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タイ|看板税の種類・税額を徹底解説

タイの看板税が2021年1月1日から新税率に改定されます。デジタルサイネージ広告の税率が大幅に上昇し、広告業界に大きな影響を与える可能性があります。言語や広告タイプによる税率の違いを解説します。 タイの看板税改定の背景 看板税は、企業広告や店頭の看板など、事業運営や収益目的のために利用される名称、商標、記号などを掲示する看板に課せられる地方税になります。工場などで自社看板を工場入口に掲げる企業などは毎年支払いが必要になります。 タイ内務省は、2021年1月1日から看板税の新しい税率を適用することを発表し、税額を大きく増やしました。 コロナウイルスの影響 新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化の影響で、タイの広告業界にも大きな変化が起きています。特に以下の点が顕著です: BTSスカイトレイン、MRT地下鉄、オフィスビルなどの広告スクリーンへの広告掲載が減少 従来型の広告から、デジタルサイネージなどの新しい形態の広告への移行 看板税の納税額の減少 これらの要因により、タイ政府は看板税の改定を決定したものと予想されます。 デジタル広告の成長 世界のデジタルメディア市場の成長と同様に、タイでも成長の傾向が見られ、従来の静的な広告からデジタルサイネージなどの動的な広告への移行が進んでいます。 この変化に対応するため、デジタルサイネージ等(メッセージが動くタイプなど)と従来型広告で税率を区分し、デジタルサイネージ等の場合、特に高い税率を設定しています。これにより、変化する広告市場に合わせた税制を構築しています。 新しい看板税率の詳細 新しい看板税率は、広告の言語とタイプによって細かく分類されています。以下、それぞれのケースについて詳しく解説します。 タイ語のみの場合 1.デジタルサイネージ等   ・新税率:10バーツ/500㎠ 2.デジタルサイネージ以外 (固定看板)   ・新税率:5バーツ/500㎠ タイ語と外国語併記の場合 1.デジタルサイネージ等   ・新税率:52バーツ/500㎠ 2.デジタルサイネージ以外 (固定看板)   ・新税率:26バーツ/500㎠ 外国語のみの場合 1.デジタルサイネージ等   ・新税率:52バーツ/500㎠ 2.デジタルサイネージ以外 (固定看板)   ・新税率:50バーツ/500㎠ タイ語が外国語の下にある場合 3.デジタルサイネージ等   ・新税率:52バーツ/500㎠ 4.デジタルサイネージ以外 (固定看板)   ・新税率40バーツ/500㎠ デジタルサイネージ広告への影響 新しい看板税率は、特にデジタルサイネージ広告に大きな影響を与えることが予想されます。 広告業界への影響 デジタルサイネージ広告への高い税率適用により、以下のような影響が予想されます: 広告コストの上昇 デジタル広告の減少または規模縮小 従来型広告への回帰の可能性 広告戦略の見直し 広告主や広告代理店は、この新税率を考慮に入れた新たな広告戦略を立てる必要があるでしょう。 看板税の負担者について 看板税は、基本的に看板を保有している会社が支払う義務を負います。所有者が特定できない場合は看板を設置している土地や建物の所有者が納税義務を負います。 まとめ タイの看板税改定は、2021年1月1日から施行され、特にデジタルサイネージ広告に大きな影響を与えます。この改定は、コロナウイルスの影響やデジタル広告の成長を背景に行われました。広告業界は新税率に対応するため、戦略の見直しが必要となるかもしれません。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|契約書に必要な印紙税の計算方法と納付手続き

(日本語) タイの印紙税制度について、対象となる契約書や金額、納付方法など、企業が知っておくべき基本的な情報をわかりやすく解説します。契約書作成時の注意点や、未貼付の場合の対応方法なども詳しく紹介していきます。 タイの印紙税制度の概要 タイでは、契約書や政府機関に提出する書類に対して印紙税が課されます。印紙税は契約内容や金額に応じて異なり、契約書等への印紙貼付または税務署への納税が必要となります。印紙税制度を理解することは、タイで事業を行う企業にとって重要です。 印紙税の対象となる主な契約内容と税率 タイの印紙税は、特定の契約に限定されています。主な対象契約と税率は以下の通りです: 1.不動産賃貸借契約:1,000バーツにつき1バーツ 2.株式譲渡契約:1,000バーツにつき1バーツ 3.割賦購入契約:1,000バーツにつき1バーツ 4.請負契約:1,000バーツにつき1バーツ 5.金銭消費貸借契約:2,000バーツにつき1バーツ、上限10,000バーツ なお、タイでは契約書の最終ページに署名箇所を設けて署名し、その他のページには契約書それぞれの署名をすることも多いです。また、契約書を正本と副本の両方を作成する場合、副本については以下の通りとなります: 正本にかかる印紙税が5バーツ以下の場合:1バーツ 正本にかかる印紙税が5バーツ超の場合:5バーツ ただし、副本ではなく単なるコピーとして保管する場合は印紙は不要です。 印紙税の負担者と納付方法 印紙税の負担者は契約者間で取り決めることが可能です。 納付方法は、取引金額によって異なります: 100万バーツ未満の取引:切手タイプの印紙を課税文書へ貼付 100万バーツ以上の取引:歳入局窓口での納付 契約金額が100万バーツ以上場合や、契約期間の合計額が100万バーツ以上の契約等の場合は、契約が締結されてから15日以内に歳入局の窓口で印紙税を納付する必要があります。 印紙未貼付の契約書への対応 印紙未貼付の契約書が見つかった場合、対応方法は以下の通りです: 1.申告・納税のケース(100万バーツ以上の取引):   ・過去の契約について事後的に納税する場合、または税務調査で指摘された場合、罰金が発生します。   ・罰金は200%~600%となります。 2.切手タイプの印紙のケース(100万バーツ未満の取引):   ・今期のものであれば、切手タイプの印紙を購入して貼り付けることで、延滞税や加算税等は発生しません。   ・過年度分については、税務調査の前に印紙を購入して貼り付けることで指摘を受けない可能性はあります。しかし、本来は契約締結年度の印紙を張り付ける必要があるため、指摘を受ける可能性は残ります。 なお、契約当事者間で裁判になった場合、印紙未貼付の契約書は、民事訴訟時の証拠として認められないため、適切に対応することが重要です。 