡の検討を始められてから、みつきコンサルティングとの出会いまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
最初は自力で買い手を探そうと考えていました。しかし、業界内の知り合いに相談しても具体的な話には至らず、そんな中、みつきコンサルティングさんから声をかけていただいたことがきっかけです。
初めは専門家に依頼することに躊躇もありましたが、一度話を聞いてみようと思い、相談させていただきました。みつきコンサルティングの担当者の方は、私たちの状況を親身に聞いてくださり、業界の知識や当社に相応しいお相手先の提案もしてくださり、安心して相談できました。
- みつきコンサルティングとの契約後、具体的にどのような支援を受けられましたか?
まず、会社の財務状況や事業の強み・弱みを詳細に分析していただきました。その上で、最適な買い手候補を複数社ピックアップしてくださり、すぐさま行動に移していただきました。
また、買い手候補との面談や事業所案内の場にも同席していただき、専門的な観点からアドバイスをいただきました。特に、譲渡価格や条件の交渉では、客観的な視点からの助言が非常に心強かったです。
- 事業譲渡の交渉過程で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
はい、当初は株式譲渡での基本合意に至ったものの、デューデリジェンスの結果、工場の土壌汚染や建築基準法上の論点が浮上し、交渉が難航したことが印象に残っています。
クリーニング業特有の問題で、過去使用してきた溶剤による土壌汚染や建築基準法上の用途地域の規制により、当初の買収候補先との交渉が白紙に戻ってしまいました。正直なところ、時間も労力も負担が大きかったため、この時は途方に暮れました。
- そのような予期せぬ問題が発生し、大変だったと思います。その後、どのように事態は進展していったのでしょうか。
みつきコンサルティングの方々が迅速に対応してくださいました。工場規制等の論点を踏まえた上で、新たな譲渡スキームを提案していただいたのです。具体的には、株式譲渡から事業譲渡へと方針を転換し、交渉上でボトルネックとなる不動産を切り離した形での譲渡を検討することになりました。
また、以前に興味を示していた別の候補先とも再度交渉の機会を設けていただきました。結果的に、K社との間で事業譲渡の基本合意に至ることができました。
- 難しい局面を乗り越えられたのですね。最終的な譲渡スキームについて、もう少し詳しく教えていただけますか。
はい。最終的には、直営店20店舗の譲渡を中心とした事業譲渡スキームとなりました。加えて、譲渡した店舗の工場生産業務を期間限定で委託する契約や、2店舗については委託取次店契約を結ぶなど、柔軟な対応をしていただきました。
これにより、懸念のある工場は切り離しつつ、事業の円滑な引き継ぎが可能となりました。また、従業員の雇用継続についても最大限配慮していただき、安心して譲渡を進めることができました。
- 従業員の方々への対応は、オーナーとして最も気がかりな点だったのではないでしょうか。
おっしゃる通りです。長年一緒に働いてきた従業員たちの将来を考えると、夜も眠れないほど悩みました。幸い、K社は従業員の継続雇用に前向きで、ほとんどの従業員が引き続き働けることになりました。
- 従業員の方々への配慮が十分になされたことが伝わってきます。事業譲渡が完了した今、振り返ってみていかがでしょうか。
正直なところ、複雑な心境です。70年以上続いた家業に一区切りをつけることには寂しさもあります。しかし、このままでは会社の存続さえ危ぶまれる状況だったことを考えると、今回の決断は正しかったと確信しています。
特に、従業員たちが引き続き働ける環境を確保できたこと、そしてお客様に対するサービスが継続されることに、大きな安堵を感じています。K社は業界内でも実績のある企業ですので、むしろサービスの質が向上する可能性もあると期待しています。
- 長年築き上げてこられた事業が新たな形で継続されることになったわけですね。最後に、同じように事業譲渡を検討されている経営者の方々へメッセージをお願いできますでしょうか。
はい。まず、早め早めの対応が重要だと伝えたいです。私の場合は、健康問題をきっかけに真剣に考え始めましたが、もう少し早く動き出していれば、もっと良い選択肢があったかもしれません。
また、専門家のサポートを受けることの重要性も強調したいです。みつきコンサルティングのような専門家のサポートがなければ、今回のような複雑な譲渡スキームの構築や、お相手との交渉など、到底自分たちだけでは対処できなかったでしょう。
そして、長年築き上げてきた事業や従業員の雇用を守るための勇気ある決断だと私は考えています。経営者として、時には「手放す」という決断も必要なのだと、身をもって学び、会社としてのパラダイムシフトも考えなければならないこともあります。
最後に、従業員やお客様、取引先など、関わってくださった全ての方々への感謝の気持ちを忘れないことが大切だと思います。彼らの支えがあってこそ、ここまで事業を続けることができたのですから。