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タイBOI(投資委員会)とは?メリット・申請条件・手続の流れ

(日本語)

タイ投資委員会(BOI)とは、タイ政府が国内外からの投資を奨励するために設置した機関です。この記事では、BOI制度の概要から申請手続、取得後の義務まで、中小企業経営者や現地法人責任者が知っておくべきポイントを分かりやすく解説し、BOI取得のメリットや自社事業が対象となるか、申請手続は複雑かといった疑問にお答えします。

タイBOI(投資委員会)とは?メリット・申請条件・手続の流れ

BOI制度の概要と目的

BOI(Board of Investment)は、タイへの投資を促進するために1977年に設置されたタイ首相府直轄の組織です。BOIは、国の産業に高度な付加価値をもたらす事業に対し投資奨励制度を設けることで、進出企業に厚い恩典を付与しています。

BOIの目的

近年のBOIは、「中所得国の罠」の克服および持続的成長の実現を図るための恩典を重要視しています。新たな成長エンジンとなる次世代産業や、既存産業の強化を目指す事業を特に奨励しています。

BOIの恩典

BOIの投資奨励制度では、税制上の恩典と非税制上の恩典が提供されます。これらの恩典は、企業の投資活動やタイ経済への貢献度に応じて付与されます。

税制恩典

税制上の恩典は、BOI奨励事業の大きな魅力の一つです。特定の条件を満たすことで、法人税の免除や輸入関税の減免などが受けられます。

法人税免除・減税

BOIにより一定期間の免税恩典を与えられた会社は、法人税が免除されます。免税期間は業種によって異なり、最大合計13年間、減免税の恩典を受けることが可能です。

BOI事業が免税対象期間において赤字となった場合、その欠損金は免税期間の終了日から5年間繰り越すことが可能です。BOI事業とNon-BOI事業を並行して行っている場合、BOI事業同士で欠損金を相殺した後に残った欠損金は、Non-BOI事業の利益と相殺し、法人税を減額することができます。

輸入機械・原材料の関税免除

BOI奨励企業は、輸出製造用の原材料・資材および生産用機械設備の輸入関税が免除される場合があります。この恩典を受けるためには、所定の手続が必要です。輸入関税の減免措置を受ける際には、BOIからの認可書原本と輸入申告書類との照合が行われるため、記載内容に注意が必要です。

非税制恩典

税制上の恩典に加え、BOIは事業運営を支援するための非税制上の恩典も提供しています。

外国人就労許可

BOI企業の場合、外国人雇用時の資本金やタイ人雇用に関する一般的な要件が適用されません。事業計画に基づいた人員計画に沿って必要な人数の外国人雇用が可能となります。ただし、奨励証書の内容によっては特定の専門職の人数などの条件が付く場合があります。

土地所有権

タイの土地法では、外国人(外国法人)は土地の所有は認められておりませんが、BOI奨励企業は土地の取得が可能となっております。

BOI奨励対象業種

BOIの投資奨励は、タイ政府が重要視する特定の業種や活動に焦点が当てられています。奨励業種は10の区分に分類され、タイの優先度や重要度が高い事業に厚い恩典が与えられます。

奨励業種の分類

BOIは、国の成長段階に応じて奨励業種リストを更新しています。近年は、労働集約型産業から高次の産業への移行を目指し、高付加価値分野や未来産業などが重点的に奨励されています。具体的には、次世代自動車、スマートエレクトロニクス、ロボット産業、航空・物流、バイオ関連産業などが挙げられます。自社の事業がBOIの対象となるかについては、BOIの最新の奨励業種リストを確認する必要があります。

BOI申請資格と評価基準

BOIの投資奨励恩典を受けるためには、いくつかの申請資格と評価基準を満たす必要があります。BOIは、投資の質を重視し、タイ経済への貢献度などを評価します。

申請資格

タイで投資を行う企業がBOI奨励を申請できます。

主な評価基準

BOIは、申請されたプロジェクトを様々な側面から評価します。主な評価基準としては、投資規模、技術レベル、研究開発活動の有無、環境への配慮、人材育成計画などが挙げられます。特に、投資金額(土地代および運転資金を除く)が1,000万バーツ以上のプロジェクトについては、操業開始後2年以内にISO9000やISO14000などの国際規格の取得が義務付けられており、未取得の場合は法人税免除恩典が1年間取り消されることになります。

BOI申請手続

BOIの投資奨励を申請する手続は、いくつかのステップを経て進められます。計画の初期段階から準備を進めることが重要です。

申請書類

BOI申請には、会社関係書類、製品カタログ、事業計画、投資詳細など、多岐にわたる書類の準備が必要です。これらの書類はタイ語または英語で作成するのが一般的です。

申請プロセスのステップ

BOI申請は、まずBOIに申請書類を提出することから始まります。その後、BOIの担当官による審査が行われ、必要に応じて追加情報の提出や面談が求められる場合があります。審査プロセスを経て、BOIからの承認が得られれば、投資奨励証書が発行されます。認可までに要する期間はプロジェクトの規模などによって異なりますが、ある程度の期間を見込んでおく必要があります。