契約書作成時の印紙税に関する注意点 タイで契約書を作成する際は、印紙税だけでなく、言語や製本方法、署名方法についても注意が必要です。これらの点に配慮することで、法的な有効性を確保し、後のトラブルを防ぐことができます。 契約書の言語と有効性 タイでの契約書は、タイ語、英語、日本語のいずれも有効ですが、以下の点に留意が必要です: 1.法務上の留意点:   ・タイでの裁判の場合、タイ語の契約書を用意する必要が出てくる可能性が高くなります。   ・その他の国での裁判の場合、日本語の契約書は英語への翻訳などが必要になる可能性があります。 2.税務上の留意点:   ・日本語の契約書の場合、タイの税務担当官は通常読むことができないため、タイ語または英語への翻訳を要求される可能性が高くなります。   ・英語の契約書は通常問題ありませんが、担当官によってはタイ語への翻訳を要求されることもあります。 契約書の製本と署名方法 タイを含む海外では、契約書の製本方法が日本と異なる場合があります: 1.製本方法:   ・契約書は左端をホチキス留めするケースが一般的です。 2.署名と押印:   ・契約書には当事者の署名および会社印(カンパニーシール)の押印が一般的です。   ・最終ページ等に署名箇所を設けて署名します。また、その他の全ページにも余白に契約者それぞれの署名をすることがあります。 金額未確定の請負契約の取り扱い 請負契約において、契約時点で金額が未確定の場合、印紙税の計算方法に注意が必要です: 契約書に単価のみ記載の場合や、期間の定めがない場合は、どの金額を基に印紙を納付すればよいか迷うかと思います。その場合は、発生するであろう見込み額を基に計算して一旦納付し、金額が確定した時点で再度調整して追加納付するという方法が考えられます。税務署とのトラブルを避けるために、事前に税務署担当官に相談することをお勧めします。 事前に税務署と相談することにより、以下のメリットが期待できます: 金額が確定していない契約書についての印紙納付方法について担当官と合意できる可能性がある 納付について税務調査で指摘されるリスクを低減できる 印紙税の納付手続きと注意事項 印紙税の納付手続きは、取引金額によって異なります。ここでは、100万バーツ以上の取引の窓口納付と、切手タイプの印紙の貼付方法について詳しく説明します。 100万バーツ以上の取引の窓口納付 100万バーツ以上の請負契約や、契約期間の賃料総額が100万バーツ以上である賃貸借契約等の場合は、以下の手順で印紙税を納付します: 納付期限:契約締結日から15日以内 納付場所:歳入局の窓口 必要書類:契約書の原本 注意点: 窓口納付の場合、切手タイプの印紙を貼付する必要はありません。 納付期限を過ぎた場合、罰金が発生する可能性があります。 切手タイプの印紙の貼付方法 100万バーツ未満の取引の場合、切手タイプの印紙を課税文書に貼付します: 印紙の入手方法:歳入局オフィスにて取得可能 貼付場所:契約書等の課税文書に直接貼付 注意点: 印紙を貼付する際は、契約日や金額を確認し、正確な枚数を貼付することが重要です。 貼付後は、印紙に跨るように署名や社印を押すことで、不正使用を防ぐことができます。 まとめ タイの印紙税制度は、契約書や政府提出書類に適用される重要な税金です。主な対象契約には不動産賃貸借、株式譲渡、請負契約などがあり、取引金額に応じて税率が決まります。100万バーツ以上の取引は窓口納付、それ以外は切手タイプの印紙貼付が必要です。契約書作成時は言語選択や製本方法にも注意が必要です。適切な印紙税の取り扱いは、法的リスクの回避や円滑な事業運営に不可欠です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|グループ会社への貸付・借入のメリットとデメリット

(日本語) タイの関連会社への貸付や借入に関する重要な留意点をご紹介します。法的規制、税務上の注意点、メリット・デメリットなど、実務に役立つ情報を詳しく解説しています。タイでのビジネス展開に必要な知識を得られます。 タイにおける関連会社への貸付の概要 タイでは、関連会社間の資金融通において貸付という手段が広く活用されています。しかし、この方法を適切に実行するためには、法的規制や税務上の注意点を十分に理解しておく必要があります。ここでは、タイにおける関連会社への貸付に関する重要な情報をご紹介します。 2019年の法改正と貸付可能な企業 2019年6月の法律改正により、外国法人も国内関連会社への一部サービス業務の提供が可能となりました。この中には、事務所賃貸、管理、マーケティング等の他に貸付業務も含まれています。 この法改正は、タイでビジネスを展開する外国企業にとってメリットとなります。グループ会社間での資金融通がより容易になり、ビジネスの効率化や成長戦略の実現に寄与することが期待されています。 関連会社の要件 関連会社の要件は、貸付を行う際の重要な判断基準となり、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。: ・一方の法人の過半数の株主が、もう一方の法人の過半数の株主である場合 ・一方の法人の株式の25%以上をもつ株主が、もう一方の法人の株式の 25%以上を保有する場合 ・一方の法人が、もう一方の法人の株式25%以上を保有する場合 ・一方の法人のサイン権を持つ取締役の半数超が、もう一方の法人のサイン権を持つ取締役の半数超である タイでの関連会社貸付に関する留意点 タイで関連会社への貸付を行う際には、いくつかの重要な留意点があります。これらを適切に理解し、対応することで、法令遵守とスムーズな資金運用が可能となります。 事業目的の記載と貸付利率の設定 関連会社への貸付を行う際には、以下の点に注意が必要です: 定款への事業目的の記載 ・受取利息を受領する側は、定款に事業目的を記載する必要があります ・この記載により、貸付業務が会社の正式な事業として認められます 適切な貸付利率の設定 ・市場金利に見合った貸付利率を設定することが重要です ・不適切な利率設定は、寄付金と認定されるリスクがあります これらの点に留意することで、関連会社間の貸付が適切に行われ、税務上の問題を回避することができます。 印紙税の納付 契約締結後の手続きとして、印紙税の納付があります。印紙はオンラインもしくは窓口での支払い方法があります。適切な金額の納付を怠ると、後の税務調査で指摘を受けるリスクがありますので注意が必要です。 印紙税の適切な納付は、契約の有効性を確保し、将来的なトラブルを防ぐために非常に重要です。 