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タイのM&Aにおける弁護士・法律事務所の役割と選定基準を解説

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タイにおけるクロスボーダーM&Aは、独自の法規制対応が成功の鍵です。本記事では、タイのM&Aでの弁護士の役割、法務デューデリジェンスの要点、費用対効果の高い法律事務所の選定基準を解説します。

タイのM&Aにおける弁護士・法律事務所の役割と選定基準を解説

タイのM&Aで弁護士が必要とされる背景と法的リスク

タイ王国でのクロスボーダーM&Aは、高い成長性をもたらしますが、大陸法と英米法が混在する複雑な法制度と行政実務に基づくリスクが伴います。タイのM&Aでの弁護士の関与は、単に法令遵守を確認するだけでなく、取引の実現可能性や価格の妥当性を戦略的に担保するために不可欠です。特に、潜在的な法的負債を回避し、M&A後の事業継続性を確保するためには、現地の法令と実務に深く熟知したタイのM&A弁護士のサポートが必須となります。

外国人事業法(FBA)とBOI恩典の複雑性

タイのM&Aにおける最も重要な法的リスクの一つは、外国人事業法(FBA)による外資規制です。弁護士はM&Aの初期段階で、買収ストラクチャリングがFBAに違反しないか、また対象会社が保有するBOI(タイ投資委員会)恩典をM&A後も承継できるかを徹底的に評価する必要があります。BOI恩典は、法人税免税や外国人事業法による事業許可の免除など多大なメリットをもたらすため、その失効リスクは企業価値に直結します。タイのM&Aで法務アドバイザーは、このBOI/FBA関連のリスクを初期に特定し、取引価格や契約条件に反映させる戦略的役割を担います。

M&AプロセスにおけるタイのM&A弁護士の具体的な役割

タイのM&A弁護士は、初期検討段階からクロージング、そして買収後の統合(PMI)支援にまで関与します。彼らは、秘密保持契約(NDA)や基本合意書(LOI)の交渉開始時から関与し、ストラクチャリングの決定や、FBA/BOI規制を踏まえた実行可能性の評価を行います。最も重要な役割は、法務デューデリジェンス(LDD)と契約交渉を主導することです。

法務デューデリジェンス(LDD)の設計と実行

LDDの目的は、対象会社が抱える潜在的な法的リスクを特定し、その評価結果を取引の実行可否や株式の評価額の調整に直接反映させることです。費用対効果を最大化するため、LDDでは外資規制、許認可、不動産、労働法務といった重要度の高い領域に調査リソースを集中させる戦略が必要です。

タイでの不動産DDにおける登記簿確認の徹底

タイ法では、土地に対する抵当権や用益権などの法的負担は、その不動産が所在する土地局(Land Office)に登記されて初めて有効となります。タイの法律事務所は、公的な登記簿記録の確認を徹底し、内部文書と登記簿に不一致がないか、未登記の負担が存在しないかを検証する必要があります。

契約書作成・交渉におけるリスクヘッジ戦略

弁護士はLDDの結果に基づき、買収者のリスクを最小化する株式譲渡契約(SPA)を作成または確認します。タイ特有のFBAライセンスの瑕疵やBOI認可違反リスクを反映させた表明保証(R&W)を明記し、リスク顕在化時の補償請求の根拠を明確にします。

クロスボーダーM&Aにおける紛争解決

クロスボーダーM&Aにおいては、SPAの準拠法や紛争解決地を選定します。国際仲裁機関を選択することは、タイ国内の裁判所に比べて公平性や専門性が期待でき、戦略的意義を持つことが多いです。クロスボーダーM&Aにおいて法律事務所は、この国際仲裁規定に精通していることも有力な検討事項の一つです。

タイのM&Aに強い法律事務所の選定ポイント

タイでのM&Aの成功には、現地の規制環境と実務慣行に精通した適切なタイの法律事務所を選定することが重要です。選定基準は、専門性、実務能力、費用対効果の三つの柱に基づきます。

