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タイ|親会社へのマネジメントフィーに関する税務リスクと対策

(日本語) 親会社へのマネジメントフィーに関する税務リスクと対策を解説します。タイにおける税務リスク、日本とタイの税務調査の違い、具体的な対策方法を詳しく紹介します。 親会社へのマネジメントフィーとは? 親会社へのマネジメントフィーとは、親会社が子会社に対して提供する管理業務に対する対価のことです。このフィーは、グループ全体の事業計画策定や人事規程の作成、財務管理などのマネジメント活動に対して支払われます。 マネジメントフィーの定義と役割 マネジメントフィーは、親会社が子会社に提供する管理業務に対する対価として定義されます。これには、経営戦略の策定、人材管理、財務管理などが含まれます。これらのサービスは、グループ全体の効率性向上や統一された経営方針の実施を目的としています。 税務上の取り扱い タイの歳入法典での規定により、請負所得、ロイヤルティ、利息、配当等の外国法人への送金には源泉徴収義務が発生します。二重課税防止のため、タイと日本の間で締結されている租税条約では、タイ法人から日本法人への役務提供(事業所得)に対する送金には、PE(恒久的施設)がなければ課税されないと規定されています。しかし、使用料(ロイヤルティ)に対しては租税条約上でも課税対象となるため、事業所得か使用料(ノウハウの提供を含む)か、ということがタイ税務局と争点になることがよくあります。事業所得として認定される場合、租税条約により源泉税は不要ですが、使用料として認定される場合は源泉税が課されることになります。 事業所得としてのマネジメントフィー 事業所得として認定されるマネジメントフィーは、親会社が子会社に対して具体的な業務を提供する場合に該当します。この場合、源泉税は不要です。 使用料としてのマネジメントフィー 使用料として認定されるマネジメントフィーは、親会社が子会社に対してノウハウや技術を提供する場合に該当します。この場合、源泉税が15%課されることがあります。 タイにおけるマネジメントフィーの税務リスク 上記のような状況から、タイにおいてマネジメントフィーは税務当局の監査対象となりやすく、適切な対応が求められます。 タイ税務当局の指摘事例 タイの税務当局は、使用料認定での課税ではなく対価性の有無を論点として損金否認することもあります。マネジメントフィーに対して対価性がないと判断し、費用そのものを否認するというケースになります。以下の事例で説明します。 事業所得として認定された場合 事業所得として認定される場合、源泉税は不要ですが、適切な対価性が求められます。例えば、親会社が具体的な対価性がある業務を提供し、その対価としてタイ子会社が親会社にマネジメントフィーを支払っているというような証拠が必要です。 使用料として認定された場合 使用料として認定された場合、15%の源泉税が課されます。タイの税務当局は、ノウハウや技術の提供が対価性を持つかどうかを厳しく審査します。 マネジメントフィーに対する日本とタイの税務調査の違い 日本とタイでは、税務調査における対応が異なります。特に、収益計上や未収金の扱いについては注意が必要です。 日本税務調査の対応 日本における税務調査では、マネジメントフィーの収益計上が適切に行われているかどうかが重点的にチェックされます。 収益計上時の注意点 収益計上時には、未収金として計上する場合としない場合で異なる取り扱いが求められます。未収金として計上しない場合、寄附金として課税されるリスクがあります。 未収金の扱い 未収金として計上する場合、そのまま資産として残るため、最終的に費用処理する際に損金不算入となるリスクがあります。 税務リスクを軽減するための具体的対策 税務リスクを軽減するためには、契約書の見直しやコストアプローチの採用の方が有効です。実際にかけた工数から費用を計算したマネジメントフィーをタイ子会社が負担するとした方がタイ税務当局に説明しやすくなります。 契約書の見直しと修正 契約書の文言を見直し、対価性を明確にすることで、税務リスクを軽減できます。また、タイと日本の両国の要件を満たすように修正することが重要です。 税務リスクの回避方法 税務リスクを回避するためには、対価性の証明を徹底し、源泉税の支払いを適切に行うことが必要です。契約書に事業所得と使用料の区別を明確にし、税務リスクを最小限に抑えることが求められます。 コストアプローチの採用 コストアプローチを採用することで、マネジメントフィーの適正な対価性を示すことができます。親会社が負担したコストをベースにフィーを設定し、透明性を高めることで税務リスクを回避できます。 まとめ 親会社へのマネジメントフィーは、適切な対価性を持つことが求められ、税務上のリスクを伴います。タイと日本の税務調査の違いを理解し、契約書の見直しやコストアプローチの採用などの対策を講じることが重要です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|法人所得税の課税所得計算と損金不算入項目(Addback)の留意点