源泉徴収税と特定事業税の申告 関連会社間の貸付には、以下の税務手続きが必要となります: 借入側の義務 ・利息支払時に源泉税を控除 ・源泉徴収税の申告を行う 貸付側の義務 ・利息収受後に特定事業税の申告が必要 これらの税務手続きを適切に行うことで、法令遵守と適正な納税が実現できます。 親会社からの借入と増資の比較 タイに子会社を持つ企業が資金調達を検討する際、親会社からの借入(親子ローン)と増資の2つの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。 増資のメリットとデメリット 増資は、子会社の資本を直接増やす方法です。以下のようなメリットとデメリットがあります: メリット: ・利息の支払が不要 ・返済と利息の支払が不要なため、手続が比較的簡便 デメリット: ・親会社への資金の還流は基本的に配当で行われる ・配当は源泉税10%が発生する ・子会社に利益が生じていない場合、配当による資金還流ができない 増資は長期的な資金調達に適していますが、柔軟性に欠ける面があります。 親子ローンのメリットとデメリット 親子ローンは、日系企業で一般的に実施されている資金調達方法で、親会社が子会社に資金を貸し付ける方法です。親子ローンには以下のようなメリットとデメリットがあります: メリット: ・子会社が赤字でも、返済条件に従って親会社への資金還流が可能 ・親子間のローンであるため、貸付条件を柔軟に設定できる デメリット: ・親子ローンの利率設定に関して、移転価格税制及び日本における寄付金課税のリスクがある 親子ローンは柔軟性が高く、短期的な資金需要に対応しやすいという特徴がありますが、利率設定には注意が必要です。 まとめ タイにおける関連会社への貸付や親子ローンは、適切に実施すれば効果的な資金調達・運用方法となります。法的規制、税務上の注意点、メリット・デメリットを十分に理解し、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。常に最新の法令や規制に注意を払い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|退職給付引当金の導入と実務上の留意点

(日本語) タイの労働法改正に伴う退職給付引当金の計上が求められています。計算方法や会計・税務上の取り扱い、実務上の注意点について詳しく解説します。タイでの事業運営に役立つ情報を提供します。 タイの退職金制度の概要 定年退職については就業規則で定められている会社もあり、または就業規則等の定めがない場合でも60歳以上の従業員はいつでも会社に対して定年退職を申し出ることができ、申し出をした日から30日経過後に定年退職したものと扱われます。 タイでは定年による雇用契約の終了も解雇の一種と考えられており、定年退職時に法定の解雇補償金を支払う必要があります。労働者保護法において、119日を超えて勤務した従業員を解雇する場合は原則解雇補償金を支払うことが定められており、定年退職した場合も解雇補償金の支給対象となりますので、会社に退職金制度が無い場合でも、将来の定年退職者の解雇保証金を算定して、退職給付引当金を計上する必要があります。 労働者保護法改正の影響 以前はタイ労働者保護法には定年退職に関する定めはありませんでしたが、2017年の法改正により定年退職にも解雇補償金の支払いを義務付けることが明記されました。 法改正により、定年退職者への解雇補償金支払いが必要となることから、企業は将来発生が見込まれる当該支出に対して、退職給付引当金を計上することが求められるようになりました。これは、将来発生する退職金に対する当期末の負債額を計算する方法で、将来の財務負担を適切に見積もり、財務諸表に反映させるためです。 法定退職金の計算方法 退職金の額は、従業員の勤続期間に応じて以下のように定められています: 120日以上1年未満:退職時の賃金の30日分 1年以上3年未満:退職時の賃金の90日分 3年以上6年未満:退職時の賃金の180日分 6年以上10年未満:退職時の賃金の240日分 10年以上20年未満:退職時の賃金の300日分 20年以上:退職時の賃金の400日分 月給者の場合、1日あたりの賃金は月給を30で除して計算します。 退職給付引当金の計算方法 退職給付引当金の計算は、将来支払うであろう退職金額を確率的に見積もり、現時点で負っている負債額を算出するプロセスです。 計算対象となる賃金と手当 退職金の計算対象となる賃金には、基本給のほか、毎月一定額で支給される手当も含まれます。ただし、以下のものは計算対象外とされています: 皆勤手当 残業代 社会保険上の算定基礎に含まれない賃金 これらは毎月一定額でない、または社会保険上の定期的な同額支給に該当しないため、一般的に解雇補償金の計算対象外と考えられています。 主な計算方法の種類 退職給付引当金の計算方法には、主に以下の3つのパターンがあります: 年金数理人への委託 年金数理人(アクチュアリー)に委託して年金数理計算を行う方法です。 特徴:計算結果の信頼性が高く、大手監査法人の監査でも基本的に利用可能 適用ケース:規模の大きい会社や、監査の水準が厳しい場合 コスト:委託費用がかかる 社内での計算 経理スタッフが社内で計算を行う方法です。 特徴:コストを抑えられるが、計算根拠の提示・説明が必要 適用ケース:中小規模の会社で、監査水準が厳しくなく、経理スタッフのレベルが一定以上ある場合 計算プロセス:従業員の勤続年数、年齢、給与額、離職率等の前提条件に基づき、確率的に退職金額を見積もる 監査人による計算 会計監査人が試算を行い、会社側が確認のうえ計上する方法です。 特徴:本来は認められないが、中小企業では多く見られる 適用ケース:社内で計算する体制がない会社 留意点:従業員数が少ない、勤続年数が短い、年齢が低い、早期離職率が高いなどの場合、引当金を計上しないケースもある 退職給付引当金の会計処理 退職給付引当金の会計処理は、初めて計上する場合と、その後の定期的な見直しで異なります。 初めて計上する場合の処理 これまで退職給付引当金を計上していなかった場合、初年度は全額を一括で計上します。この処理により、当期の費用が一時的に増加しますが、これは過去の期間に対応する引当金を一度に認識するためです。 定期的な見直しと調整 初回計上後は、毎年の決算時に数理計算を行い、負債の増加額または減少額を追加計上または取り崩します。この定期的な見直しにより、退職給付引当金の金額を適切に維持します。 退職給付引当金の税務上の取り扱い 退職給付引当金は、会計上と税務上で異なる取り扱いがされます。 