専門性と実務能力の評価

専門性としては、タイのM&Aに特有のFBA/BOI関連の許認可取得や承継に関する豊富な実績、および特定業種における深い知見が求められます。実務能力としては、BOI事務局や商業省、土地局などタイの行政機関との円滑な折衝能力が重要です。また、日本語での正確なリスク報告や、国際交渉に対応できる高い英語力といったコミュニケーション能力も選定の重要要素です。

日系、国際系、ローカル法律事務所の使い分け

タイの法律事務所のタイプには、日系、国際系/大手ローカル、中小ローカルがあります。複雑な案件では、日系事務所(本社連携、プロジェクト管理)と国際系/大手ローカル事務所(LDD実行、BOI/FBA行政折衝)を組み合わせるハイブリッド戦略が、費用対効果と実務深度の両立に最も有効です。

タイの弁護士費用を適切にコントロールする方法

タイの弁護士費用は、M&Aコストの無視できない割合を占めます。クロスボーダーM&Aの法務支援では、案件の複雑性や工数変動に対応するため、タイムチャージ制(時間単価制)が標準的な料金体系として採用されています。

タイムチャージ制の構造と戦略的利用

タイムチャージ制では、弁護士の役職(パートナー、アソシエイト)に基づき時間単価が設定され、稼働時間に応じて請求されます。パートナー弁護士とアソシエイト弁護士では単価に大きな差があります。この単価差を活用し、高度な判断が必要な業務はパートナーに、LDDの初期レビューや文書整理は低単価のアソシエイトに割り振ることで、費用を戦略的に削減できます。

顧問契約の活用と費用の透明性

継続的な事業を予定している場合、M&A案件のタイムチャージに対して顧問契約によるディスカウントが適用されることがあります。また、費用を厳密に管理するため、請求書には作業内容、担当弁護士、使用時間が明確に記載されているか、高い透明性を要求することが重要です。

タイのM&Aで弁護士に関するよくあるご質問(FAQ)

タイのM&Aで弁護士を選定し、法務面のリスクを最小化するために、よく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

Q:タイのM&Aで弁護士はどのタイミングで依頼すべきですか。

弁護士への依頼タイミングは、秘密保持契約(NDA)締結後、買収価格や条件を提示する基本合意書(LOI/MOU)を締結する前が最適です。この初期段階でタイのM&A弁護士を関与させることで、外国人事業法(FBA)やBOI恩典の承継要件といったタイ特有の規制を踏まえたストラクチャリングの法的実行可能性を確保できます。これにより、後の交渉段階での手戻りやM&Aの中止リスクを最小限に抑えることが可能です。

Q:日系とローカルの法律事務所、どちらを選ぶのが最善ですか。

最適な選択肢は、案件の規模や複雑性によって異なります。一般的に、日系法律事務所は日本の商慣習や本社への報告体制の構築に優れており、国際系または大手ローカル法律事務所はタイの行政実務やBOI/FBA対応の実務深度が強みです。複雑なクロスボーダーM&Aにおいては、日系とローカル双方の強みを活かし、日系事務所をプロジェクトマネジメント、ローカル事務所を現地法務実務に充てるハイブリッド戦略が最も有効とされています。

Q:タイのM&Aにおける弁護士費用の一般的な体系は何ですか。

国際的なM&Aにおけるタイの弁護士費用は、タイムチャージ制(時間単価制)が標準的です。これは、弁護士の役職と稼働時間に応じて費用が決まる体系です。特定の定型的な許認可申請などには固定報酬が適用されることもありますが、法務デューデリジェンスや契約交渉など工数が変動する業務はタイムチャージが主流です。顧問契約を締結することで、タイムチャージに割引が適用される場合もあります。

まとめ

タイのM&A弁護士は、外国人事業法(FBA)やBOI恩典の複雑な規制を管理し、取引の実行可能性を担保する戦略的な役割を担います。法務DDでは、不動産の土地局登記確認や外国語書類の認証翻訳といった現地特有の実務に精通したタイの法律事務所を選定し、タイムチャージ制の費用構造を理解してアソシエイトを活用することが費用コントロールの鍵です。

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