(日本語) タイの法人税務では、課税所得の計算において、会計上の利益から損金不算入項目(Addback)を加算する必要があります。本記事では、タイ法人税の基本的な計算方法と損金不算入項目について解説し、特に交際費やAddbackに関する留意点を詳しく説明します。適切な税務申告のためには、損金不算入項目を正しく理解することが重要です。 タイの法人所得税・課税所得の計算方法 タイの法人所得税は、内国歳入法に基づき、一会計期間に営まれた事業に係るすべての益金からすべての損金を差し引いて算定された課税所得に対して課税されます。事業年度は原則として12カ月とされ、益金及び損金は発生主義により認識されます。 課税所得の計算式 課税所得は、以下の計算式により算出されます。 課税所得 = 会計上の収益 - 会計上の費用 + 益金算入額 + 損金不算入額 - 益金不算入額 - 損金算入額 非課税対象所得 原則としてすべての収入が課税の対象となりますが、勅令等に基づき特定の収入は非課税とされています。 益金の額 所得金額の計算上、益金については発生主義により算定されます。会計年度内に生じた益金は、たとえ当該会計年度に受け取らなくても、当該会計年度の益金の額に含めなければなりません。  また、資産を無償または合理的な理由がなく市価より低い場合、内国歳入法65条/2において「当局職員はそれぞれの価格を市価に基づき査定することができる」とされています。この場合、当局側が指定する市場価格により収益認識が行われることになるため注意が必要です。 受取配当金の取扱い 配当は原則10%の源泉徴収の対象です。ただし、以下の条件を全て満たす場合には配当に係る所得が免税となるため、源泉税控除は不要となります。 タイ国内の法人から受領する配当 配当権利の前後6か月間(前3ヶ月、後3ヶ月)、25%以上の議決権を保有している 相互に株式持ち合いをしていない 一般的な損金不算入項目 タイの法人税務において、損金不算入項目(Non Deductible Expense、Add Back Expense)は、会計上は費用として計上されているものの、税務上は損金として認められない項目を指します。主な損金不算入項目は以下の通りです。 引当金 賞与引当金、退職給付引当金、貸倒引当金等の引当金は、原則として損金不算入となります。貸倒引当金については要件を満たす場合は損金にすることができます。 資産評価損 棚卸資産の低価法評価損を除き、資産評価損は損金不算入となります。 関連者への支払い 資産の購入などで市場価格を超える価格での購入や、取締役、株主などへの会社状態に見合わない部分の支払額は、損金不算入となります。 事業目的に該当しない費用 事業目的に該当しない費用は損金不算入となります。壁画や装飾品などが該当することが多いです。 寄付金 指定寄付金を除き、寄付金は損金不算入となります。国立病院などへの寄付は損金算入が認められます。 交際費 交際費も限度額の範囲内、かつ証憑が適切に整備されていれば損金算入可能です。 その他の損金不算入項目 他の会計期間に帰属するべき費用、使途不明金、延滞税・加算税、刑事上の罰金等も通常、損金不算入項目として扱われます。 交際費の損金不算入 交際費は、限度額の範囲内で、かつ証憑が適切に整備されていれば損金算入可能です。 交際費の損金算入限度額 交際費の損金算入限度額は、年間の総売上高(総収入)と資本金のいずれか大きい額の0.3%(但し、上限1000万バーツ)と設定されています。 交際費の証憑 交際費を損金算入するためには、会社に対しての請求書やTax invoiceの発行等、証憑を適切に整備する必要があります。 損金不算入(Addback)の留意点 損金不算入項目は、会計上の利益と税務上の所得の差異を生じさせる重要な要因です。 損金不算入額が課税所得に与える影響 会計上の利益は、売上高から費用を差し引いた額ですが、法人税は税務上の所得に対して課税されるため、益金から損金を差し引いた額になります。損金不算入項目の額は益金から引くことができないため、その分税務上の所得が増えることになり、課税されることになります。つまり、損金不算入の額が大きくなれば、課税される額も大きくなることに留意が必要です。 損金不算入額が多い場合の注意点 損金不算入額が通常より多く計上されている企業では、使途不明金等が発生している可能性が高いため、留意が必要です。 まとめ タイの法人税務では、課税所得の計算において、会計上の利益から損金不算入項目を加算する必要があります。損金不算入項目には、引当金、資産評価損、関連者への支払い、事業目的に該当しない費用、寄付金、交際費などがあります。特に交際費については、損金算入限度額と証憑の整備に注意が必要です。また、損金不算入額が大きい場合には、課税所得が増加するため、適切な税務申告のためには、損金不算入項目を正しく理解することが重要です。