費用計上時の税務処理 退職給付引当金の計上時の費用は、見積費用のため税務上の損金として認められません。法人税申告書(PND50)において、引当計上による費用を加算処理して調整する必要する必要があります。 実際の支払い時の税務処理 実際に定年退職があり解雇補償金を支給した場合: 会計上:既に引当金計上済みのため、追加の費用計上はありません 税務上:解雇補償金の支給時に費用として認められます そのため、実際に解雇補償金を支給した年度において、法人税申告書(PND50)上で減算処理をして調整する必要があります。 実務上の留意点 退職給付引当金の運用にあたっては、いくつかの実務上の留意点があります。 通常解雇時の取り扱い 退職給付引当金は通常解雇時の解雇補償金には充当できません。あくまで定年退職時の解雇補償金になるため、通常解雇時の保証金とは別の取り扱いになります。ただし、引当金計算時に人数が減っている等の条件の変更により引当金額が減少することはあります。 引当金の増減明細管理 減算処理の漏れを防ぐため、引当金の増減明細を作成することが望ましいです。この明細には以下の項目を含めます: 前期からの引当金繰越額 当期の引当金追加計上額 引当金の使用額 当期末残高 この明細を適切に管理することで、税務処理の正確性を確保し、監査にも対応しやすくなります。 まとめ タイでの退職給付引当金は、2017年の労働者保護法改正に伴い重要性が増しています。計算方法は企業規模や状況に応じて選択し、会計上は将来の負債を適切に反映させ、税務上は実際の支払い時に費用として認識します。実務では、通常解雇時の取り扱いや引当金の増減明細管理に注意が必要です。適切な引当金管理は、企業の財務健全性と法令遵守に不可欠です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|賞与引当金の会計・税務処理を徹底解説

(日本語) タイで事業を展開する日本企業向けに、賞与引当金の会計処理と税務上の取り扱いについて解説します。年度内支給と翌年度支給の違い、決算時の対応策、監査時のポイントなど、実務に役立つ情報をお届けします。 タイにおける賞与引当金の基本的な扱い タイで事業を展開する日本企業にとって、賞与引当金の扱いは重要な会計・税務上の課題です。日本とタイでは処理方法が異なる点があるため、適切な対応が求められます。 タイでは、賞与引当金を含む各種引当金の取り扱いについて、以下のような基本的なルールがあります: ・賞与引当金は、会計上は費用計上可能ですが、税務上は原則として実際に支払った時点で損金処理が可能です。 ・引当金を計上した時点では、税務上損金に含まれないため、税務申告時に調整が必要になります。 ・タイでは、毎月一定額をPL上に費用計上することが可能で、賞与支給月に一括でPLインパクトが出ないような処理が行えます。 これらの基本的な扱いを理解した上で、具体的な計上方法や税務上の取り扱いについて見ていきましょう。 年度内支給と翌年度支給の賞与引当金計上方法 賞与の支給時期によって、賞与引当金の計上方法や税務上の取り扱いが異なります。年度内支給と翌年度支給のそれぞれのケースについて詳しく説明します。 1.年度内支給の場合:  ・計上済みの引当金を取り崩します。  ・確定額で支給を行います。  ・税務上の問題は通常発生しません。 2.翌年度支給の場合:   ・決算時に確定額として計上できれば、税務上問題ありません。   ・ただし、決算時までに金額が確定しない場合は注意が必要です。 翌年度支給の場合でも、決算時に金額を確定させることができれば、税務上の問題を回避できます。しかし、金額が未確定の場合は、次の項目で説明する税務上の影響に注意が必要です。 決算時の金額確定状況による税務上の影響 決算時の賞与金額の確定状況は、税務上の取り扱いに大きな影響を与えます。以下のケースごとに、その影響と対応策を見ていきましょう。 1.金額が確定している場合:   ・確定額を未払金として計上します。   ・税務上の費用として認められ、損金算入が可能です。 2.金額が未確定の場合:   ・引当金のまま計上することになります。   ・未確定額であるため、税務上の費用として認められません。   ・損金不算入経費として扱われます。 金額が未確定の場合、税務上の不利益を被る可能性があります。しかし、タイの税務申告の特徴を活かした対応策があります。次の項目で、監査時の対応と税務申告上の処理について詳しく説明します。 監査時の対応策と税務申告上の処理 タイの税務申告は監査後の財務諸表がベースとなるという特徴があります。この特徴を活かした対応策と、税務申告上の処理について解説します。 1.監査時までに金額が確定する場合:   ・社内決算時は引当金のままでも、監査の際に引当金を取り崩します。   ・確定額を未払金として計上し直します。   ・これにより、税務申告調整を行うことが可能になります。 2.監査時点でも金額が未確定の場合:   ・未確定の費用として税務上は認められません。   ・損金不算入経費として扱う必要があります。 監査時の対応のポイント: ・可能な限り、監査までに賞与の金額を確定させることが重要です。 ・金額が確定していれば、監査時に確定額で計上し直すことで、税務上損金として認められます。 ・未確定の場合は、税務上の不利益を最小限に抑えるため、できるだけ早期に金額を確定させる努力が必要です。 これらの対応策を適切に実施することで、税務リスクを軽減し、適正な会計・税務処理を行うことができます。 まとめ タイにおける賞与引当金の会計・税務処理は、日本とは異なる点に注意が必要です。年度内支給か翌年度支給か、決算時に金額が確定しているかどうかによって、適切な対応が求められます。特に、監査時までに金額を確定させることが、税務上有利な取り扱いを受けるポイントとなります。これらの知識を活用し、適切な賞与引当金の処理を行うことで、タイでの事業運営をより効率的に進めることができるでしょう。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|貸倒引当金の会計・税務上の取り扱いガイド

