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タイ|固定資産の会計・税務処理を徹底解説

(日本語) タイにおける固定資産の会計・税務処理について詳しく解説します。耐用年数の変更による利益改善方法や、廃棄・売却時の注意点、税法上の特徴など、実務に役立つ情報を提供します。 タイの固定資産に関する基本的な規定 タイにおける固定資産の会計・税務処理には、日本とは異なる特徴があります。これらの規定を正しく理解し、適切に対応することが、ビジネスを円滑に進める上で重要です。 固定資産の定義と計上基準 タイでは、固定資産の計上に関する明確な金額基準が設けられていません。これは日本の法人税法とは大きく異なる点です。 タイの税法上は、原則として1年以上使用する資産は全て固定資産として計上する必要があります。しかし、少額のものを全て固定資産計上していては実務が煩雑になりすぎるため、一定の金額基準を設けて費用処理する方法を採用していることが多いです。重要なのは、一度定めたルールを継続して適用することです。税務調査の際にも説明資料となるため、合理的な理由がない限り、基準を変更しないことが望ましいでしょう。 取得価額の算定方法 タイにおける固定資産の取得価額は購入代価に加えて、使用可能な状態になるまでにかかった下記のような不随費用が含まれます: 運送費 関税 据え付け費用 借入の金利(日本と異なる特徴的な点) その他取得のために要した費用 特に、借入の金利を取得価格に含める必要があることは、日本の会計実務とは異なる重要なポイントです。この点に注意して、適切に取得価額を算定することが求められます。 償却開始時期の特徴 タイにおける固定資産の償却開始時期は、日本とは異なる特徴があります: ・タイ:資産が使用可能になった時から償却開始 - 支払い時期に関係なく、資産が使用可能になった日から償却を開始します。設備の試運転(正常に作動するか検証、返品可能な状態)であれば償却の必要はありませんが、量産のための試運転であれば償却を開始する必要があると考えられます。 ・日本:資産を事業用に供した時から償却開始 この違いを認識し、適切なタイミングで償却を開始することが、正確な会計処理と税務申告につながります。 タイにおける固定資産の減価償却方法 タイでの固定資産の減価償却には、日本とは異なる特徴や注意点があります。適切な方法を選択し、正確に償却を行うことが重要です。 税法上認められる償却方法 タイの内国歳入法では、減価償却の方法について具体的な規定はありません。そのため、基本的には会計上の償却方法に従うことになります。実務上は定額法が採用されることが多いですが、一般に認められている減価償却方法(定額法、定率法、級数法)は、規定された償却率の上限を超過しない限り、いずれも採用できます。 これらの方法の中から、資産の性質や使用状況に応じて適切な方法を選択します。ただし、一度選択した方法は、歳入局長の変更の承認を得ない限り、継続して適用しなければなりません。 耐用年数の設定と変更 タイの税法では、固定資産の耐用年数について、以下のような規定があります: ・建物:20年以上 ・機械:5年以上 ・ソフトウェア・IT機器:3年以上 これらは最低限の年数であり、実際の使用可能期間に応じてより長い耐用年数を設定することができます。例えば、10年使用可能な機械装置であれば、5年ではなく10年の耐用年数で償却することが可能です。 途中で耐用年数を変更する場合は、事前に監査人と合意する必要があります。変更の目的(より実態に近づけるため等)や変更の説明、根拠資料の提供等で監査人が納得できるように話し合うことが重要です。 特別償却の適用条件 タイでは、特定の条件下で特別償却が認められています。主な対象は以下の通りです: 研究開発のための機械装置―取得時に40%で償却し、残りを年間最大20%の償却率で償却できる。 コンピューター機器、ソフトウェア―3会計期間で償却できる。 ・中小企業に適用される特別償却(土地を除く固定資産2億バーツ以下で、従業員200人以下) 機械装置―取得時に40%で償却し、残りを年間最大20%の償却率で償却できる。 コンピューター機器、ソフトウェア―取得時に40%で償却し、残りを3会計期間で償却できる。 工場建物―取得時に 25%で特別償却し、残りを年間最大 5%の償却率で償却することができる。 固定資産の廃棄・売却時の税務処理 固定資産の廃棄や売却を行う際には、タイ特有の税務上の注意点があります。適切な手続きを踏むことで、不要な税負担や税務リスクを回避できます。 廃棄時の手続きと注意点 固定資産を廃棄する際には、以下の手続きが必要です: 固定資産の破損状況を検査し、社内承認者がこれを承認する。 廃棄の30日前までに歳入局へ通知する。 経理部門、会計監査人が廃棄に立ち会い、監査人による廃棄証明を作成する。 この手続きを踏まずに廃棄すると、固定資産除却損の損金算入ができなくなります。既に償却が終わっている場合でも、簿価1THBについて損金算入ができなくなるため注意が必要です。 ただし、煩雑な手続きを避けたい場合は、以下の方法も考えられます: 固定資産を廃棄した上で、売却したとみなして売上VATを納付する。 固定資産除却損を損金不算入経費として処理する。 この方法であれば、税法上の煩雑な手続きを踏まずに廃棄を行うことが可能です。ただし、除却損の損金算入はできないため、税負担が増える可能性があります。 グループ会社への売却時の留意事項 グループ会社への固定資産売却時には、以下の点に注意が必要です: 市場価格での売却が求められます。 簿価での売却は、税務上のリスクがあります。 例えば、簿価1THBの償却済み資産を1THBで売却した場合、市場価格が5,000THBであれば、税務署から4,999THB相当を相手に寄付したとみなされる可能性があります。その場合、4,999THBの雑収入計上とその7%のVAT納付が求められるリスクがあります。 売却する際には売却金額について、できるだけ金額の妥当性を証明できる書類(第3者へ売却した場合の価格、スクラップ処分の価値相当額)を集めて説明することでリスクを抑えることができます。 みなしVAT納付の必要性 固定資産の廃棄時には、みなしVATの納付が必要になります。 中古販売が可能な資産の場合、「販売していれば得られたであろう収益」の7%について、みなしVATの納付が必要です。この納付は、PP30(VAT申告書)上で行います。 注意点として、みなしVAT納付では実際に販売先からVATを預かっていないため、自社の負担(PL費用計上)で納税することになります。また、VAT申告時に収益として計算されるため、法人税確定申告(PND50)とVAT申告書(PP30)上の売上に差が生じます。 この差額については、管理表(TAX reconciliation)を作成し、歳入局への説明ができるよう準備しておくことが望ましいでしょう。 固定資産管理における実務上の課題と対策 タイでの固定資産管理には、日本とは異なる実務上の課題があります。これらの課題に適切に対応することで、より効率的な資産管理と税務処理が可能になります。 