BOI取得後の義務と報告事項

BOIの投資奨励証書を取得した後も、企業にはいくつかの義務と報告事項があります。奨励証書に記載された条件を遵守し、定期的な報告を行う必要があります。

プロジェクトの進捗状況、プロジェクトや投資の実行状況などの状況をBOIに報告する義務があります。また、奨励証書に記載された条件を満たしているかどうかが定期的に確認されます。これらの義務を怠ると、恩典が取り消される可能性もあります。

BOIコンサルタント活用のメリットと選び方

BOI申請手続は専門的な知識を要し、必要な書類も多岐にわたります。そのため、専門家であるBOIコンサルタントの活用が検討されます。

コンサルタント活用のメリット

BOIコンサルタントは、BOI制度や最新の動向、申請手続に精通しています。コンサルタントに依頼することで、複雑な申請書類の作成支援、申請プロセスの円滑化、BOI担当官との交渉サポートなどが受けられます。これにより、申請の成功率を高め、手続にかかる時間や労力を削減できるメリットがあります。

コンサルタントの選び方

BOIコンサルタントを選ぶ際は、BOI申請の実績、専門知識の深さ、担当官とのネットワーク、自社の業種に関する知見などを考慮することが重要です。複数のコンサルタントから情報を収集し、自社の状況に合ったパートナーを選ぶことが推奨されます。

タイ BOI 申請に関するよくあるご質問(FAQ)

タイBOI申請に関して、想定される読者からのよくある疑問とその回答を以下にまとめます。

Q:BOIを取得するとどんなメリットがあるのか?

BOIを取得すると、主に法人税の免除や減税、機械・原材料輸入関税の減免といった税制上の大きなメリットが得られます。また、外国人就労許可の取得が容易になる、事業に必要な土地の所有が認められるなど、事業運営を円滑に進めるための非税制上の恩典も多数あります。これらの恩典により、タイでの事業開始・拡大にかかるコストを削減し、競争力を高めることが期待できます。

Q:自社の事業はBOIの対象になるのか?

BOIの投資奨励対象となる業種は、タイ政府の経済政策に基づき定期的に見直されます。製造業、サービス業、農業など幅広い分野が対象となり得ますが、特に高付加価値産業や未来産業が重点的に奨励されています。自社の事業が最新の奨励業種リストに含まれているか、また申請に必要な資格要件を満たしているかを確認する必要があります。BOIの公式ウェブサイトを参照するか、専門家への相談をお勧めします。

Q:BOIの申請手続きは複雑なのか?自分たちでもできるか?

BOIの申請手続は、提出書類が多く専門的な知識が必要なため、一般的には複雑であると言えます。事業計画や投資の詳細、技術内容などを具体的に記述した書類を作成し、審査基準を満たすように準備する必要があります。自社だけで申請することも可能ですが、BOI担当官とのやり取りや基準への適合性を確保するためには、BOI申請の実績がある専門家(コンサルタントや弁護士など)に依頼することが一般的で、成功率を高め、手続をスムーズに進める上で有効な手段となります。

Q:BOI取得までにどれくらいの期間がかかるのか?

BOI取得にかかる期間は、プロジェクトの規模や内容、提出書類の準備状況、BOIの審査状況によって異なります。小規模なプロジェクトであれば数ヶ月で完了する可能性もありますが、大規模なプロジェクトや、追加情報の提出、BOI担当官との詳細な協議が必要な場合は、それ以上の期間を要することもあります。機械設備の輸入税減免など、一部の手続には2ヶ月程度を見込んでおく必要があります。早期に準備を開始することが重要です。

Q:BOIの条件を満たせない場合はどうすれば良いか?

BOIの申請資格や評価基準を満たせない場合でも、タイでの事業活動は可能です。ただし、BOIの税制・非税制恩典は受けられません。その場合は、タイの一般的な税制(法人税率20%、SME軽減税率など)や外資規制(外国人事業法など)に従って事業を行うことになります。外国人雇用に関しても、BOI以外の企業に適用される資本金やタイ人雇用などの要件を満たす必要があります。事業の性質によっては、BOI以外の投資優遇制度や、外国企業向けのライセンス取得などの選択肢も考えられます。

まとめ

タイBOI(投資委員会)制度は、タイへの投資を促進し、国の経済発展に貢献することを目的としています。BOI認定を受けることで、法人税免除や輸入関税減免といった税制上の恩典や、外国人雇用や土地所有に関する非税制上の恩典など、様々なメリットを享受することができます。申請手続は専門的な知識が必要となるため、専門家であるBOIコンサルタントの活用が有効です。

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