コラムCOLUMN

タイ|借入金規制の概要と注意点

(日本語) タイでの資金調達方法として借入金を検討している企業向けに、主な規制と注意点を解説します。BOI申請企業や外国法人に適用される規制、税法上の取り扱いなど、重要なポイントをまとめています。 タイにおける借入金の位置づけと規制の概要 タイの多くの日系企業は現地の金融機関から資金調達を行うにはハードルが高く、資金繰りに苦慮するケースがあります。このような状況下で、資金を調達する主な方法として、資本金の増資と借入金の2つが挙げられます。 借入金は、増資と比較して以下のようなメリットがあります: 支払利息が損金算入できる ・親子ローンなどの形で資金調達が可能 しかし、借入金には一定の規制が設けられています。タイでは主に以下の3つの観点から借入金の上限額を考慮する必要があります: BOIによる規制 外国人事業法による規制 歳入法(税法)による規制 これらの規制は、企業の形態や出資構成によって適用される内容が異なります。以下、各規制の詳細について解説していきます。 BOI申請企業に適用される借入金規制 タイ投資委員会(BOI)の投資奨励を受けている企業には、特別な借入金規制が適用されます。 BOI申請企業の借入金上限 BOI申請企業は、以下の条件を満たす必要があります: 負債額(借入額)が資本金の3倍以下 この規制は、BOI奨励企業の財務健全性を確保し、過度な借入を防ぐことを目的としています。 規制の対象となる企業 BOI奨励を受けているすべての企業が対象となります。業種や出資構成に関わらず、この規制を遵守する必要があります。 外国法人に対する借入金規制 タイでは、外国人事業法及び関連法規により、外国法人に対して特別な借入金規制が設けられています。 外国法人の定義と借入金上限 外国法人の定義: ・外国法人 ・外国籍者による出資が51%以上の法人 借入金上限: ・負債額(借入額)が資本金の7倍以下 この規制は、外国資本による過度な影響力を抑制し、タイ国内の経済安定性を維持することを目的としています。 規制の適用範囲と注意点 この規制は、タイ国内で事業を行うすべての外国法人に適用されます。ただし、BOI奨励企業の場合は、より厳しいBOIの規制が優先して適用されることに注意が必要です。 タイの税法における借入金の取り扱い タイの歳入法(税法)では、借入金に関して特別な規制は設けられていません。 過小資本税制の不在 タイには、過小資本税制が存在しません。過小資本税制とは、一定基準を超える支払利息を損金不算入とする制度です。 税務上の留意点 借入金にかかる支払利息は、原則として全額損金算入が可能です。これにより、親子ローンなどの形での資金調達が税務上有利となる場合があります。 ただし、税務調査の際に、借入の経済合理性や利率の適正性について質問を受ける可能性があるため、借入の目的や条件を適切に文書化しておくことが重要です。また、日本から親子ローンを受ける場合、市場金利よりも低い利率を設定した場合、日本の税務当局に利息分を寄付金とされる可能性もありますので、日本の税理士とも相談が必要です。 借入金規制が適用されないケースと実例 一定の条件を満たす企業では、借入金に対する規制がほとんど適用されないケースがあります。 規制が適用されない企業の特徴 以下の条件を全て満たす企業は、借入金規制の適用を受けません: サービス業または販売業などで51%以上がタイ資本 ・BOI奨励を受けていない 実例:高額の親子ローン 規制が適用されない企業では、資本金の10倍以上の借入金(親子ローン)を行っている事例も見られます。これは、タイの法規制上は問題ありませんが、財務の健全性や経営リスクの観点から慎重に検討する必要があります。 まとめ タイにおける借入金規制は、企業の形態や出資構成によって大きく異なります。BOI申請企業や外国法人には厳格な規制が適用される一方、一定の条件を満たす企業では規制がほとんど適用されません。資金調達の際は、自社の状況に応じた最適な方法を選択することが重要です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|会計制度の基本と企業向け会計基準を解説

(日本語) タイの会計制度と企業向け会計基準について詳しく解説します。非上場企業と上場企業で適用される基準の違いや、会計担当者に必要な資格、記帳ルールなど、タイで事業を行う上で押さえておくべき会計の基礎知識をわかりやすくまとめています。 タイの会計制度の概要 タイの会計制度は、国際的な基準に合わせる形で近年大きく変化しています。かつては米国会計基準をベースとしていましたが、現在は国際会計基準(IFRS)に準拠する形で整備されています。タイの企業がどの会計基準を適用すべきかを理解することは、正確な財務報告と法令遵守のために非常に重要です。 タイ会計基準(TAS)の種類 タイ会計基準(TAS)は、企業の性質によって2つの基準に分かれています。 TFRS for NPAEs(Non-Publicly Accountable Entities):非上場企業向け TFRS for PAEs(Publicly Accountable Entities):上場企業向け これらの基準は、企業の公的説明責任の有無によって適用が分かれています。 TFRS for NPAEsとTFRS for PAEsの違い TFRS for NPAEsとTFRS for PAEsの主な違いは以下の通りです: TFRS for NPAEs:タイ独自の会計基準で、非上場企業の実務的負担を考慮して簡略化されています。 TFRS for PAEs:主要なIFRS基準にほぼ準拠しており、より詳細な財務報告が求められます。 多くの在タイ日系企業は、TFRS for NPAEsを適用しています。ただし、TFRS for PAEsを適用することも可能ですが、内容が多岐にわたるため、あえて採用するメリットは少ないのが現状です。 非上場企業向け会計基準:TFRS for NPAEs TFRS for NPAEsの特徴 TFRS for NPAEsは、タイ独自の会計基準として、全28章から構成されています。この基準の主な特徴は以下の通りです: 継続企業の前提と発生主義会計をベースとしています。 非上場企業の実務的負担を考慮し、複雑な項目への言及を省いています。 税効果会計、従業員給付、デリバティブ等の複雑な項目については言及していません。 TFRS for NPAEsで作成が求められる財務諸表 TFRS for NPAEsを適用する企業は、タイの会社法に基づき、以下の財務諸表を最低年1回作成する必要があります: 財務状態計算書 損益計算書 株主持分変動計算書 財務諸表の注記 一方、以下の財務諸表は作成が義務付けられていません: 包括利益計算書 キャッシュ・フロー計算書(TAS第7号の任意適用が可能) 連結財務諸表(TAS第27号の任意適用が可能) 関連当事者についての開示(TAS第24号の任意適用が可能) 税効果会計(TAS第12号の任意適用が可能) デリバティブ取引 機能通貨 これらの任意適用可能な項目については、企業の判断で適用するかどうかを決定できます。 