少額固定資産の取り扱い タイでは、少額固定資産に関する明確な規定がなく、原則1バーツ以上で、かつ1年以上使用するものは全て固定資産として計上する必要があるため、原則通りに全て固定資産として計上すると実務が非常に煩雑になる問題があります。 この問題に対応するため、実務上は一定の金額基準を設けて、その金額以下の資産は費用処理することが一般的に行われています。一定の金額基準が少額であれば税務当局も指摘してこない傾向にありますが、税法で認められている方法ではないため、一定のリスクがあることを念頭に置いて対応する必要があります。 耐用年数変更による利益改善の手法 固定資産の耐用年数を適切に見直すことで、利益を改善できる可能性があります。以下のような手順で検討することが考えられます。 1.現在の償却状況を確認する。 「税法上の耐用年数」をそのまま使用していないか。 機械装置等の大型固定資産を保有しているか。 2.実際の使用可能期間を見直す。 例:10年使用可能な機械を5年で償却していないか。 3.耐用年数の変更を検討する。 変更により、年間の償却費負担が減少し、利益が増加する。 例:1,000万THBの機械を5年から10年償却に変更すると、年間100万THBの利益増(初年度から5年、10年の耐用年数を使用した場合の比較)。 4.監査法人と協議・合意する。 変更の目的は「税務の耐用年数ではなく、実際に使用可能な耐用年数へ変更し、決算を適正化するため」と説明。 変更後の耐用年数の根拠を提供。 この手法は、実態のビジネスを変えずに「決算処理を適正化」するだけで利益を捻出できる方法です。ただし、あくまでも実際の使用可能期間に基づいて変更を行うべきで、不適切な利益操作とならないよう注意が必要です。また、年度の償却費用は変わりますが、トータルの償却費用は変わりません。 システム対応と手動調整の必要性 耐用年数の変更や特殊な償却方法の採用により、以下のような実務上の課題が生じる可能性があります 会計システムや固定資産システムが耐用年数の途中変更をサポートしていない。 ERPなどの自動償却計算と実際の償却計算に差異が生じる。 これらの課題に対応するため、以下の方法を検討します: システムによる自動償却は継続する。 耐用年数変更による償却減少額を手動で計算し、会計上で調整する。 差異の管理表を作成し、定期的に確認・調整を行う。 これらの対応により手間が増えるため、償却費減少のメリットと比較して判断する必要があります。また、手動調整を行う場合は、計算ミスや漏れがないよう、十分な注意と定期的なチェック体制が必要です。 まとめ タイにおける固定資産の会計・税務処理には、日本とは異なる特徴や注意点があります。取得価額の算定、償却開始時期、耐用年数の設定など、様々な面で独自のルールがあります。特に、借入金利を取得価額に含める点や、明確な少額資産の基準がない点は注意が必要です。また、固定資産の廃棄や売却時には、適切な手続きとみなしVAT納付の検討が重要です。 耐用年数の変更による利益改善の手法は、実態に即した適正な会計処理を行うための有効な方法ですが、監査法人との合意や根拠の準備が不可欠です。システム対応と手動調整の必要性も考慮し、効率的な固定資産管理を目指しましょう。 これらの知識を活用し、タイでのビジネスにおける固定資産管理を適切に行うことで、税務リスクの低減と経営の最適化につながります。…

タイ|在庫差異の発生理由と対策

(日本語) タイでの在庫管理における課題と対策について解説します。在庫差異の発生理由を理解し、適切な管理方法を学ぶことで、会計上のリスクを軽減し、効率的な経営を実現できます。 在庫差異の基本概念 在庫差異を理解するには、まず「フロー」と「ストック」という2つの視点を把握することが重要です。会計上、在庫はほとんどの場合「ストック」として捉えられますが、在庫差異の発生理由を特定するためには「フロー」の観点が不可欠です。 フローとストックの視点 フローの視点では、在庫の動きを時間軸で捉えます。受注管理、購買管理、生産管理、出荷管理などのプロセスを通じて、在庫の増減を追跡します。一方、ストックの視点は、特定の時点での在庫の状態を表します。 在庫差異を正確に把握するためには、フローの金額的な評価が重要です。しかし、これには適切な管理システムが必要となります。多くの企業では、この「フローの金額的な評価」が適切に行われていないことが、在庫差異の主な原因となっています。 在庫評価方法 タイにおける在庫評価方法には、主に以下のようなものがあります: ・個別法 ・先入先出法 ・移動平均法 これらの方法は、公正と認められる評価方法として認められています。ただし、評価方法を変更する際には歳入局長官の承認が必要となります。 また、タイでは継続的な在庫管理が求められており、ストックカードを用いて在庫の受払い管理を行うことが必要です。 在庫差異の発生理由 在庫差異が発生する主な理由は、数量と金額の管理の不備、およびイレギュラーな状況への対応不足にあります。 数量と金額の管理 多くのタイの日系企業では、品番と数量の管理はできていますが、金額の管理、特に出庫時の金額評価が適切に行われていないことが多いです。 在庫の評価金額は、出荷された商品と期末在庫にどのように按分するかが重要です。ERPシステムを導入していれば、この部分は比較的容易に管理できますが、システムを導入していても在庫差異が発生する場合は、在庫管理フローのイレギュラーな部分を探る必要があります。 イレギュラーな状況 在庫差異を引き起こすイレギュラーな状況には、以下のようなものがあります: 所有権移転の有無の不明確さ 工程別管理の不備 これらの状況に適切に対応するためには、詳細な業務フロー(業務マニュアル)の作成が不可欠です。特にタイ人スタッフに任せきりにしている場合、モノがなくなったら「出荷」と捉えるなど、誤った認識による処理が行われる可能性があります。 在庫差異による影響 在庫差異は、会計上および税務上で重大な影響を及ぼす可能性があります。 会計上の影響 在庫差異は最終的に売上原価や棚卸減耗損として会計上で費用計上されます。これにより、企業の利益に直接的な影響を与えることになります。 税務上の影響 タイでは、棚卸減耗損(および売上に紐づかない売上原価)は税務上、損金不算入となります。つまり、在庫差異によって生じた損失を税務上の費用として認識することができず、結果として課税所得が増加する可能性があります。 さらに、棚卸減耗損に関しては、VATの課税対象取引となる可能性があり注意が必要です。税務当局は、減耗した在庫をみなし売上として扱い、VAT課税を行う可能性があります。すなわち、正当な理由がない不足在庫は、それらが販売されたものとみなされ、VAT課税対象取引となります。これは企業にとって予期せぬ税負担となる可能性があります。 適切な在庫管理の方法 在庫差異を最小限に抑え、適切な在庫管理を行うためには、システムの導入と業務フローの整備が重要です。 システム導入の重要性 ERPシステムの導入は、在庫管理の効率化と正確性の向上に大きく寄与します。システムを通じて以下の点を管理することが可能になります: リアルタイムの在庫状況の把握 自動的な在庫評価計算 ・在庫移動のトラッキング 警告システムによる異常検知 ただし、システム導入だけでは不十分で、適切な運用が伴わなければ効果を発揮しません。 