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タイ進出

タイの税理士に頼む業務範囲と税務申告で失敗しないための注意点

タイ進出

タイには日本の税理士に該当する単一の資格はなく、公認会計士や税務監査人が業務を担います。本記事では、現地法人で必要となる主要税目の申告スケジュールや、実務上の落とし穴、税務調査の傾向、個人納税者番号の取得手続まで詳しく整理しました。

タイへ進出して事業を展開するにあたり、現地の税制や会計の実務を正しく把握することは極めて重要な課題です。日本とは異なる複雑な税務ルールや、歳入局による厳格な税務調査に対応するためには、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。タイにおける税理士や会計士の役割、主要な税目の申告スケジュール、現場で発生しやすい税務トラブルの防止策を整理しました。これからの現地管理体制の構築や、不要な追徴課税リスクの軽減に役立ててください。

タイには税理士資格がない?専門家の資格体系と役割

現地法人の立ち上げを検討する際、多くの日本人が最初に疑問に思うのが、タイにおける税務専門家の存在です。

公認会計士と税務監査人の違い

タイには日本のような税理士という単一の国家資格は存在しません。税務や会計の業務は、公認会計士や税務監査人といった資格を持つ専門家が担当します。公認会計士は大規模な会社を含めた監査業務を行い、税務監査人は小規模な会社の監査人となることができます。タイでは会社の規模を問わず、すべての会社に対して監査人による監査義務が課されるため、これらの専門家との連携が不可欠となります。日本の公認会計士や税理士の資格を持っていても、タイ法人の税務申告書や監査報告書への署名権限はありません。

経理責任者に必要なCPDライセンスとは

タイの会計法では、企業に1名以上の経理責任者を置くことが義務付けられています。この担当者は、継続的専門能力開発を意味するCPDライセンスを保有している必要があります。CPDライセンスは、タイの会計士連盟に登録し、毎年規定のセミナーを受講することで維持される資格です。自社内に資格を持つスタッフを採用できない場合は、外部の会計事務所に記帳代行を委託し、事務所が抱える資格者の名義を使用することが実務上一般的となっています。

主要税目の申告スケジュールと実務における落とし穴

毎月の資金繰りや予算管理を行う上で、タイ独特の申告スケジュールを正確に把握しておくことは欠かせません。

法人税申告における25%ルールの罠

法人税の確定申告は決算日から150日以内に完了させる必要がありますが、それ以上に注意すべきなのが年2回の申告のうち中間申告です。中間申告は事業年度の開始から6カ月を経過した日から2カ月以内に行います。この中間申告では、年間の予想利益を見積もって中間税額を計算しますが、この予想利益が実際の確定申告時の利益より25%以上下回っていると、合理的な理由がない限り、不足税額の20%の加算税や月1.5%の延滞税が科されます。この25%ルールに抵触しないよう、下半期の業績予測は厳密に立てる必要があります。

付加価値税のタックスインボイス管理とみなし課税

タイの消費税に相当する付加価値税は原則7%の税率で課されますが、その相殺や還付にはタックスインボイスの管理が極めて重要です。インボイスの原本に社名や住所の不備、記載漏れがあると、仕入税額控除が認められず、自社の費用負担となってしまいます。さらに、不要になった資産の廃棄や、顧客への無償サンプルの提供を行う際にも、それを販売したとみなして7%のみなし売上付加価値税を自社負担で納付しなければならないルールが存在します。こうした特殊な課税点を見落とすと、後の税務調査で重い罰金を科される原因となります。

広範囲に要求される源泉徴収税の仕組み

タイの源泉徴収制度は、物品の販売を除くほぼすべてのサービス取引や賃貸借取引が対象となり、その範囲は非常に広範です。広告料は2%、サービス料や請負は3%、賃貸料は5%など、支払いの内容に応じて細かく税率が定められています。法人はこれらを手引して翌月の7日、電子申告の場合は15日までに申告と納税を行う義務を負います。もし源泉徴収を怠った場合、ペナルティの対象となります。

歳入局による税務調査の傾向と事前対策

税務署からの突然の連絡や調査の実施に対して、どのように備えるべきか悩んでいる経営者は少なくありません。

還付申請に伴う税務調査のリスク

タイでは、法人税の確定申告や毎月の付加価値税の申告において、過払いや還付のポジションが発生した場合、還付申請を行うことができます。しかし、還付申請を行うと、ほぼ自動的に歳入局による厳しい税務調査が実施されるという実務上の実態があります。還付調査が始まると、還付を申請した税目だけでなく、源泉徴収税や印紙税など他の税目にも調査が及び、結果として申請額を上回る追徴課税が発生するトラブルが珍しくありません。そのため、少額の還付であれば申請を行わず、費用化や翌月繰越を選択することが実務上の定石となっています。