上場企業向け会計基準:TFRS for PAEs TFRS for PAEsの適用対象企業 TFRS for PAEsは、公的説明責任を有する企業、つまり上場企業向けの基準です。以下の要件を満たす企業がPAEsとなります: 負債証券または株式が公開市場で取引されている企業 公開市場での金融商品発行を目的に財務諸表を証券委員会等に登記している企業 金融機関、保険会社、信託、投資信託等、特定の法令に従い公的資産に関する事業を行う企業 公開企業法に規定された公開企業 その他通知された法人 TFRS for PAEsの特徴 TFRS for PAEsの主な特徴は以下の通りです: ほぼ主要なIFRS基準に準拠しています。 より詳細かつ複雑な財務報告が求められます。 国際的な比較可能性が高い財務諸表を作成できます。 税効果会計、従業員給付、デリバティブ等の複雑な項目についても詳細な規定があります。 TFRS for PAEsを適用する企業は、より高度な会計知識と専門的なスキルが必要となります。そのため、多くの企業は外部の会計専門家や監査法人のサポートを受けながら財務報告を行っています。 タイの会計担当者に求められる資格 CPDライセンスの概要 タイでは、会計法上のルールにより、会計責任者には資格(CPDライセンス)が必要です。CPDライセンスは、Continuing Professional…

タイ|日本人の個人所得税還付手続き完全ガイド

(日本語) タイで働く日本人の個人所得税還付手続きについて、申告方法から小切手受け取りまでの流れを詳しく解説します。帰任時の注意点や会社での処理方法も含め、還付手続きの全てがわかります。 タイにおける個人所得税還付の概要 タイで働く日本人が個人所得税の還付を受けるためには、適切な手続きを踏む必要があります。この手続きは、主に申告と還付金の受け取りの2段階に分かれています。 還付手続きの流れ 個人所得税の申告:インターネットまたは歳入局窓口で行います 必要書類を提出し、還付額を計算します 還付にかかる調査:歳入局が申告内容を確認します 調査期間は案件により異なる場合があります 還付通知書と小切手の発行: 調査完了後、歳入局が書類を郵送します 還付通知書と小切手の受け取り 歳入局から郵送される書類は以下の2点です: 個人所得税還付通知書(Kor.21) 還付金額が記載された小切手 注意点として、還付通知書が届かない場合があります。その際は、管轄の歳入局に連絡し、書類の再送を依頼することが可能です。 また、歳入局(税務署)に登録されている個人住所を会社の住所に変更することで、還付通知書と小切手を会社で受け取ることができます。これは、特に帰任が決まっている場合に有用な方法です。 還付申告の方法と注意点 タイでの個人所得税還付の申告方法には、主にインターネットと歳入局窓口の2つがあります。それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。 インターネットでの申告 インターネットでの申告は、以下の利点があります: 時間や場所を問わず申告可能 書類の郵送や窓口での待ち時間が不要 申告内容の修正が比較的容易 ただし、オンラインシステムの操作に慣れていない場合や、複雑な申告内容の場合は、窓口での申告を選択することも検討しましょう。 歳入局窓口での申告 歳入局窓口での申告は、以下のような場合に適しています: 初めて還付申告を行う場合 申告内容に不明点がある場合 直接担当者に質問したい事項がある場合 窓口での申告時は、必要書類を全て準備し、混雑時期を避けて訪問することをおすすめします。 帰任時の還付手続きにおける留意事項 タイでの勤務が年の途中で終了し、帰任することになった場合、還付手続きには特別な注意が必要です。 源泉徴収額の調整と還付 タイの個人所得税の計算は、年間に受け取る所得から所得税を計算し、毎月源泉徴収されて納税します。そのため、通年タイに滞在する予定で毎月源泉徴収を行っていた場合、年の途中での帰任により過剰な源泉徴収が発生する可能性があります。この場合、以下の点に注意が必要です: 帰任日までのタイで申告必要な給与で源泉徴収額の調整を行う 調整しきれない場合は還付申告を行う 還付書類の受け取り場所の指定 帰任のタイミングによっては、還付時に既に日本に帰国している可能性があります。そのため、還付書類の受け取り場所には特に注意が必要です。 会社住所への変更: 歳入局に登録されている個人住所を会社住所に変更 会社で還付通知書と小切手を受け取ることが可能 委任状の準備: 必要に応じて、会社や信頼できる人物に還付書類の受け取りを委任 これらの対策を講じることで、帰任後も確実に還付金を受け取ることができます。 会社での還付金の処理方法 還付金を受け取った後の処理方法は、会社がタイでの税金をどのように負担していたかによって異なります。 会社負担の場合の処理 税金を全額または一部会社が負担していた場合: 会社の費用の戻りとして処理 会社の会計上、還付金を収入として計上 この場合、還付金は個人の所得とはならず、会社の収入として処理されます。 個人負担の場合の処理 税金を全額個人が負担していた場合: 会社で仮受計上 個人に還付金を支払い、精算 この場合、還付金は個人の所得となり、個人が受け取ることになります。ただし、会社を通じて還付金を受け取る場合は、一時的に会社で仮受計上した後、個人に支払われます。 まとめ タイにおける日本人の個人所得税還付手続きは、申告から還付金の受け取りまで、いくつかのステップを踏む必要があります。特に帰任時には、還付書類の受け取り場所や源泉徴収額の調整に注意が必要です。また、還付金の処理方法は、会社の税金負担の方針によって異なるため、自身の状況を正確に把握することが重要です。適切な手続きを行うことで、確実に還付金を受け取ることができます。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|源泉所得税の仕組みと対象取引