業務フローの整備 適切な在庫管理のためには、以下のような業務フローの整備が必要です: 明確な在庫受入 払出プロセスの確立 定期的な実地棚卸の実施 在庫差異の即時調査と原因分析 適切な権限設定と職務分離 これらの業務フローを文書化し、全従業員に周知徹底することが重要です。特にタイでは、言語や文化の違いによる誤解を避けるため、詳細なマニュアルの作成が推奨されます。 棚卸資産の期末評価と減耗損 棚卸資産の適切な評価と減耗損の取り扱いは、在庫管理において重要な要素です。 期末評価の方法 タイでは、期末棚卸資産は低価法により評価することが求められています。これは、原価と時価(正味売却価額)のいずれか低い価額で評価する方法です。 正味売却価額は以下の計算式で求められます: 正味売却価額 = 見積売価 - 見積追加製造原価 - 見積販売経費 低価法による評価損は、通常、有税処理により引当金計上されます。翌期首には洗替処理が行われます。 棚卸減耗損の取扱い 棚卸減耗損は、自然な摩耗、盗難、過去の数え間違い、売上の計上漏れなど、様々な原因で発生する可能性があります。タイの税務上、棚卸減耗損は損金不算入とされ、法人税課税の対象となります。 これらの取り扱いは、企業にとって予期せぬ税負担となる可能性があるため、適切な在庫管理と正確な会計処理が極めて重要となります。 まとめ タイにおける在庫差異の発生理由と対策について解説しました。在庫差異は、フローとストックの視点の違い、不適切な金額管理、イレギュラーな状況への対応不足などから生じます。これらの差異は会計上および税務上で重大な影響を及ぼす可能性があるため、適切な管理が不可欠です。ERPシステムの導入や業務フローの整備、正確な期末評価と減耗損の処理を通じて、在庫差異のリスクを最小限に抑えることができます。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|借入金規制の概要と注意点

(日本語) タイでの資金調達方法として借入金を検討している企業向けに、主な規制と注意点を解説します。BOI申請企業や外国法人に適用される規制、税法上の取り扱いなど、重要なポイントをまとめています。 タイにおける借入金の位置づけと規制の概要 タイの多くの日系企業は現地の金融機関から資金調達を行うにはハードルが高く、資金繰りに苦慮するケースがあります。このような状況下で、資金を調達する主な方法として、資本金の増資と借入金の2つが挙げられます。 借入金は、増資と比較して以下のようなメリットがあります: 支払利息が損金算入できる ・親子ローンなどの形で資金調達が可能 しかし、借入金には一定の規制が設けられています。タイでは主に以下の3つの観点から借入金の上限額を考慮する必要があります: BOIによる規制 外国人事業法による規制 歳入法(税法)による規制 これらの規制は、企業の形態や出資構成によって適用される内容が異なります。以下、各規制の詳細について解説していきます。 BOI申請企業に適用される借入金規制 タイ投資委員会(BOI)の投資奨励を受けている企業には、特別な借入金規制が適用されます。 BOI申請企業の借入金上限 BOI申請企業は、以下の条件を満たす必要があります: 負債額(借入額)が資本金の3倍以下 この規制は、BOI奨励企業の財務健全性を確保し、過度な借入を防ぐことを目的としています。 規制の対象となる企業 BOI奨励を受けているすべての企業が対象となります。業種や出資構成に関わらず、この規制を遵守する必要があります。 外国法人に対する借入金規制 タイでは、外国人事業法及び関連法規により、外国法人に対して特別な借入金規制が設けられています。 外国法人の定義と借入金上限 外国法人の定義: ・外国法人 ・外国籍者による出資が51%以上の法人 借入金上限: ・負債額(借入額)が資本金の7倍以下 この規制は、外国資本による過度な影響力を抑制し、タイ国内の経済安定性を維持することを目的としています。 規制の適用範囲と注意点 この規制は、タイ国内で事業を行うすべての外国法人に適用されます。ただし、BOI奨励企業の場合は、より厳しいBOIの規制が優先して適用されることに注意が必要です。 タイの税法における借入金の取り扱い タイの歳入法(税法)では、借入金に関して特別な規制は設けられていません。 過小資本税制の不在 タイには、過小資本税制が存在しません。過小資本税制とは、一定基準を超える支払利息を損金不算入とする制度です。 税務上の留意点 借入金にかかる支払利息は、原則として全額損金算入が可能です。これにより、親子ローンなどの形での資金調達が税務上有利となる場合があります。 ただし、税務調査の際に、借入の経済合理性や利率の適正性について質問を受ける可能性があるため、借入の目的や条件を適切に文書化しておくことが重要です。また、日本から親子ローンを受ける場合、市場金利よりも低い利率を設定した場合、日本の税務当局に利息分を寄付金とされる可能性もありますので、日本の税理士とも相談が必要です。 借入金規制が適用されないケースと実例 一定の条件を満たす企業では、借入金に対する規制がほとんど適用されないケースがあります。 規制が適用されない企業の特徴 以下の条件を全て満たす企業は、借入金規制の適用を受けません: サービス業または販売業などで51%以上がタイ資本 ・BOI奨励を受けていない 実例:高額の親子ローン 規制が適用されない企業では、資本金の10倍以上の借入金(親子ローン)を行っている事例も見られます。これは、タイの法規制上は問題ありませんが、財務の健全性や経営リスクの観点から慎重に検討する必要があります。 まとめ タイにおける借入金規制は、企業の形態や出資構成によって大きく異なります。BOI申請企業や外国法人には厳格な規制が適用される一方、一定の条件を満たす企業では規制がほとんど適用されません。資金調達の際は、自社の状況に応じた最適な方法を選択することが重要です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|会計制度の基本と企業向け会計基準を解説

