ふるさと納税の控除額(寄付限度額)を知ろう
ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄付をすることで、税金の控除を受けられる制度です。この制度を利用することで、実質2,000円の自己負担で各地の特産品などの返礼品を受け取ることができるため、多くの人に利用されています。しかし、ふるさと納税には控除額の上限があり、それを超えて寄付をしてしまうと自己負担が増えてしまいます。そのため、自分の控除限度額を正確に把握することが重要です。
この記事では、ふるさと納税の控除額(寄付限度額)について詳しく解説していきます。控除額の計算方法や、確認方法、よくある質問などについて、わかりやすく説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
ふるさと納税の控除額とは
ふるさと納税の控除額とは、ふるさと納税で寄付した金額のうち、税金から差し引かれる金額のことです。基本的には、寄付金額から2,000円を引いた額が控除の対象となります。この控除には上限があり、これを「控除限度額」や「寄付限度額」と呼びます。
控除限度額は、その人の収入や家族構成によって異なります。控除限度額を超えて寄付をすると、超過分は自己負担となってしまうため、お得にふるさと納税を利用するためには、自分の控除限度額を知ることが大切です。
控除額の計算方法
ふるさと納税の控除額は、以下の3つの控除を合計したものになります。
(1) 所得税からの控除
(2) 住民税からの控除(基本分)
(3) 住民税からの控除(特例分)
それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。

出所:総務省 控除額の計算
(1) 所得税からの控除
計算式:(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率
所得税からの控除額は、ふるさと納税額から2,000円を引いた金額に、その人の所得税率をかけて算出します。ただし、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限となります。
所得税率は、その人の課税所得に応じて5%から45%まで7段階に分かれています。なお、2019年から2037年までは、所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税も加算されます。
(2) 住民税からの控除(基本分)
計算式:(ふるさと納税額-2,000円)×10%
住民税からの控除(基本分)は、ふるさと納税額から2,000円を引いた金額の10%となります。こちらも、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
(3) 住民税からの控除(特例分)
計算式:(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税率)
住民税からの控除(特例分)は、ふるさと納税額から2,000円を引いた金額に、(100%-10%-所得税率)をかけて算出します。ただし、この特例分が住民税所得割額の20%を超える場合は、住民税所得割額の20%が上限となります。 これら3つの控除を合計したものが、ふるさと納税の控除額となります。ただし、実際の計算は複雑なため、後述するシミュレーターなどを利用して確認することをおすすめします。
控除限度額の確認方法
自分の控除限度額を確認する方法はいくつかありますが、代表的なものを紹介します。
(1) 早見表を利用する
総務省が公開している「ふるさと納税額の早見表」を利用すると、おおよその控除限度額を知ることができます。この表は、給与収入と家族構成別に控除限度額が記載されています。 例えば、年収400万円の独身者の場合、控除限度額は約42,000円となっています。ただし、この早見表はあくまで目安であり、他の控除を受けている場合などは実際の限度額と異なる可能性があります。
- 掲載している表は、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けていない給与所得者のケースとなります。年金収入のみの方や事業者の方、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けている給与所得者の方の控除額上限は表とは異なりますのでご注意ください。
- 社会保険料控除額について、給与収入の15%と仮定しています。
- 掲載している表はあくまで目安です。具体的な計算はお住まい(ふるさと納税翌年1月1日時点)の市区町村にお問い合わせください。(ただし、お住まいの自治体によって、控除の対象となるふるさと納税額の上限はお答えできない場合があります。控除上限額については下記に掲載している表や「寄附金控除額の計算シミュレーション」もご利用ください。)
ふるさと納税を行う方本人の給与収入 | ふるさと納税を行う方の家族構成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
独身又は共働き※1 | 夫婦※2 | 共働き+子1人 (高校生※3) |
共働き+子1人 (大学生※3) |
夫婦+子1人 (高校生) |
共働き+子2人 (大学生と高校生) |
夫婦+子2人 (大学生と高校生) |
|
300万円 | 28,000 | 19,000 | 19,000 | 15,000 | 11,000 | 7,000 | – |
325万円 | 31,000 | 23,000 | 23,000 | 18,000 | 14,000 | 10,000 | 3,000 |
350万円 | 34,000 | 26,000 | 26,000 | 22,000 | 18,000 | 13,000 | 5,000 |
375万円 | 38,000 | 29,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 17,000 | 8,000 |
400万円 | 42,000 | 33,000 | 33,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 12,000 |
425万円 | 45,000 | 37,000 | 37,000 | 33,000 | 29,000 | 24,000 | 16,000 |
450万円 | 52,000 | 41,000 | 41,000 | 37,000 | 33,000 | 28,000 | 20,000 |
475万円 | 56,000 | 45,000 | 45,000 | 40,000 | 36,000 | 32,000 | 24,000 |