(日本語) タイの源泉所得税について、その仕組みや対象となる取引、税率などを詳しく解説します。日本との違いや注意点、正しい処理方法についても触れ、タイでビジネスを展開する上で欠かせない知識をお伝えします タイの源泉所得税とは タイで事業を行う上で、源泉所得税に関わる取引は必ず発生すると言っても過言ではありません。源泉所得税は、源泉徴収制度により徴収される税金のことを指します。 源泉徴収制度の概要 源泉徴収制度とは、所得税の徴収制度の一つであり、給与や報酬などの所得の支払者が、所定の方法により所得税を計算し、支払い時に受取人に代わって所得税を差し引き、税務当局に納付する制度になります。 この制度は、給与の支払いにも適用されます。会社が従業員に給与を支給する際、その給与の金額から源泉所得税額を計算し、支給金額から控除して歳入局に納付します。 源泉徴収税は、給与や配当、広告料、利子、ロイヤリティ、サービス料など、さまざまな種類の所得に対して適用されますので、支払者はどの種類に該当するのかを確認して、それぞれの源泉税率に応じて源泉徴収および納付する義務があります。タイでは源泉徴収税が企業や個人にとって非常に一般的な存在です。適正な税務処理を行うためには、この制度を正しく理解し、適用される税率や納付手続きを把握しておくことが必要不可欠です。 源泉所得税が必要な理由 源泉徴収制度が存在する主な理由は以下の通りです: 確実な税金徴収:個人が確定申告を怠った場合でも、国が確実に税金を徴収できます。 納税の平準化:毎月の給与から税金を徴収することで、年度末の一括納税による負担を軽減します。 徴税コストの削減:国が直接徴収するよりも、企業を通じて徴収することでコストを抑えられます。 ただし、企業側にとっては源泉徴収の手間がかかり、源泉徴収および納付を怠った場合にはペナルティが課されるため、注意が必要です。 源泉徴収が必要な主な取引 タイでは、国内のほとんどのサービス取引および外国法人への支払いに源泉徴収が適用されます。主な取引について支払いを受ける者ごとに見ていきましょう。 タイ国内の個人への支払い タイ国内の個人に対する以下の支払いには源泉徴収が必要です: 給与、退職金等  役員報酬 配当金 請負代金 サービス料 利息 賃貸収入 その他の所得 タイ国内の法人への支払い タイ国内の法人に対する以下の支払いには源泉徴収が適用されます: サービス料 ロイヤリティ 利子 配当金 広告料金 コミッション 賃貸収入 外国法人への支払い 外国法人に対する以下の支払いには源泉徴収が必要です: 配当 利子 ロイヤリティ 人的役務サービス料 専門的サービス料 株式売却益 賃貸収入 日本とタイの違い 日本とタイの源泉徴収制度には、いくつかの違いがあります: 対象取引の範囲:タイの方が広範囲で、ほとんどのサービス取引が対象となります。 法人間取引:日本では主に個人事業主への一定のサービスに対して源泉徴収が行われますが、タイでは内国法人および個人へのサービスに対して広く源泉徴収が適用されます。 納付期限:タイでは支払いが行われた月の翌月7日まで、日本では原則として翌月10日までとなっています。 これらの違いを理解し、適切に対応することが重要です。 源泉所得税の税率 タイの源泉所得税の税率は、取引の種類や支払先によって異なります。主な取引の税率を国内取引と国外取引に分けて見ていきましょう。 国内取引の税率 タイ国内での主な取引に適用される源泉所得税の税率は以下の通りです: 配当:10% 利子:1% 広告料:2% サービス:3% コミッション:3% ロイヤリティ:3% 賃貸料:5% これらの税率は、タイ国内の個人や法人との取引に適用されます。 国外取引の税率 外国法人との取引に適用される源泉所得税の税率は以下の通りです: 配当:10% 利子:15% ロイヤリティ:15% 賃貸料:15% 株式売却益:15% 人的役務提供サービス:15%(日タイ租税条約が適用される場合0%、PEなければ課税なし) 日本とタイの間には租税条約が締結されています。租税条約とは、国と国の間で課税権の及ぶ範囲を定め、二重課税の排除及び租税回避の防止策を目的として締結された条約です。租税条約と国内法の規定が異なる場合には、租税条約が優先して適用されます。従いまして、租税条約および国内法の両方の税率を見て判断する必要があります。専門的な判断が必要な場合もありますので、迷ったときは専門家に相談されることをお勧めします。 源泉所得税の計算と納付方法 源泉所得税の正しい計算と適切な納付は、タイでビジネスを行う上で非常に重要です。具体的な計算方法と納付手続きについて見ていきましょう。 計算方法の具体例 例えば、A社がB社からサービス(源泉徴収対象)を受け、10,000バーツの報酬と700バーツのVAT(7%)の請求書を受け取った場合、以下のように計算します: サービスにかかる源泉徴収税額:10,000バーツ × 3% = 300バーツ B社への支払額:10,000バーツ - 300バーツ + 700バーツ = 10,400バーツ 税務当局への納付額:300バーツ A社は10,400バーツをB社に支払い、300バーツを源泉徴収税として税務当局に納付します。 納付期限と手続き タイでは、源泉所得税の納付期限は以下の通りです: 納付期限:支払いが行われた月の翌月7日まで 申告・納付先:歳入局(税務署) 納付を怠った場合、ペナルティ(延滞税、不納付加算税など)が課される可能性があるため、期限を厳守することが重要です。また、どのような取引が源泉徴収の対象になるかを判断するのも、慣れていない人にとっては難しいこともあります。正確な計算と適切な処理を行うために、タイ人の経理担当者や会計事務所のアドバイスを受けることをお勧めします。 利益還流時の源泉所得税 タイで事業を行う日系企業が、利益を日本の親会社に還流する場合や、タイ国内のパートナーに利益を配分する場合、源泉所得税の取り扱いに注意が必要です。 配当での還流時の税率 配当を通じて利益を還流する場合の源泉所得税率は以下の通りです: タイ法人から日本の親会社への配当:10% タイ法人からタイのパートナーへの配当:10%…

タイ|VAT(付加価値税)の概要、インボイス、還付・繰越を解説

(日本語) タイVATとタックスインボイスの徹底解説で適切な取扱いを学び、認められない仕入VATの対策や会計・税務上の注意点を把握。専門家と相談することでリスク回避を図ることが可能です。 タイVATの基礎知識 タイで事業を展開する際、VATの理解は不可欠です。VATはValue Added Taxの略で、日本の消費税に相当する税金です。ここでは、タイのVATの基本的な仕組みを解説します。 VATの概要 タイのVATは、物品やサービスの国内取引および輸入品に対して課される間接税です。現在の税率は7%(暫定税率)で、原則として事業者が納税義務を負います。ただし、VATの最終的な負担は消費者が負うことになります。 次にVATの説明に入ります。VATは深く説明しますと時間がかかりますので、今回は基本と日本本社への支払い時の注意点のみを説明させていただきます。基本としては、会社Bが会社Aに仕入代金100バーツを支払う際にVAT 7%を乗せて107バーツを支払います。そして、会社Bが会社Cに200バーツで販売する際にはVAT 7%を乗せた214バーツを受領します。会社Bは受領したVAT14バーツと支払ったVAT7バーツの差額である7バーツを税務当局に納税します。このように受け取ったVATと支払ったVATの差額を納税するというのが基本となります。 VATの目的と納税タイミング VATの主な目的は、納税のタイミングを早めることです。消費者が商品を実際に消費するまで課税されないと、税金の徴収が遅れてしまいます。そこで、VATのシステムが導入され、バリューチェーン全体で段階的に税金収入を確保し、効率的な税収を実現しています。 