(日本語) タイの会計制度と企業向け会計基準について詳しく解説します。非上場企業と上場企業で適用される基準の違いや、会計担当者に必要な資格、記帳ルールなど、タイで事業を行う上で押さえておくべき会計の基礎知識をわかりやすくまとめています。 タイの会計制度の概要 タイの会計制度は、国際的な基準に合わせる形で近年大きく変化しています。かつては米国会計基準をベースとしていましたが、現在は国際会計基準(IFRS)に準拠する形で整備されています。タイの企業がどの会計基準を適用すべきかを理解することは、正確な財務報告と法令遵守のために非常に重要です。 タイ会計基準(TAS)の種類 タイ会計基準(TAS)は、企業の性質によって2つの基準に分かれています。 TFRS for NPAEs(Non-Publicly Accountable Entities):非上場企業向け TFRS for PAEs(Publicly Accountable Entities):上場企業向け これらの基準は、企業の公的説明責任の有無によって適用が分かれています。 TFRS for NPAEsとTFRS for PAEsの違い TFRS for NPAEsとTFRS for PAEsの主な違いは以下の通りです: TFRS for NPAEs:タイ独自の会計基準で、非上場企業の実務的負担を考慮して簡略化されています。 TFRS for PAEs:主要なIFRS基準にほぼ準拠しており、より詳細な財務報告が求められます。 多くの在タイ日系企業は、TFRS for NPAEsを適用しています。ただし、TFRS for PAEsを適用することも可能ですが、内容が多岐にわたるため、あえて採用するメリットは少ないのが現状です。 非上場企業向け会計基準:TFRS for NPAEs TFRS for NPAEsの特徴 TFRS for NPAEsは、タイ独自の会計基準として、全28章から構成されています。この基準の主な特徴は以下の通りです: 継続企業の前提と発生主義会計をベースとしています。 非上場企業の実務的負担を考慮し、複雑な項目への言及を省いています。 税効果会計、従業員給付、デリバティブ等の複雑な項目については言及していません。 TFRS for NPAEsで作成が求められる財務諸表 TFRS for NPAEsを適用する企業は、タイの会社法に基づき、以下の財務諸表を最低年1回作成する必要があります: 財務状態計算書 損益計算書 株主持分変動計算書 財務諸表の注記 一方、以下の財務諸表は作成が義務付けられていません: 包括利益計算書 キャッシュ・フロー計算書(TAS第7号の任意適用が可能) 連結財務諸表(TAS第27号の任意適用が可能) 関連当事者についての開示(TAS第24号の任意適用が可能) 税効果会計(TAS第12号の任意適用が可能) デリバティブ取引 機能通貨 これらの任意適用可能な項目については、企業の判断で適用するかどうかを決定できます。 上場企業向け会計基準:TFRS for PAEs TFRS for PAEsの適用対象企業 TFRS for PAEsは、公的説明責任を有する企業、つまり上場企業向けの基準です。以下の要件を満たす企業がPAEsとなります: 負債証券または株式が公開市場で取引されている企業 公開市場での金融商品発行を目的に財務諸表を証券委員会等に登記している企業 金融機関、保険会社、信託、投資信託等、特定の法令に従い公的資産に関する事業を行う企業 公開企業法に規定された公開企業 その他通知された法人 TFRS for PAEsの特徴 TFRS for PAEsの主な特徴は以下の通りです: ほぼ主要なIFRS基準に準拠しています。 より詳細かつ複雑な財務報告が求められます。 国際的な比較可能性が高い財務諸表を作成できます。 税効果会計、従業員給付、デリバティブ等の複雑な項目についても詳細な規定があります。 TFRS for PAEsを適用する企業は、より高度な会計知識と専門的なスキルが必要となります。そのため、多くの企業は外部の会計専門家や監査法人のサポートを受けながら財務報告を行っています。 タイの会計担当者に求められる資格 CPDライセンスの概要 タイでは、会計法上のルールにより、会計責任者には資格(CPDライセンス)が必要です。CPDライセンスは、Continuing Professional…

タイ|日本人の個人所得税還付手続き完全ガイド

(日本語) タイで働く日本人の個人所得税還付手続きについて、申告方法から小切手受け取りまでの流れを詳しく解説します。帰任時の注意点や会社での処理方法も含め、還付手続きの全てがわかります。 タイにおける個人所得税還付の概要 タイで働く日本人が個人所得税の還付を受けるためには、適切な手続きを踏む必要があります。この手続きは、主に申告と還付金の受け取りの2段階に分かれています。 還付手続きの流れ 個人所得税の申告:インターネットまたは歳入局窓口で行います 必要書類を提出し、還付額を計算します 還付にかかる調査:歳入局が申告内容を確認します 調査期間は案件により異なる場合があります 還付通知書と小切手の発行: 調査完了後、歳入局が書類を郵送します 還付通知書と小切手の受け取り 歳入局から郵送される書類は以下の2点です: 個人所得税還付通知書(Kor.21) 還付金額が記載された小切手 注意点として、還付通知書が届かない場合があります。その際は、管轄の歳入局に連絡し、書類の再送を依頼することが可能です。 また、歳入局(税務署)に登録されている個人住所を会社の住所に変更することで、還付通知書と小切手を会社で受け取ることができます。これは、特に帰任が決まっている場合に有用な方法です。 還付申告の方法と注意点 タイでの個人所得税還付の申告方法には、主にインターネットと歳入局窓口の2つがあります。それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。 インターネットでの申告 インターネットでの申告は、以下の利点があります: 時間や場所を問わず申告可能 書類の郵送や窓口での待ち時間が不要 申告内容の修正が比較的容易 ただし、オンラインシステムの操作に慣れていない場合や、複雑な申告内容の場合は、窓口での申告を選択することも検討しましょう。 歳入局窓口での申告 歳入局窓口での申告は、以下のような場合に適しています: 初めて還付申告を行う場合 申告内容に不明点がある場合 直接担当者に質問したい事項がある場合 窓口での申告時は、必要書類を全て準備し、混雑時期を避けて訪問することをおすすめします。 帰任時の還付手続きにおける留意事項 タイでの勤務が年の途中で終了し、帰任することになった場合、還付手続きには特別な注意が必要です。 源泉徴収額の調整と還付 タイの個人所得税の計算は、年間に受け取る所得から所得税を計算し、毎月源泉徴収されて納税します。そのため、通年タイに滞在する予定で毎月源泉徴収を行っていた場合、年の途中での帰任により過剰な源泉徴収が発生する可能性があります。この場合、以下の点に注意が必要です: 帰任日までのタイで申告必要な給与で源泉徴収額の調整を行う 調整しきれない場合は還付申告を行う 還付書類の受け取り場所の指定 帰任のタイミングによっては、還付時に既に日本に帰国している可能性があります。そのため、還付書類の受け取り場所には特に注意が必要です。 会社住所への変更: 歳入局に登録されている個人住所を会社住所に変更 会社で還付通知書と小切手を受け取ることが可能 委任状の準備: 必要に応じて、会社や信頼できる人物に還付書類の受け取りを委任 これらの対策を講じることで、帰任後も確実に還付金を受け取ることができます。 会社での還付金の処理方法 還付金を受け取った後の処理方法は、会社がタイでの税金をどのように負担していたかによって異なります。 会社負担の場合の処理 税金を全額または一部会社が負担していた場合: 会社の費用の戻りとして処理 会社の会計上、還付金を収入として計上 この場合、還付金は個人の所得とはならず、会社の収入として処理されます。 個人負担の場合の処理 税金を全額個人が負担していた場合: 会社で仮受計上 個人に還付金を支払い、精算 この場合、還付金は個人の所得となり、個人が受け取ることになります。ただし、会社を通じて還付金を受け取る場合は、一時的に会社で仮受計上した後、個人に支払われます。 まとめ タイにおける日本人の個人所得税還付手続きは、申告から還付金の受け取りまで、いくつかのステップを踏む必要があります。特に帰任時には、還付書類の受け取り場所や源泉徴収額の調整に注意が必要です。また、還付金の処理方法は、会社の税金負担の方針によって異なるため、自身の状況を正確に把握することが重要です。適切な手続きを行うことで、確実に還付金を受け取ることができます。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|源泉所得税の仕組みと対象取引

