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タイ|駐在員給与の個人所得税・確定申告、決定方式・較差補填

(日本語)

タイの個人所得税と駐在員の給与負担について、重要なポイントを解説します。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどについて詳しく説明し、税務リスクへの対策もお伝えします。

タイの個人所得税の概要

タイでは、原則として各個人が確定申告を行います。3月末の確定申告時には、2月中旬に受け取った源泉徴収票と確定申告によって計算された年税額の差額を納付します。雇用者は毎月7日(E-TAXの場合は15日)に前月の源泉税を納付し、各人への源泉徴収票を配布した後、2月末までに所轄の税務署へ源泉徴収年次申告書を提出します。

個人所得税率は累進課税となり、所得区分ごとに適用する税率が異なります。2017年度の最高税率は、500万バーツ超の所得に対して35%となりました(以前は400万バーツ超が最高税率の対象)。

居住者と非居住者の課税関係

タイの個人所得税における納税義務者は、居住者と非居住者に分けられます。居住者とは、タイ国内に一時的または数度にわたり滞在し、課税年度内の滞在期間が合計180日以上に達する人物を指します。

居住者は、タイ国内源泉所得とタイ国外源泉所得のうちタイ国内に持ち込んだ部分に対して課税されます。一方、非居住者は、タイ国内源泉所得のみが課税対象となり、タイ国外源泉所得は非課税となります。

180日以内の短期滞在者の免税

日本法人の従業員が、180日以内の期間でタイへ出張する場合、日タイ租税条約の短期滞在者免税制度により、タイでの所得税が免除されることがあります。以下の3つの要件を全て満たす必要があります。

  1. タイでの滞在期間が暦年ベースで合計180日を超えないこと
  2. 報酬支払者である雇用主が日本の居住者であること
  3. 日本で支払われる報酬等がタイ企業によって負担されないこと

ただし、この免税制度は通常の雇用契約に基づく従業員にのみ適用され、法人の取締役など委任契約に基づく者には適用されません。

駐在員の給与決定と課税関係

日系企業の多くは、グロスアップ計算を行い、駐在員の給与の手取り額が日本にいたときと変わらないように計算します。海外の駐在員の給与決定には、主に以下の3つの方式があります。

  1. 購買力補償方式  日本での生活水準を海外の出向先でも維持するという考え方に基づき、各国の生計費指数を基に海外の給与額を決める方式。
  2. 併用方式  日本での基本給の額をそのまま赴任先の給与額とし、海外赴任において追加で掛かる生計費を加算した金額を海外の給与額とする方式。
  3. 別建て方式  国内の給与とは切り離して、赴任地の給与水準に基づき支給する方式。一昔前までは多く使われてきた方式だが、近年ではあまり使われていない。

為替レートの変動への対策

為替レートが上下することにより給与額が変動してしまうことを考慮し、出向契約等の中に為替レートが基準レートより上下数%変動した場合には基準レートの見直しを行うなどの文言を入れている会社もあります。

福利厚生費の取り扱いに注意

日系企業の中には、住宅費、食事代、クリーニング代、一時帰国休暇の交通費、赴任・帰任時の転居費用、子女教育費、語学費などを福利厚生費として計上している会社もありますが、日本人駐在員のみに行っている場合には給与認定されてしまいます。

これらの費用は基本的に給与として計所および申告する必要がありますが、個人所得税率の方が高くなる場合が多いこともあり、給与計上せずに損金不算入費用に含めてしまっている会社もあります。その場合は給与計上として指摘される可能性がありますので注意が必要です。

出向較差補填を活用した駐在員のボーナス負担

出向較差補填とは、出向者給与の一部について、出向先で給与が減少したため、その分を出向元が支給したり、海外出向者の留守宅手当を出向元が支給するなどした場合、それを出向元の損金(税務上の費用)として認めるルールです。

タイ法人が経営不振のため駐在員に賞与を支給できない場合、親会社が代わりに支給すれば、日本の税務ルール上、親会社の費用として認められます。これにより、タイ法人のコスト削減と、タイ法人が赤字・親会社が黒字であればグループ全体の税金額を削減できるメリットがあります。

ただし、親会社の費用として認められるためには、子会社が経営不振である事実および出向契約書・賞与不支給の社内資料といった根拠資料が必要です。また、親会社で支給したとしても、タイの個人所得税申告上は合算して申告する必要があります。

日本払い給与に対するVATの問題

タイでの駐在員給与に関する税務調査では、日本法人が支払っている給与をタイ法人へ請求される場合には注意が必要です。通常、これらの給与請求は立替金のため税金は発生しません。しかし、タイの税務当局によってこの立替金を業務委託費と見なされることがあり、その結果、意図しない追徴課税のリスクに直面することがあります。

例えば、日本本社が駐在員の給与をタイ法人に対して「業務委託費」という名目で請求すると、実際は立替金であってもタイの税務署はこれを業務とみなし、源泉税を納めるべき業務と推定します。その結果、15%の源泉徴収税と7%のVATが課されることがあります。

このようなリスクを避けるためには、駐在員給与の請求名目を「立替給与(Advance payment of salary)」などとすることで、単なる立替払いであることを明確にすることが重要です。また、タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結し、駐在員の勤怠をタイ法人で管理することも必要です。さらに、現地給与を多くし、日本建替給与を少なくすることにより、万が一課税されたとしても影響を少なくすることができます。

まとめ

タイにおける駐在員の個人所得税と給与負担について、重要なポイントを解説しました。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどを理解し、出向較差補填を活用したボーナス負担や日本払い給与に対するVATの問題など、税務リスクへの対策を講じることが大切です。

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