VATの納税義務者と納税額の計算方法 VATの納税義務者は、年間売上高が180万バーツ以上のタイ国内の事業者です。納税額は、売上VATから仕入VATを差し引いた額となります。仕入VATが売上VATを上回る場合、還付申請または翌月以降への繰越が可能です。VATの申告は、毎月の売上と仕入を集計し、翌月15日までに行う必要があります。 Tax Invoice(タックスインボイス) タイのVAT制度では、「インボイス方式」を採用しています。これは、取引ごとにタックスインボイスを発行し、それを基にVATの申告を行う方式です。タックスインボイスの適切な発行と管理は、VATの仕入税額控除を受けるために重要な役割を果たします。 タイのTax Invoiceの概要 タックスインボイスは、VAT課税対象となる取引の証明書類で、原本の発行が義務付けられています。取引先企業や税務署に対し、その取引がVAT課税対象であることを証明するために使用されます。タックスインボイスには、税務署が定める一定の要件を満たす必要があります。 税務署が認める適切なTax Invoiceの条件 税務署が認めるタックスインボイスには、以下の項目の記載が求められます。 「Tax Invoice」の文言 発行者の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店) 購買者の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店) 発行日付 Tax Invoiceの番号 商品・サービスの名称、種類、区分、数量、価格 商品・サービスの価格とは別に記載されたVAT金額 その他、歳入局が定める事項 これらの情報が不足している場合、売上VATから仕入VATを控除できなくなります。 認められない仕入VATの種類と対策 以下のようなケースでは、仕入VATの控除が認められず、経費として処理せざるを得なくなります。 Tax Invoice原本の不備や欠落 事業と直接関連しない支出 略式Tax Invoice 交際費 乗用車または10人乗り以下のバスの購入・リース 税務調査にて不適切な仕入VATの使用が発覚した場合、加算税と延滞税が課されます。適切な取り扱いを怠れば、多額の損失につながるリスクがあるため、十分な注意が必要です。 Tax Invoice原本の入手期限 仕入VATの控除は、Tax Invoiceの発行日から6ヵ月以内の申告に限られます。期限を超過したTax Invoiceを控除に使用すると、税務調査で発覚した場合、罰則の対象となります。仕入先からのTax Invoice原本の遅延や記載不備にも注意が必要で、定期的な確認を行い、期限内の申告を心がけましょう。 VATの還付と繰越 月次のVAT申告で、仕入VATが売上VATを上回る場合、納税額がマイナスになります。このような場合、事業者は過払いとなったVAT額について、還付申請を行うか、翌月以降に繰り越して将来の売上VATから控除するかを選択できます。 還付申請の注意点 還付申請を行うと、税務調査の対象となり、他の項目も調査されることがあります。還付申請は、過払いとなったVATの発生から3年以内に行わなければなりません。申請後、手続が停滞するケースが多いため、税務署の担当者とのコミュニケーションを密に取り、停滞の原因を確認することが重要です。また、担当者の名前を確認し、議事録に残すことも役立ちます。 繰越の特徴 一方、繰越に期限はありません。将来的に国内売上の増加が見込まれる場合は、繰越処理を選択し、将来の売上VATで相殺することができます。ただし、繰越額が長期間解消されない場合は、還付申請を検討する必要があります。 また、輸出型企業のように、恒常的に還付ポジションとなる場合は特例制度の活用を検討すべきでしょう。特例制度の適用には、税務署の事前審査が必要で、2年ごとの更新時にも再審査が行われます。 サービス取引とVAT サービス取引に対するVATの取り扱いは、サービスの提供地によって異なります。例えば、日本の事業者がタイの事業者にサービスを提供する場合、そのサービスの提供地が日本であればタイのVATは必要ありません。一方、サービス提供地がタイ国内であれば、タイでのVAT納税が必要となります(サービスの輸入にかかるVAT)。 サービス提供地の判定基準 サービス提供地が日本かタイかの判断は、契約内容や実際の活動状況によって異なります。サービス提供者の出張の有無なども判断材料となります。ただし、税務調査の際には、タイ国内でのサービス提供とみなされ、VATの追徴課税を受けるケースがあるので注意が必要です。 PP36の申告 サービスの輸入に対するVATは、PP36という申告書を用いて申告・納付します。特に、日本の親会社からタイ子会社へのサービス提供の場合、このPP36の申告が漏れがちです。税務調査で指摘されるケースが多いので、注意が必要です。 税務調査での指摘リスク 税務調査でVATの追徴課税を指摘された場合、本税に加え、月1.5%の延滞税が課されます。ただし、サービスの輸入にかかるVATも、通常の仕入VATと同様に、売上VATから控除することができます。Output VATがある場合は、取引実態や税務調査リスク、延滞税負担などを総合的に勘案して、申告の要否を判断する必要があります。 まとめ タイでビジネスを行う上で、VATの理解と適切な対応は欠かせません。VATの基本的な仕組みを踏まえ、税務署の求める要件を満たすタックスインボイスの発行・管理を徹底することが重要です。還付申請や繰越の選択に際しては、各社の状況を見極めた判断が求められます。 また、サービス取引におけるVATの取り扱いにも細心の注意を払う必要があります。特に、国外の事業者とのサービス取引では、提供地の判定とPP36の申告を適切に行わなければなりません。 VATに関する税務リスクは、時に多額の追徴課税や延滞税につながります。専門家のアドバイスを受けつつ、適切な申告と納税を行うことが、タイでの事業運営における重要な課題といえるでしょう。

タイ|所得税の配偶者・子供控除と別居家族・無所得者の適用条件