(日本語) タイの源泉所得税について、その仕組みや対象となる取引、税率などを詳しく解説します。日本との違いや注意点、正しい処理方法についても触れ、タイでビジネスを展開する上で欠かせない知識をお伝えします タイの源泉所得税とは タイで事業を行う上で、源泉所得税に関わる取引は必ず発生すると言っても過言ではありません。源泉所得税は、源泉徴収制度により徴収される税金のことを指します。 源泉徴収制度の概要 源泉徴収制度とは、所得税の徴収制度の一つであり、給与や報酬などの所得の支払者が、所定の方法により所得税を計算し、支払い時に受取人に代わって所得税を差し引き、税務当局に納付する制度になります。 この制度は、給与の支払いにも適用されます。会社が従業員に給与を支給する際、その給与の金額から源泉所得税額を計算し、支給金額から控除して歳入局に納付します。 源泉徴収税は、給与や配当、広告料、利子、ロイヤリティ、サービス料など、さまざまな種類の所得に対して適用されますので、支払者はどの種類に該当するのかを確認して、それぞれの源泉税率に応じて源泉徴収および納付する義務があります。タイでは源泉徴収税が企業や個人にとって非常に一般的な存在です。適正な税務処理を行うためには、この制度を正しく理解し、適用される税率や納付手続きを把握しておくことが必要不可欠です。 源泉所得税が必要な理由 源泉徴収制度が存在する主な理由は以下の通りです: 確実な税金徴収:個人が確定申告を怠った場合でも、国が確実に税金を徴収できます。 納税の平準化:毎月の給与から税金を徴収することで、年度末の一括納税による負担を軽減します。 徴税コストの削減:国が直接徴収するよりも、企業を通じて徴収することでコストを抑えられます。 ただし、企業側にとっては源泉徴収の手間がかかり、源泉徴収および納付を怠った場合にはペナルティが課されるため、注意が必要です。 源泉徴収が必要な主な取引 タイでは、国内のほとんどのサービス取引および外国法人への支払いに源泉徴収が適用されます。主な取引について支払いを受ける者ごとに見ていきましょう。 タイ国内の個人への支払い タイ国内の個人に対する以下の支払いには源泉徴収が必要です: 給与、退職金等  役員報酬 配当金 請負代金 サービス料 利息 賃貸収入 その他の所得 タイ国内の法人への支払い タイ国内の法人に対する以下の支払いには源泉徴収が適用されます: サービス料 ロイヤリティ 利子 配当金 広告料金 コミッション 賃貸収入 外国法人への支払い 外国法人に対する以下の支払いには源泉徴収が必要です: 配当 利子 ロイヤリティ 人的役務サービス料 専門的サービス料 株式売却益 賃貸収入 日本とタイの違い 日本とタイの源泉徴収制度には、いくつかの違いがあります: 対象取引の範囲:タイの方が広範囲で、ほとんどのサービス取引が対象となります。 法人間取引:日本では主に個人事業主への一定のサービスに対して源泉徴収が行われますが、タイでは内国法人および個人へのサービスに対して広く源泉徴収が適用されます。 納付期限:タイでは支払いが行われた月の翌月7日まで、日本では原則として翌月10日までとなっています。 これらの違いを理解し、適切に対応することが重要です。 源泉所得税の税率 タイの源泉所得税の税率は、取引の種類や支払先によって異なります。主な取引の税率を国内取引と国外取引に分けて見ていきましょう。 国内取引の税率 タイ国内での主な取引に適用される源泉所得税の税率は以下の通りです: 配当:10% 利子:1% 広告料:2% サービス:3% コミッション:3% ロイヤリティ:3% 賃貸料:5% これらの税率は、タイ国内の個人や法人との取引に適用されます。 国外取引の税率 外国法人との取引に適用される源泉所得税の税率は以下の通りです: 配当:10% 利子:15% ロイヤリティ:15% 賃貸料:15% 株式売却益:15% 人的役務提供サービス:15%(日タイ租税条約が適用される場合0%、PEなければ課税なし) 日本とタイの間には租税条約が締結されています。租税条約とは、国と国の間で課税権の及ぶ範囲を定め、二重課税の排除及び租税回避の防止策を目的として締結された条約です。租税条約と国内法の規定が異なる場合には、租税条約が優先して適用されます。従いまして、租税条約および国内法の両方の税率を見て判断する必要があります。専門的な判断が必要な場合もありますので、迷ったときは専門家に相談されることをお勧めします。 源泉所得税の計算と納付方法 源泉所得税の正しい計算と適切な納付は、タイでビジネスを行う上で非常に重要です。具体的な計算方法と納付手続きについて見ていきましょう。 計算方法の具体例 例えば、A社がB社からサービス(源泉徴収対象)を受け、10,000バーツの報酬と700バーツのVAT(7%)の請求書を受け取った場合、以下のように計算します: サービスにかかる源泉徴収税額:10,000バーツ × 3% = 300バーツ B社への支払額:10,000バーツ - 300バーツ + 700バーツ = 10,400バーツ 税務当局への納付額:300バーツ A社は10,400バーツをB社に支払い、300バーツを源泉徴収税として税務当局に納付します。 納付期限と手続き タイでは、源泉所得税の納付期限は以下の通りです: 納付期限:支払いが行われた月の翌月7日まで 申告・納付先:歳入局(税務署) 納付を怠った場合、ペナルティ(延滞税、不納付加算税など)が課される可能性があるため、期限を厳守することが重要です。また、どのような取引が源泉徴収の対象になるかを判断するのも、慣れていない人にとっては難しいこともあります。正確な計算と適切な処理を行うために、タイ人の経理担当者や会計事務所のアドバイスを受けることをお勧めします。 利益還流時の源泉所得税 タイで事業を行う日系企業が、利益を日本の親会社に還流する場合や、タイ国内のパートナーに利益を配分する場合、源泉所得税の取り扱いに注意が必要です。 配当での還流時の税率 配当を通じて利益を還流する場合の源泉所得税率は以下の通りです: タイ法人から日本の親会社への配当:10% タイ法人からタイのパートナーへの配当:10%…

タイ|VAT(付加価値税)の概要、インボイス、還付・繰越を解説