500万円 | 61,000 | 49,000 | 49,000 | 44,000 | 40,000 | 36,000 | 28,000 |
525万円 | 65,000 | 56,000 | 56,000 | 49,000 | 44,000 | 40,000 | 31,000 |
550万円 | 69,000 | 60,000 | 60,000 | 57,000 | 48,000 | 44,000 | 35,000 |
575万円 | 73,000 | 64,000 | 64,000 | 61,000 | 56,000 | 48,000 | 39,000 |
600万円 | 77,000 | 69,000 | 69,000 | 66,000 | 60,000 | 57,000 | 43,000 |
625万円 | 81,000 | 73,000 | 73,000 | 70,000 | 64,000 | 61,000 | 48,000 |
650万円 | 97,000 | 77,000 | 77,000 | 74,000 | 68,000 | 65,000 | 53,000 |
675万円 | 102,000 | 81,000 | 81,000 | 78,000 | 73,000 | 70,000 | 62,000 |
700万円 | 108,000 | 86,000 | 86,000 | 83,000 | 78,000 | 75,000 | 66,000 |
725万円 | 113,000 | 104,000 | 104,000 | 88,000 | 82,000 | 79,000 | 71,000 |
750万円 | 118,000 | 109,000 | 109,000 | 106,000 | 87,000 | 84,000 | 76,000 |
775万円 | 124,000 | 114,000 | 114,000 | 111,000 | 105,000 | 89,000 | 80,000 |
800万円 | 129,000 | 120,000 | 120,000 | 116,000 | 110,000 | 107,000 | 85,000 |
825万円 | 135,000 | 125,000 | 125,000 | 122,000 | 116,000 | 112,000 | 90,000 |
850万円 | 140,000 | 131,000 | 131,000 | 127,000 | 121,000 | 118,000 | 108,000 |
875万円 | 146,000 | 137,000 | 136,000 | 132,000 | 126,000 | 123,000 | 114,000 |
900万円 | 152,000 | 143,000 | 141,000 | 138,000 | 132,000 | 128,000 | 119,000 |
925万円 | 159,000 | 150,000 | 148,000 | 144,000 | 138,000 | 135,000 | 125,000 |
950万円 | 166,000 | 157,000 | 154,000 | 150,000 | 144,000 | 141,000 | 131,000 |
975万円 | 173,000 | 164,000 | 160,000 | 157,000 | 151,000 | 147,000 | 138,000 |
1000万円 | 180,000 | 171,000 | 166,000 | 163,000 | 157,000 | 153,000 | 144,000 |
1100万円 | 218,000 | 202,000 | 194,000 | 191,000 | 185,000 | 181,000 | 172,000 |
1200万円 | 247,000 | 247,000 | 232,000 | 229,000 | 229,000 | 219,000 | 206,000 |
1300万円 | 326,000 | 326,000 | 261,000 | 258,000 | 261,000 | 248,000 | 248,000 |
1400万円 | 360,000 | 360,000 | 343,000 | 339,000 | 343,000 | 277,000 | 277,000 |
1500万円 | 395,000 | 395,000 | 377,000 | 373,000 | 377,000 | 361,000 | 361,000 |
1600万円 | 429,000 | 429,000 | 412,000 | 408,000 | 412,000 | 396,000 | 396,000 |
1700万円 | 463,000 | 463,000 | 446,000 | 442,000 | 446,000 | 430,000 | 430,000 |
1800万円 | 498,000 | 498,000 | 481,000 | 477,000 | 481,000 | 465,000 | 465,000 |
1900万円 | 533,000 | 533,000 | 516,000 | 512,000 | 516,000 | 500,000 | 500,000 |
2000万円 | 569,000 | 569,000 | 552,000 | 548,000 | 552,000 | 536,000 | 536,000 |
2100万円 | 604,000 | 604,000 | 587,000 | 583,000 | 587,000 | 571,000 | 571,000 |
2200万円 | 640,000 | 640,000 | 623,000 | 619,000 | 623,000 | 607,000 | 607,000 |
2300万円 | 773,000 | 773,000 | 754,000 | 749,000 | 754,000 | 642,000 | 642,000 |
2400万円 | 814,000 | 814,000 | 795,000 | 790,000 | 795,000 | 776,000 | 776,000 |
2500万円 | 855,000 | 855,000 | 835,000 | 830,000 | 835,000 | 817,000 | 817,000 |
- 「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。(配偶者の給与収入が201万円超の場合)
- 「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。
- 「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。