(日本語) タイの所得税制度において、配偶者や子供に対する控除を受けるためには、別居家族や無所得者に関する適用条件を理解しておく必要があります。本記事では、タイで働く駐在員が知っておくべき、配偶者・子供控除の概要と、別居家族や無所得者への適用可否についてわかりやすく解説します。 タイへの新規進出を無料相談する> タイの所得税における配偶者・子供控除の概要 タイの所得税制度では、本人控除に加えて、家族構成によって配偶者や子供に対する扶養控除が適用されることがあります。ここでは、控除額と適用対象、そして税務調査時に必要となる書類について解説します。 控除額と適用対象 タイで働く駐在員が受けられる控除額は、以下の通りです。 費用控除所得の50%と100,000バーツのいずれか小さい方 本人控除60,000バーツ 配偶者控除60,000バーツ 子供控除30,000バーツ/人(人数に制限なし、未成年または25歳以下の学生が対象) 2018年以降に出生した第二子以降60,000バーツ/人 生命保険料控除:最高10万バーツ スーパー・セービング・ファンド(SSF)積立金控除:課税所得の30%、上限20万バーツ 退職投資信託(RMF)控除:課税所得の30%、上限50万バーツ これらの控除を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。 税務調査時の必要書類 税務調査が行われた際には、家族控除の証明として、戸籍謄本を証明書として提出するよう求められる可能性があります。この手続は、日本の市区町村から戸籍謄本を取得し、タイの日本大使館で英訳を行い、必要に応じて確定申告時に提出します。日本大使館での「戸籍記載事項証明(英文)」の手続詳細は、大使館のウェブサイトで確認することができます。 その他控除を適用している場合は各証明書を事前に用意しておく必要があります。 税務調査に備えて、事前に必要書類を準備しておくことが重要です。 別居家族に対する扶養控除の適用条件 タイへ単身赴任している方が、日本に配偶者や子供を残している場合でも、一定の条件を満たせば、扶養控除を適用できます。ここでは、単身赴任者の居住者認定と扶養者の所得について説明します。 単身赴任者の居住者認定と扶養者の所得 別居家族に対する扶養控除の適用要件は、主に以下の2点に関連します。 単身赴任者の居住者認定(180日以上のタイ滞在) 扶養者の所得がゼロであること 単身赴任者がタイに180日以上滞在し、タイ居住者と認定される場合で、扶養者の所得がゼロであれば、扶養控除を適用できます。しかし、単身赴任者が180日未満でタイ非居住者と認定される場合は、日本にいる扶養者に対して扶養控除を適用することはできません。 別居家族に対する扶養控除の適用には、これらの条件を満たすことが必要不可欠です。 無所得の扶養家族に対する適用条件と注意点 扶養控除は、家族が無所得の場合に限り適用されます。ここでは、確定申告時の注意点と税務調査の際に必要となる書類について説明します。 確定申告の際には、所得や扶養に関する証明書類を添付する必要はありませんが、税務調査の際には以下の点に留意が必要です。 所得がないことを証明する書類が必要になることがある 税務調査の際に戸籍謄本を求められることがあるため、事前に日本で戸籍謄本を取得し、大使館で英語に翻訳しておく必要がある 無所得の配偶者や子供に対して扶養控除を適用することは可能ですが、上記の注意点に留意しながら適切な準備を行うことが重要です。 2024年度のショッピング控除 2024年度には、消費喚起を目的とした最大5万バーツのショッピング控除が内閣に承認されました。ここでは、控除の概要と適用方法について説明します。 控除の概要 この控除を受けるには、2024年1月1日から2月15日までに購入した物品のE-Tax Invoice/ReceiptまたはE-Receiptの取得が必要であり、対象の物品購入額に対して個人所得税の減額が可能です。申告時期は2025年3月末となっています。 ショッピング控除を活用することで、個人の税負担を軽減することができます。 給与算定サービスでの適用方法 ショッピング控除を適用する場合、月次の所得税計算にて反映するか、年度の確定申告にて還付申請をするかの2通りの方法があります。月次で反映させる場合は、E-Tax InvoiceまたはE-Receiptのデータをまとめて経理や会計事務所に送付して対応を依頼する必要があります。 会計事務所に依頼している場合は、給与算定サービスを利用することで、ショッピング控除の適用がスムーズに行えます。 確定申告時の控除方法 2024年分の確定申告時(2025年3月末)に還付申請も可能ですが、税務署から対象のTax Invoice等の提出を求められることがあるため、月次給与での適用をお勧めします。 確定申告時の控除方法は、税務署の要求に応じて適切に対応する必要があります。 タイの日系会計事務所/コンサルティング会社はコチラ> まとめ タイの所得税制度における配偶者・子供控除は、別居家族や無所得者に対しても一定の条件下で適用可能です。適用条件や必要書類を理解し、適切な準備を行うことが重要です。また、2024年度のショッピング控除を活用することで、個人所得税の減額が可能となります。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|個人所得税が非課税となる手当・日当・旅費交通費とは

(日本語) タイにおいて、出張で支給される日当や手当について、個人所得税の課税対象となるのか、非課税となる上限があるのかについて解説します。旅費交通費の実費精算分は非課税となりますが、日当については一定の上限額までは非課税となります。また、会社で支給される手当の中にも、課税対象となるものと非課税となるものがあります。 タイの出張日当の非課税上限について タイでは、出張の際に支給される日当について、一定の金額までは個人所得税が非課税となります。この非課税となる上限額は、公務員の基準に準じて以下のように定められています。 【国内出張の場合】 ・一般社員240バーツ/日 ・役職者270バーツ/日 【海外出張の場合】 ・一般社員2,100バーツ/日 ・役職者3,100バーツ/日 これらの上限額を超える部分については、個人所得税の課税対象となります。一方で、旅費交通費の実費精算分については非課税となります。 タイの個人所得税の課税対象となる手当について タイの会社では、様々な手当や福利厚生が支給されていますが、そのうちいくつかは個人所得税の課税対象となります。課税対象となる主な手当は以下の通りです。 ・役職手当 ・皆勤手当 ・語学手当 ・資格手当 ・シフト手当 ・時間外手当、休日出勤手当、夜勤手当 ・食事手当  ・税金手当(※会社が税金を負担する場合) ・各種報奨金  これらの手当は、原則として個人所得税の課税対象となるため、従業員の年間所得の計算に含める必要があります。 タイの個人所得税の非課税となる手当について 一方で、タイでは非課税となる手当も複数存在します。非課税となる主な手当は以下の通りです。 通勤手当(実費分)  出張日当(上限有)  医療費還付  解雇手当(上限有)  実費経費精算 これらの手当は、個人所得税の課税対象とはならないため、年間所得の計算には含める必要はありません。ただし、出張日当については一定の条件を満たす必要がある点には注意が必要です。 まとめ タイでは出張日当について一定の上限額までは非課税となりますが、上限を超える部分は課税対象となります。また、会社が支給する手当の中にも、課税対象となるものと非課税となるものがあるため、区別が必要です。実態に応じて適切に個人所得税の計算を行うようにしましょう。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|駐在員給与の個人所得税・確定申告、決定方式・較差補填