(日本語) タイVATとタックスインボイスの徹底解説で適切な取扱いを学び、認められない仕入VATの対策や会計・税務上の注意点を把握。専門家と相談することでリスク回避を図ることが可能です。 タイVATの基礎知識 タイで事業を展開する際、VATの理解は不可欠です。VATはValue Added Taxの略で、日本の消費税に相当する税金です。ここでは、タイのVATの基本的な仕組みを解説します。 VATの概要 タイのVATは、物品やサービスの国内取引および輸入品に対して課される間接税です。現在の税率は7%(暫定税率)で、原則として事業者が納税義務を負います。ただし、VATの最終的な負担は消費者が負うことになります。 次にVATの説明に入ります。VATは深く説明しますと時間がかかりますので、今回は基本と日本本社への支払い時の注意点のみを説明させていただきます。基本としては、会社Bが会社Aに仕入代金100バーツを支払う際にVAT 7%を乗せて107バーツを支払います。そして、会社Bが会社Cに200バーツで販売する際にはVAT 7%を乗せた214バーツを受領します。会社Bは受領したVAT14バーツと支払ったVAT7バーツの差額である7バーツを税務当局に納税します。このように受け取ったVATと支払ったVATの差額を納税するというのが基本となります。 VATの目的と納税タイミング VATの主な目的は、納税のタイミングを早めることです。消費者が商品を実際に消費するまで課税されないと、税金の徴収が遅れてしまいます。そこで、VATのシステムが導入され、バリューチェーン全体で段階的に税金収入を確保し、効率的な税収を実現しています。 VATの納税義務者と納税額の計算方法 VATの納税義務者は、年間売上高が180万バーツ以上のタイ国内の事業者です。納税額は、売上VATから仕入VATを差し引いた額となります。仕入VATが売上VATを上回る場合、還付申請または翌月以降への繰越が可能です。VATの申告は、毎月の売上と仕入を集計し、翌月15日までに行う必要があります。 Tax Invoice(タックスインボイス) タイのVAT制度では、「インボイス方式」を採用しています。これは、取引ごとにタックスインボイスを発行し、それを基にVATの申告を行う方式です。タックスインボイスの適切な発行と管理は、VATの仕入税額控除を受けるために重要な役割を果たします。 タイのTax Invoiceの概要 タックスインボイスは、VAT課税対象となる取引の証明書類で、原本の発行が義務付けられています。取引先企業や税務署に対し、その取引がVAT課税対象であることを証明するために使用されます。タックスインボイスには、税務署が定める一定の要件を満たす必要があります。 税務署が認める適切なTax Invoiceの条件 税務署が認めるタックスインボイスには、以下の項目の記載が求められます。 「Tax Invoice」の文言 発行者の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店) 購買者の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店) 発行日付 Tax Invoiceの番号 商品・サービスの名称、種類、区分、数量、価格 商品・サービスの価格とは別に記載されたVAT金額 その他、歳入局が定める事項 これらの情報が不足している場合、売上VATから仕入VATを控除できなくなります。 認められない仕入VATの種類と対策 以下のようなケースでは、仕入VATの控除が認められず、経費として処理せざるを得なくなります。 Tax Invoice原本の不備や欠落 事業と直接関連しない支出 略式Tax Invoice 交際費 乗用車または10人乗り以下のバスの購入・リース 税務調査にて不適切な仕入VATの使用が発覚した場合、加算税と延滞税が課されます。適切な取り扱いを怠れば、多額の損失につながるリスクがあるため、十分な注意が必要です。 Tax Invoice原本の入手期限 仕入VATの控除は、Tax Invoiceの発行日から6ヵ月以内の申告に限られます。期限を超過したTax Invoiceを控除に使用すると、税務調査で発覚した場合、罰則の対象となります。仕入先からのTax Invoice原本の遅延や記載不備にも注意が必要で、定期的な確認を行い、期限内の申告を心がけましょう。 VATの還付と繰越 月次のVAT申告で、仕入VATが売上VATを上回る場合、納税額がマイナスになります。このような場合、事業者は過払いとなったVAT額について、還付申請を行うか、翌月以降に繰り越して将来の売上VATから控除するかを選択できます。 還付申請の注意点 還付申請を行うと、税務調査の対象となり、他の項目も調査されることがあります。還付申請は、過払いとなったVATの発生から3年以内に行わなければなりません。申請後、手続が停滞するケースが多いため、税務署の担当者とのコミュニケーションを密に取り、停滞の原因を確認することが重要です。また、担当者の名前を確認し、議事録に残すことも役立ちます。 繰越の特徴 一方、繰越に期限はありません。将来的に国内売上の増加が見込まれる場合は、繰越処理を選択し、将来の売上VATで相殺することができます。ただし、繰越額が長期間解消されない場合は、還付申請を検討する必要があります。 また、輸出型企業のように、恒常的に還付ポジションとなる場合は特例制度の活用を検討すべきでしょう。特例制度の適用には、税務署の事前審査が必要で、2年ごとの更新時にも再審査が行われます。 サービス取引とVAT サービス取引に対するVATの取り扱いは、サービスの提供地によって異なります。例えば、日本の事業者がタイの事業者にサービスを提供する場合、そのサービスの提供地が日本であればタイのVATは必要ありません。一方、サービス提供地がタイ国内であれば、タイでのVAT納税が必要となります(サービスの輸入にかかるVAT)。 サービス提供地の判定基準 サービス提供地が日本かタイかの判断は、契約内容や実際の活動状況によって異なります。サービス提供者の出張の有無なども判断材料となります。ただし、税務調査の際には、タイ国内でのサービス提供とみなされ、VATの追徴課税を受けるケースがあるので注意が必要です。 PP36の申告 サービスの輸入に対するVATは、PP36という申告書を用いて申告・納付します。特に、日本の親会社からタイ子会社へのサービス提供の場合、このPP36の申告が漏れがちです。税務調査で指摘されるケースが多いので、注意が必要です。 税務調査での指摘リスク 税務調査でVATの追徴課税を指摘された場合、本税に加え、月1.5%の延滞税が課されます。ただし、サービスの輸入にかかるVATも、通常の仕入VATと同様に、売上VATから控除することができます。Output VATがある場合は、取引実態や税務調査リスク、延滞税負担などを総合的に勘案して、申告の要否を判断する必要があります。 まとめ タイでビジネスを行う上で、VATの理解と適切な対応は欠かせません。VATの基本的な仕組みを踏まえ、税務署の求める要件を満たすタックスインボイスの発行・管理を徹底することが重要です。還付申請や繰越の選択に際しては、各社の状況を見極めた判断が求められます。 また、サービス取引におけるVATの取り扱いにも細心の注意を払う必要があります。特に、国外の事業者とのサービス取引では、提供地の判定とPP36の申告を適切に行わなければなりません。 VATに関する税務リスクは、時に多額の追徴課税や延滞税につながります。専門家のアドバイスを受けつつ、適切な申告と納税を行うことが、タイでの事業運営における重要な課題といえるでしょう。

