タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の会計・税務上の取り扱いについて詳しく解説します。長期滞留売掛金の処理方法や、税務上認められる条件など、実務に役立つ情報をお届けします。
目次
タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の基本
タイでビジネスを展開する企業にとって、貸倒引当金と貸倒損失の適切な処理は会計と税務の両面で重要な課題になります。ここでは、タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の基本的な概念について説明します。
貸倒引当金とは
貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸倒損失に備えて、前もって計上する引当金のことです。売掛金や貸付金など、債権の回収不能リスクに対して設定されます。会計上は計上できる一方で、税務上は損金として認められません。
貸倒引当金の主な特徴:
- 回収不能が未確定の段階で計上
- 貸倒の確率を見積もって段階的に引当計上
- 会計監査人との協議のもとで処理
貸倒損失とは
貸倒損失は、債権の回収不能が確定した時点で計上される損失のことです。貸倒引当金と異なり、実際に回収できないことが明らかになった時点で全額を損失として計上します。
貸倒損失の主な特徴:
- 回収不能が確定した時点で計上
- 全額を一度に損失計上
- 損金にするには税務上の要件を満たす必要がある
貸倒引当金の会計処理と税務上の取り扱い
貸倒引当金の処理は、会計上と税務上で扱いが異なります。ここでは、それぞれの取り扱いについて詳しく解説します。
会計上、税務上の処理方法
会計上、貸倒引当金は債権の回収不能のリスクが高まった場合、貸倒引当金を費用計上することが可能です。貸倒引当金を計上することにより、将来の損失に備えることができ、財務諸表がより実態を反映したものとなります。
会計上の処理とは異なり、税務上はまだ回収できないことが確定しているわけではないため、税務上の損金にすることはできません。そのため、税務申告では損金不算入費用として処理し、課税所得に加算する処理が必要になります。
つまり、会計上で費用計上した貸倒引当金は、税務上では損金にすることができず、税務申告で課税所得に加算されることになります。これにより、会計上の利益と税務上の課税所得に差異が生じることになります。
貸倒損失の会計処理と税務上の取り扱い
貸倒損失は、債権の回収不能が確定した時点で計上される実際の損失です。会計処理と税務上の取り扱いについて、詳しく見ていきましょう。
会計上、税務上の処理方法
会計上、貸倒損失は回収不能が確定した時点で全額を貸倒損失として計上し、損益計算書上で費用として認識します。この処理により、実際に発生した損失を適切に財務諸表に反映させることができます。
税務上は、一定の要件を満たす場合のみ損金として認められます。要件を満たさない場合は損金不算入費用として処理されることになります。また、債権の金額によって認められる条件が異なります。
税務上認められるためには、債権の金額に応じて定められた条件を満たす必要があり、これらの条件を満たさない場合、会計上は費用計上されても税務上は損金として認められず、課税所得の計算上で調整が必要となります。
税務上認められる貸倒損失の条件
タイの税法では、債権の金額に応じて貸倒損失が認められる条件が詳細に規定されています。ここでは、金額別の条件について解説します。
2,000,000バーツ超の債権
2,000,000バーツを超える債権の場合、以下のいずれかの条件を満たす必要があります:
1.支払請求を行い、適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、以下の理由で支払いがなされていない状態:
・債務者の死亡または失踪宣告があり、支払いに充てる財産がない
・民事訴訟を提起し、執行官による強制執行が行われたが、債務者に十分な財産がない
2.破産手続きを開始し、和解が成立または破産宣告がなされ、残余財産の分配が行われたか、裁判所が訴訟終了を命じた
3.債務者が事業を停止し、優先債権者の債権が債務者の財産を上回っている
200,000バーツ超~2,000,000バーツ以下の債権
200,000バーツを超え2,000,000バーツ以下の債権の場合、以下のいずれかの条件を満たす必要があります:
1.支払請求を行い、適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、以下の理由で支払いがなされていない状態:
・債務者の死亡または失踪宣告があり、支払いに充てる財産がない
・債務者が事業を停止し、先取特権のある債権者の債権が債務者の財産を上回っている
2.債権回収の民事訴訟を提起し、裁判所が訴えを受理した
3.破産宣告の申請を行い、裁判所が申請を受理した(清算人による申し立ても含む)
注意点:
- 訴訟や申請が外国で行われた場合、その国の法務当局による証拠書類およびタイ外務省の規定に沿った翻訳証明が必要
- 該当年度の期末日から30日以内に貸倒償却の社内承認を行う必要がある
200,000バーツ以下の債権
200,000バーツ以下の債権の場合、以下の両方の条件を満たす必要があります:
- 適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、支払いがなされていない
- 訴訟を提起しても、回収見込額以上の費用がかかると予想される
これらの条件は、歳入局のガイドラインに基づいています。企業は、これらの条件を満たしていることを適切に文書化し、証明できるようにしておく必要があります。
まとめ
タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の処理は、会計と税務の両面で重要です。会計上は将来の損失に備えて貸倒引当金を計上し、実際に回収不能となった時点で貸倒損失を計上します。一方、税務上は厳格な条件が設けられており、これらを満たす必要があります。適切な処理を行うためには、タイの法規制を十分に理解し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
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