(日本語) タイの個人所得税と駐在員の給与負担について、重要なポイントを解説します。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどについて詳しく説明し、税務リスクへの対策もお伝えします。 タイの個人所得税の概要 タイでは、原則として各個人が確定申告を行います。3月末の確定申告時には、2月中旬に受け取った源泉徴収票と確定申告によって計算された年税額の差額を納付します。雇用者は毎月7日(E-TAXの場合は15日)に前月の源泉税を納付し、各人への源泉徴収票を配布した後、2月末までに所轄の税務署へ源泉徴収年次申告書を提出します。 個人所得税率は累進課税となり、所得区分ごとに適用する税率が異なります。2017年度の最高税率は、500万バーツ超の所得に対して35%となりました(以前は400万バーツ超が最高税率の対象)。 居住者と非居住者の課税関係 タイの個人所得税における納税義務者は、居住者と非居住者に分けられます。居住者とは、タイ国内に一時的または数度にわたり滞在し、課税年度内の滞在期間が合計180日以上に達する人物を指します。 居住者は、タイ国内源泉所得とタイ国外源泉所得のうちタイ国内に持ち込んだ部分に対して課税されます。一方、非居住者は、タイ国内源泉所得のみが課税対象となり、タイ国外源泉所得は非課税となります。 180日以内の短期滞在者の免税 日本法人の従業員が、180日以内の期間でタイへ出張する場合、日タイ租税条約の短期滞在者免税制度により、タイでの所得税が免除されることがあります。以下の3つの要件を全て満たす必要があります。 タイでの滞在期間が暦年ベースで合計180日を超えないこと 報酬支払者である雇用主が日本の居住者であること 日本で支払われる報酬等がタイ企業によって負担されないこと ただし、この免税制度は通常の雇用契約に基づく従業員にのみ適用され、法人の取締役など委任契約に基づく者には適用されません。 駐在員の給与決定と課税関係 日系企業の多くは、グロスアップ計算を行い、駐在員の給与の手取り額が日本にいたときと変わらないように計算します。海外の駐在員の給与決定には、主に以下の3つの方式があります。 購買力補償方式  日本での生活水準を海外の出向先でも維持するという考え方に基づき、各国の生計費指数を基に海外の給与額を決める方式。 併用方式  日本での基本給の額をそのまま赴任先の給与額とし、海外赴任において追加で掛かる生計費を加算した金額を海外の給与額とする方式。 別建て方式  国内の給与とは切り離して、赴任地の給与水準に基づき支給する方式。一昔前までは多く使われてきた方式だが、近年ではあまり使われていない。 為替レートの変動への対策 為替レートが上下することにより給与額が変動してしまうことを考慮し、出向契約等の中に為替レートが基準レートより上下数%変動した場合には基準レートの見直しを行うなどの文言を入れている会社もあります。 福利厚生費の取り扱いに注意 日系企業の中には、住宅費、食事代、クリーニング代、一時帰国休暇の交通費、赴任・帰任時の転居費用、子女教育費、語学費などを福利厚生費として計上している会社もありますが、日本人駐在員のみに行っている場合には給与認定されてしまいます。 これらの費用は基本的に給与として計所および申告する必要がありますが、個人所得税率の方が高くなる場合が多いこともあり、給与計上せずに損金不算入費用に含めてしまっている会社もあります。その場合は給与計上として指摘される可能性がありますので注意が必要です。 出向較差補填を活用した駐在員のボーナス負担 出向較差補填とは、出向者給与の一部について、出向先で給与が減少したため、その分を出向元が支給したり、海外出向者の留守宅手当を出向元が支給するなどした場合、それを出向元の損金(税務上の費用)として認めるルールです。 タイ法人が経営不振のため駐在員に賞与を支給できない場合、親会社が代わりに支給すれば、日本の税務ルール上、親会社の費用として認められます。これにより、タイ法人のコスト削減と、タイ法人が赤字・親会社が黒字であればグループ全体の税金額を削減できるメリットがあります。 ただし、親会社の費用として認められるためには、子会社が経営不振である事実および出向契約書・賞与不支給の社内資料といった根拠資料が必要です。また、親会社で支給したとしても、タイの個人所得税申告上は合算して申告する必要があります。 日本払い給与に対するVATの問題 タイでの駐在員給与に関する税務調査では、日本法人が支払っている給与をタイ法人へ請求される場合には注意が必要です。通常、これらの給与請求は立替金のため税金は発生しません。しかし、タイの税務当局によってこの立替金を業務委託費と見なされることがあり、その結果、意図しない追徴課税のリスクに直面することがあります。 例えば、日本本社が駐在員の給与をタイ法人に対して「業務委託費」という名目で請求すると、実際は立替金であってもタイの税務署はこれを業務とみなし、源泉税を納めるべき業務と推定します。その結果、15%の源泉徴収税と7%のVATが課されることがあります。 このようなリスクを避けるためには、駐在員給与の請求名目を「立替給与(Advance payment of salary)」などとすることで、単なる立替払いであることを明確にすることが重要です。また、タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結し、駐在員の勤怠をタイ法人で管理することも必要です。さらに、現地給与を多くし、日本建替給与を少なくすることにより、万が一課税されたとしても影響を少なくすることができます。 まとめ タイにおける駐在員の個人所得税と給与負担について、重要なポイントを解説しました。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどを理解し、出向較差補填を活用したボーナス負担や日本払い給与に対するVATの問題など、税務リスクへの対策を講じることが大切です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|BOI取得企業の恩典・手続、会計税務・決算書の留意点