タイ|所得税の配偶者・子供控除と別居家族・無所得者の適用条件

(日本語) タイの所得税制度において、配偶者や子供に対する控除を受けるためには、別居家族や無所得者に関する適用条件を理解しておく必要があります。本記事では、タイで働く駐在員が知っておくべき、配偶者・子供控除の概要と、別居家族や無所得者への適用可否についてわかりやすく解説します。 タイへの新規進出を無料相談する> タイの所得税における配偶者・子供控除の概要 タイの所得税制度では、本人控除に加えて、家族構成によって配偶者や子供に対する扶養控除が適用されることがあります。ここでは、控除額と適用対象、そして税務調査時に必要となる書類について解説します。 控除額と適用対象 タイで働く駐在員が受けられる控除額は、以下の通りです。 費用控除所得の50%と100,000バーツのいずれか小さい方 本人控除60,000バーツ 配偶者控除60,000バーツ 子供控除30,000バーツ/人(人数に制限なし、未成年または25歳以下の学生が対象) 2018年以降に出生した第二子以降60,000バーツ/人 生命保険料控除:最高10万バーツ スーパー・セービング・ファンド(SSF)積立金控除:課税所得の30%、上限20万バーツ 退職投資信託(RMF)控除:課税所得の30%、上限50万バーツ これらの控除を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。 税務調査時の必要書類 税務調査が行われた際には、家族控除の証明として、戸籍謄本を証明書として提出するよう求められる可能性があります。この手続は、日本の市区町村から戸籍謄本を取得し、タイの日本大使館で英訳を行い、必要に応じて確定申告時に提出します。日本大使館での「戸籍記載事項証明(英文)」の手続詳細は、大使館のウェブサイトで確認することができます。 その他控除を適用している場合は各証明書を事前に用意しておく必要があります。 税務調査に備えて、事前に必要書類を準備しておくことが重要です。 別居家族に対する扶養控除の適用条件 タイへ単身赴任している方が、日本に配偶者や子供を残している場合でも、一定の条件を満たせば、扶養控除を適用できます。ここでは、単身赴任者の居住者認定と扶養者の所得について説明します。 単身赴任者の居住者認定と扶養者の所得 別居家族に対する扶養控除の適用要件は、主に以下の2点に関連します。 単身赴任者の居住者認定(180日以上のタイ滞在) 扶養者の所得がゼロであること 単身赴任者がタイに180日以上滞在し、タイ居住者と認定される場合で、扶養者の所得がゼロであれば、扶養控除を適用できます。しかし、単身赴任者が180日未満でタイ非居住者と認定される場合は、日本にいる扶養者に対して扶養控除を適用することはできません。 別居家族に対する扶養控除の適用には、これらの条件を満たすことが必要不可欠です。 無所得の扶養家族に対する適用条件と注意点 扶養控除は、家族が無所得の場合に限り適用されます。ここでは、確定申告時の注意点と税務調査の際に必要となる書類について説明します。 確定申告の際には、所得や扶養に関する証明書類を添付する必要はありませんが、税務調査の際には以下の点に留意が必要です。 所得がないことを証明する書類が必要になることがある 税務調査の際に戸籍謄本を求められることがあるため、事前に日本で戸籍謄本を取得し、大使館で英語に翻訳しておく必要がある 無所得の配偶者や子供に対して扶養控除を適用することは可能ですが、上記の注意点に留意しながら適切な準備を行うことが重要です。 2024年度のショッピング控除 2024年度には、消費喚起を目的とした最大5万バーツのショッピング控除が内閣に承認されました。ここでは、控除の概要と適用方法について説明します。 控除の概要 この控除を受けるには、2024年1月1日から2月15日までに購入した物品のE-Tax Invoice/ReceiptまたはE-Receiptの取得が必要であり、対象の物品購入額に対して個人所得税の減額が可能です。申告時期は2025年3月末となっています。 ショッピング控除を活用することで、個人の税負担を軽減することができます。 給与算定サービスでの適用方法 ショッピング控除を適用する場合、月次の所得税計算にて反映するか、年度の確定申告にて還付申請をするかの2通りの方法があります。月次で反映させる場合は、E-Tax InvoiceまたはE-Receiptのデータをまとめて経理や会計事務所に送付して対応を依頼する必要があります。 会計事務所に依頼している場合は、給与算定サービスを利用することで、ショッピング控除の適用がスムーズに行えます。 確定申告時の控除方法 2024年分の確定申告時(2025年3月末)に還付申請も可能ですが、税務署から対象のTax Invoice等の提出を求められることがあるため、月次給与での適用をお勧めします。 確定申告時の控除方法は、税務署の要求に応じて適切に対応する必要があります。 タイの日系会計事務所/コンサルティング会社はコチラ> まとめ タイの所得税制度における配偶者・子供控除は、別居家族や無所得者に対しても一定の条件下で適用可能です。適用条件や必要書類を理解し、適切な準備を行うことが重要です。また、2024年度のショッピング控除を活用することで、個人所得税の減額が可能となります。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|個人所得税が非課税となる手当・日当・旅費交通費とは

(日本語) タイにおいて、出張で支給される日当や手当について、個人所得税の課税対象となるのか、非課税となる上限があるのかについて解説します。旅費交通費の実費精算分は非課税となりますが、日当については一定の上限額までは非課税となります。また、会社で支給される手当の中にも、課税対象となるものと非課税となるものがあります。 タイの出張日当の非課税上限について タイでは、出張の際に支給される日当について、一定の金額までは個人所得税が非課税となります。この非課税となる上限額は、公務員の基準に準じて以下のように定められています。 【国内出張の場合】 ・一般社員240バーツ/日 ・役職者270バーツ/日 【海外出張の場合】 ・一般社員2,100バーツ/日 ・役職者3,100バーツ/日 これらの上限額を超える部分については、個人所得税の課税対象となります。一方で、旅費交通費の実費精算分については非課税となります。 タイの個人所得税の課税対象となる手当について タイの会社では、様々な手当や福利厚生が支給されていますが、そのうちいくつかは個人所得税の課税対象となります。課税対象となる主な手当は以下の通りです。 ・役職手当 ・皆勤手当 ・語学手当 ・資格手当 ・シフト手当 ・時間外手当、休日出勤手当、夜勤手当 ・食事手当  ・税金手当(※会社が税金を負担する場合) ・各種報奨金  これらの手当は、原則として個人所得税の課税対象となるため、従業員の年間所得の計算に含める必要があります。 