(日本語) タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の会計・税務上の取り扱いについて詳しく解説します。長期滞留売掛金の処理方法や、税務上認められる条件など、実務に役立つ情報をお届けします。 タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の基本 タイでビジネスを展開する企業にとって、貸倒引当金と貸倒損失の適切な処理は会計と税務の両面で重要な課題になります。ここでは、タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の基本的な概念について説明します。 貸倒引当金とは 貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸倒損失に備えて、前もって計上する引当金のことです。売掛金や貸付金など、債権の回収不能リスクに対して設定されます。会計上は計上できる一方で、税務上は損金として認められません。 貸倒引当金の主な特徴: 回収不能が未確定の段階で計上 貸倒の確率を見積もって段階的に引当計上 会計監査人との協議のもとで処理 貸倒損失とは 貸倒損失は、債権の回収不能が確定した時点で計上される損失のことです。貸倒引当金と異なり、実際に回収できないことが明らかになった時点で全額を損失として計上します。 貸倒損失の主な特徴: 回収不能が確定した時点で計上 全額を一度に損失計上 損金にするには税務上の要件を満たす必要がある 貸倒引当金の会計処理と税務上の取り扱い 貸倒引当金の処理は、会計上と税務上で扱いが異なります。ここでは、それぞれの取り扱いについて詳しく解説します。 会計上、税務上の処理方法 会計上、貸倒引当金は債権の回収不能のリスクが高まった場合、貸倒引当金を費用計上することが可能です。貸倒引当金を計上することにより、将来の損失に備えることができ、財務諸表がより実態を反映したものとなります。 会計上の処理とは異なり、税務上はまだ回収できないことが確定しているわけではないため、税務上の損金にすることはできません。そのため、税務申告では損金不算入費用として処理し、課税所得に加算する処理が必要になります。 つまり、会計上で費用計上した貸倒引当金は、税務上では損金にすることができず、税務申告で課税所得に加算されることになります。これにより、会計上の利益と税務上の課税所得に差異が生じることになります。 貸倒損失の会計処理と税務上の取り扱い 貸倒損失は、債権の回収不能が確定した時点で計上される実際の損失です。会計処理と税務上の取り扱いについて、詳しく見ていきましょう。 会計上、税務上の処理方法 会計上、貸倒損失は回収不能が確定した時点で全額を貸倒損失として計上し、損益計算書上で費用として認識します。この処理により、実際に発生した損失を適切に財務諸表に反映させることができます。 税務上は、一定の要件を満たす場合のみ損金として認められます。要件を満たさない場合は損金不算入費用として処理されることになります。また、債権の金額によって認められる条件が異なります。 税務上認められるためには、債権の金額に応じて定められた条件を満たす必要があり、これらの条件を満たさない場合、会計上は費用計上されても税務上は損金として認められず、課税所得の計算上で調整が必要となります。 税務上認められる貸倒損失の条件 タイの税法では、債権の金額に応じて貸倒損失が認められる条件が詳細に規定されています。ここでは、金額別の条件について解説します。 2,000,000バーツ超の債権 2,000,000バーツを超える債権の場合、以下のいずれかの条件を満たす必要があります: 1.支払請求を行い、適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、以下の理由で支払いがなされていない状態:  ・債務者の死亡または失踪宣告があり、支払いに充てる財産がない  ・民事訴訟を提起し、執行官による強制執行が行われたが、債務者に十分な財産がない 2.破産手続きを開始し、和解が成立または破産宣告がなされ、残余財産の分配が行われたか、裁判所が訴訟終了を命じた 3.債務者が事業を停止し、優先債権者の債権が債務者の財産を上回っている 200,000バーツ超~2,000,000バーツ以下の債権 200,000バーツを超え2,000,000バーツ以下の債権の場合、以下のいずれかの条件を満たす必要があります: 1.支払請求を行い、適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、以下の理由で支払いがなされていない状態: ・債務者の死亡または失踪宣告があり、支払いに充てる財産がない ・債務者が事業を停止し、先取特権のある債権者の債権が債務者の財産を上回っている 2.債権回収の民事訴訟を提起し、裁判所が訴えを受理した 3.破産宣告の申請を行い、裁判所が申請を受理した(清算人による申し立ても含む) 注意点: 訴訟や申請が外国で行われた場合、その国の法務当局による証拠書類およびタイ外務省の規定に沿った翻訳証明が必要 該当年度の期末日から30日以内に貸倒償却の社内承認を行う必要がある 200,000バーツ以下の債権 200,000バーツ以下の債権の場合、以下の両方の条件を満たす必要があります: 適切な債権回収策を講じたにもかかわらず、支払いがなされていない 訴訟を提起しても、回収見込額以上の費用がかかると予想される これらの条件は、歳入局のガイドラインに基づいています。企業は、これらの条件を満たしていることを適切に文書化し、証明できるようにしておく必要があります。 まとめ タイにおける貸倒引当金と貸倒損失の処理は、会計と税務の両面で重要です。会計上は将来の損失に備えて貸倒引当金を計上し、実際に回収不能となった時点で貸倒損失を計上します。一方、税務上は厳格な条件が設けられており、これらを満たす必要があります。適切な処理を行うためには、タイの法規制を十分に理解し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|2025年ショッピング減税で最大5万バーツ控除

