コラムCOLUMN
M&A

タイのM&Aにおけるコンサルタント・仲介会社・FAの選び方を解説

M&A

タイへの事業拡大をM&Aで成功させるには、信頼できるアドバイザーの選定が不可欠です。本記事では、タイのM&Aコンサルタント(FA)と仲介会社の違い、日系・ローカル・外資の専門家特性、そして費用対効果を最大化するための選定基準を、タイのM&A市場の特殊性を踏まえて詳細に解説します。

タイのM&Aにおけるコンサルタント・仲介会社・FAの選び方を解説

タイのM&A市場特有の課題とアドバイザリーの必要性

タイへの進出や事業拡大において、M&Aは人材や顧客基盤、無形資産を同時に獲得できる最短ルートです。しかし、タイのM&A市場は、近年、地元大手企業が大型の国際買収を活発化させるなど、高度に洗練されてつつあり、複雑な商慣習や法規制への対応が不可欠です。特にクロスボーダー取引では、言語や法制度の違いから交渉が難航しやすいため、専門的な知見を持つタイのM&Aコンサルタント(ファイナンシャルアドバイザー:FA)のサポートが決定的に重要となります。

なぜタイのM&Aで専門家が必要か

M&Aは、売主と買主の合意と資金があれば成立しますが、シナジー効果を追求し、成功率を高めるためには、独自のコネクションや専門知識が必要です。経営者が独力でM&Aを行うのは、相手企業の選定、デューデリジェンス(DD)といった企業審査、複雑な契約書類の作成、交渉など、多くの実務と専門知識が求められるため困難です。タイにおけるM&Aのコンサルタントに依頼することで、煩雑な事務作業を任せられ、期間短縮と成功確率のアップが期待できます。

外国人事業法(FBA)を中心とした外資規制への対応

タイにおけるM&Aで最も重要なリスクの一つが、外国人事業法(FBA)を中心とする外資規制への確実な対応です。FBAは、外国人がタイで事業を行う際の最低登記資本金や株主の割合に関する制限を課す法律であり、タイ国民の利益保護と外国投資促進の均衡を保つように設計されています。M&Aを実行する前には、買収対象企業がFBAを遵守しているか、また買収後に外資企業として規制対象に分類される可能性がないかを徹底的にデューデリジェンスで評価することが不可欠です。

製造業における見落としがちな規制リスク

タイで最も進出が多い「製造業」は基本的にFBAの規制業種ではありませんが、規制に抵触するリスクが存在します。例えば、個々の顧客の依頼内容に応じて仕様や製造工程が異なる製品を製造する行為は「製造委託業務」と見なされ、FBA上の規制業種である「その他サービス業」に該当する場合があります。さらに、製造した製品の修補・メンテナンスを行うアフターサービスも「その他サービス業」に該当し、必要な外国人事業許可を取得していない例が散見されます。タイのM&Aコンサルタントや法務アドバイザーを選定する際は、これらの現地特有のリスク検証実績を重視すべきです。

M&Aアドバイザリー(FA)の役割と業務内容

M&Aアドバイザーの役割は、M&Aプロセス全体を専門家としてサポートし、依頼者が得る利益を最大限にすることです。M&Aアドバイザーは、金融業界ではファイナンシャルアドバイザー(FA)とも呼ばれ、M&Aに必要な一連の手続を一元管理し、取りまとめます。タイにおけるM&Aの成功には、このFAを戦略的パートナーとして選ぶことが重要となります。

依頼者の利益を最大化するFAの役割

M&Aアドバイザーは、売主か買主のどちらか一方の利益を最大化することにコミットします。依頼者が買主の場合、FAは予算内で適正な買収金額でのM&A実現、シナジー効果の高い相手企業の選定、そして妥当な買収条件の実現に注力します。適正な価格交渉には、市場価格や過去の実績、相手企業の企業価値などから客観的な助言を行うことが不可欠です。

M&Aアドバイザリーの主な業務内容

FAの業務は多岐にわたり、M&Aの戦略・スケジュール立案、売主または買主の選定といった案件のオリジネーションから関与します。また、相手先との交渉における戦略立案や情報収集、契約締結(クロージング)に向けた各種手続のサポートも行います。FAは、M&Aの各段階で発生する複雑な課題解決を主導する、プロジェクトマネージャーの役割を果たします。