- 中学生以下の子供は(控除額に影響がないため)、計算に入れる必要はありません。
例えば、「夫婦子1人(小学生)」は、「夫婦」と同額になります。また、「夫婦子2人(高校生と中学生)」は、「夫婦子1人(高校生)」と同額になります。
出所:総務省 全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安
詳細なシミュレーターを利用する
より正確な控除限度額を知るためには、ふるさと納税ポータルサイトが提供しているシミュレーターを利用する方法があります。例えば、以下のようなサイトです。
控除限度額の計算に関する注意点
ふるさと納税の控除限度額を計算する際は、以下の点に注意が必要です。
(1) 年収は「手取り」ではなく「額面」
控除限度額の計算で使用する年収は、税金や社会保険料が天引きされる前の「額面」金額です。手取り額ではないので注意しましょう。源泉徴収票では「支払金額」の欄に記載されている金額を使用します。
(2) 家族構成の変化に注意
結婚や出産、子供の進学などで家族構成が変わると、控除限度額も変わります。年末(12月31日)時点の家族構成で計算されるので、年の途中で変化がある場合は注意が必要です。
控除限度額を超えないためのポイント
ふるさと納税を有効に活用するためには、控除限度額を超えないようにすることが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
(1) 早めに限度額を確認する
年度の早い段階で、シミュレーターなどを使って自分の控除限度額を確認しておきましょう。年収や家族構成に変更がある場合は、その都度確認するようにしてください。
(2) 余裕を持った寄付額を設定する
控除限度額ギリギリまで寄付するのではなく、少し余裕を持たせた金額で寄付するのがおすすめです。年末に予期せぬ収入があった場合などに備えて、限度額の90%程度を目安にするとよいでしょう。
(3) 複数回に分けて寄付する
一度に大きな金額を寄付するのではなく、年間を通じて複数回に分けて寄付するのも一つの方法です。これにより、自分の収入状況を見ながら調整しやすくなります。
(4) 家族で協力する
夫婦や家族で協力してふるさと納税を行うことで、より効果的に制度を活用できます。それぞれの控除限度額を把握し、家族全体でバランスよく寄付することを心がけましょう。
(5) 他の控除との兼ね合いを考慮する
住宅ローン控除や医療費控除など、他の控除を受ける予定がある場合は、それらとの兼ね合いを考慮してふるさと納税の金額を決めましょう。
控除限度額に関するよくある質問
ここでは、ふるさと納税の控除限度額に関してよくある質問とその回答をまとめています。
- Q1控除限度額を超えて寄付してしまった場合はどうなりますか?
-
A1控除限度額を超えた分は自己負担となります。そのため、限度額を把握し、それを超えないように注意することが大切です。
- Q2夫婦でふるさと納税をする場合、控除限度額はどう計算すればいいですか?
-
A2共働きの場合、夫婦それぞれで控除限度額を計算します。子供が夫の扶養に入っている場合、夫の限度額は「子供あり」として計算し、妻の分は「子供なし」として計算します。
- Q3住宅ローン控除や医療費控除を受けている場合、ふるさと納税の控除限度額は変わりますか?
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A3はい、変わります。住宅ローン控除や医療費控除を受けている場合、それらの控除額分だけふるさと納税の控除限度額が減少します。正確な金額を知るには、詳細なシミュレーターを利用するのがよいでしょう。
- Q4自営業者の場合、控除限度額はどのように計算すればいいですか?
-
A4自営業者の場合は、前年の確定申告書類の控えを参考にしながら、詳細なシミュレーターに情報を入力して計算するのがおすすめです。所得金額の合計が「給与所得控除後の金額」に、所得から差し引かれた額の合計が「所得控除額の合計額」に相当します。
- Q5母子家庭の場合、控除限度額はどのように計算しますか?
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A5独身で子供がいる場合、子供が中学生以下のときは「独身または共働き」の欄を、子供が高校生以上の場合は「共働き+子」の欄を参照して計算します。
- Q6ふるさと納税の控除限度額は、いつの年収を基に計算しますか?
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A6ふるさと納税の控除限度額は、寄付をした年の収入を基に計算します。例えば、2024年に寄付をする場合は、2024年の年収(見込み)を基に計算します。ただし、年収が確定していない場合は、前年の年収を参考にするなどして、おおよその限度額を把握するのがよいでしょう。
- Q7ふるさと納税で限度額を超えたかどうかを確認する方法はありますか?
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A7はい、以下の2つの方法で確認できます。
源泉徴収票:12月頃に届く源泉徴収票の情報を使って計算します。
住民税決定通知書:5月から6月頃に届く住民税決定通知書で、実際の控除額を確認できます。 - Q8クレジットカードでふるさと納税をする場合、注意点はありますか?
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A8クレジットカードでの決済は便利ですが、以下の点に注意が必要です。
- 寄付した年の控除として認められるのは、12月31日までに寄付が完了している必要があります。年末のカード決済は、実際の寄付完了が翌年になる可能性があるので注意しましょう。
- 夫婦でふるさと納税をする場合、それぞれの名義のカードで決済することが望ましいです。
- Q9iDeCoを利用している場合、ふるさと納税の控除限度額は変わりますか?
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A9はい、iDeCoの掛金分だけ控除限度額が減少します。例えば、年収700万円の共働き世帯で、月2.3万円のiDeCo掛金を支払っている場合、ふるさと納税の控除限度額は年間約8,000円減少すると想定されます。
- Q10株式投資やFXで利益が出た場合、ふるさと納税の控除限度額は変わりますか?
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A10はい、変わります。株式投資やFXなどの資産運用で所得が増加すると、ふるさと納税の控除限度額も増加します。ただし、損失が出た場合は控除限度額に影響しません。