(日本語) 025年1月16日から2月28日まで、タイで個人所得税の控除が可能なショッピング減税が実施されます。最大50,000バーツの課税所得減額が可能で、経済刺激策として注目されています。対象商品や控除条件など、詳細をご紹介します。 2025年タイショッピング減税の概要 タイ政府は経済刺激策の一環として、2025年も個人所得税の控除が可能なショッピング減税を実施することになりました。この施策は、商品やサービスの消費を促進し、経済を活性化させることを目的としています。 購入対象期間と控除額 ショッピング減税の購入対象期間は、2025年1月16日から2月28日までの約1か月半で、最大50,000バーツの控除が可能となります。 控除対象となる商品とサービス ショッピング減税の対象となる商品やサービスは、大きく二つのカテゴリーに分けられます。 一般的な物品とサービス 最大30,000バーツまでの控除が可能な一般的な物品とサービス支払いが対象となります。 コミュニティ企業とOTOP商品 地域コミュニティの経済支援を目的として、コミュニティ企業やOTOP(一村一品運動)商品の購入に対しては、最大20,000バーツまでの控除が認められています。 対象外となる商品とサービス ただし、以下の商品やサービスは控除の対象外となりますので注意が必要です。 アルコール飲料(ビール、ワイン等) タバコ 自動車、オートバイ、船舶 ガソリンや車両用燃料 公共料金(水道、電気、電話、インターネット) 宿泊費 保険料 ショッピング減税の利用方法 E-Tax InvoiceとE-Receiptの重要性 ショッピング減税を利用するためには、商品やサービスを購入する際に、E-Tax InvoiceやE-Receiptを受け取る必要があります。これらの電子文書には、購入者の氏名やTAX ID番号等の納税者情報が記載されている必要があります。 個人情報の準備 商品やサービスの購入時に、納税者情報の記載や入力を求められることが多いため、ショッピング減税のための買い物に行く際は、個人情報の控えを持参することをおすすめします。これにより、スムーズに手続きを進めることができます。 ショッピング減税のメリットと注意点 消費者にとってのメリット この減税措置により、消費者は最大50,000バーツの課税所得減額が可能となります。これは、2026年1月から3月に行われる2025年度の個人所得税確定申告時に控除することができます。実質的な値引きとして機能するため、消費者の購買意欲を刺激する効果が期待されます。 企業にとってのメリット 小売業やサービス業を営む企業にとっては、この期間中に売上増加が見込めるメリットがあります。特に、OTOP商品や地域コミュニティー事業体の商品が対象となっているため、中小企業や地域経済の活性化にも寄与すると考えられます。 利用時の注意点 ショッピング減税を利用する際は、以下の点に注意が必要です。 対象期間を確認する:2025年1月16日から2月28日までの購入が対象となります。 対象商品を確認する:アルコール、タバコ、自動車など、対象外の商品があります。 適切な証憑を受け取る:E-Tax InvoiceやE-Receiptに、自分の氏名やTAX ID番号等の情報が正しく記載されているか確認しましょう。 控除上限を把握する:一般消費財で30,000バーツ、コミュニティ企業やOTOP商品で20,000バーツの上限があります。 確定申告時の手続きを忘れずに:2026年の確定申告時に、この控除を申請する必要があります。 まとめ 2025年のタイショッピング減税は、個人消費を促進し経済を刺激する重要な施策です。最大50,000バーツの課税所得減額が可能となり、消費者と企業の双方にメリットをもたらします。適切な利用のためには、対象期間や商品、必要な証憑などを十分に理解することが大切です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|納税者番号とは何か、注意点を解説

(日本語) 納税者番号がタイ国民カード番号や会社登記番号に変更されます。2013年1月までの猶予期間や新旧番号の使用方法、税務手続きへの影響など、重要な情報をまとめてご紹介します。 納税者番号の概要 タイ国内で設立された法人は、会社設立登記時に商務省から13桁の番号が発行されます。これが納税者番号(Tax ID)と呼ばれるものになります。 以前は歳入国が発行した納税者番号を使用していたのですが、タイ政府は2012年2月1日、納税者番号の変更に関する新たな規定を公表し、個人の場合はタイ国民カード番号を使用し、法人は商務省から発行された会社登記番号を使用することになりました。 外国人の場合は、最初に納税する前に税務署で納税者番号を取得する必要があります。この番号は個人所得税の申告等に必要になるため、タイで就労する場合や申告する所得がある場合は納税者番号を取得する必要があります。 影響を受ける税金の種類 新納税者番号の変更は、以下の税金に関する手続きに反映させる必要があります: 所得税 源泉税 付加価値税(VAT) これらの税金に関する申告や納付において、納税者番号を使用することが求められます。 書類や請求書への反映 企業は、以下のような各種書類や取引関連文書に新しい納税者番号を反映させる必要があります: 請求書 領収書、タックスインボイス 税務申告書 源泉徴収票 その他の公式文書 請求書や領収書にも間違いなく記載する必要があり、取引相手が個人や法人でも変わりません。税務署類や各種公式文書などにも必要で、記載間違いがあると正式な税務署類としては認められませんので注意が必要です。 まとめ タイの納税者番号制度は、個人・法人双方に影響がある重要な制度になります。記載必要な書類や申告等、正確に間違いなく対応することが重要です。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

タイ|配当の決議から支払いまでの法的要件と実務

(日本語) タイの配当可能限度額について、法的要件や実務上の注意点を解説します。準備金の積立義務や源泉徴収の扱い、配当決議から支払いまでの流れなど、タイでの配当に関する重要な情報をまとめています。 タイの配当に関する法的枠組み タイにおける配当の実施には、いくつかの法的要件を満たす必要があります。これらの要件を理解し、適切に対応することで、法令順守と円滑な配当実施が可能となります。 配当決議の方法 タイの非公開会社では、配当の実施に際して株主総会の決議が必要となります。ただし、臨時配当の場合には取締役会の決議でも可能です。この決議方法の柔軟性により、会社の状況に応じた機動的な利益還元が可能となっています。 配当可能額の計算基準 タイでは、配当時点で利益剰余金がプラスの状態であれば、原則として配当が可能です。これは、当期が赤字であっても、累積の繰越利益剰余金残高がプラスであれば配当が可能であることを意味します。この規定により、一時的な業績悪化時でも、長期的な財務状況に基づいた配当政策の実施が可能となっています。 法定準備金の積立要件 タイ民商法典1202条に基づき、配当を行う際には法定準備金の積立が必要です。具体的には、以下の要件を満たすまで、配当の都度、利益の1/20(5%)を準備金として積み立てる必要があります。 登録資本の1/10の金額に達するまで 付属定款で定められた額に達するまで この法定準備金の積立は、会社の財務健全性を確保するための重要な要件となっています。 