企業価値の算定と交渉への助言

依頼者が買主の場合、相手先の企業価値算定は特に重要な業務です。計算の前提となる条件が少し変わるだけで結果が大きく変動するため、FAは企業価値に見合わない高額な買収を防ぐために助言します。また、FAは買収スキームについても多面的な視点から助言を行い、税務・会計への影響や資金調達の難易度を考慮します。交渉自体は当事者間で行われるのが原則ですが、FAは依頼者の利益最大化に向けた戦略的な助言を提供します。

デューデリジェンス(DD)の統括と支援

M&AにおけるDDは、買収対象企業の財務、税務、法務、事業面などを多角的に調査・分析するプロセスです。タイのM&Aコンサルタントは、このDD全体をコーディネイトし、円滑に進行させる役割を担います。法務DDはタイの法律事務所の弁護士、財務DDや税務DDはCPAやCPDなど、複数の専門家に依頼する必要があります。FAはこれらの専門家の斡旋と連携体制を構築し、DD結果を交渉ポイントに整理します。

M&A支援機関の類型とそれぞれの特徴

M&Aをサポートする専門家には、M&Aアドバイザー(FA)とM&A仲介会社という大きな違いがあります。また、出自や得意とする案件規模によって、日系、外資系、ローカルの専門家という分類も可能です。タイのM&Aでは、これらの専門家を案件規模とリスク特性に応じて組み合わせる「ハイブリッド戦略」が有効です。

依頼者の利益を追求するFAと中立的な仲介会社

M&Aアドバイザー(FA)は、依頼者の一方のみと契約し、その利益最大化を目指します。これに対し、M&A仲介会社は、売主と買主の間に立ち、両者と契約して中立的な立場で取引の成立を目指します。仲介会社は両方から報酬を受け取るため、顧客の利益最大化に努めるFAとは異なり、中立的な立場が求められます。クロスボーダーM&Aでは、依頼者の利益を徹底的に追求できるFAの起用が特に戦略上不可欠です。

日系アドバイザリーファームの強み

東南アジア特化型の日系アドバイザリーファームは、日本の経営文化や戦略的ニーズに対する深い理解が強みです。彼らは主に日本の中堅・中小企業を顧客とし、タイ、インドネシア、ベトナムなどのASEAN域内におけるクロスボーダーM&Aで実績を有しています。日本と東南アジアをカバーする実務知見や現地ネットワークを活用し、日本語でのきめ細やかなサポートを提供できるため、コミュニケーションの障壁が低い点が大きなメリットです。

外資系投資銀行(IB)やグローバルファームの特性

外資系投資銀行(IB)やグローバルファームは、一般的に1,000億円以上もの超大型案件や複雑なクロスボーダーM&Aを主導します。彼らはM&Aアドバイザリー業務だけでなく、グローバルな資金調達や高度な財務モデリング(バリュエーション)スキルを持ちます。タイにおいても、大手財閥による巨額な国際買収の裏側には、これらのグローバルファームの関与が想定されます。ただし、アドバイザリー手数料が数十億円に上るケースもあり、中堅・中小案件ではコストが見合わないことが多いです。

タイの法律事務所やローカル専門家の価値

タイの法律事務所などのローカルの専門家は、FAとは独立してDDやクロージング段階での現地の法規制対応を担当します。タイのローカルな慣習、法規制、税務実務に深く精通していることが最大の強みです。特にFBA関連の許認可申請や、現地特有の税務・労務リスクへの対応は、タイの法律事務所や現地会計事務所のようなローカルの専門家がいなければ到底行えません。日本語での法務アドバイザリーサービスを提供できる事務所も存在します。

失敗しないパートナー選定の基準と費用構造の理解

タイのM&Aを成功させるためには、アドバイザリーの単なる実績数だけでなく、タイ固有の規制リスクを事前に特定し、それを価格交渉に反映できる専門性が必要です。また、タイのM&Aコンサルタントの費用構造を事前に理解し、費用対効果を最大化する報酬体系を交渉することも重要です。

最適なアドバイザリーの「ハイブリッド戦略」

日系の中堅企業がタイへの進出を行う一般的なM&Aでは、日系特化ファームをFAとして戦略立案と交渉を主導させ、DDおよびFBA対応においては現地に根付いたタイ常設の法律事務所や会計事務所といった日系またはローカルの専門家を組み込むハイブリッド戦略が、リスク管理とコストのバランスにおいて最適です。この連携により、FAは戦略に集中し、現地の専門家は規制対応と実務を正確に行う役割分担が可能となります。