タイの個人所得税の非課税となる手当について 一方で、タイでは非課税となる手当も複数存在します。非課税となる主な手当は以下の通りです。 通勤手当(実費分)  出張日当(上限有)  医療費還付  解雇手当(上限有)  実費経費精算 これらの手当は、個人所得税の課税対象とはならないため、年間所得の計算には含める必要はありません。ただし、出張日当については一定の条件を満たす必要がある点には注意が必要です。 まとめ タイでは出張日当について一定の上限額までは非課税となりますが、上限を超える部分は課税対象となります。また、会社が支給する手当の中にも、課税対象となるものと非課税となるものがあるため、区別が必要です。実態に応じて適切に個人所得税の計算を行うようにしましょう。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|駐在員給与の個人所得税・確定申告、決定方式・較差補填

(日本語) タイの個人所得税と駐在員の給与負担について、重要なポイントを解説します。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどについて詳しく説明し、税務リスクへの対策もお伝えします。 タイの個人所得税の概要 タイでは、原則として各個人が確定申告を行います。3月末の確定申告時には、2月中旬に受け取った源泉徴収票と確定申告によって計算された年税額の差額を納付します。雇用者は毎月7日(E-TAXの場合は15日)に前月の源泉税を納付し、各人への源泉徴収票を配布した後、2月末までに所轄の税務署へ源泉徴収年次申告書を提出します。 個人所得税率は累進課税となり、所得区分ごとに適用する税率が異なります。2017年度の最高税率は、500万バーツ超の所得に対して35%となりました(以前は400万バーツ超が最高税率の対象)。 居住者と非居住者の課税関係 タイの個人所得税における納税義務者は、居住者と非居住者に分けられます。居住者とは、タイ国内に一時的または数度にわたり滞在し、課税年度内の滞在期間が合計180日以上に達する人物を指します。 居住者は、タイ国内源泉所得とタイ国外源泉所得のうちタイ国内に持ち込んだ部分に対して課税されます。一方、非居住者は、タイ国内源泉所得のみが課税対象となり、タイ国外源泉所得は非課税となります。 180日以内の短期滞在者の免税 日本法人の従業員が、180日以内の期間でタイへ出張する場合、日タイ租税条約の短期滞在者免税制度により、タイでの所得税が免除されることがあります。以下の3つの要件を全て満たす必要があります。 タイでの滞在期間が暦年ベースで合計180日を超えないこと 報酬支払者である雇用主が日本の居住者であること 日本で支払われる報酬等がタイ企業によって負担されないこと ただし、この免税制度は通常の雇用契約に基づく従業員にのみ適用され、法人の取締役など委任契約に基づく者には適用されません。 駐在員の給与決定と課税関係 日系企業の多くは、グロスアップ計算を行い、駐在員の給与の手取り額が日本にいたときと変わらないように計算します。海外の駐在員の給与決定には、主に以下の3つの方式があります。 購買力補償方式  日本での生活水準を海外の出向先でも維持するという考え方に基づき、各国の生計費指数を基に海外の給与額を決める方式。 併用方式  日本での基本給の額をそのまま赴任先の給与額とし、海外赴任において追加で掛かる生計費を加算した金額を海外の給与額とする方式。 別建て方式  国内の給与とは切り離して、赴任地の給与水準に基づき支給する方式。一昔前までは多く使われてきた方式だが、近年ではあまり使われていない。 為替レートの変動への対策 為替レートが上下することにより給与額が変動してしまうことを考慮し、出向契約等の中に為替レートが基準レートより上下数%変動した場合には基準レートの見直しを行うなどの文言を入れている会社もあります。 福利厚生費の取り扱いに注意 日系企業の中には、住宅費、食事代、クリーニング代、一時帰国休暇の交通費、赴任・帰任時の転居費用、子女教育費、語学費などを福利厚生費として計上している会社もありますが、日本人駐在員のみに行っている場合には給与認定されてしまいます。 これらの費用は基本的に給与として計所および申告する必要がありますが、個人所得税率の方が高くなる場合が多いこともあり、給与計上せずに損金不算入費用に含めてしまっている会社もあります。その場合は給与計上として指摘される可能性がありますので注意が必要です。 出向較差補填を活用した駐在員のボーナス負担 出向較差補填とは、出向者給与の一部について、出向先で給与が減少したため、その分を出向元が支給したり、海外出向者の留守宅手当を出向元が支給するなどした場合、それを出向元の損金(税務上の費用)として認めるルールです。 タイ法人が経営不振のため駐在員に賞与を支給できない場合、親会社が代わりに支給すれば、日本の税務ルール上、親会社の費用として認められます。これにより、タイ法人のコスト削減と、タイ法人が赤字・親会社が黒字であればグループ全体の税金額を削減できるメリットがあります。 ただし、親会社の費用として認められるためには、子会社が経営不振である事実および出向契約書・賞与不支給の社内資料といった根拠資料が必要です。また、親会社で支給したとしても、タイの個人所得税申告上は合算して申告する必要があります。 日本払い給与に対するVATの問題 タイでの駐在員給与に関する税務調査では、日本法人が支払っている給与をタイ法人へ請求される場合には注意が必要です。通常、これらの給与請求は立替金のため税金は発生しません。しかし、タイの税務当局によってこの立替金を業務委託費と見なされることがあり、その結果、意図しない追徴課税のリスクに直面することがあります。 例えば、日本本社が駐在員の給与をタイ法人に対して「業務委託費」という名目で請求すると、実際は立替金であってもタイの税務署はこれを業務とみなし、源泉税を納めるべき業務と推定します。その結果、15%の源泉徴収税と7%のVATが課されることがあります。 このようなリスクを避けるためには、駐在員給与の請求名目を「立替給与(Advance payment of salary)」などとすることで、単なる立替払いであることを明確にすることが重要です。また、タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結し、駐在員の勤怠をタイ法人で管理することも必要です。さらに、現地給与を多くし、日本建替給与を少なくすることにより、万が一課税されたとしても影響を少なくすることができます。 まとめ タイにおける駐在員の個人所得税と給与負担について、重要なポイントを解説しました。タイでの確定申告の方法や税率、給与決定方式、福利厚生費の取り扱いなどを理解し、出向較差補填を活用したボーナス負担や日本払い給与に対するVATの問題など、税務リスクへの対策を講じることが大切です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。