配当可能限度額の算出方法 配当可能限度額を正確に算出することは、適切な配当政策の実施と法令順守の両面で重要です。以下では、具体的な算出方法と注意点について説明します。 利益剰余金と現預金残高の確認 配当可能限度額の算出には、以下のステップが必要です: 決算日時点の利益剰余金の確認 配当実施時点での利益剰余金の確認 配当金額確定および現預金残高と今後の資金繰りの考慮 特に、実際の配当は現預金から行うため、単に会計上の利益剰余金だけでなく、実際の手元資金の状況も重要な判断要素となります。 準備金積立額の考慮 配当可能限度額を算出する際には、法定準備金の積立要件を考慮する必要があります。準備金へ繰り入れられるべき金額は、配当可能な金額から除外しなければなりません。 実務上、「利益」の定義が明確でないため、以下のいずれかの5%を準備金として積み立てるケースが多く見られます: 当期利益の5% 配当額の5% 未処分利益の5% 保守的なアプローチとして、資本金の10%を先に積み立てる企業もあります。 具体的な計算例 配当可能限度額の計算例を、以下の条件で示します: 資本金:1,000万THB(準備金積立要求上限額:100万THB) 利益剰余金:84万THB 準備金未積立の場合: 配当可能額:80万THB 準備金積立額:4万THB 準備金が100万THB(資本金の10%)積立済みの場合: 配当可能額:84万THB(全額配当可能) 準備金積立額:0THB 準備金が98万THB積立済みの場合: 配当可能額:82万THB 準備金積立額:2万THB これらの例から、準備金の積立状況が配当可能額に大きく影響することがわかります。 配当に関する税務上の取り扱い タイにおける配当の税務上の取り扱いは、配当を行う企業と受け取る株主の双方に影響を与えます。適切な税務処理を行うことで、効率的な利益還元が可能となります。 源泉徴収の適用 タイでは、配当に対して原則10%の源泉税が適用されます。例えば、配当額が100万THBの場合、10万THBをタイ歳入局へ申告・納税し、残りの90万THBを株主へ送金することになります。 ただし、以下の条件をすべて満たす場合には、配当に係る所得が免税となり、源泉税控除は必要ありません: 配当受領者がタイ国内の法人である 配当権利確定の前後6カ月間(前3か月、後3か月)、25%以上の議決権を保有 配当を受ける法人と支払う法人で相互に株式持ち合いをしていないこと 免税要件と益金不算入 配当を受け取る側の税務処理は、免税要件の適用有無により異なります: 免税要件に該当する国内法人株主: 受取配当金は法人税の確定申告において全額が益金不算入となります。 収益としてなかったものとして、所得を減じる調整(減算)を行います。 免税要件に該当しない国内法人株主: 受取配当金の50%のみが益金不算入となります。 源泉徴収された税額は、法人税から控除可能です。 個人株主(参考): 受取配当金は全額が課税対象となります。 源泉徴収された税額は、確定申告時に控除可能です。 これらの税務上の取り扱いを理解し、適切に対応することで、効率的な資金運用と適正な税務申告が可能となります。 配当実行時の実務上の注意点 配当の実行にあたっては、法的要件を満たすだけでなく、実務上のさまざまな注意点があります。これらを適切に処理することで、円滑な配当の実施が可能となります。 支払期限の遵守 タイでは、配当の支払いに関して厳格な期限が設けられています。具体的には、以下の期限内に配当の支払いを完了する必要があります: 株主総会決議の場合:決議から1か月以内 中間配当の場合(臨時株主総会または取締役会決議):決議から1か月以内 この期限を遵守することで、法令順守と株主への迅速な利益還元が実現できます。 銀行への提出書類 配当金の送金を行う際、取り次ぎ商業銀行によって要求される書類が異なる場合がありますが、一般的に以下の資料の提出を求められることがあります: 株主総会または取締役決議の配当決議議事録 株主名簿 登記簿謄本 その他銀行が求める書類 これらの書類を事前に準備しておくことで、円滑な送金手続きが可能となります。また、銀行によっては追加の書類や説明を求められる場合もあるため、余裕を持った対応が重要です。 まとめ タイにおける配当可能限度額の計算と実行には、法的要件の遵守と実務上の注意点への対応が求められます。利益剰余金の確認、準備金の積立、税務上の取り扱い、支払期限の遵守など、多岐にわたる事項に注意を払う必要があります。適切な対応により、法令順守と効率的な利益還元の両立が可能となります。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

デビットノートとクレジットノートの重要性と発行条件

(日本語) タイのデビットノートとクレジットノートについて、発行条件や記載事項、税務上の重要性を詳しく解説します。VATの申告修正に欠かせない書類の正しい使い方や注意点をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 タックスインボイス タックスインボイス(Tax Invoice)は、タイでのビジネス取引において非常に重要な文書です。適切に記載されたタックスインボイスは、VAT(付加価値税)の税額控除の根拠となるため、その記載内容と訂正方法について正しく理解しておく必要があります。 タックスインボイスの必須記載事項 タイの歳入局法では、タックスインボイスに記載すべき項目が明確に定められています。以下の項目が不備なく記載されていない場合、VAT税額控除の対象外となります: わかりやすい位置に「タックスインボイス」と記載 登録事業者の名称、住所、納税者番号 物品またはサービスの購入者の名称、住所、事業所(本店/支店)、納税者番号 タックスインボイスのシリアルナンバー、および冊番号(もしあれば) 物品・サービスの詳細(名前、種類、数量、金額等) 物品・サービスの価格と明確に区別されたVAT税額 タックスインボイスの発行日 歳入局長が定めるその他事項 これらの項目を正確に記載することで、取引の透明性が確保され、税務申告の際のトラブルを回避することができます。 デビットノートとクレジットノートの概要 デビットノートとクレジットノートとは デビットノートとクレジットノートは、タイの商取引において重要な役割を果たす文書です。これらは、商品の金額やサービス料に変更が生じた場合に発行され、付加価値税(VAT)の申告を修正する際にも使用されます。 デビットノートは債権が増加した場合に発行され、一方でクレジットノートは債権が減少した場合に発行されます。