タイでの資金調達方法として借入金を検討している企業向けに、主な規制と注意点を解説します。BOI申請企業や外国法人に適用される規制、税法上の取り扱いなど、重要なポイントをまとめています。
目次
タイにおける借入金の位置づけと規制の概要
タイの多くの日系企業は現地の金融機関から資金調達を行うにはハードルが高く、資金繰りに苦慮するケースがあります。このような状況下で、資金を調達する主な方法として、資本金の増資と借入金の2つが挙げられます。
借入金は、増資と比較して以下のようなメリットがあります:
- 支払利息が損金算入できる ・親子ローンなどの形で資金調達が可能
しかし、借入金には一定の規制が設けられています。タイでは主に以下の3つの観点から借入金の上限額を考慮する必要があります:
- BOIによる規制
- 外国人事業法による規制
- 歳入法(税法)による規制
これらの規制は、企業の形態や出資構成によって適用される内容が異なります。以下、各規制の詳細について解説していきます。
BOI申請企業に適用される借入金規制
タイ投資委員会(BOI)の投資奨励を受けている企業には、特別な借入金規制が適用されます。
BOI申請企業の借入金上限
BOI申請企業は、以下の条件を満たす必要があります:
- 負債額(借入額)が資本金の3倍以下
この規制は、BOI奨励企業の財務健全性を確保し、過度な借入を防ぐことを目的としています。
規制の対象となる企業
BOI奨励を受けているすべての企業が対象となります。業種や出資構成に関わらず、この規制を遵守する必要があります。
外国法人に対する借入金規制
タイでは、外国人事業法及び関連法規により、外国法人に対して特別な借入金規制が設けられています。
外国法人の定義と借入金上限
外国法人の定義: ・外国法人 ・外国籍者による出資が51%以上の法人
借入金上限: ・負債額(借入額)が資本金の7倍以下
この規制は、外国資本による過度な影響力を抑制し、タイ国内の経済安定性を維持することを目的としています。
規制の適用範囲と注意点
この規制は、タイ国内で事業を行うすべての外国法人に適用されます。ただし、BOI奨励企業の場合は、より厳しいBOIの規制が優先して適用されることに注意が必要です。
タイの税法における借入金の取り扱い
タイの歳入法(税法)では、借入金に関して特別な規制は設けられていません。
過小資本税制の不在
タイには、過小資本税制が存在しません。過小資本税制とは、一定基準を超える支払利息を損金不算入とする制度です。
税務上の留意点
借入金にかかる支払利息は、原則として全額損金算入が可能です。これにより、親子ローンなどの形での資金調達が税務上有利となる場合があります。
ただし、税務調査の際に、借入の経済合理性や利率の適正性について質問を受ける可能性があるため、借入の目的や条件を適切に文書化しておくことが重要です。また、日本から親子ローンを受ける場合、市場金利よりも低い利率を設定した場合、日本の税務当局に利息分を寄付金とされる可能性もありますので、日本の税理士とも相談が必要です。
借入金規制が適用されないケースと実例
一定の条件を満たす企業では、借入金に対する規制がほとんど適用されないケースがあります。
規制が適用されない企業の特徴
以下の条件を全て満たす企業は、借入金規制の適用を受けません:
- サービス業または販売業などで51%以上がタイ資本 ・BOI奨励を受けていない
実例:高額の親子ローン
規制が適用されない企業では、資本金の10倍以上の借入金(親子ローン)を行っている事例も見られます。これは、タイの法規制上は問題ありませんが、財務の健全性や経営リスクの観点から慎重に検討する必要があります。
まとめ
タイにおける借入金規制は、企業の形態や出資構成によって大きく異なります。BOI申請企業や外国法人には厳格な規制が適用される一方、一定の条件を満たす企業では規制がほとんど適用されません。資金調達の際は、自社の状況に応じた最適な方法を選択することが重要です。
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