赤字取引に対するみなし課税の指摘

日系企業の多くが直面する大きなリスクの一つが、売上高が売上原価を下回る赤字取引に対する指摘です。歳入局は、合理的な理由なく市場価格より低い対価で取引を行ったと判断した場合、市場価格に引き直して法人税や付加価値税を課税する権限を持っています。取引先との関係維持や事業上の必要性から赤字で販売せざるを得ない場合でも、歳入局が適切と考える利益率に引き直して課税される事例があります。これに対抗するためには、取引価格が合理的であることを示す比較価格や契約書などの客観的な証拠を事前に整備しておく必要があります。

個人納税者番号の取得手続と役員・駐在員の所得税実務

現地で働く日本人駐在員や、日本から兼務する役員の所得に対する個人所得税の取り扱いにも、タイ独自のルールが存在します。

個人納税者番号の取得と源泉徴収

タイで就労し、給与や役員報酬を得る外国人は、事前に管轄の税務署で個人納税者番号を取得する必要があります。タイ居住者である役員や駐在員の給与については、従業員と同様に、年間の見積所得から算出した個人所得税を毎月の給与から源泉徴収し、翌月申告・納税します。一方、タイに居住していない非居住者の役員に報酬を支払う場合は、一律15%の源泉徴収が必要となります。非居住者であってもタイ法人から受け取る役員報酬はタイ国内源泉所得となるため、確定申告が求められる点に留意してください。

国外源泉所得の持ち込み課税強化への対応

タイの居住者、すなわち暦年で180日以上タイに滞在する者については、国外で得た所得に対する課税が近年大幅に強化されました。従来は、国外で稼得した所得であっても、翌年以降にタイ国内へ持ち込む(送金する)場合は非課税と解釈されていました。しかし、税制の解釈変更により、2024年1月1日以降に発生した国外源泉所得については、持ち込む年を問わず、タイ国内に送金した時点で個人所得税の課税対象となります。日本で保有する不動産の賃貸収入や株式の配当金などをタイに持ち込む場合は、日本の確定申告書や送金記録を適切に整理し、二重課税の有無や税額控除の適用について専門家に事前に相談することが強く推奨されます。

タイの税理士・会計士に関するFAQ

タイの税務や実務に関して、日系企業の皆様から特によく寄せられる代表的な疑問と解決策をまとめました。

Q1:タイで日本の税理士のように税務を相談できる専門家は誰ですか?

タイには日本の税理士制度のような単一の独立資格はありません。代わりに、タイの公認会計士や、税務署への申告署名権限を持つ税務監査人が、税務相談や申告代行などの専門業務を担っています。実務では、日本語対応が可能なスタッフや日本人専門家が在籍する日系会計事務所が、これら現地の資格者と連携して税務・会計のサポートをワンストップで提供しています。

Q2:中間申告で発生する25%ルールの罰則を避ける方法はありますか?

下半期の業績が予測を上回り、実際の課税所得が中間申告時の予想より25%以上増加した場合は、本決算の確定申告を提出する前に中間申告の修正申告を提出することで、20%の加算税のペナルティを回避することが可能です。ただし、修正申告を行った場合でも、不足していた中間納税額に対して月1.5%の延滞税が発生することは避けられません。

Q3:国外で得た所得をタイに持ち込んだ場合、課税されますか?

2024年1月1日以降に発生した国外での所得については、タイの居住者がタイ国内に送金等で持ち込んだ場合、持ち込む時期を問わずすべてタイの個人所得税の課税対象となります。2023年以前に得た所得については、それが過年度の所得であることを銀行口座の残高証明書などで客観的に証明できれば、現行ルールでも課税対象外となります。

まとめ

タイの会計や税務は、金額基準のない固定資産の登録、中間申告における25%ルールの厳格な適用、そして広範な取引に課される源泉徴収など、日本とは異なる独自の厳格なルールで運営されています。これらを現地スタッフに任せきりにせず、責任者自身もルールを俯瞰的に把握し、適切な証憑書類の管理を日々行うことが、思わぬ追徴課税やペナルティを防ぐ唯一の手段です。

みつきアカウンティング(みつきタイ)は、タイ・バンコクの日系会計事務所として、日系企業の会社設立から月次の記帳代行、税務申告、そして複雑な歳入庁対応や税務調査まで、幅広くサポートを提供しています。タイ現地の複雑な実務や法令改正に精通した日本人公認会計士と現地タイ人スタッフが密に連携し、各社の経営状況に合わせた最適なガバナンス構築をご提案します。現地法人における月次の税務や会計でお悩みの際は、お気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。