これらの文書は、取引の透明性を確保し、正確な税務申告を行うために不可欠なツールとなっています。 発行が必要となるケース デビットノートやクレジットノートの発行が必要となるケースは、以下のような状況が考えられます: 商品の数量が当初の発注量より増加し、金額が上がる場合 納品された商品に不良品があり、金額が下がる場合 不良品を返品する場合 商品の品質問題により、売買契約をキャンセルする場合 その他、歳入局長が認めた理由がある場合 これらの状況において、適切にデビットノートやクレジットノートを発行することで、正確な取引記録を維持し、税務上の問題を回避することができます。 デビットノートとクレジットノートの発行条件 一度発行したタックスインボイスの訂正は原則として認められていません。しかし、デビットノート、クレジットノートを発行することにより修正することが可能です。デビットノートとクレジットノートを発行するには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件は、タイの税法に基づいて定められており、適切な税務管理を確保するために重要です。 VAT登録 デビットノートやクレジットノートはVATの修正にも使用されるため、そのためには発行する会社はVAT登録をしている必要があります。VAT登録は、タイでビジネスを行う上で重要な手続の一つであり、一定の売上高を超える企業に義務付けられています。 VAT登録会社であることは、税務当局に対して正式に認識された事業者であることを意味し、適切な税務管理の基盤となります。 Tax Invoiceの発行が前提 デビットノートやクレジットノートを発行して売買金額やVATを調整するためには、当初の売買時にTax Invoiceを発行していることが前提条件となります。Tax Invoiceは、取引の詳細を記録し、VATの計算基礎となる重要な文書です。 Tax Invoiceが適切に発行されていない場合、VAT計算の書類として使用することができません。このため、日々の取引においてTax Invoiceの正確な発行を心がけることが重要です。 商品金額やサービス料の変更 デビットノートやクレジットノートは、Tax Invoiceを発行した後に、商品金額やサービス料、およびそれに伴うVATに変更が生じた場合に発行されます。この変更は、取引の実態に即したものでなければなりません。 例えば、数量の増減、価格の修正、返品、キャンセルなどの理由により、当初のTax Invoiceの内容に変更が必要となった場合に、これらの文書が使用されます。 歳入局が認める発行理由 タイの歳入局は、デビットノートとクレジットノートの発行に関して、特定の理由を認めています。これらの理由に該当する場合は、正式にデビットノートやクレジットノートを発行することができます。 商品量の増加による金額上昇 発注した商品の数量が当初の予定より増加し、それに伴って金額が上がる場合、デビットノートの発行が認められます。これは、追加の商品供給に対する適切な課税を確保するためです。 例えば、100個の商品を注文したが、実際には120個納品された場合、追加の20個分についてデビットノートを発行することができます。 不良品による金額減少 納品された商品の中に不良品が含まれており、そのために金額が下がる場合、クレジットノートの発行が認められます。これは、実際に使用可能な商品の価値に基づいて適切に課税するためです。 不良品の発見は、納品時の検品や使用開始後の不具合の発見など、様々なタイミングで生じる可能性があります。そのような場合、速やかにクレジットノートを発行することが重要です。 返品や契約キャンセルの場合 商品が不良品であるために返品する場合や、商品の品質問題により売買契約をキャンセルする場合も、クレジットノートの発行が認められます。これらのケースでは、取引自体が無効となるか、大幅に変更されるため、税務上の調整が必要となります。 返品やキャンセルの手続きを行う際は、適切な文書化と共に、速やかにクレジットノートを発行することが求められます。これにより、正確な売上高の報告とVATの納付が可能となります。 デビットノートとクレジットノートの記載事項 デビットノートとクレジットノートを発行する際には、特定の情報を必ず記載する必要があります。これらの記載事項は、取引の透明性を確保し、税務当局による確認を容易にするために重要です。 必須記載情報 デビットノートとクレジットノートには、以下の情報を必ず記載しなければなりません: 「デビットノート」または「クレジットノート」という名称 自社および取引先の社名、住所、Tax ID デビットノートまたはクレジットノートの発行日 デビットノートまたはクレジットノートの発行理由 当初の売買時に発行したTax Invoiceの番号および以下の情報 a. Tax Invoiceに記載される金額 b. 変更する金額およびその差額 これらの情報を正確に記載することで、取引の変更内容を明確に示し、税務申告の際の根拠資料として使用することができます。 特に重要な記載事項 上記の必須記載事項の中でも、特に重要なのは以下の2点です: 当初のTax Invoiceの情報と変更内容 デビットノートまたはクレジットノート発行の理由 これらの情報は、取引の変更が適切な理由に基づいて行われたことを示す重要な証拠となります。税務調査の際にも、これらの情報が詳細に確認されることがあるため、正確かつ明確な記載が求められます。 まとめ タイでのビジネス展開において、デビットノートとクレジットノートの適切な発行と管理は非常に重要です。これらの文書は、取引内容の変更を正確に記録し、VAT申告の修正に不可欠な役割を果たします。発行条件や記載事項を理解し、歳入局が認める発行理由に基づいて適切に使用することで、税務上のリスクを軽減し、透明性の高い経営を行うことができます。また、タックスインボイスの正確な記載と適切な訂正手続きを遵守することで、VAT税額控除の対象から外れるリスクを回避できます。これらの文書の重要性を認識し、正確な運用を心がけることが、タイでの円滑なビジネス運営につながります。 みつきタイでは、新規進出から会計税務、労務、M&Aまでを一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社(みつき税理士法人)と連携し、バンコクに常駐するCPAがお客様の悩みや課題に耳を傾け、最適な解決策をご提案しております。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。