(日本語) タイのBOI(タイ投資委員会)を取得した企業は、BOIのカテゴリー及び非BOI事業それぞれの決算書(損益計算書)の作成と法人所得税の計算が必要となります。また、BOI企業には税務恩典がありますが、税務調査で指摘を受けるケースも見受けられます。BOI取得企業の決算書作成と税務上の留意点について解説します。 BOIとは  BOI(Board of Investmentタイ投資委員会)とは、タイの商務省が管轄し、タイ国内への投資振興のために投資に対する優遇措置を与える権限を持った機関のことです。BOI取得企業には大きく区分して税務恩典と非税務恩典が与えられます。税務恩典には、法人所得税の減免、輸入機械関税の減免、輸入原材料の免税などがあります。一方、非税務恩典には、外国人のビザ、労働許可の取得要件の緩和、事業用の土地所有の許可などがあります。このような恩典のある一方、会計報告の必要性や税務上の留意点などにより、実務上の煩雑さにつながるところもあるのです。 BOI取得企業の決算書  BOIを取得している企業は様々な恩恵がありますが、それに対して課される煩雑な実務も同時に対応する必要があります。決算では、取得している各BOIのカテゴリー及び非BOI事業それぞれの決算書(損益計算書)の作成と法人所得税の計算が必要となりますので、BOI事業の損益とBOI以外の損益を分けなければなりません。これは、BOIの恩典が会社への付与ではなく事業に付与されるものであり、税務恩典は事業ごとに適用されるためです。そのため実務上、事業別の決算書作成が求められるので、 BOIの事業とそれ以外の事業を明確に区分し、それぞれの事業の損益を把握できるようにしておく必要があります。しかし、それぞれの経費や在庫を細かく分けるのは難しいので、実務では一定の比率で案分などの方法が採用されたりもしています。BOIの会計処理は通常よりも複雑になりますので、適切に管理して会計処理を行うことが重要です。 税務上の留意点  BOI企業には税務恩典が付与されていますが、適切に管理をしていないと税務調査で指摘を受けることがありますので注意が必要です。例えば、輸入原材料の免税は最終製品が輸出される場合に免税が適用されますが、輸出目的として免税を受けながら、実際には国内に販売されていた場合には、免税を受けた関税については追徴がなされることになります。  そのため、在庫管理や海外輸出用の商品と国内販売用の商品を明確に分けて管理しておく必要があります。また、BOIと国税当局による解釈の相違によるトラブルも発生していますので、BOI特有の留意点に配慮した事業運営が求められます。 IBCライセンスへの一本化  2015年からタイ政府は、従来のBOIのライセンスから、IHQ(国際統括会社)やITC(国際貿易会社)などの投資優遇策を導入し、外資招致を行ってきました。  IBC(国際ビジネスセンター)とは従来のIHQおよびITCに代わって策定された新たな投資奨励策です。IBC の事業体はタイの法律の下で設立された企業で、国内外の関連会社に様々なサービスを提供することを目的としています。 これらの企業はBOIから付与される恩典(外資単独による株式保有や土地所有)とは別に、歳入局より付与される恩典(法人税、源泉税などの免除、減免)があります。従来、IHQやITCにて歳入局から税務恩典を得るためには、申請企業は年間1,500万THB以上の一般管理費をタイ国内で支出する必要がありました。  その後、従来のIHQおよびITCに代わって新たにIBC(国際ビジネスセンター)に一本化されることが2018年に発表され、IBCでは、「IBC事業にかかる全ての国内経費を含むことが可能で、ITCのように第3国貿易にかかる経費に限らない」とされているものの、この年間最低経費が6,000万バーツ以上へと引き上げられました。  またIBCでは、従業員の雇用義務(10人以上、国籍は問わず)も新たに課され、申請難易度は高まったとみられています。ただし、IHQやITCで以前に承認済みの税務恩典は引き続き有効とされており、歳入局は、「IHQやITCで歳入局から既に恩典を得ている企業は、IBCへの制度変更による影響は受けず、現在の恩典を引き続き享受する」と説明しています。   BOIライセンス取得の手続き  ここからは、BOI(タイ投資奨励委員会)の奨励を実際に取得するまでの手続きを見ていきましょう。  BOIが公開している認可取得手続きは以下のような流れとなります。 申請資料の作成  まず初めに、BOIへ提出する申請資料の作成を作成する必要があります。  申請書自体のFormatは英語とタイ語が裏表の申請書となっており、事業計画等や投資方法等を記載する必要があります。また、ライセンスによっては申請書とは別途、付属書類を添付し申請する必要があります。  例えばITC(International Trading Company)の場合は、実際に取り扱う予定の商品のカタログリスト、IHQ(International Head Quarter)の場合は、子会社との資本関係を記載した組織図等の提出が求められます。申請書には、製造品目のカタログ、会杜概要などを添付するほか、申請書に記載しなければならない工程表も必要です。この工程表は奨励を受けたあと守ることが義務付けられているので、材料の入荷、検査から製品の検査、出荷までもらさず記入しておくこく必要があります。さらに、一般的には親会社(出資会社)の情報や、将来採用予定の従業員の構成等の資料の提出が実務上求められることもあります。 オンライン申請とBOI担当官との面談  申請資料の準備ができたら、BOIのシステムにアクセスして申請書を提出します。 申請後、BOI担当官から面談の通知書が送付されます。申請者は通知書に明記された部署と連絡し、審査担当官とアポイントをとり申請書受理から原則として2週間以内にインタビューを行います。 インタビューの目的は、主にBOI委員会へ案件を上げるために、申請書では不十分な情報を得ること、親会社の情報をヒアリングすること、申請書の不明点などを確認することで、製品の詳細、製造工程など技術的なことや申請者(会社)の現在の事業内容をヒアリングされます。従って、申請者が十分に答えられない場合は、技術者も同行することが望ましいです。また、担当官によってはタイ語でしか話さない人もいるため、タイ人従業員に同行してもらうのが望ましいでしょう。  面談後、担当官から追加資料の提出を求められることもあります。 認可までの流れ  面談が終わると、その後は担当官・委員会での審議期間に入ります。審議の結果、委員会で認可されると、担当官より認可の通知書が送られてきます。文書の内容はBOIの政策による特典と条件が記載されていいます。その際にBOI証明書発行のための追加書類・追加情報が求められることもあります。この通知を受け取ってから1ヶ月以内に通知書の内容に同意するか、しない旨の回答を行う必要があります。通知書に対する回答、追加書類の提出が完了すると、通常15営業日程度でBOI証明書が発行されます。 一連の流れ  以上が、BOIライセンス取得から事業開始までの一般的な流れです。  通常、申請から事業開始まで約3か月から半年程度を要することもあるため、念密な事前準備、下調べが必要不可欠です。スケジュール管理をしっかりと行い、必要書類の準備もできるだけ迅速に進めていきましょう。  また、BOI担当官とのコミュニケーションも円滑に取ることが重要です。申請内容について熟知し、質問にもしっかりと答えられるよう準備しておくことをおすすめします。 BOI取得企業の会計監査  ここからは、タイでBOIを取得した場合の会計に関して見ていきましょう。  