成功報酬の基本構造とレーマン方式

M&Aアドバイザリーの報酬は、主に「着手金」「成功報酬」「実費」で構成されます。このうち成功報酬は、M&Aが最終的に成立した場合に支払われるもので、一般的に取引金額に応じた料率を適用するレーマン方式で算出されます。レーマン方式は、取引金額が大きいほど適用される料率が低くなる特徴があります。この計算基準を事前に把握することで、M&A実施に必要な費用の見積もりが可能となります。

報酬基準額の定義が費用に与える影響

成功報酬の金額は、レーマン方式が適用されるとしても、計算の基となる「報酬基準額(Transaction Value)」の定義によって大きく変わります。主な定義には、株式譲渡対価のみを基準とする「株式価値基準」と、これに有利子負債などを加算する「移動総資産基準」や「企業価値基準」があります。買主側の場合、買収後に引き継ぐ負債を基準額に含めるか否かで支払額が大幅に変わるため、契約前にFAがどちらを採用しているかを必ず確認し、株式価値ベースでの計算を主張してみるとよいでしょう。

タイにおける法務・規制対応の実績確認の重要性

パートナーを選定する際は、タイの外国人事業法(FBA)規制への対応経験があることが重要です。特に、タイのM&Aの法務アドバイザーや、クロスボーダーM&Aを扱う法律事務所が、FBAに基づく許認可(FBL)の有無や、製造委託業務・アフターサービスにおける「その他サービス業」該当リスクなどの現地特有の論点を網羅的に調査できる体制と実績を持つことが必須です。

タイのM&Aコンサルタントに関するよくあるご質問(FAQ)

タイへの事業拡大をM&Aで進めるにあたり、アドバイザー選定や費用について読者から寄せられる主な疑問点にお答えします。適切なパートナーシップを構築するため、ぜひ参考にしてください。

Q:M&Aコンサルタント(FA)と仲介会社は何が違うのですか。

M&Aコンサルタント、すなわちファイナンシャルアドバイザー(FA)は、依頼者(売主または買主)の一方のみの利益を最大化することを目標とし、その代理人として交渉を主導します。一方、M&A仲介会社は、売主と買主の間に立って中立的な立場で両者の合意形成を促進し、取引成立を目指します。依頼者の利益を徹底的に追求したい場合は、FAに依頼するのが最適です。

Q:タイ現地の事情に詳しいFAの見つけ方はどうすればよいでしょうか。

タイのM&A市場の特殊性を踏まえると、日系アドバイザリーファームをFAとし、タイ現地の法律事務所や会計事務所をDDの専門家として組み合わせる「ハイブリッド戦略」が有効です。特に、FBA(外国人事業法)関連の許認可や、タイのM&Aの法務アドバイザーとして、現地規制に精通したタイの法律事務所の実績を個別に確認することが重要です。

Q:成功報酬や手数料の相場はどれくらいですか。

成功報酬は一般的にレーマン方式で算出され、取引金額に応じて料率が設定されています。例えば、5億円以下の部分は5%、100億円超の部分は1%といった標準料率があります。ただし、この報酬のベースとなる「報酬基準額」の定義(株式譲渡額のみか、負債を含むか)によって支払額が大きく変動するため、契約前にタイの弁護士の費用を含む総コストの見積もりを詳細に確認することが不可欠です。

まとめ

タイのM&Aを成功させる鍵は、タイのM&Aコンサルタント(FA)を戦略的な交渉の主導者として選び、タイ固有の法規制(FBA)リスクを管理できるローカル専門家を組み込む「ハイブリッド戦略」の採用にあります。FAは依頼者の利益を最大化することにコミットし、DDで判明したリスクを企業価値に正確に反映させ、価格交渉に繋げる能力が求められます。また、成功報酬の計算基準となる報酬基準額の定義を精査し、費用対効果を最大化することが重要です。

みつき税理士法人は、新規進出から会計税務、M&Aまで一気通貫で対応できます。必要に応じて東京本社と連携し、バンコクに常駐するCPAが最適な解決策を提案します。会計事務所の変更のご相談も承っています。まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。

事業承継にM&Aの選択肢