成約年月:2021年7月
本件担当:みつきコンサルティング 事業再生・M&A担当コンサルタント
化粧品受託製造(OEM)を手がける株式会社トレミー様(東京都、1983年設立)は、みつきコンサルティングが運用する「みつきファンド1号投資事業組合」による約6年間の資本参加と経営支援を経て、2021年7月、東証プライム上場の株式会社ナック様のグループ入りを果たしました。財務危機に陥っていた老舗OEMメーカーが、事業再生を経てM&Aによる新たな成長ステージへと進んだ事例として、本件を担当したコンサルタントの視点からご紹介します。
支援開始前の状況
トレミー社は、化粧品・医薬部外品の企画開発から製造、薬事申請、出荷までを自社で一貫して手がけるOEMメーカーとして、1983年の創業以来、着実に事業基盤を築いてきました。売上高16億円、営業利益1億円超、純資産2億円という最盛期を経て、創業者である先代社長が逝去した後、ご子息が二代目社長として経営を引き継ぎました。
しかし、二代目体制への移行後、積極的な設備投資や海外進出、営業拠点の拡大など事業規模の拡張が急速に進む一方で、資金使途の管理や交際費・固定費のコントロールが十分に行われず、経営管理体制の整備が事業拡大のスピードに追いつかない状態が続きました。その結果、就任からわずか4~5年で、業績は営業赤字約2億円、債務超過約2億円、有利子負債約13億円という深刻な財務状況に陥りました。
みつきコンサルティングは2013年、このような状況下でトレミー社の事業再生支援に着手しました。金融機関からの紹介ではなく、直接のご縁による関与であったため、後ろ盾のない状態からのスタートとなりましたが、資金繰りの実態把握から着手し、当面の資金確保に向けた緊急対応を進めました。

財務リストラと経営体制の再構築
関与開始後まず取り組んだのは、財務リストラです。3拠点あった製造工場のうち収益性の低い2工場を売却して1拠点に集約し、実質的な機能を果たしていなかった営業拠点4カ所も全て閉鎖しました。あわせて、事業との関連性が乏しい資産の売却、実効性の確認できないコンサルティング契約の解除、過大な交際費の抑制など、コスト構造の見直しを段階的に進めました。
同時に、経営体制の刷新にも取り組みました。当時の経営陣による意思決定の在り方が事業再生の障害になっているとの判断から、メインバンクの理解と協力を得ながら、粘り強い対話を重ねて経営体制の変更について合意を形成し、後継の経営陣へと経営のバトンタッチを実現しました。あわせて株主構成も整理し、創業家内での資本関係を明確化しました。
この一連のプロセスを経て、赤字幅は大きく縮小したものの、債務超過の解消には至らず、黒字化に向けたさらなる打ち手が必要な状況でした。
合議制経営への転換と黒字化
次に着手したのが、特定の個人に依存しない合議制の経営体制づくりです。取締役会には創業家の役員に加え、金融機関出身の常勤役員、みつきコンサルティングの担当者、そして現場で実力を発揮していた社内人材を新たに登用し、多様な視点で経営判断を行う体制を構築しました。監査役には顧問弁護士、オブザーバーには顧問税理士を配置し、月次で取締役会を開催して決算報告から現場の課題まで丁寧に議論する運営スタイルを定着させました。
あわせて、原価管理システムへの投資を行い、顧客別・アイテム別の収益状況を可視化できる体制を整備したほか、待ちの受注対応が中心だった営業スタイルを見直し、自ら企画提案を行う営業への転換を進めました。各部門でのプロジェクトチーム発足や人材配置の見直しを通じて、トップダウン一辺倒だった組織文化の改革にも取り組みました。
こうした地道な取り組みが実を結び、トレミー社は徐々に黒字体質を確立し、財務内容も着実に改善していきました。関与開始から数年をかけた再生プロセスを経て、同社は自走できる経営基盤を取り戻すに至りました。

M&Aによる更なる成長ステージへ
事業再生が軌道に乗った後、トレミー社にとって次の課題となったのが、培ってきた製造技術と研究開発力をさらに成長へとつなげるパートナーの選定でした。みつきコンサルティングは、トレミー社の主要取引先であり、美容・健康事業を通信販売事業の柱の一つとして展開する株式会社ナック様との協業可能性に着目し、株式譲渡によるグループ入りを提案しました。
ナック社は、「暮らしのお役立ち企業」として、レンタル事業や住宅事業、美容・健康事業など複数の事業を展開する東証プライム上場企業です。子会社である株式会社JIMOS社を中心とした美容・健康事業において、オリジナルブランドの化粧品・健康食品を主力とする通信販売を手がけており、トレミー社はかねてよりJIMOS社の主力製品の製造委託先としての取引関係にありました。
トレミー社をグループに迎え入れることで、ナック社は既存事業で培った商品開発ノウハウをさらに深化させるとともに、美容・健康事業における新たな商品開発やビジネス展開の可能性を広げることができます。一方トレミー社にとっても、主要取引先であるナックグループとの協業を一段と深めることで、創業以来培ってきた製造技術や研究開発の知見を、より大きな事業基盤の中で発揮していく道が開けました。
2021年7月30日、みつきファンド1号投資事業組合が保有するトレミー社の全株式がナック社へ譲渡され、トレミー社はナックグループの一員として新たなスタートを切りました。

本件を振り返って
本件は、財務危機に陥った老舗OEMメーカーの事業再生から、株式譲渡によるグループ入りまでを、足かけ約6年にわたって一貫して支援した事例です。財務リストラや経営体制の再構築といった「再生」のフェーズと、成長パートナーへの承継という「M&A」のフェーズは、一見すると別の専門性を要するように見えますが、両者を同じ担当者が継続して支援したことで、企業の実態を深く理解した上での最適なパートナー選定と、円滑な引き継ぎが可能になりました。
みつきコンサルティングは、事業再生の現場で培った知見と、M&A仲介における豊富な実績を組み合わせることで、財務課題を抱える企業に対しても、単なる延命ではなく、持続的な成長につながる出口を提案しています。後継者不在や財務状況の悪化などにお悩みの経営者様は、ぜひ一度みつきコンサルティングにご相談ください。