BOIへの投資申請を行い認可された日本企業の多くは、法人税や機械輸入税、輸出製品用原材料輸入税の減免などの優遇措置を受けています。しかし、この減免を実際に受けるためには、申請が通るだけでは不十分です。 事業報告書の提出 BOIについては、操業開始申請の前までは、毎年2月と7月にe-Monitoringシステムを通じて奨励証書の条件に従った事業経過を報告する必要があります。また法人税の免除恩典を使用する場合は、決算日から120日以内に、この事業報告書に公認会計士の監査報告等を付して提出することが義務付けられています。 監査の内容  具体的な監査の内容は、大きく2つあります。  1つ目は、機械への投資が条件通りに行われているかという点です。奨励証書発給日から起算して期限以内に輸入することになっていることが確かめられなければなりません。また、輸入税を減免された機械は無断で処分することはできません。奨励証書に一致した生産能力、輸入期限内に輸入されているかなどが監査の対象となります。  2つ目は、生産量についてです。年間最大生産能力は奨励証書に記入され、この生産量までについての法人所得税は免除となるが、機械の生産量が奨励証書に記載してある量を超えた場合、超過した分に対応する法人所得税は課税されるので注意が必要です。 販売量と販売データの管理  輸出製品用原材料輸入税の免税を受ける場合、輸入後に加工して輸出する製品の原材料または半製品の輸入税が免除されます。原材料はプロジェクトごとに区別して管理、保管する必要があり、輸出量と材料消費量、在庫が適切に管理されていることが必要となります。  このように、BOI投資の認可を取得できたとしても、管理が適切に行われていないなどで証拠書類が揃わず、公認会計士の監査及びBOIの審査を通過できない場合には、減免を受けることができません。しっかりとした管理体制を整えておくことが肝要です。 まとめ  BOI取得企業は、BOIのカテゴリー及び非BOI事業それぞれの決算書作成と法人所得税の計算が必要であり、事業別の損益把握が求められます。また、税務恩典を受けるために輸出入品の区分管理など、BOI特有の留意点に配慮した事業運営が重要です。  BOIライセンス取得までには申請資料の作成、担当官との面談等、一定の手続きを要します。認可後も事業報告書の提出と監査が義務付けられており、販売量や在庫等のデータ管理が肝要となります。   みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|税務申告書の種類・申告納税スケジュール・日本との比較

(日本語) 法人所得税および監査に関連する書類 タイでの法人所得税や各種税務申告に関する主な書類には、以下のようなものがあります。これらの書類は、自社経理で完結している場合を除いて会計事務所が作成することが一般的です。 法人所得税関連 PND50 (PHOR. NGOR. DOR. 50) PND50は、法人所得税の決算申告に用いるフォームです。法人税の決算申告は、決算期末後150日以内に税務署に対して行わなければなりません。 PND51 (PHOR. NGOR. DOR. 51) PND51は、法人所得税の中間申告に用いるフォームです。法人税の中間申告は、半期末後2ヶ月以内に税務署に対して行わなければなりません。 商務省へ提出すべき書類 SBC3 (SOR. BOR. CHOR. 3) SBC3は、財務諸表提出の際のカバーレターに相当するフォームです。会社の名称や住所、登記番号、納税番号、監査人およびその登録番号などが記載されています。 SBC3/1 (SOR. BOR. CHOR. 3/1) 外国人が発行株式の1%以上を保有している場合に、SBC3とともに提出しなければならない書類です。SBC3/1は、最終的にタイの中央銀行に送付され、株主の名称や持株数、海外への投資の状況などを記載する必要があります。 BOJ5 (BOR. OR. JOR. 5) BOJ5は、株主リストを表すフォームです。決算日後4ヶ月以内に開催される定時株主総会(AGM)の開催後、14日以内に提出しなければなりません。 個人所得税に関する書類 タイでの個人所得税に関する主要な書類には、以下のようなものがあります。日本人駐在員の方は、これらの申告書を自ら作成することはほぼありませんが、個人所得については関わることもありますので、申告フォームやその内容についてある程度把握しておいた方が良いでしょう。 個人所得税関連 PND1 (PHOR. NGOR. DOR. 1) PND1は、会社が毎月の給与から徴収する源泉所得税の申告書のフォームです。給与が支払われた月の翌月7日までに申告・納税する必要があります。 PND1 KOR (PHOR. NGOR. DOR. 1 KOR) PND1 KORは、前年度に会社から従業員に支払われた給与額とその源泉徴収額の要約です。当年度の2月末までに税務署に対して、源泉徴収証明書と合わせて提出する必要があります。 PND91 (PHOR. NGOR. DOR. 91 KOR) PND91は、給与所得のみの個人が、個人所得税の確定申告を行う場合に用いるフォームです。課税年度の翌年の3月末までに税務署に提出する必要があります。 個人所得税に関連したその他のフォーム LOR. POR. 10 LOR. POR. 10は、日本人などの外国人が個人所得税の納税番号を取得するための申請フォームです。 LOR. YOR. 01 LOR. YOR. 01は、個人所得税を計算する際に各種の控除を受けるために会社に申請するための書式です。 SOR. POR. SOR. 1-10 SOR. POR. SOR. 1-10は、給与から源泉徴収される社会保険料の申告フォームです。給与が支払われた月の翌月15日までに社会保険事務所に申告・納税する必要があります。 毎月の申告及び納税のスケジュール タイでは毎月の申告および納税のスケジュールが決められており、それぞれの期限に基づいて適切に手続きを行う必要があります。 毎月7日までに申告・納税が必要なもの 毎月7日までに申告および納税が必要なものには、以下が含まれます: P.N.D.1:個人(給与所得)源泉徴収税 P.N.D.2:個人(投資等所得)源泉徴収税 P.N.D.3:個人(賃料等所得)源泉徴収税 P.N.D.53:法人の国内源泉徴収税 P.N.D.54:法人の海外送金に対する源泉徴収税 毎月15日までに申告・納税が必要なもの 毎月15日までに申告および納税が必要なものには、以下が含まれます: P.P.30:付加価値税(VAT) P.P.36:付加価値税(VAT)(*海外サービスに対する支払) P.T.40:特定事業税 年次および半期の申告・納税のスケジュール タイでは年次および半期ごとの申告および納税のスケジュールも決められています。 翌年2月末までに申告・納税が必要なもの 翌年2月末までに申告および納税が必要なものには、以下が含まれます: P.N.D.1K:個人所得(給与)の年次源泉徴収申告…